みなさま、こんにちは。ルーヴィスの福井です。
今回は〈途中の家〉と名付けた、
現在も進行中のプロジェクトについて
施主のメッセージも交えながら紹介します。
このプロジェクトが始まったのは、2012年の夏頃だと記憶しています。
ある日、まだ20代だった高田陽介さん、尚子さんご夫婦が事務所に相談に来ました。
「RC地下1階地上3階建の事務所ビルを買ったのでリノベーションしたい」
いつもの相談と少し違ったのは
「自分たちでできる限りDIYしながらやりたいので、
できない部分をお願いしたい」ということでした。
その頃、“塗装は自分たちでやりたい!”というクライアントも増えていた時期。
ただ、日常の関係で挫折してしまう人も多く、
一瞬、不安を覚えましたが、陽介さんと尚子さんは、
初回の打ち合わせで自分たちが子どもの頃から思い描いていた
理想の家をものすごい熱意で話してくれました。
背景をうかがっていくと、陽介さんの両親は、
「理想の住まいを追い求めているうちにセルフビルドで一軒家を建ててしまった」方たち。
さらに、尚子さんは、
「子どもの頃に読んだ『三匹の子豚』の物語が忘れられず、
ひとつずつレンガを積んで家を建てるのが夢」と言います。
とにかく「自分たちの住む家は、自分たちの手でつくりたい!」
という熱意は人一倍感じたのを覚えています。
ふたりのあまりの熱意に
「なんとかなるんじゃないですか?」と返事をしたものの、
少し半信半疑だったのも正直なところでした。
工務店というのは現場を管理するのはもちろんですが、
工程どおりに職人を現場で動かしつつ、
クライアントが求める日までに適正なクオリティで
工事を完了して引き渡すことが求められます。
施主が通しで工事に参加することは、
スケジュール通りに工事が進行しないリスクを受け入れることになります。
直前で工程をリスケすることは職人の生活にも直結します。
どのような取り組み方がいいのかを考えた結果、
「施主と工務店の工事区分をしっかりとしたうえで、完成を前提としない」ことにしました。
当時、工務店が工期を明確にしないというのは、
建設業者として社会的には、疑念を抱かれるかもと思っていましたが、
高田夫妻の理想を実現するために、
そのリスクを負い、竣工しないことを肯定することにしました。
施主が途中でリタイアして、職人を入れたとしても費用が莫大に増えない、
もしくはあとからでも施主が対応可能な仕様を
仕上げとして逆算しながらプランを考えました。
陽介さんと尚子さんの「自分たちでできる限りDIYしたい」という話を信頼し、
まずはふたりに解体をお願いしました。


「壊すことから始まった家づくり。壁の石膏ボードはコンクリートの躯体にがっちりと接着されていて、開始早々苦戦を強いられることに」(陽介さん)


「学校の教室に貼ってありそうなプラスチックのタイルは、ペッカーという見たこともない機材をレンタルしてひたすら削り取りました」(尚子さん)


「大量に出た瓦礫を外に運び出す作業は、想像以上に重労働でした……」(陽介さん)


「躯体のコンクリートの素材感が気に入った部分は、壁をつくり直すのを止めて、グラインダーで表面を整えたまま内装として残すことにしました」(陽介さん)
慣れない解体作業に苦闘するふたりの様子は、facebookにアップされていき、
僕らは見守るだけでした。
「真夏の解体作業は過酷でしたが、
丸裸の家を見れたおかげでどこに何がついているかよくわかりました。
それに“夢のマイホーム”だからと言って買ったまま大事にとっておく必要はなくて、
むしろ家も暮らしの道具だと思ってどんどん使い込めばいいんだ、
と割り切った気持ちでスタートできたのはよかったと思います」(陽介さん)


解体作業終了まで、もうすぐ。
正直、解体作業って大変です。
粉塵まみれになるし、ケガもしやすい。
特に夏場は汗に粉塵がまとわりついて不快指数も上がります。
陽介さんと尚子さんのfacebookの写真を見て、
「もしかして、このふたりならこのままいけるかも」と僕は思い始めていました。
さらに驚いたのは陽介さんのお父さんのプロ並みの技術です。
多少スケジュールがずれたりもしましたが、
こちら側の工程進行に支障がないように少しずつ確実に進んでいくのです。

「すごく心強かったのが父の存在。僕の父は、母と力を合わせて独学でマイホームを建ててしまった“家づくりの師匠”とも呼べる人です」(陽介さん)



「壁の下地を組み、断熱材を入れて、石膏ボードを貼る。そういった内装の基礎はすべてお父さんに教わりながら進めていきました」(尚子さん)
「父に工具の使い方を教わっているときは、
子どもの頃に戻ったようでちょっと懐かしい気分でした」(陽介さん)


「父に教わりながら、リビングのフローリング用に合板で捨て張りをしていきます」(陽介さん)