odekake
posted:2018.5.31 from:新潟県新潟市 genre:食・グルメ
PR 新潟県
〈 おでかけコロカルとは… 〉
一人旅や家族旅行のプラン立てに。ローカルネタ満載の観光ガイドブックとして。
エリアごとに、おすすめのおでかけ情報をまとめました。ぜひ、あれこれお役立てください。
writer profile
Ikuko Hyodo
兵藤育子
ひょうどう・いくこ●山形県酒田市出身、ライター。海外の旅から戻ってくるたびに、日本のよさを実感する今日このごろ。ならばそのよさをもっと突き詰めてみたいと思ったのが、国内に興味を持つようになったきっかけ。年に数回帰郷し、温泉と日本酒にとっぷり浸かって英気を養っています。
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撮影:千葉 諭
米どころのイメージとは結びつきにくいかもしれませんが、
新潟は知る人ぞ知るラーメン王国。
しかも三条のカレーラーメンや長岡の生姜醤油ラーメン、妙高のとん汁ラーメン、
新発田のもつラーメンなど、ほかではあまりお目にかかれないいわゆる変わり種が、
局地的に人気なのが特徴といえます。
そんななかでここ数年、新潟で盛り上がっているのが、麻婆麺。
ラーメンに麻婆豆腐をかけたものを王道とし、
スープまでとろみをつけたもの、激辛・痺れ増しのパンチが効いたもの、
背脂でさらにこってりとさせたもの、隠し味にチーズでまろやかに仕上げたものなど、
各店が工夫をこらしています。この食べ比べが楽しいもの。
他県では、中華料理店ではたまに見かけるものの、
ラーメン専門店としては意外と珍しいメニューではないでしょうか。
「私は新潟出身で、東京に嫁いで20年くらい暮らしていたんですけど、
お父さんがある日突然ラーメン屋をやるって言い出して、脱サラしちゃってね。
東京にいる頃は、外食といったらラーメン屋さんにしか連れて行ってもらえなかったんだけど、
まさか自分たちでやることになるなんて思わなかったわよ!」
と笑って話すのは、新潟市江南区にある
〈ラーメン工房 まるしん〉のおかみさん、小田郁子さん。
“お父さん”こと店主の小田隆さんは、サラリーマン時代からラーメンづくりが趣味で、
休日になると友人、知人によく振る舞っていたそう。
荻窪にあったラーメン店での修業を経て、新潟に移住して〈まるしん〉をオープンさせたのは、
30年ほど前のこと。ただしオープンして間もない頃、
麻婆麺は1日に2、3杯出ればいいほうだったと隆さんは言います。
「麻婆豆腐は知っているけれども、
麻婆麺なんて見たことも聞いたこともないというお客さんがほとんどでしたからね」
メニューの片隅に20年以上ひっそりとあった麻婆麺は、4、5年前から徐々に人気が出始め、
今ではお客さんの7割がオーダーするほどに。気になるお味はというと、
麻婆豆腐が麺を覆い尽くすようにかかっていて、甘辛いうまみが際立っています。
濃厚でとろみが強く、最後まで熱々でいただけるのも、
寒い寒い新潟で愛されるようになった理由なのかもしれません。
麻婆豆腐が麺とスープにフタをするようにかかった「マーボ麺」850円。ネギとふわふわの豆腐、コリコリとしたキクラゲの食感の違いを楽しんで。サンショウの香りもさわやか。
「単体で食べたり、白いご飯に乗せる麻婆豆腐は、みそ味をベースにすることが多いけど、
うちでは麺に合うようにしょうゆベースにしています。ファミリーでいらっしゃる方が多いので、
子どもからお年寄りまでおいしく食べられるよう、辛さも柔らかくしているんです」(隆さん)
辛さや刺激を売りにするようなお店が増えているなか、あえて控えめなスパイシー加減。
ひき肉や豆腐と一緒に炒めたトウガラシと、
最後に上からふりかけているサンショウのバランスが絶妙です。
「小さい子はサンショウ抜きにする場合が多いのですが、小学3年生くらいになると、
一丁前にサンショウ入りを食べるようになりますよ」(隆さん)
麺の量は約180グラムとボリュームたっぷりなのですが、
ほかのお店のは辛くて食べられないという子どもやお年寄りも、ぺろりと平らげてしまうそう。
辛党にはもの足りないかというとそんなことはなく、
卓上にある自家製ラー油をプラスして好みの辛さにアレンジすることも。
まさに老若男女が満足できる麻婆麺なのです。
ほかにも、「汁なしマーボ麺」という気になるメニューが。
実はこれも、お客さんのことを考えて生まれたのだとか。
見た目は似ているけれども、こちらが「汁なしマーボ麺」850円。冷たい麺と熱々のあんをしっかり絡めてめしあがれ。
「上にかけている麻婆豆腐は一緒ですが、
名前の通りスープがなくて、麺を冷たくしているんです。
夏場も麻婆麺はよく出るのですが、
お昼休みにいらっしゃるYシャツにネクタイ姿のサラリーマンが
汗だくになって食べているのを見て、
これで会社に戻ったら大変だと思い、冷たい麺にしてみたんです。
そしたら結構評判がよくて、通年メニューになりました」(郁子さん)
とろみの強い麻婆豆腐に氷でしめた麺を絡めると、
たしかに食べやすくなり、これなら猫舌の人にもよさそう。
おいしく食べてもらいたいという細やかな気づかいが、うれしくなる一品です。
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いまや麻婆麺が看板メニューになっていますが、もともとはつけ麺で人気が出たお店。
煮干しやかつお節などでスープをとったつけ汁は、酸味がほどよく効いたあっさり味。
そこにシャキシャキのもやしと細切りにしたチャーシューがたっぷり入っていて、
ストレート細麺はつるつると喉越しがよく、これまたいくらでも食べられそう。
食べ盛りの学生などは、3玉(約540グラム)を余裕で食べてしまうのだとか。
しかしながらつけ麺も、オープン当初は麻婆麺と同様にほとんど見向きもされなかった“苦労人”。
つけ汁を麺にぶっかけて食べる人や、
お腹が冷えるからと食べたがる子どもを制する母親がいたりなど、
知らないがゆえになかなか理解してもらえなかった時代があったそうです。
行列の絶えないお店になった今でこそ笑い話になっているものの、
新しい味やスタイルを浸透させることがいかに難しいかを物語っています。
ブームになる前から提供し続けてきた、「つけめん」1.5玉830円(1玉は750円)。濃厚なごまだれとラー油の効いた「つけ・ごまだれ」780円も人気。最初は、醤油味のつけ麺で食べて、途中からごまだれを入れて“味変”するのもおすすめ。
「お父さんは『こんな味でいいのかな?』ってお客さんによく質問するんです。
お客さんの要望をなんでも聞くものだから、
お客さんも遠慮せずになんでも言ってくるんですよ(笑)」(郁子さん)
こだわりをしっかり持ちながら、食べる人のことを第一に考えてきたからこそ、
麻婆麺やつけ麺を地域に根づかせて、愛されるお店になったのでしょう。
「常連のお客さんが、友だちをうちの店に連れてきてくれたりするじゃないですか。
初めて来た友だちが、ひと口食べて『おっ、うめ!』と言うのを見て、
連れてきた人が『な!』って短く答える、あの会話が一番好きなんです」(郁子さん)
バラエティに富んだ新潟のラーメン文化を垣間見ることのできる〈まるしん〉。
おひとりでももちろん、友だちと連れ立ってでも、行ってみてください!
優しく真摯な人柄がにじみ出ている小田 隆さんと、ほがらかな郁子さん。「うちのメニューのなかでは、実を言うと担々麺が一番好き」と言う郁子さん。つけ麺、麻婆麺に続くブームは、担々麺!?
information
ラーメン工房 まるしん
住所:新潟市江南区早通5-1-2
TEL:025-381-8649
営業時間:11:00~14:00、17:30~19:30L.O(木曜・日曜は昼のみ)
定休日:月曜、第3火曜
駐車場:あり
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