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下田で暮らし始めて、
自分のなかで少しずつ変わってきたことがあります。
それは、思いついたことを何でもやってみようということ。
例えば、昨年末に開催したパンの販売も人生で初めての経験でした。
「やってみたい」と涌き上がってきたことを、
「とにかく一度やってみよう」と行動に移せるようになったのは、
下田に来てからの変化だと感じています。
それはなぜだろうか。
ひとつは、東京にいるときよりも仕事をする時間が減り、
時間的にも気持ちにも余裕ができたこと。
けれど、おそらくそれだけではないのです。
私たちはこの1年でいろんな人と出会いました。
自分たちが思い描いたことを着実に、楽しみながら実現していく人たち。
そうした人たちと触れ合ううちに、ふと気づいたのです。
もっと自由に、思ったことは自分が行動に移せばいいんだ。
4月中旬に開催した「下田インド化計画」なるイベントも、
そうした出来事のひとつでした。
南インド料理をつくるユニット〈マサラワーラー〉を下田に招き、
みんなで南インド料理を食べようという企画。
「やりたい!」と声をあげたのは私だったのですが、
そこから先は自分でも想像していなかった展開となったのです。
まさかこんなにトントン拍子で実現するなんて。
まさかこんなにたくさんの人が集まってくれて、
こんなにもすてきな会になるなんて。
一歩自分が踏み出せばおもしろいことが始まる。
このイベントを通して、あらためてそう感じています。
ことの発端は、下田に住む友人がFacebookにあげた投稿でした。
何やらおいしそうな料理の写真に加え、こんな記述があったのです。
「年末都内某所某宅で、インドカレーをつくるマサラワーラー。
日本中どこへもインドカレーづくりに出かけます。
南インドのミールスが得意。この日はビリヤニもうまかったし、
手前のインド天ぷらも、タレをつけて、
フライングして食べてしまいました。うまい!」
ちょうどその頃、私はインドカレーにはまっていました。
自宅の棚にはスパイスがずらり。
マトン肉を取り寄せ、カレーを仕込むという日々を送っていたのです。
南インド料理とは気になる。
日本中どこへも、ということは下田にも来てくれるのでは?
ということで、すぐさま友人のFacebookにコメントを書き込みました。
「下田には来てくれないのかな? 食べたい!」と。
友人というのは下田在住の作家、岡崎大五さんです。
とにかく顔が広くそして行動力のある人物で、
今回のイベントはこの大五さんの存在なくしては成り立たちませんでした。
大五さんはすぐにマサラワーラーと連絡を取り合い、
そして下田に来てくれることが、ほんの数日で決まったのです。
「えー! ホントに来てくれるんだ?」
いやはや、何でも言ってみるもんですね。
開催が決まったとなると早急に会場を考えなくては。
南インド、カレー、スパイス。
そのイメージにぴったりな場所がある。
すぐに頭に浮かんだのは、白浜にある〈ガーデンヴィラ白浜〉という、
私たちが家族が日頃お世話になっているペンションです。
すぐ横には〈伊豆白浜バーベキューガーデン〉という
広いBBQ広場が併設されていて、
青く輝く海を望むそのスペースはとても開放的。
そんな空間で南インド料理を楽しめたら……、それはもう至福でしょう。
ということで、翌週ガーデンヴィラ白浜さんにうかがい
相談することとなりました。
ガーデンヴィラ白浜を営むのは、ご主人の宝田敏郎さんと
奥様の友規子(ゆきこ)さん、娘さんの麻理子さんご家族。
こんなイベントをやってみたいのだと内容を説明すると、
「おもしろそう、おいしそう、食べてみたい!」と快諾してくれたのです。
こうしたイベントを開催するのは、
ガーデンヴィラ白浜さんにとっても初めての試みとのこと。
「みんなが楽しい時間を過ごせたらさ、それが一番いいじゃない」
とご主人の敏郎さん。
こういう風通しのよいすてきな方が下田にいる。
それだけでとてもうれしくなります。
そして、このイベントをなんとしても
おもしろいものにしたいという気持ちが高まっていったのです。