連載
posted:2015.4.6 from:静岡県浜松市 genre:活性化と創生 / アート・デザイン・建築
〈 この連載・企画は… 〉
地方都市には数多く、使われなくなった家や店があって、
そうした建物をカスタマイズして、なにかを始める人々がいます。
日本各地から、物件を手がけたその人自身が綴る、リノベーションの可能性。
writer's profile
403architecture [dajiba]
2011年に彌田徹、辻琢磨、橋本健史によって設立された建築設計事務所。静岡県浜松市を拠点に活動している。2014年に第30回吉岡賞受賞。
彌田徹(やだ・とおる)1985年大分県生まれ。2011年筑波大学大学院芸術専攻貝島研究室修了。
辻琢磨(つじ・たくま)1986年静岡県生まれ。2010年横浜国立大学大学院建築都市スクールY-GSA修了。現在、大阪市立大学非常勤講師。
橋本健史(はしもと・たけし)1984年兵庫県生まれ。2010年横浜国立大学大学院建築都市スクールY-GSA修了。現在、名城大学非常勤講師。
credit
メイン写真:kentahasegawa
403architecture [dajiba]は、今から4年ほど前に
彌田徹、辻琢磨、そしてわたくし橋本健史によって設立されました。
静岡県の浜松市を拠点に活動をしています。
事務所から徒歩圏内にプロジェクトが集中しているなど、
ちょっと一般的な建築設計事務所とは違った仕事の仕方をしています。
この連載のテーマにもなっている「リノベ」の仕事も多い傾向にありますが、
ただ、手法としての「リノベ」を重視しているというよりは、
もう少し根本的な問題として、建築をつくるときの、
都市への関わり方について模索している、というのが率直な認識です。
そこで、僕らの仕事をより具体的に説明するために、
今回の連載企画では、クライアントである浜松のまちのみなさんへの
連続インタビューを行っていきたいと思っています。
そこから、パートナーとしての関わりを超えて、
僕らが浜松という都市そのものとどのように関わっているのかを
お伝えすることができればと思っています。
第1回目のインタビュイーは、浜松市の中心街で
美容室「enn」を営む、林 久展さんです。
ennは、浜松駅からほど近い、古いビルの1室にあり、
夫婦ふたりで営まれています。
林さんは403architecture [dajiba]として正式に活動を始める前から、
僕らをご存知で、最初のふたつのプロジェクトのクライアントです。
今回のインタビューでは、
普段と同じように(途中から)髪をカットしてもらいながら、お話をお聞きしました。
橋本
今回は第1回目なので、
「そもそもどんなかたちで僕らが浜松にやってきたか」
というところから振り返っていきます。
思い返してみると、初めてお会いしたのはお店の隣の空き室で、
ワークショップをやった時でしたよね?
2010年、僕らはまだ大学院を修了したばかりの頃でした。
このビルのある通りに増えていた空きテナントをいくつかお借りして、
地元の静岡文化芸術大学(以下、文芸大)の学生のみなさんに、
なんらかのインスタレーションを制作してもらう、
というワークショップを運営した時です。覚えてます?
林
覚えてる覚えてる。
橋本
それまで、文芸大の学生との接点はありましたか?
林
あったよ。naruっ子(クライアントでもある「naru蕎麦」のバイトの総称。
次回店主にインタビュー予定)とか。
あと、今30歳くらいになる子たちとは面識あって、
このビルの屋上で小屋みたいなのつくってたな。
接点と言ってもピンポイントだけどね。
文芸大も当時は、今みたいな子たちじゃなくて、
僕の知ってる子たちはもうちょっとこう、ガテン系っていうか。
橋本
ガテン系?
林
「あれつくろう」というノリでやってる。
でも今の子たちはもうちょっと理論というか、
頭で考えてるような気がする。
橋本
学生の雰囲気や印象って、変わってきたと感じます?
林
それはあるね。でも、なんか世の中が、全体的になのかな。
建築は前から、そんな感じなのかもしれないけど。
橋本
いやー、建築も同じかもしれないですね。
最近はあんまり手で考える、みたいな人は少ないような気がします。
それよりは、もうちょっと社会貢献というか。このあいだ、久しぶりに
学生の卒業設計をまとめて見る機会があったんですけど、
災害対策とか高齢化とか、
あるいは廃施設の再利用というようなテーマを扱ったものが、ほとんどでした。
林
そうだよねえ。これつくりたいから、これつくる、みたいなのないよね。
橋本
あんまりそういう人はいないですね。文芸大の子が、というよりは、
日本全体の傾向なのかもしれません。あのワークショップのときは、
2010年で、いまほどそういった気運もなかったと思います。
でもそのときのシンポジウムには、
山崎亮さんが登壇されていたりしたんですけどね。
いずれにしても、林さんは僕らが「建築」の奴らだということは、
ご存知だったと思うんです。
空き室を使ったインスタレーションのサポートをしていることについて、
何か疑問などはありませんでしたか?
変な奴らが来た、的な。
林
うーん。わかんないけど。今までにはない流れを持ってるな、
とは思ったかなぁ。
この界隈で生活をしている僕は、ライブや写真展とか、
なんとなく自分が興味があるもので人と関わってきたけど、
「建築」をベースに新しく人と関わるということはなかったから。
建築=建物を建てる、という感覚だったし、
少なからず学生が集まってくるのを見たとき、自分にはない感覚だった。
橋本
建物を建てるわけでもないのに「建築」の子って集まるんだ、みたいな?
確かに、よく集まってくれましたよね。ちょっと前まで学生だった、
何者でもない奴らがぞろぞろやってきて、
「空き店舗に何かつくりませんか?」って言ってても、あやしさ満点ですし。
それでも、僕らもそうだし文芸大の学生にとっても
まず、浜松のことをちゃんと知る機会にしたかったというのはあります。
最初からインスタレーションをつくることありきだった訳でもなくて、
空きスペースのリサーチをやってみてから、いくつかの店舗スペースを
お借りできそうだったので、それなら学生主体で何か所か同時にやったほうが
インパクトもあるだろうと思っていました。
林
あと、建築の人との関わりっていうと、かっちゃんとかね。
橋本
かっちゃん?
林
家成さん(家成俊勝さん。大阪の設計事務所dot architects共同主宰)。
橋本
ああー! それはいつ頃の話で、どういうかたちで知り合ったんですか?
林
ここ(美容室ennの内装)をつくったとき。
当時、翼(大東翼さん。元dot architects共同主宰。
浜松にて「株式会社大と小とレフ」設立)
と家成さんがやっていた仕事の廃材が、ここの床の材料になりそうだったから、
家成さんの家、神戸まで取りに行ったんだよね。13年前になるかな。
橋本
ここの床の材料は神戸から来たんですね!
13年前なら、僕も明石にいた頃です。そんなところでニアミスしているとは。
そう考えると、この床もずいぶんと歴史があるんですねー。
※ここで、突然マシュー(マシュー・ライアンさん。先日完成したばかりの
ゲストルームのクライアント。第4回目にインタビュー予定)がやってくる。
マシュー
ハーイ。ハッピーパディス!
橋本
パディ?
マシュー
ハッピー・パディス! 知らない?
セイント・パトリックス・デイ(聖パトリックの祝日。この日は3月17日。
アイルランドにキリスト教を広めた聖パトリックの命日)。
アイルランドの、飲み会の日。
グリーン着てる?(たまたま筆者は深緑のシャツを着ていたので)
ハシはセーフだね。
アメリカでは、今日グリーンをつけてないと、つねられるよ。
橋本
へえー。
※マシューはドイツの編集者と林さんを取り次いでいるらしく、
諸所相談しにきた。その間しばし待機。
マシュー
邪魔してごめんね! 今日は何してんの?
橋本
林さんにインタビューしてる。
僕らが関わったクライアントに話を聞く企画で、
マシューのとこにもそのうち行くよ。そんときはよろしくお願いしまーす。
月イチの企画だから、数か月後になるけど。
マシュー
待ってマス。
※マシュー帰る。以後はカットをしてもらいながらのインタビュー。
林
じゃーそろそろ切るか。
橋本
そうですね。お願いします。
Page 2
橋本
えーっと、それでは話を戻しまして、
そのワークショップを通していろいろなつながりが浜松にできたんです。
仕事もありそうだということで、
思い切って浜松を拠点に仕事を始めてみようということになったわけですが。
実際に浜松にやってきたのが3.11のすぐ後の2011年の4月です。
それで、最初のクライアントが林さんです。
記念すべき、「渥美の床」のプロジェクトですね。
そもそも、なんであの古いマンションに引っ越そうと思ったんですか?
「渥美の床」
築40年を超える「渥美マンション」の1室のプロジェクト。
天井の下地である野縁材を細かく切って敷き詰めて、床をつくった。
もともとは4畳半の和室だったが、寝室としてベッドを設置するため、
床の仕様を変更することが求められた。
403architecture [dajiba]の事務所も同マンションにある。
林
犬を飼えるところを探してて、
不動産情報だとペット可とかは結構あるんだけど、だいたい小型犬なんだよね。
橋本
ああー(林さんの犬はポインター)。
林
全然ペットOKじゃない。それで、うちの犬も飼える物件は、
渥美マンションの前にも良さそうなところがあって、本当はそっちにほぼ決まってた。
そこは風呂がボロボロだったから、さっそく浴槽を買ってたんだけど、
急にダメになっちゃって。
橋本
確かに! 最初、廊下に風呂が置いてありましたね。
それで、渥美マンションにたどり着くわけですね。
家より先に風呂を持ってたという(笑)。
基本、自分でリノベーションされてますよね?
キッチンの移設もされてましたけど、
あれは内装をいじりだしたらアイデアが出てきて、そうなっちゃった感じですか?
わりとハードルが高めの風呂とキッチンを、
もちろん接続とかはプロにやってもらったと思うんですけど、
美容師の人が普通にゴリゴリいじってるのを見て、
僕としては浜松すげえなって、衝撃的でしたけどね。
林
キッチン、あそこはないなって(狭いので)。
橋本
僕らの事務所のキッチンはそのままですけどね(もともとの間取りは同じ)。
林
ダジバはまぁ、事務所がメインだから。
僕らは生活がメインだったから、あのキッチンだと楽しくなさそうだった。
橋本
キッチンや風呂をご自分でリノベできるのに、
なぜ寝室だけ僕らに依頼してくれたんですか?
和室なんだけど、ベッドを置きたいから床を中心になんとかしてほしい、
という感じで依頼されたように記憶しています。
林
多分、自分の手がまわらなかったから……。
林
(笑)。
林
リビングだけでもほとんどゆうこちゃん(奥さん)に
任せっきりみたいな感じになっちゃってたし、これは無理だなと。
橋本
それにしたって、あの頃僕らは素人同然というか、
実際素人だったじゃないですか。契約も何もないし、
ちゃんと案を説明できていなかったと思うんですよ。
図面も模型もあるわけでもないし。
林
いや、でもラフスケッチは描いてくれたよ。
橋本
そうでしたっけ? スケッチ……。
林
メモ程度の……(笑)。
橋本
工具も僕らは何も持っていなかったんで、
何から何まで林さんに借りて、使い方も全部教えてもらいましたよね。
しかも、四畳半の床を1〜2週間かけて延々とつくっている。
どんだけかけるんだとか思いませんでした?
でき上がったものを見て、どう感じられました?
林
思いのほか、想像していた以上のもの、というとなんか違うなあ。
いや、よかったんだけど。
すごくきれいにつくってくれてありがとう! という感じではなくて、
いいんだけど、何この凸凹感? みたいな。童貞を捨てたときと同じ感じ?
橋本
どういうことですか(笑)?
林
初めての、何だこの感覚!?
頭で考えてることじゃなくて、床を踏んでみて、
足の裏の感覚でようやくわかってくる感じが、なんかよかった。
体でよかったと思える感じ。
橋本
初体験ですものね。実際、あれが僕たちの処女作ですし。
それで、その後僕らも渥美マンションに事務所を構えるということになって、
林さんがほかへ引っ越しされるまでは、同じ建物のご近所さんでしたね。
僕らのほうは1年間以上、事務所の改修が進まず。
何回も林さんから、いつやるの? 的なことを聞かれていた覚えがあるんですが。
林
それは常々思ってたねえ! じれったくなっちゃって。
DIYって僕もやるんだけど、現場合わせのことが多いはずなのに、
図面ひくのに、そんなに時間かからないんじゃない? と。
素人からすると、何をそんなにやってんの?
というか、そーんなに忙しいかなぁって。
橋本
なかなか、自分たちのところまで手が回らなかったんですね。
わからないことしかなかったので、
やたらと効率が悪かったというのもあると思うんですけど。
林
でもねぇ、最近やっと設計の大事さがわかってきた。
橋本
設計の大切さがわかったとは、また何でですか?
林
今、屋上にEEの龍ちゃん
(僕らのクライアントの松尾龍一さん。後にインタビュー予定)が
スケボーのランページ※をつくっていて。
(※スケートボードの競技にも使われる曲面ステージ台のようなもの)
かたちは決まっているものなんだけど、材料も作業も無駄にしたくないから、
初めてちゃんと考えてつくってみようと。
支えるポイント、組み立てる順番を細かく考え始めたら、
これはちゃんと設計しないと、ってことに気づいた。
設計って大変なんだ、って龍ちゃんとふたりで。
なんかあいつら設計、なかなかやってこないと思ってたけど、
これ、1か所変えるだけで8割くらい変わっちゃうよね、
ということがわかった。
橋本
それなんですよ! なんか延々とやってるんだけど、
どんどん変わっていって、一向に進まなかったりするんですよね。
Page 3
「三展の格子」
美容室ennのスッタフ休憩スペース。木造のロフトを解体して、
それらを組み替えて使用している。昼寝と食事の両方を快適に行うことが求められた。
床だった材料によって二重のルーバーをつくり、
風は抜けるが視線は抜けないようになっている。
橋本
続いて、その後わずか1か月後に依頼してもらった
「三展の格子」についてです。
あれは浜松で僕らの2番めのプロジェクトなんですよ。
林
光栄ですねぇ。
橋本
いやぁ、ほんとにありがたい話です。
あのときは、「床」に比べればちょっとはマシな感じというか、
模型とか図面とかは結構いろいろお見せしましたよね。
林
1か月しか経っていないのに、なんか急に建築家っぽい感じできたよねぇ。
橋本
えっ、いや、そんな感じはしてなかったですよね?
林
うん(笑)。
橋本
屋上にあったロフトの材料を使う、というのはありきで
いろいろ案を出したんですよね、確か。
解体して、部材を全部測量して、材料の状態の模型をつくって、
それの組み合わせ方をスタディしましたから。
林
レゴブロックみたいな。
橋本
そうですそうです。切ったり貼ったりして、何ができるかを考えました。
それって、建築のつくり方としてはイレギュラーというか、
普通は設計が先にあって、それをつくるためには
何がどれだけ必要になるかというのを積算して、
その分だけ材料を発注して、組み立てるわけですけど、
あの時は使うものをかなり限定した状態で設計したんです。
僕としてはそういうやり方で進めていることに、
とても新鮮さを感じていたんですけど。
林さんはそれほど特殊なことだとは思ってなかったですよね?
林
そーっすねぇー。けどそれをわざわざ模型でつくるのは……
まぁあんまり模型が身近じゃないから。
橋本
確かに。実際に自分たちで解体した材料を、縮小して模型をつくったので、
やっぱり模型だと、つくるの簡単なんだなーとか素朴に思いました。
単純に小さくて軽いですから。
その後、模型でやった作業をそのまんま原寸でもやるために、
立体駐車場に持っていって、
材料をだーっと広げて切った貼ったをやってたじゃないですか。
あのあたりも、僕としては駐車場を工房に読み換えて使うことについて、
都市でつくるってこういうことかぁ!
と、テンションも上がっていたんですよ。
林
もっとそういう作業ができる場所があれば、
もっと快適にいろんな仕事ができるんじゃないのかなって。
シェアできる工房のようなものが、
この辺にあれば、すげぇいいのになとは思ったかな。
橋本
本当、そうなんですよね。いやーまったく。
それではですね、振り返る系はこれくらいにして、
林さんにぜひ聞いてみたいことがいくつかありまして。
林さんは結構自分でつくったり、
そこの本棚も跳び箱をフレームにしてスケボーの脚が付いていたりしますが、
壊してつくる、みたいなことを、何でやってるんですか?
林
なんでって(笑)。
橋本
うーん、ものをなんやかんやいろいろ持ってるじゃないですか。
工具もそうだし、何に使うかわからないというか……。
林
はっきり言えよーガラクタばっかり持ってやがってって!
橋本
違いますよ! 昔からそうなんですか?
おもちゃも、どこかで買ってきたものとかよりも、
自分でつくるほうが楽しい派というか。そんな感じでした?
林
そうなんですよ。
橋本
生まれもってなんですね。お父さんがそう?
林
いや、じいちゃんがそんな感じで。
昔は、ゴミの分別が細かくなかったでしょ?
だから、ゴミ捨て場に捨ててあった自転車とかを、
持って帰ってきて、直して、連れのじいさんにお前これ乗っとけっつって。
橋本
直して、あげちゃうんですね。
林
そんなことしてると、ばあちゃんが、まった余計なことを……って。
橋本
ばあちゃんは、何やってんの? となりますよね(笑)。
林
当時のおじいさんはそういう人が多かったって勝手に思ってんだけど。
ものをつくるのが、小さい頃からやっぱり好きだった。
タミヤ(プラモデルなどを販売するメーカー)から出てたキットのなかに、
掃除機のルンバの原型みたいなやつもあったしね。
橋本
マジすか。最新鋭じゃないですか。
林
でしょ? そういうキットがいろいろ出てたんすよ、当時。
橋本
ennのこの雰囲気は、既製品を買ってきて置くだけではつくれないというか、
林さんの手が入っているからこそ、できているものですよね。
林
うーん……。「なんちゃって」が好きなんすね。
何かつくるときに、それまでこの世になかったものをつくるっていうよりは、
本棚みたいに、あるもの。
それをちょっと、こんなふうにしたらいいんじゃないか、みたいに。
橋本
それを「なんちゃって」と言いますか(笑)。
林
もともと、もっと大きい本棚があったんだけど、邪魔だなぁって。
あんまり大きいと、どうでもいい本とかも置いちゃうから、
小さくしたいなと思ってたら、そういえば跳び箱がある、と。
橋本
そういえばって、そんなに跳び箱はあるものじゃないですけどねぇ。
そういう、もののつくり方とか、僕らも影響を受けていると思うんですよ。
あんまり特殊な仕様の建材というよりは、
その場に余っている材料をうまく使って、
まぁ普通のものっちゃ普通のものをつくるというか。
ここの「三展の格子」もプロジェクト名をつけているけど、
要は、休憩室の仕切りでしかないといえばそうだし。
学んできたことや経験、年齢も違いますけど、
わりとストレートに影響を受けてますね、林さんから。
林
恐れ多いっすよ(笑)。
橋本
いやいや。ほんとに。
仕事と遊び、公私にわたって
林さんには大変お世話になっているわけなんですが、
生活すること全体が、あんまり明確に仕事と暮らしが分かれてないじゃないですか。
それは、あえてそういうライフスタイルを実践されているんですか?
林
わかりません(笑)。性格、かねぇ。
橋本
僕らも、あんまり仕事とプライベートみたいなものが、
しっかり分かれていないじゃないですか。
もちろん、仕事のクライアントとして知り合う人もいるんですが、
設計者とクライアントとしてだけの関係ではないことが多いんですよ。
浜松で仕事を始めて、だんだんその仲間に混ぜてもらったというか、
仲間というほど閉じた集団があるわけでもないと思うんですけど、
ネットワークというか、役割が固定されていない関係の中で
仕事が生まれてくるような状況が、非常に僕らには合ってたと思ってるんです。
その中でも林さんは、特に重要な役割を担っているというか。
そんな状況を促すように、いろいろな人と関わられているように思うんですが、
勝手にそうなってるわけではないですよね?
林
そんなに、いろいろな人と積極的に関わってるわけじゃないよ。
すごく持ち上げてくれているけど、
結局は自分が好きな人にしか、好きな人を紹介しないというか。
そうしているだけなんすよね。たぶん。
だから、興味がないところには行かないし。
たまたまいい人が近くにいたから、
どうにか生きていけてるっていう感じだと思う。
※そうこうしている間に、カット終了!
橋本
ありがとうございます! それで、最後にもうひとつ質問があって、
まちなか、中心市街地ですね、
ここで店を続けている理由を、教えてください。
林
理由……。紆余曲折あって、いろいろ考えはしたけど、
結局ここでやってるね。住居件店舗を建てようかなと、
中古物件をリフォームしようかなとも考えた時期もあったけど、
借金したくないなと思って。
借金のリスクの怖さを、特に3.11以後は感じるんだよね。
あとは、考えてここにいるってわけでもないんだけど、結果的に居心地がいい。
やっぱりまちなかに来る人って限られてるじゃないですか。
それなりに期待を持って来ている気がするというか、
郊外のショッピングモールを手放しでは喜んでいない人たちが来る気がしてて。
そういう人たちのほうが価値観を共有しやすいかなぁ。
僕も来てくれるお客さんを自然と選ぶことになるじゃない。
それは僕も仕事がやりやすいし、
ランダムにオールジャンル来られても対応できないし。
橋本
確かにロードサイドにどーんと駐車場付ければ、誰でも来ちゃいますからね。
林
やっぱり仲の良い人が近くにいて、人を紹介されるし、自分も紹介もするし。
あとは、北海道から来てくれたりする人もいたりもするんだけど、
やっぱり美容室って、近所にあってなんぼだと思うんだよね。
行きやすいところにあるのがいい。
だから、近所で商売している人とか、ダジバも近くに住んでいるみたいに、
そういう人たちが来てくれてる間は、
その人たちの都合がいいところでやらせてもらえれば、
こっちも助かるねって感じすかねぇ。
順番としては、たまたまここでやってたら、たまたまここでいい人たちと会えて、
結果居心地がいいからここにいるっていう。
橋本
なるほど。
林
なんかよさそうだからここに来てやってるというよりは、
ラッキーだったなって。
橋本
それはまさに僕の実感ですよ。
林
そうやってお互いに思って、ずっとやってければいいよねぇ。
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