odekake
posted:2018.7.5 from:新潟県新潟市 genre:暮らしと移住 / ものづくり
PR 新潟県
〈 おでかけコロカルとは… 〉
一人旅や家族旅行のプラン立てに。ローカルネタ満載の観光ガイドブックとして。
エリアごとに、おすすめのおでかけ情報をまとめました。ぜひ、あれこれお役立てください。
writer profile
Ikuko Hyodo
兵藤育子
ひょうどう・いくこ●山形県酒田市出身、ライター。海外の旅から戻ってくるたびに、日本のよさを実感する今日このごろ。ならばそのよさをもっと突き詰めてみたいと思ったのが、国内に興味を持つようになったきっかけ。年に数回帰郷し、温泉と日本酒にとっぷり浸かって英気を養っています。
credit
撮影:千葉 諭
靴をオーダーメイドするのは、経験したことのない人にとっては
ちょっと敷居が高く感じるものであり、
だからこそ憧れている人も多いのではないでしょうか。
新潟市中央区花町にある〈石丸靴工房〉は、
そんな背筋を伸ばしたくなるスペシャルな体験が、意外と気軽にできてしまう場所。
ここでは靴職人の石丸奈央人さんが、
フルオーダーやセミオーダーでその人にフィットする靴をハンドメイドしています。
石丸さんが三条市出身の奥様とともに東京から移住して、
新潟市内で工房をオープンしたのは、2017年秋のこと。
それまでは、20年住んでいた下北沢に工房をかまえていました。
しかも靴職人になる前は、
ストリートファッション系の雑誌で編集者をしていたという異色の経歴の持ち主。
「雑誌づくりも楽しかったのですが、
自分がつくったものを必要とする方に直接届けられるような仕事がしたいと
ぼんやり考えていました。
旅が好きで、会社を辞めたあとフリーでライターをやりながら、
お金が貯まったら海外へ行くことを繰り返していました。
東南アジアなんかを回ると、
自分でつくったものを露店に並べて売っているようなシンプルさが当たり前にあって、
こういう暮らしをしたいと思い、靴づくりの学校に入ったんです」
石丸さんがつくる靴は、植物タンニンなめしの、いわゆるヌメ革を多く使っています。
靴の素材となるのはご存じの通り、動物の皮膚である「皮」ですが、
そのままだと使うことができないので、
不純物を取り除いて柔らかい「革」にするために、なめすという工程があります。
その方法は、植物タンニンなめしとクロムなめしというふたつに大きく分けられ、
古代からある前者は植物から抽出される“渋”を使い、後者は化学薬品を使います。
「革靴の9割以上は、クロムなめしの革を使っています。
クロムなめしはしなやかで、水や日焼けにも強く、色あせにくい。
大量生産の工業製品では扱いやすい革なのですが、
革アレルギーの人には不向きだったり、
土に埋めても分解できなかったりというデメリットがあります。
一方、植物タンニンなめしの革は、日焼けも水しみもするし、傷がつきやすく、
靴としてはとてもつくりにくいんです」
それでも植物タンニンなめしにこだわるのは、エイジング、
つまり靴を育てていく楽しみを履く人に味わってほしいから。
「僕がつくった状態が完成ではなく、履きジワができたり、ぶつけて傷がついたり、
日焼けして色が変わったりして、
その人の履き方が落とし込まれたときに靴は完成するものだと思っています。
ジーンズのように履く人にだんだん馴染んでいく靴にしたいんです」
セミオーダーの場合は、既製のデザインをベースに革や紐の色などを選ぶことができ、
フルオーダーになると足のサイズを測定して、木型をつくるところから始まります。
Page 2
〈石丸靴工房〉ではオーダーを受けた靴をつくる以外に、
手づくり靴教室やワークショップなどを開催しているのですが、
それらはこんなきっかけで始まったそう。
「友だちから、子どもが生まれる人にベビー靴をプレゼントしたい、
しかも自分でつくってあげたい、と言われたんです。
専門の知識も技術もない人が、いきなり靴をつくるなんて無理だと伝えたのですが、
どうしてもということで、道具や特殊な技術を極力使わずに、
手縫いだけでできるベビーシューズを考案しました。
そしたらプレゼントした人もされた人もとても喜んでくれて、
もらった人が自分でもつくってみたいと言い出して、少しずつ広がっていったんです」
現在用意しているプログラムは、月に何回か工房に通い、
半年から1年くらいかけて仕上げていく手づくり靴教室のほか、
木型を使わないサボシューズやストラップシューズ、ルームシューズを
数回の講習で完成させるワークショップ。
さらには各パーツを手縫いしてわずか2~3時間でつくってしまえる、
ベビーシューズ、バブーシュ、モカシンブーツの体験教室も。
参加者は、趣味で靴をつくってみたい人はもちろん、靴職人を目指している人や、
靴の修理店に勤務していて靴の構造を知りたいという人などさまざま。
みなさん、自分で靴をつくることができるという事実にまず驚き、
自分でつくるからこそひときわ愛着が湧くようです。
Page 3
サンプルや製作途中の靴が棚に並び、広い作業台とミシンのある風景は、
いかにも工房といった雰囲気ですが、通常の工房と違うのは、
コーヒーのいい香りが漂っているところ。
入り口近くの一角がコーヒースタンド〈NOVEMBER COFFEE〉になっていて、
こちらは奥様の加奈子さんが担当しています。
「僕も彼女も旅先でまちを散歩するのが好きなのですが、
コーヒースタンドってどの都市にもあるじゃないですか。
新潟はどちらかというと車社会ではあるけれど、まちを知るには歩くのが一番だし、
歩くことでまちも人も生かされるという感覚があったので、店内でくつろぐのではなく、
コーヒーをテイクアウトできる場所をつくりたかったんです。
まだまだアピール不足なのですが、
近所のおじいちゃんおばあちゃんがマイカップを持ってきてくれたりして、
少しずつ認知してもらっています」
新潟での暮らしは、「便利さは東京とさほど変わらないけれども、
のんびりしていて、何を食べてもおいしい!」とのこと。
「せっかく新潟に移住してきたので、
まちに根ざした場所をつくることができたらいいなと思っています。
地方都市でもカルチャーを感じられるスポットが最近増えていますが、
ここもカルチャーを発信できるようなおもしろい工房になっていけばいいですね」
information
石丸靴工房
住所:新潟県新潟市中央区花町1983-1 山際ビル1F
TEL:025-378-3010
駐車場:なし
E-mail:ishimaru.shoe@gmail.com
ホームページ:https://www.ishimarushoe.com/
■セミオーダー
3万2,800円(その他、木型の修正などのリクエストがある場合はオプションで対応)
■フルオーダー
木型代4万円~5万円程度(足の左右差など、その人の状態によって変動)
靴代6万円~(デザインや製法によって変動)
※問い合わせはメールにて。工房への来訪は予約制(メール受付)
information
NOVEMBER COFFEE
営業時間:11:00~18:00(土曜日のみ14:00〜)
定休日:水曜日
Feature 特集記事&おすすめ記事