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中古の海上輸送用コンテナの
リノベーションで、
市民の憩いの場をつくる。
WORKVISIONS vol.4

リノベのススメ
vol.076

posted:2015.6.19  from:佐賀県佐賀市  genre:活性化と創生 / アート・デザイン・建築

〈 この連載・企画は… 〉  地方都市には数多く、使われなくなった家や店があって、
そうした建物をカスタマイズして、なにかを始める人々がいます。
日本各地から、物件を手がけたその人自身が綴る、リノベーションの可能性。

writer profile

Hiroshi Nishimura
西村 浩

1967年佐賀県生まれ。建築家。東京大学工学部土木工学科卒業、同大学大学院工学系研究科修士課程修了後、設計事務所勤務を経て1999年にワークヴィジョンズ設立、代表取締役を務める。大分都心南北軸構想、佐賀市街なか再生計画、函館市中心市街地トータルデザイン、岩見沢複合駅舎、佐賀「わいわい!!コンテナ」など、常に「まち」を視野にいれ、建築・土木・まちづくりなど分野を超えたものづくりに取り組む。マチノシゴトバCOTOCO215 代表、株式会社リノベリング 取締役、東京藝術大学美術学部デザイン科非常勤講師を務める。
http://www.workvisions.co.jp/

WORKVISIONS vol.4

みなさん、こんにちは! ワークヴィジョンズの西村浩です。
vol.1vol.2vol.3に引き続き、
僕の故郷佐賀のまちづくりについてお話したいと思います。
前回は、佐賀市のまちなかの空き地に芝生を張って原っぱをつくり、
元気のない地方都市の新陳代謝を活発化して、
人の活動を呼び起こすいい循環に繋げるという、
「空き地のリノベーション」についてでしたが、
今回は、芝生の原っぱづくりと一緒に実践してきた、
「わいわい!!コンテナプロジェクト」についてです。

とりあえずやってみるという新たな都市計画手法

このプロジェクトは、
「まちにどういうコンテンツがあれば、
なかなか元気のないまちなかに市民が足を運んでくれるか」
ということを検証するための“社会実験”として始まりました。
まちなかに増え続ける空き地のひとつを借地して、
そこに芝生を張って原っぱをつくり、木製のデッキでテラスをつくりました。
さらに、中古の海上輸送用コンテナをリノベーションした建築を設置して、
そこを雑誌図書館にしてみることから始めました。
場所は佐賀市内の商業地のど真ん中。昔は人で溢れていた商店街ですが、
今は、夜の飲屋街になっていて、昼間にはほとんど人の姿が見えないような場所です。
利用料は無料です。
そして、あくまでも実験ですから、
とりあえず1年間限定のプロジェクトのはずでした。

そもそも、なぜ実験なのか?
それは、まちなか再生に効果的な方法が何なのか、
誰にも確信が持てないからなのです。
一般市民の方々は当然のこと、建築や都市計画といった専門家でさえも、
今の疲弊し続ける地方都市を救えるような特効薬を知らないのです。
なぜなら、20世紀には右肩上がりに増え続けてきた人口が、
2005年をピークに急激な減少局面に入りましたが、
これまでに人口減少局面の社会を経験したことがある人間は、
今の子どもたち以外に、この日本中にひとりもいないからです。
もちろん、20世紀にもまちづくりや
地域活性化のプログラムは実践されてきましたが、
あくまでも人口が増えている時代の出来事であって、
価値観が大きく変わったこの現代に、
その時代に編み出されたまちづくりや都市計画の手法をトレースしても、
効果が出ないことは明らかです。
人口やそれに伴う経済規模が縮退する時代に生きた人がいないわけですから、
すべての人々にとって未知の世界であり、だからこそ「やってみる」という
チャレンジが必要な時代が到来していると思っています。

ただし、あくまでも実験であり、成功も失敗もあるわけですから、
大きなリスクを負ってのチャレンジは、当然やめたほうがいい。
20世紀に編み出された「再開発」とか「巨大な公共施設」なんかは、
右肩上がりの時代には成功事例もあったかもしれませんが、
今は、ただの大きなリスク。
だからこそ、小さなチャレンジをたくさん繰り返して、
軌道修正しながら道筋を探す手法こそが、
これからの新しい都市計画手法だと思うのです。
佐賀市のまちなかで実践している「わいわい!!コンテナプロジェクト」は、
まさに、21世紀の都市計画に相応しい、
最先端の小さな小さなチャレンジなんです。

ぼろぼろの中古コンテナが見違えるような空間に

さて、このプロジェクトで使用したコンテナは、
神戸で購入し輸送してきた中古品です。
中古コンテナ自体の価格は、輸送費は別途かかりますが、驚くほど安価です。
佐賀では、20ftと40ftのコンテナを使用しました。
中古なので、サビが出てたり、鉄板がボコボコにへこんでいたり、
外装の鉄板には海上輸送会社のロゴやコンテナの製造情報が
表面に記載されていたりしていますが、そういったコンテナの履歴が、
逆になかなかのいい雰囲気をつくりだしてくれるように思います。
まさに、一般の建築同様に、
古さと新しさを重ね合わせることがリノベーションの醍醐味だと思います。

郊外の作業場に並べられた中古コンテナ。

ここからは、この中古コンテナを利用目的にあった、
空間に仕立てていくプロセスについて紹介します。
まずは、現地ではなく、郊外にある広い作業場に中古コンテナを搬入し、
そこでサッシを取り付けるための開口部や、
コンテナを連結する部分の処理など、
コンテナ自体の加工を事前に行います。
鉄板部分の切断や溶接による工事音はかなり響くので、
この騒音に対する配慮が必要なことと、
敷地が狭いと複数のコンテナの切り回しが難しいことなどから、
今回のわいわい!!コンテナプロジェクトの敷地のように
中心市街地のど真ん中のような場合には、
別の広い敷地で基本的な加工を済ませてから、
敷地に搬入して据え付けることをおすすめします。

とはいえ、僕自身もコンテナを扱うのは初めての経験で、
まさにやってみないとわからないことだらけでした(笑)。
ですから、ひと言にコンテナといっても
製造メーカーによって微妙にディテールが違うことが納品後に発覚したりして、
違うディテールのコンテナを連結するのに、結構苦労したりしました。
購入時に、できるだけ同じディテールのコンテナを選定することが
大事なポイントだと学びました。

加工中の中古コンテナ。

サッシ取り付けのために開口部の穴あけなどの基本的なコンテナの加工が終わると、
コンテナをまちなかの設置現地へトレーラーで搬入して、定位置に据え付けます。
後は、通常の建築と同様の手順で、サッシの取り付けや仕上げを行い、
コンテナ建築の完成です。

現地に設置された仕上げ前の中古コンテナ。

佐賀では、仕上げが終わっていないボコボコにへこんだ中古コンテナが
設置場所に搬入された姿を見た市民の方々から、
「こんなぼろぼろのコンテナでほんとに大丈夫?」
と心配の声をたくさんいただきました。

しかし、内外の塗装をして、木製の家具の搬入が終わって完成した際には、
「いやー、中古のコンテナでもこんなにいい空間になるんだー!」
とうれしい悲鳴をいただく結果となりました。

中古コンテナのリノベーションで、完成したわいわい!!コンテナ1。300種類の雑誌と絵本、漫画を自由に読める雑誌図書館として2011年6月にオープン。ここは2012年1月末までの実施しでしたが、現在も別敷地にて「わいわい!!コンテナ2」が継続中。

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リノベーションって、ビフォーとアフターのギャップが大きいほど、
その価値が高まるわけで、建物(この場合はコンテナ)の履歴を残しつつ、
そこに新しい価値を重ね合わせることで、
その建物の時間的な奥行きを大切に受け継いでいくところが
リノベーションの醍醐味だと思っています。

2012年6月にオープンした、佐賀市のまちなかで2か所目となる「わいわい!!コンテナ2」。分棟型として、「雑誌図書館」に加えて、子どもたちからお年寄りまでが活発に自由に活動ができる「コミュニティコンテナ」、「チャレンジショップ」、「トイレ・倉庫」の4つのコンテナで構成される。

自由のある空間には自然に人が集まる

2011年から始まった佐賀市のわいわい!!コンテナプロジェクトは、
これまで場所を変えて佐賀市のまちなかの2か所で実施してきました。
今回の冒頭でお話したように、
このプロジェクトは、あくまでも社会実験ですから、
本来は1年限りの予定でした。
しかし、今年で既に5年目を迎えているのです。
その理由は、市民の方々からの高い人気にあります。
実験なので、当初から訪れる方々にアンケートをお願いしていました。
「わいわい!!コンテナのような場所は、まちなかに必要だと思いますか?」
という質問を設けたところ、
なんと1年目から9割を大幅に越える人々が「必要」との回答!
その後年々利用者が増加して、最近では
「狭いので広げてほしい」という感想もたくさんいただくようになりました。
まぁ、実験ですから、確かに広くはないですけどね(笑)。

第1弾のわいわい!!コンテナ1は、約300種類の世界中の雑誌と絵本、
そして漫画を並べた雑誌図書館として始めました。
佐賀のまちなかには、昔は大きな本屋さんもあったのですが、
今は規模も小さくなってしまっていて、
日常的に立ち寄りたくなるような魅力はもうそこにはありません。
ですから、この社会実験を始める時から、
直感的に雑誌が並ぶ本屋のような場所には、
きっと市民の方々が集まってくれるだろうなぁとは思っていました。
だから、子どもからお年寄りまでが集まってくれるようなコンセプトのもと、
多様なジャンルの雑誌をセレクト。その結果幅広い世代が集まり、
さまざまなコミュニケーションが生まれる場所になりました。

たくさんの雑誌が並ぶわいわい!!コンテナ1の様子。

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そして、場所を変えての2012年6月に始まった、
第2弾、わいわい!!コンテナ2では、分棟型としました。
静かに雑誌を読む図書館に加えて、
別棟で、サークル活動やおしゃべりなど
活発な活動に使える「コミュニティコンテナ」や、
お試しでお店が開ける「チャレンジコンテナ」など、
多様な活動のバリエーションを想定して、コンテナの配置を考えました。
このわいわい!!コンテナ2での市民の方々の反応は、想定以上でした。
特に、コミュニティコンテナでは、積み木で遊ぶ子どもたちで賑わい、
小さな子どもたちをつれたお母さんたちのおしゃべりの場となり、
さらには、ご年配の方々がコーラスサークルを始めたりと、
全く思ってもいなかったような活動が、勝手に次々と生まれ続けています。

わいわい!!コンテナ2で生まれるさまざまなアクティビティ。

ここには、自由と気楽な雰囲気があるのです。
わいわい!!コンテナでは、特に利用ついての細かいルールは決めていないので、
訪れる方々が発想豊かにこの場所を使っていくことができるのです。
また、いたるところがボコボコにへこんでいたりする中古コンテナの素材感が、
汚そうがものをぶつけようが、
少々手荒に扱っても何の問題もないような気楽さを醸し出しているので、
おそらく子どもたちやお母さんたちも、
安心して時間を過ごせるんじゃないかと思っています。
自分たちが自分たち好みにカスタマイズしていける空間やまちこそが、
人が集まる動機をつくることが、この社会実験で少しずつわかってきました。

さて、今回は、まちなかに人が集まる場づくりとして始めた、
わいわい!!コンテナプロジェクトについてお話ししてきましたが、
これをきっかけに、劇的に佐賀のまちなかの様子がかわっていきました。
少しずつ積み上げてきた小さな小さなアクションが、
なかなか元気のないまちなかの活性化にどのようにつながっていったのか?
次回は、「人が集まるところに市が立つ」という原点に立ち返る、
まちづくりの話をしたいと思います。
続きを乞うご期待!またお会いしましょう。

information


map

佐賀「わいわい!!コンテナ2」プロジェクト

住所:佐賀市呉服元町2番地内(旧佐賀銀行呉服元町支店前)

TEL:0952-22-7340(NPO法人まちづくり機構 ユマニテさが)

営業時間:11:00~19:00 

定休日:年中無休※年末年始を除く

http://www.waiwai-saga.jp/

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