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おいしい東北パッケージデザイン展

Local Action
vol.051

posted:2015.3.21  from:東京都港区  genre:活性化と創生 / アート・デザイン・建築

〈 この連載・企画は… 〉  ひとつのまちの、ささやかな動きかもしれないけれど、創造性や楽しさに富んだ、
注目したい試みがあります。コロカルが見つけた、新しいローカルアクションのかたち。

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Kanako Tsukahara

塚原加奈子

つかはら・かなこ●エディター/ライター。茨城県鹿嶋市、北浦のほとりでのんびり育つ。幼少のころ嗜んだ「鹿島かるた」はメダル級の強さです。

cerdit

撮影:橋本裕貴

デザインが伝えられること

東京ミッドタウン内の「デザインハブ」で
3月6日からスタートした「おいしい東北パッケージデザイン展 in Tokyo」。
東北の食品メーカーがつくる10商品のパッケージデザインを、
全国から公募し、選ばれた受賞作品と入選作品270点を展示している。
東北経済産業局による、
「平成26年度TOHOKUデザイン創造・活用支援事業」として、
日本グラフィックデザイナー協会(以下JAGDA)により
デザインコンペが行われ、
昨年12月の仙台での展示に続いて東京での開催となる。
このプロジェクトが最終的に目指すところは、
企業とデザイナーのマッチング。
優秀作品のデザインは、今後、実際の商品化が進められていくという。

さて、展示されているのはたくさんの公募のなかから選ばれし精鋭たち。
審査会は、昨年11月に行われた。

審査会で並べられた応募作品。

事前に与えられた企業の希望や商品の特徴など、限られた情報をもとに、
応募者は、思い思いにデザイン。
届いた総数はなんと、623点にのぼった!
この企画を牽引するアートディレクターの福島 治さんは、
予想を超える応募数に驚きつつも、
「素晴らしい作品がたくさん届いてうれしい」と喜んでいた。
福島さんは2011年よりJAGDAの被災地支援プロジェクトなどを
企画・プロデュース。
「震災後、数えきれないほど東北を旅する機会が増えました。
東北に根づく魅力が僕のなかで次第に大きくなっていき、
何か力になれることはないかと、その想いはますます強くなっています」
と福島さんは話し、今回のプロジェクト開催へとつながった。

“デザインの力によって東北地域の魅力をより強く発信したい”
という思いから、考案された今回のパッケージデザインの公募。
地域の商品パッケージには、どんなデザインが選ばれるのか。
ワクワクしながら、コロカル編集部もその審査会へお邪魔した。

審査会場となった、JAGDA事務局の隣のデザインハブに並べられた
多数の応募作品。その風景は圧巻だった!
どのデザインが選ばれるのかと、思わずキョロキョロしてしまう。

集まった審査員は、地域のデザインやパッケージデザインを手がけてきた、
実績と経験のある方々ばかり。
仙台を拠点に東北のデザインを手がけるアートディレクターの畠山 敏さん、
地域デザインのパイオニア、デザイナーの梅原 真さん、
日本パッケージデザイン協会理事長を務める、加藤芳夫さん、
地域のお菓子メーカーのリデザインなどの実績を持つ、
グラフィックデザイナーの左合ひとみさん、
そして、前述の福島さん、参加メーカー、東北経済産業局が加わった。
参加メーカーの代表者が審査に加わることによって、
本当に納得のできるデザインを商品化するのが狙いである。
みなさん、並べられた応募作品をひとつひとつじっくり見てまわり、
色違いの付せんで票を入れていくという投票方法。
数の多いものが選ばれるが、
満場一致で選ばれるものもあれば、意見が分かれるものもあった。

審査中の様子。

デザインに込められる、さまざまな視点。

たとえば、宮城県の八葉水産がつくる「みちのく塩辛」は、
さまざまな意見交換がされた商品のひとつ。

同社の新商品で、りんごの粉末が加えられた甘い味わいの塩辛。
本当は、東日本大震災が起こる少し前に発売されたものだったが、
販売2週間後に東日本大震災が発生。工場が被災してしまった。
工場を復活させ、ようやく販売再開へと準備をしているところだ。

1回目の投票後、審査員の方々からメーカーさんへ質問が出る。

「販売価格はいくらですか?」
――400円です。

「土地に足を運んでくれた人へのお土産的要素を強く出したいのか、
あるいは地元の人に日常的に親しまれたいのか?」
――お土産というよりは、まずは日常的に愛されるような商品に。
ただ、これは今までにない味だと思っているので、
たくさんの人に手にとってもらえるような商品になっていきたいですね。

価格帯、販売ターゲットなどは、デザインに大きく影響するという。
お土産であれば、少し強めのキャラクター性があったほうがいいし、
日常的に買うものであれば、親しみやすいデザインがいい。

再投票の結果、3作品が残った。
「商品の特徴は、甘さ。塩辛だけど、従来の塩辛ではないこの味を、
どう伝えられるかというところだと思うんです」と加藤さんは指摘する。
審査員たちからは「とてもおいしかった」と好評価を得たが、
消費者にとっては、まだ誰も味わったことのないだろう、塩辛の味。
“塩辛”だけど、“りんご”の甘さが効いている。
これをどうデザインで表現すべきか。

3作品のうち、下記の2点は“りんご”と“塩辛”の特徴をそれぞれ顕著に表していた。

ひとつは、誰もが塩辛だと思えるような味わい深いパッケージで、
もう一方は特徴であるりんごの印象が強い可愛らしいデザイン。
ただこちらは塩辛というよりは、お菓子かな?と連想してしまうのも事実。
「それを解決するのは、ネーミングという場合もあります。
たとえば、“みちのくりんご塩辛”としてもいい」と話すのは梅原さん。
写真左の作品を指し、
「こちらに“りんご”というハンコを押したようなデザインだけでも伝わる。
いずれのデザインでも、まだ詰めるべき課題がありますね」と続けた。
さらに、実用化される場合、手作業が発生するのでは? 印刷方法は?
など具体的な意見が交わされ、再度決戦投票へ。
結果、僅差であったが、
上記の2点ではなく、パッケージ構造の精度の高さから、
別のデザインが優秀作品に選ばれた。

写真提供:JAGDA

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選ばれたポイントとは?

審査中に交わされた意見はどれも興味深いものばかりで、
大変勉強になったので、
私なりに選ばれたデザインのポイントを簡単にまとめてみた。
もちろん、実用化を視野に企業の希望に沿いながらの審査であるから、
優秀賞には、ひとつの視点だけでなく複合的な視点が含まれている。
デザインのポイントを、代表的な例の作品と合わせて紹介する。

① デザインの独自性やインパクト

これは全ての商品についていえることだが、
特に、宮城県の山徳平塚水産の「サバだしラーメン(サバ塩焼き付)」の
優秀作品は、アイデア溢れるパッケージ。
企業の要望で既存の販路から、お土産での販売を視野に入れていることもあり、
光沢ある青と銀色のグラデーションの袋は
キラキラしていて目をひくインパクトがあり、
さらに、いきのよいサバを思わせるシズル感もあると評価を得た。

写真提供:JAGDA

② 商品としての親しみやすさ

食品であれば、リピート商品となってほしいのが売り手の本音。
前述の独自性が必要とはいえ、そのなかにも
親しみが生まれなければならないから、デザインは難しい。
そして既存商品であれば、パッケージが変わっても、
顧客に親しまれるデザインでなければ。

コロカル商店でも取り扱いのある、宮城県の石渡商店。
地元、気仙沼名産のフカヒレを使った同社の歴史ある定番商品
「龍鳳ふかひれスープ」のリデザインを希望していた。
販売開始から、40年間変わっていなかった創業当初のパッケージ。
選ばれたのは、白と赤のシンプルな配色に、
鳳凰が描かれた、風格も遊び心も感じるパッケージ。
これまでの伝統を踏襲しながらも、
次の時代へと続いていくようなデザインだと、評価する声が多かった。

写真提供:JAGDA

岩手県の浅沼醤油店の「食楽(くら)ポン酢」も、
既存パッケージのリデザイン。
どのお店に行っても、地域食材を使ったポン酢はかなりの数がある。
そのなかで審査員のみなさんが高く評価したのは、
柚子を思わせる黄色に「食楽ぽん」と大きく銘打ったデザイン。
「くらポン」とひらがなにすると、
誰もが覚えやすく親しみやすいのでは? とみなさんから意見が出た。

「実はネーミングが、本質となりデザインのほとんどを占めることは多い。
ネーミングひとつが、企業を救うことだってあります。
相手に一度考えさせるような名称は、心に残るものになります」
と梅原さんは、商品名の重要性を話す。

写真提供:JAGDA

③ 販路や購入ターゲット

販売価格や販売場所、ターゲットを意識することは、
商品のデザインでは大きなポイントになる。
道の駅で売るものと百貨店で売るものでは、買い手の意識も変わるだろう。
この商品を誰に届けたいのか。作り手も意識したいポイントだ。

宮城県の東北とらやフーズは、
天然水と天然塩でつくられている、無着色のたらこのパッケージを希望。
価格帯は5000円〜7000円。
選ばれたのは、“たらこ”というと想定される“赤”、
ではなく天然水を思わせる“青”をキーカラーに、
重箱のように丁寧にセットされたパッケージ。
深い青色が、既存のたらこそのものを強調しすぎず、特別感、高級感もある。
価格帯からも、ギフトにも選びたくなるような上品なデザインだ。

写真提供:JAGDA

岩手県、ムカエあぐりらんどの「黄金甘藷」は、
濃密な味わいで知られる、曲田金時いもを天日干しで仕上げた干しいも。
干し芋というと素朴さが想像されるが、
今後百貨店流通を検討するという企業サイドの要望を踏まえ、
少し高級感をもたせながらもシンプルにデザインされた作品が選出された。
実際、応募作品には素朴さと高級感の二方向のデザインが見られたようだ。

写真提供:JAGDA

④ 商品の味わい&特徴とデザインのバランス

パッケージを見たときに、どれだけ商品の特徴が伝わるか。
とは言え、同じ商品を売り出す他メーカーとの差別化は重要。

肥料に国産米をまぜる試みによって、牛の味わいを追究したという、
福島県、石川地方農業振興協議会の「いしかわ牛ビーフシチュー」。
メーカーさんが選んだのは、やわらかく素朴なデザイン。

ビーフシチューを口にしたときの、
ほっこりした雰囲気が伝わってくるステキなデザインだが
一方でどこかで見たことのある印象があるのは否めない。
「手間ひまかけ、他にはない誠実なものづくりが伝わってくる味わいでした。
だからこそ、牧歌的な雰囲気のなかにもデザイン性をもたせて、
大手メーカーの商品との差別化を狙ってほしい」と梅原さん。
決戦投票の末、食欲をそそる赤が印象的に使われた
インパクトあるデザインが優秀作品に選ばれた。

写真提供:JAGDA

秋田県の岩城がつくる「夕日の恋物語」とネーミングされた、
トマトとプラムのワインゼリーのパッケージ。
商品の特徴は、材料となる地元産のトマト。
そして、商品名にもなっている「夕日」も特徴的。
半面はトマト、逆面から見ると夕日に見える可愛らしい作品が選ばれた。
「商品名もストーリー優先になっているが、
地元産の完熟トマトをもっと訴求しては?」との意見も。
確かに、そのほうが商品に込められた素材の味わいが
ストレートに伝わってくるかもしれない。

写真提供:JAGDA

山形県のグローバルアイの「枝豆ショコラ」は、
フリーズドライした、だだ茶豆をチョコレートでコーティングした商品。
価格は300円前後を想定しており、
パッケージもなるべくコストを下げたいというメーカーさんの希望。
決戦投票の結果、低価格帯だけれど、質の高いスイーツという、
コンセプトが明確に伝わるデザインが優秀賞に。
素朴さと上品さ、どちらも伝わってくる。
「包装素材の使い方がうまい」との評価も。

写真提供:JAGDA

⑤ 担当企業が、実用化できるものか

何度も書いているが、今回は実用化を視野に入れたコンペ。
これも、すべての商品に当てはまることではあるが、
なかでも、ボトルデザインではその視点に比重がおかれた。

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この公募で最も応募作品数の多かったのが、
青森県タムラファームの「スパークリング果汁りんご100%」。
同社の社長は当日繁忙期だったりんごの収穫後、東京の審査会に駆けつけた。
自分の手で育てたなかでも高品質のりんごを使った、果汁100%の炭酸ジュース。
水も砂糖も甘味料も入っていない、天然果汁の炭酸は、渾身の新商品だ。

りんご果汁をモチーフとした商品デザインは国内外で既にたくさんある。
技術面、コスト面を検討しながら、どう独自性を出せるか。
ビンにさまざまなラベルの貼り方をした作品が多かったが、
ラベルのシュリンク加工についてビンの全面を覆うと加工費が高く、
らせん状に巻いても手作業が必要となる。
飲料メーカーのデザインを多く手がけてきた加藤さんから、
貴重な意見が出される。
単価500〜600円で販売予定、となるとジュースにしては高価格帯。

最初の投票で選ばれた作品を見つめる審査員の方々。左から2番目がタムラファームの田村社長。

最終の決戦投票の結果、選ばれたのは、タムラファームの地元、
青森の伝統工芸である「こぎん刺し」をなぞらえた、
透明感あるラベルのデザインだった。
華がありながらも、クリアな味わいが伝わってくる。
「想定していたよりも、コストがかかりそうだ」と社長は苦笑したが、
審査に時間を要したこのボトルデザイン、
実は仙台の展示のアンケートでは大変人気が高かったようだ。

つくり手と消費者をつなぐデザイン

おおよそ5時間にわたる、おいしい東北パッケージデザイン展の審査会。
消費者に届けるためのデザインのポイントは、いくつもあった。

参加企業からは、
「別のデザインが個人的には一番いいと思ったのだけどな(苦笑)」
という率直な意見から、
「さまざまな視点で見ることができた。自社の商品だけでなく、
選定されるところに同席できたのがとてもよかった。
デザインの力を改めて考える機会になった」という意見が出された。

「デザインがよければ、より大きな力となって伝わっていく。
お客さんとよいコミュニケーションをしながら、
売れていくことが、一番よいかたちだと思うんです。
時代にあった、コミュニケーションの方法をどうつくりだすか。
雑多にある情報のなかで、まずは自分の商品情報を整理していくことは大切。
企業の考えが決まっていれば、デザイナーの仕事は早いんです」と、
梅原さんが後の講評で話していた。

「私たちも自分たちが本質を掴めるまで、徹底的に話しこみます。
まずは、ここをスタートにたくさんのコミュニケーションを重ねることが大切。
そうすることで、一段も二段も大きな飛躍があると思います」
と左合さんも話す。

その本質をどこに設定するか。企業も考えなければならない。
デザインとともに、食品は味わいが本質のひとつになる。
とくに近年は、良質な素材を使った食品へ注目が集まる傾向にもあるので、
「なるべく添加物を使わない食品づくりにも挑戦してほしい」
という意見もあった。

ただ、加藤さんからはこんな講評も。
「改めて東北は、本当に丁寧なものづくりだと頭が下がります。
今回の商品もどれもおいしく、素晴らしかった。
これは他の地域の方からもよく話されることです。
東北の方々は、誠実に商品と向き合う。だからこそ、
デザインがよりよいかたちで力になれるのではと思います」

実直な生産者のみなさんが、手間ひまかけてつくった自信作が、
より多くの方へと伝わるデザインになるよう今後に期待が募る。

「東北は、被災地、被災地と言われるけれど、
東北の潜在的な力を発揮していきたいと思う」
と、最後に八葉水産の社長は心強い感想を話していた。

実用化に向けては、まだまだ多くの課題が残っているが、
コミュニケーションが重ねられていくきっかけとなったに違いない。
東北パッケージデザインの新たな挑戦はいま、始まったところ。
そんなきっかけをくれた素晴らしい応募作品の展示へも、
ぜひ足を運んでみてください!

※この商品のなかで、八葉水産のみちのく塩辛は近日発売予定!
http://www.hachiyousuisan.jp/
タムラファームのりんご炭酸も、「apprimo(アプリモ)として発売が決まったそうです。

information


map

おいしい東北 パッケージデザイン展 in Tokyo 

住所:東京都港区赤坂9-7-1ミッドタウンタワー5F

TEL:03-6743-3776

2015年3月6日(金)〜29日(日)
開館時間 11:00〜19:00 会期中無休
※入場無料
http://designhub.jp/exhibitions/1441/

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