みなさまはじめまして。ASTERの中川と申します。
僕たちASTERは熊本市を拠点に活動している内装屋です。
個人住宅、賃貸物件、店舗などのリノベーションを主に
デザイン、設計、施工まで行っています。
この連載では僕らがこれまで実際に関わってきた物件事例をベースに
僕らが思う熊本の魅力的な建物、場所、人を紹介していきたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。
まず初回なので僕が今の仕事をすることになった経緯と
今僕らで運営している店をつくった話をしたいと思います。
僕はもともと建築の知識や興味があったわけではありません。
二十歳ぐらいの頃、建設現場でのアルバイト経験をきっかけに、
その後熊本市内の新規オープンの家具屋へ就職しました。
はじめは家具の配送と接客をやっていて、
後に住宅のリフォームコーナーへ配属になりました。
この頃から内装にも徐々に興味がわいてきたのだと思います。
ようやく仕事にも慣れたころ、
実家から仕事を手伝ってくれとの連絡が。
僕の実家は熊本市内にある畳屋。
畳屋といってもつくるのではなく、
畳をつくる畳屋に材料を卸す畳資材の卸売業をやっていました。
内装工事部門もあり、そこの人手が足りないということで、
僕は実家に戻ることになりました。
まあ内装の仕事はインテリア関係だからいいかと。
それが現在のASTERです。
戻ってきたからには、
やる気を出して頑張ろう! カッコいい空間をつくるぜ!
と奮起していましたが、そんな気合いは空回りしました。
当時の仕事は地場の工務店や不動産屋の下請け業務。
特に賃貸アパートの原状復帰がメインでカッコいい空間とはほど遠く、
どれも同じ内装ばかり。
毎日決まった同じ品番の壁紙の張り替えを、
職人さんへ依頼することが僕の仕事でした。
仕事だから文句は言えないけど、さすがにずっとそれじゃつまらない。
部屋に合わせて壁紙を選ぶことなど現在では当たり前ですが、
当時はもとの壁紙と同じ柄を探す行為が、唯一壁紙を選ぶというものでした。
いつか自分たちで自由に考えたカッコいい空間をつくってみたい。
でもやり方がわからない。
そんな想いを常に抱いて日々過ごしていました。
たまに県外などへ行ったときはいろんなショップ巡りをするのが
当時の僕の楽しみでした。
そして2003年。
たまたま大阪のインテリアショップでみつけたフライヤーに
こんな言葉が書いてありました。
「STOCK×RENOVATION」
大阪を拠点に活動されている業界の先駆者、
〈アートアンドクラフト〉が開催していたリノベーション展のフライヤーでした。
古い空間が魅力的に改修されていて、とにかくカッコいい。
「コレばい!」と直感的に思い、冊子『STOCK×RENOVATION』も取り寄せました。

アートアンドクラフトが2003年に出版した『STOCK×RENOVATION』の冊子。
実家の仕事に違和感を感じていたなかで、
初めて知った“リノベーション”という方法。
「僕がやりたかったのはこんな空間づくりだ!」
と、リノベーションについてすぐに調べ始めました。
そうして知ったのがデザインだけでなく、
日本は欧米に比べ、家の平均寿命がとても短いことや、
年々空き家が増えて家が余っていることなど、
日本の住宅事情について、このとき初めて知りました。
そしてリノベーション事業の草分け会社である、
東京の〈ブルースタジオ〉を知り、
パイオニア的存在であるこの2社に憧れ、
このときをきっかけにただの内装会社から、
物件の価値を高めることができる
リノベーション専門の内装屋へなることを目指しました。
もちろん最初はほとんどリノベーションと言える仕事はなく、
内装の手直し工事やリフォームばかりでしたが、
目指すところがあると俄然日々の仕事もやる気がでます。
その後、徐々に熊本にもリノベーションという言葉が露出し始め、
2007年ごろから僕らも少しずつですが仕事の依頼が来るようになってきました。
僕らがリノベーションをするとき、
使用する建材やパーツに特にこだわります。
建材店や近くのホームセンターには好みの建材やパーツが売っていないこともあるので、
インターネットで建材をよく買っていました。
そしてスタッフとともにいつも言っていました。
「近くにこんなお店あったらいいよね」と。
それでだんだんと欲求が高まり、
僕らが使いたい建材やパーツをストックして置く場所がほしい。
いや、いっそのことショップにして販売もしよう!
と、自分たちの店をつくる目標ができ、熊本市内で突如物件探しが始まりました。
僕らの事務所は熊本市内の九品寺というまちにあります。
熊本城やアーケードがある中心市街地から徒歩圏内にあり、
学校なども多いエリアです。
数年前、いつも通る道路で信号待ちをしていて、
ふと横を見ると、とても魅力的な建物が。
ずいぶん昔からあったようけど特に気に留めることもなかったビル。
ただじっくり見るとなんとも魅力的なビルでした。
築48年。RC造3階建で、建築資材屋さんが所有する〈岩崎ビル〉でした。

施工前の岩崎ビル外観
外壁に貼ってある渋いブラウンのタイルや
2階部分のスチールサッシなど
48年前の建材がそのまま残っている建物はほかにない味わいがあり、
ここで僕らの店ができたら最高だなと勝手に妄想が始まりました。
そうして僕は居ても立ってもいられず
大家さんのところへこの場所を貸してくれないかと交渉に行きました。

もともとは建材屋さんの資材置場だった。