北海道に新緑が鮮やかに輝く季節がやってきた。
ようやく朝晩ストーブをつけることもなくなったこの時期になると、
動植物がいっせいに活動を開始する。
虫たちがせわしなく飛び回り、植物は花を咲かせたかと思うと
あっという間に散っていく。
こうした自然界の営みに呼応するかのように、
わたしのまわりも、だんだんと忙しさが増している。
現在進行中の地域のPR活動〈みる・とーぶ〉で、
7月6日から始まる札幌のイベントへの参加が決まっており、
いよいよ準備も佳境となってきた。
このイベントでは、岩見沢の「東部丘陵地域」と呼ばれる山あいで活動する
陶芸家や木工作家などの作品を紹介するとともに、
みる・とーぶの有志メンバーたちもものづくりに挑んでいる。

参加するイベントは『北にあつまる手しごと展』。7月6日~8日に札幌市資料館で開催される。昨年も、この場所で岩見沢の山里のPRをするために『みる・とーぶ展』を行っている。

昨年〈みる・とーぶ〉のメンバーがつくって好評だったのが、地域の果樹園で採れたハチミツの蜜蝋をつかったキャンドル。今年はシラカバの木をくり貫いて、そこに蜜蝋をつめた新商品を制作中。
そのなかで、わたしは「本」を出すことを計画中だ。
本業の編集者の活動では、これまで数々の本づくりに関わってきたが、
昨年、既存の出版社を通さず、自分でつくって売るという新しい試みをスタートさせた。
まずつくった本は『山を買う』。
一昨年にわたしが岩見沢の山林を購入した経緯をイラストと文章で綴ったものだ。
手のひらサイズ、24ページというささやかなものだったが、
わたしの連絡先を一生懸命調べてくれて、購入したいといってくれる人も現れた。
そうした人に本を送ると、感想を書いたハガキが手元に届くことがたびたびあった。
20年ほど出版社で本をつくってきたが、これまで売るのは本屋さんまかせ。
いつもどんな人が読んでくれているのか実感がわかず、
もどかしい思いをしていたのだが、『山を買う』によって、
初めて読者のみなさんの顔がはっきりと見え、
そこからまた新しいアイデアが生まれていくような、そんな可能性が感じられた。

山の購入の経緯と、買って何をしたのかをまとめた小さな本。1冊500円。地域のイベントなどで、ほそぼそと販売を続けている。1冊売れるごとの喜びはお金には換えがたい。詳しくはミチクル編集工房のFacebookへ。
読んでくれる人とのつながりが感じられる本づくりをもっとしてみたい。
ならば独自に出版社をつくってはどうかと考え、
7月の札幌のイベントで、「森の出版社ミチクル」の
お披露目をすることにした(出版社構想についてはこちら)。
いまつくっているのは、『山を買う』とはまったく方向性を変えて、
北海道の身近な植物をテーマにした絵本だ。
発端は、2016年に岩見沢を訪ねてくれた、
造本作家でありデザイナーの駒形克己さんからの提案だった。
このとき駒形さんは、わたしの買った山に立ち寄ってくれ、
森の本をつくろうとしているという話を教えてくれた。
「荒れ地に、日差しに強い種が芽吹き大地をおおう。
次に日陰で芽吹く種が現れ……」
駒形さんの構想は、命の循環を繰り返しながら
森が成長していくというストーリーだった。
そして、駒形さんが東京に帰る日、別れ際に
「森の本を一緒につくりましょう」と声をかけてくれたのだった。
わたしの買った山は、木が伐採されたあとの荒れ地。
森の本の始まりも荒れ地が想定されていたことから、
自分の山を観察するなかで、何か具体的なアイデアを提案できそうな気がして、
リサーチを始めることにした。

わたしが住む地域で、2016年11月、『北海道アール・ブリュット 2016 in 岩見沢』という障がい者とアートの関わりについて考えるイベントがあり、そこで駒形さんは基調講演とワークショップを行った。

駒形さん(写真中央)と最初にお会いしたのは10年以上前のこと。以後、さまざまな節目でお仕事をご一緒させてもらっており、このイベントのあとに、わたしたち一家が岩見沢の各地を案内。山にも訪ねてくれた。