仏生山まちぐるみ旅館 vol.1
こんにちは。
ぼくは、香川県高松市の仏生山町というところで暮らしています。
建築設計事務所と、仏生山温泉を運営しながら、
まち全体を旅館に見立てる〈仏生山まちぐるみ旅館〉という、取り組みを進めています。
今回の連載企画では、仏生山というまちとそれぞれの建物が、
どのような関わり方をもってリノベーションされているかということを
お伝えできればと思っています。
仏生山町は高松市の中心市街地から南に8キロ、車で20分ぐらいのところにあります。
私鉄の〈ことでん(琴平電気鉄道)〉だと高松駅から仏生山駅まで15分ぐらいです。
江戸時代の初期に高松藩の菩提寺として、〈法然寺〉とその門前町がひらかれました。
今でも当時の建物が少しだけ残り、その雰囲気を感じることができます。
住宅と田んぼが混ざり合う、のどかな地域で
1.5キロ四方に8,000人ぐらいの人が暮らしています。

法然寺の仁王門(左)と五重塔。
ぼく自身はこの仏生山で生まれ育ち、大学進学と共に県外に出ました。
東京での設計事務所勤務を含めると10年ほど仏生山から離れていました。
その後、家業の飲食、宴会施設の跡を継ぐのと同時に
設計事務所を始めるつもりで仏生山に戻りました。
当初ぼくが思っていた予定と少し違っていたのは父が温泉を掘ったことでした。

仏生山のまちの風景。
仏生山はもともと温泉街ではなく、どこにでもあるような普通の郊外です。
父は以前から温泉を掘りたいと言っていましたが、家族全員が冗談だと思っていました。
しかし、仏生山の下にある高松クレーター(現在は砂や水が堆積していてかたちは見えない)が
発見されたのを機に本当に温泉を掘削し始めたのです。

温泉を掘っているところ。
僕が仏生山に戻って来たら、ちょうど掘り終わって温泉が湧いていた、
という絶妙なタイミングでした。
温泉を掘るということは、かなりのリスクを伴います。
温泉が出るまでの間はとても不安でしたが、
出てきた源泉は、湯量、泉質、温度ともに申し分なく、
今となっては父の決断に感謝するばかりです。
そこから計画を進め設計事務所としても初めての仕事になる、
〈仏生山温泉〉が2005年に開業しました。
仏生山温泉は、宿泊のない日帰り入浴施設です。
家業に温泉業が加わり、ぼくは仏生山温泉番台を名乗ることになりました。

仏生山温泉の入り口。

仏生山温泉の浴場。
温泉の仕事を始めて何年か経ってみると、
運営の大切なことは現場の空気をちゃんと見ていくことだということに気づきました。
そうなると、もうこの仏生山というまちから、ちがう場所に移り住むことや、
ちょっとした旅行にもなかなか行きにくいということがわかりました。
いかに自分の住むまちを今よりも楽しい場所にして、
どうやったら、にやにやしながら暮らせるかということを考え始めました。
楽しい場所にする、と言ってもそんなに大それた望みがあるわけではありません。
毎日でも通いたいおいしい定食屋さんとか、
ゆっくり読書ができる居心地のいいコーヒー屋さんとか、
自分が行きたいと思えるお店がその場にあって、
毎日楽しくすごすだけで、
十分にやにやできると思いました。

仏生山温泉の休憩場。
そのお店を増やすための取り組みが〈仏生山まちぐるみ旅館〉です。



































































