富山〈喜代多旅館〉
元県庁職員の3代目おかみが
生家の老舗宿をフルリノベ!

2020年(令和2年)は、北陸新幹線が開業して5年になる。
沿線の富山駅周辺は相次いでホテルの開業が予定されており、
この何年かで景色も大きく変わっていく。
一方でまちの中心部には、戦後間もなく生まれた旅館を4年かけてリノベーションし、
2019年(令和元年)に再オープンさせたおかみがいる。

北陸にある民間宿泊施設のリノベ物件では唯一、ZEB(ゼブ) Ready認証を取得した旅館で、
館内には老舗旅館らしからぬ仮眠室や共有キッチンなど
ホステルのような機能も完備した。
「旅慣れた人に集まってほしい」と願う〈喜代多(きよた)旅館〉の
3代目おかみ・濱井憲子さんの挑戦を聞いた。

旅館らしくない老舗旅館

喜代多旅館。改修や増改築を繰り返した歴史があり、右半分が鉄骨造、左半分が鉄筋コンクリート造。

喜代多旅館。改修や増改築を繰り返した歴史があり、右半分が鉄骨造、左半分が鉄筋コンクリート造。

旅館ときいて、どのような姿を連想するだろうか。
和式の建築に、畳の敷かれた客室があって、
温泉地では天然温泉が楽しめるといったイメージではないだろうか。
2019年(令和元年)にフルリノベーションの工事を経て、
富山市の中心部に再オープンを果たした喜代多旅館は、
その手の先入観を気持ち良く覆してくれる。

バリアフリーのユニバーサルルーム。

バリアフリーのユニバーサルルーム。

まず、喜代多旅館には、足腰のしっかりしない高齢の宿泊客を想定して、
ベッドに寝泊りできるバリアフリーの洋室(ユニバーサルルーム)がある。
室内だけ見れば、どこかの高級ホテルか、品のいいオーベルジュの宿泊施設のようだ。

仮眠室。

仮眠室。

一方で館内には、高速バスユーザーなどを想定した、
早朝と深夜にのみ使用できる仮眠室のベッドが8人分、用意されている。
共用のキッチンがあり、スクリーンカーテンで間仕切りが可能な大部屋があり、
24時間利用可能なシャワールームもある。
こうなると今度は、ホステルのような印象すら受けるはずだ。

2階の共有スペースと、奥には24畳の大広間。

2階の共有スペースと、奥には24畳の大広間。

それでいて、館内全体に洗練されたデザインや設計のおもしろさが見てとれる。
家具類に至ってはリノベーションのために、すべてオーダーメードでつくられた。
一般の旅館と比べると廊下も広く共有スペースもたっぷりと設けられていて、
一方ではいかにも旅館らしい和式の客室も8室用意されている。

植物屋〈叢〉店主・小田康平の旅コラム
「三徳山三佛寺奥院投入堂の
壮大なスケールの演出」

さまざまなクリエイターによる旅のリレーコラム連載。
第7回は、植物屋〈叢(くさむら)〉の小田康平さんが
鳥取県の〈三徳山三佛寺奥院投入堂〉を参拝した話。
まずは建築の造形に惚れて参拝に向かったようですが、
いざ登ってみると、そのスケール感や
現代にも通じる“ある演出”に強く惹かれたようです。

ひっそりと佇む投入堂に魅せられて

その風貌を初めて見たときから
とても興味を持っていた、鳥取県にある〈三徳山三佛寺奥院投入堂〉(国宝)。
私の地元である広島と同じ中国地方ということもあり、
いつかは行ってみたいと思っていた。
多くの建築家からは、重要な日本建築としてかねてから評価されており、
京都の清水寺と同じく崖に柱を立て、
半分が高床式というとても危なっかしい構造の懸造り(かけづくり)建築。
このふたつの建築物は懸造り建築として国内では双璧とされているが、
自分にとっては華やかで有名な清水寺よりも、
ひっそりと山奥に身を隠す投入堂のほうが好みだ。
そうした投入堂のビジュアルの知識のみで三徳山に向かった。

まずは駐車場からすぐの参詣受付案内所へ。そこでは投入堂拝観の心得を問われる。
「命をかけて登ってください。そしてそのスニーカーではダメですね」と。
甘い考えで運動靴ならいいだろうと勝手に考えて履いてきたスニーカーだったが、
ゴールである投入堂まではかなりの難路ということで、
入峰修行受付所にてわらじを購入し履き替えてチャレンジすることとなった。
多くの参詣者がいたのを物語るように、石段のすり減り方も年季が入る。

履き替えたわらじ。

履き替えたわらじ。

石段からは年季を感じる。

石段からは年季を感じる。

山に入っていくと、受付でいわれた通り、山登りというよりは崖登り。
ほぼ垂直な崖では樹木の根が地上に出ている気根(きこん)を足がかりにして登っていく。
年配の参詣者も多く、
おじいちゃんやおばあちゃんまでもがこの垂直の崖を淡々と乗り越えていく。
登っていくうちに植物相も変化し、麓では見られない高山植物なども現れてくる。

駅名の長さ日本一! 等持院・立命館大学衣笠キャンパス前駅 が京都に誕生

嵐電北野線・等持院駅の名前を一新

2020年3月20日(金)、京都に日本一長い名前の駅が誕生しました。
その名も〈等持院・立命館大学衣笠キャンパス前駅〉。
文字数なんと17字、音読数だと26字で、日本で最長の駅名となるのだそう。

もともと嵐電北野線の〈等持院駅〉という名称であった
等持院・立命館大学衣笠キャンパス前駅。
それが立命館大学などを運営する学校法人立命館と京福電気鉄道株式会社が、
2020年3月13日(金)に連携・協力に関する協定を結んだことや、
次駅の北野白梅町駅のリニューアル供用開始に合わせ、
“等持院”がこの地域の地名を表すと同時に、
嵐電が立命館大学へのアクセスしやすいことを伝えるため、
このたび改称される運びとなりました。

あらためて駅名の字面を見ると、なかなかインパクトがありますね。
学生が利用する駅ということで、彼らのさまざまなカルチャーの洗礼を受け、
多くの人に親しまれる駅となりそうです。
今後、地元の人はこの駅をどのような愛称で呼ぶようになるのでしょうか。

〈本と温泉〉第4弾は 初の絵本スタイルで登場! 今回はなんと下駄型!?

城崎温泉を歩いて、味わい、生まれた絵本

志賀直哉、万城目学、湊かなえーー
1300年の歴史をもつ西日本有数の温泉地・城崎温泉を舞台に
ゆかりの作家たちとの共作を続けてきた〈本と温泉〉。
待望の第4弾が登場しました!

毎回その装丁も話題となりますが、今回はなんと下駄型。

毎回その装丁も話題となりますが、今回はなんと下駄型。

今回は、亀山達矢と中川敦子の
絵本作家ユニット・tupera tuperaを迎え、制作。
温泉のまちから聞こえる
いろいろな“音”をテーマにした絵本となっています。

その地域の魅力に"泊まって”体感
「わたしのまちを体験する宿」

今月のテーマ 「わたしのまちを体験する宿」

TVやガイドブックなどでさまざまなまちの特集を
見聞きすることも少なくないですが
やはり地域のことを知るならば、行ってみるのがいちばんです。

「自分の住むまちを好きになってもらいたい!」
そんな想いから、地域の特性を生かしたユニークな宿が全国に増えています。

今回は、日本各地の〈地域おこし協力隊〉のみなさんに、
地域の魅力を体験できる宿について教えてもらいました。

【北海道羅臼町】
こだわりの手料理とアットホームな雰囲気が自慢の宿〈民宿本間〉

羅臼の前浜でとれる自慢の海の幸、
その素材のうまみを最大限に引き出すお母さんの手料理は、
民宿に泊まるお客さんの心を一瞬でつかみます。
地産地消をモットーに鮮度にこだわり、
添加物を一切使用しない安心できる料理を、満足いくまで食べられます。

羅臼の前浜で船上活〆した鮮度抜群のブリ大根。

羅臼の前浜で船上活〆した鮮度抜群のブリ大根。

宿の看板料理のメンメの湯煮。メンメ(キンキ)を羅臼の海洋深層水だけで煮た素材の味を生かしたシンプルな料理。こちらのメンメは大きさ約30センチ!

宿の看板料理のメンメの湯煮。メンメ(キンキ)を羅臼の海洋深層水だけで煮た素材の味を生かしたシンプルな料理。こちらのメンメは大きさ約30センチ!

元漁師の奥さんだからこそできる無駄の一切ない調理は、
今の時代ともマッチしています。
また、ジビエ料理も提供される数少ないお店のひとつでもあります。

鹿肉のローストは、お手製のたれを添えていただきます。

鹿肉のローストは、お手製のたれを添えていただきます。

食事中はもちろん、滞在する間に話されるお母さんの巧みな話術は、
実家に帰ってきたような居心地に変えてしまいます。
そのため、思う存分くつろいで心も体もリフレッシュできる旅になります。

民宿本間

羅臼の本物の味は〈民宿本間〉にあるので、ぜひお越しください。

information

map

民宿本間

住所:北海道目梨郡羅臼町海岸町53

TEL:0153-89-2309

Web:http://minsyuku-honnma.jp/

photo & text

大石陽介 おおいし・ようすけ

1988年静岡県焼津市生まれ。大学卒業後、静岡県の小学校教諭として富士山の麓で8年勤務。うち2年間は青年海外協力隊(JICA)としてモンゴルへ。現地の小中高一貫校で先生方へのアドバイス・子どもたちへの指導にあたる。現在は、羅臼町の地域おこし協力隊として、「ソトから見た羅臼」という視点でまちの魅力を発信中。町内のあちこちへ出向き、取材から撮影、編集までをひとりでこなす。

〈木の子えのき〉と〈hyakushiki〉が 信州ブランドアワードを受賞!

こだわり抜いた「えのき」と、モダンな漆塗りガラス器

長野県のブランドづくりの輪を広げる活動として、
2004年にスタートした信州ブランドフォーラム。
その取り組みの一環として毎年行われている、
信州ブランドアワードの受賞ブランドが今年2月に発表されました。
2019年度は「しあわせ信州部門」と「NAGANO GOOD DESIGN部門」を新設。
みごと大賞に輝いたのは?

「健康長寿・安心」をテーマにした2019年「しあわせ信州部門」の大賞は、
丸金の〈木の子えのき〉、
「NAGANO GOOD DESIGN部門」は
丸嘉小坂漆器店が手がける漆塗りガラス器のブランド
〈hyakushiki〉が栄冠に輝きました。

 メイン商品の〈一株えのき〉 野生種 1袋298円(税込)

メイン商品の〈一株えのき〉 野生種 1袋298円(税込)

天然の環境にこだわる丸金の〈木の子えのき〉

〈木の子えのき〉というのはその名の通り、木の粉からえのきを栽培。
天然の木の子が育つ環境に着目し、国産の原材料を使用して栽培されています。
そのためえのき業界で唯一、国産原材料を使用したえのきと認定された、
こだわりの木の子です。

間伐材を細かく砕いて粉状にし、1年以上熟成させてつくられる木の土。

間伐材を細かく砕いて粉状にし、1年以上熟成させてつくられる木の土。

自然の中で楽しみながら 学べるキッズキャンプも。 〈一番星ヴィレッジ〉 今年も千葉に期間限定でオープン!

広々とした牧草地でのんびりキャンプを

東京から車で約70分の場所にある、千葉県市原市の郊外に位置する、
心地良い風と緑豊かな森林に囲まれた東京ドーム約13個分の広大な牧草地。
ここに、今年も期間限定でオートキャンプ場〈一番星ヴィレッジ〉がオープンします。

オープン期間は、2020年4月25日(土)から10月18日(日)まで。
主に週末がオープン日なので、
詳細なオープン日は公式ページでご確認ください。

この〈一番星ヴィレッジ〉では、
車の横にテントを張ることのできる「オートキャンプ」、
日帰りでBBQなどを楽しむ「デイキャンプ」、
チェックアウトの日も夕方18:00までキャンプを楽しめる「ロングステイキャンプ」から
希望のプランを選べるほか、“直火OK”、“フリーサイト”など、
自由度の高い場所として、思いおもいの遊び方で利用することが可能。

キャンプ場には、ポニーや牛などの動物と触れ合うことができる場所や、
ツリーハウスやカブトムシゾーンなど、大人と子ども両方が楽しめるコーナーが充実。
また、テント(5,000円)やシュラフ(1,000円)、BBQセット(2,000円)など、
一式レンタルできるので、手ぶらでキャンプを楽しむこともできます。

受付は3月10日から開始しています。

アイヌとともに時間を過ごす、 阿寒湖ガイドツアーが6月から開催。 アイヌ文化に直接触れ、 森林散策と楽器演奏を楽しむ

アイヌという文化、阿寒という土地、両方を守るために

阿寒摩周国立公園の原生林に囲まれた、ひがし北海道屈指の美しさを誇る湖、阿寒湖。
そのほとりには複数の温泉宿が立ち並び、
阿寒湖温泉街として多くの観光客を受け入れています。
この温泉街の一角にあるのが日本の先住民族アイヌによってつくられた
工芸と芸能の集落〈阿寒湖アイヌコタン〉。
釧路空港から約1時間のこの地は、民芸品と飲食店が軒を連ね、
アイヌの文化を伝えています。

2020年6月1日から、自然を敬い、阿寒湖で生きてきたアイヌの案内で
自然散策、ものづくりを楽しむガイドツアー「Anytime,Ainutime!」が開催されます。
4月30日から予約受付開始というこのガイドツアーの内容を見てみましょう。

観光とアイヌ文化が交わるこのまちで

阿寒湖温泉商店街の民芸品、飲食店が連なる通りを歩く。

阿寒湖温泉商店街の民芸品、飲食店が連なる通りを歩く。

釧路市には約1,100人のアイヌの人々がいます。
阿寒地区のアイヌコタン(コタンとは“集落”のこと)には、36戸に約120人が暮らし、
北海道で一番大きいアイヌコタンです。
昭和9年に国立公園に指定されるなど、湖畔の景観は四季を通じてすばらしいものがあり、
昭和30年代の観光ブームが到来しても変わらず、
ヒグマや鳥、人間などを題材にした木彫りの工芸品などで人々は自活をしてきました。

この観光ブームで、阿寒湖畔でもホテルの新築、増設が相次ぎ、温泉需要も増大。
『阿寒に果つ』(著・渡辺淳一)など、
阿寒周辺を舞台にした小説がベストセラーになったのも、追い風となりました。
阿寒はもともと狩り場(イオル)だったという歴史もあり、
先祖代々住み続けているという家は多くはなく、
「よそ者が多い」ことは、アイヌ文化を観光に活用する際にプラスに働いているのです。

アイヌの人々は自然に語りかけながら植物を採集したり、大切な人を思いながら、
自然をモチーフにした文様を木彫、刺繍します。
こうして、人と人、モノ、自然との関係性を大事に育んできたのです。

今回のガイドツアー「Anytime,Ainutime!」というコンセプトには、
このすばらしい文化を、「体験」を通して伝え継ぎたいという思いが込められています。

ガイドをするのは阿寒で暮らすアイヌの人々。
普段は木彫作家、民芸店の店主、伝統舞踊の踊り手など、職業はさまざま。
それぞれが受け継いできたアイヌの伝統や民話を伝えながら、ツアーは展開されます。

二戸へ来たら〈Oli-Oli〉へ! 畑の恵みでつくるスムージーが 地域と農家をつなぐ

「ここは二戸のオアシス」

そんな声が聞こえてきたのは、
岩手県「二戸」駅から車で約10分、「堀野地区」と呼ばれる場所にある
カフェスタンド〈Oli-Oli(おりおり)〉。
メニューには高品質なスペシャリティコーヒーはじめ、
地元産果物を使用したスムージーやスイーツが並びます。

店主は、二戸市出身のバリスタ・工藤さおりさん。
「一度は地元を離れて北海道で暮らしていたのですが、
育った場所に何かしら恩返しがしたいと思い、二戸に帰ってきたんです」

昔ながらの商店街を進むと、木造のかわいらしい建物が現れます。

昔ながらの商店街を進むと、木造のかわいらしい建物が現れます。

南部鉄器の鉄瓶が目印

店の看板にデザインされているのは、岩手県を代表する工芸品・南部鉄器の鉄瓶。
コーヒーはすべて、鉄瓶で沸かしたお湯で淹れてくれます。

「(南部鉄器は)岩手のものであるということもそうですし、
これで沸かしたお湯でコーヒーを淹れたら味が変わるんじゃないかという勘があって、
実際淹れてみたら違ったんです。おいしくできて特徴も出せる。
お店を出すときには看板やロゴに使いたいと最初から思っていました」

olioli看板

スペシャリティコーヒーとの出会い

工藤さんは二戸に帰って来た当初、コミュニティFMに勤務。
「番組を通じて、二戸がどんな土地なのか、何が名産で、どんな人が活躍しているのか、
いろんな情報を知ったんです。人とのつながりもできて、
『私にできることは何だろう』ってすごく考えるようになって」

そんななか、隣町のカフェで、
スペシャリティコーヒーとラテアートに出会います。

「〈Oli-Oli〉を開業した堀野地区は、
気軽にコーヒーを飲めるカフェや喫茶店がないんです。
地元の人が集まる、おいしいコーヒーが飲める場所を二戸にもつくりたい。
『これが私にできることかもしれない』」

そう強く思った工藤さんは
影響を受けたカフェで修行をしながらバリスタの資格を取得、
2017年に自身の店をオープンします。

提供しているラテアート。焙煎をお願いしているのは修行時代の同僚が開業した〈ロースター・アリエッタ〉(青森県八戸市)。一緒に働いているころから「ゆくゆくはそれぞれお店を持とう」と話していたそう。

提供しているラテアート。焙煎をお願いしているのは修行時代の同僚が開業した〈ロースター・アリエッタ〉(青森県八戸市)。一緒に働いているころから「ゆくゆくはそれぞれお店を持とう」と話していたそう。

「できるだけ地元のもの使いたい」という考えのもと、
ラテは岩手県に工場をもつ小岩井乳業の牛乳と、
工藤さんも子どもの頃から買い物をしていた
二戸の〈高橋豆腐店〉の豆乳から選ぶことができます。
豆腐をつくるときにできるあまり汁ではなく、
おいしい豆乳をつくるためだけに豆腐をつくるこだわりがあり、
コーヒーに負けない深い味わいが特徴です。

夫婦で金田一温泉郷を明るくする、 癒しの宿〈おぼない旅館〉 に出会いました

〈おぼない旅館〉の支配人 大建宗徳さん・ももこさんご夫婦

お侍さんの湯治場

別名「侍の湯」とも呼ばれる、岩手県二戸市の金田一温泉郷。

江戸時代初期にはすでに温泉地としてあり、
南部藩指定の湯治場として、侍が戦の傷を癒しに訪れていたとか。

8つの源泉があり(現在は5つの源泉が稼働)、
各宿で違う泉質の湯を楽しむことができるのも魅力です。

開湯380年と金田一温泉郷で一番古い自家源泉〈玉の湯〉を持つのが、〈おぼない旅館〉。
弱アルカリ性のとろりとした美肌の湯として知られ、
長く浸かりやすく、体をじんわりと温めてくれるマイルドな湯が特徴です。

(イラスト:大建ももこ)

(イラスト:大建ももこ)

旅館を切り盛りするのは、2代目の大建宗徳さん・ももこさん夫婦。
歴史ある温泉地ですが、特技のイラストを生かして、
二戸の魅力を掘り起こし、積極的に発信しています。

ももこさんが描くイラストがかわいい!

ももこさんが描いたポストカード。宿泊者にプレゼントすることもあるそう。

ももこさんが描いたポストカード。宿泊者にプレゼントすることもあるそう。

青森県出身で、八戸のローカル情報誌で編集経験があるももこさん。
独自の視点で二戸の魅力を切り取り、見どころを発信しています。

そのひとつが金田一温泉郷の四季を彩るエピソードを描いたポストカード。
薪ストーブがある暮らしや夏の蛍狩りなど、
四季折々の身近な暮らしをかわいらしいイラストを交えながら紹介しています。

大きな近隣マップも手書きイラストで制作。

ももこさんが描いた〈金田一温泉郷 てくてくマップ〉。

ももこさんが描いた〈金田一温泉郷 てくてくマップ〉。

金田一温泉郷は、南部出身の作家・三浦哲郎さんが執筆し、
ドラマ化・ミュージカル化もされた『ユタと不思議な仲間たち』(新潮社)の舞台。

“不思議な仲間たち”は座敷わらしのことで、
物語に登場する〈分教場〉や、座敷わらしに会えるという言い伝えの残る〈緑風荘〉をはじめ、
ブルーベリー園やりんご畑、〈南部美人〉の酒米を育てる田んぼなど、
周辺の見どころが案内されています。

ワクワクするイラストが、
ごく自然な日常や風景を特別なものに変えてくれる。
二戸に出かけてみたくなるマップです。

〈第8回全日本まくら投げ大会 in 伊東温泉〉 “始まくら式”に畠山愛理さんが登場

大人も子どもも楽しめるスポーツ、まくら投げ

2020年2月22日・23日、静岡県伊東市にて
〈第8回全日本まくら投げ大会in 伊東温泉〉が開催され、
開会式に元新体操選手の畠山愛理さんが登場しました。

本大会のイメージビジュアルのモデルも務めた畠山さんが登場すると、会場に歓声が。
冒頭の挨拶で「昨年モデルのお話しをいただいた時は、
本気のまくら投げって何だろうと少し困惑しました(笑)。
幼少期は新体操の練習で修学旅行に行けなかったので、
今日は初めて間近でスポーツとしてのまくら投げを
見られるのでとても楽しみです」と語りました。

全日本まくら投げ大会in 伊東温泉のイメージビジュアル

全日本まくら投げ大会in 伊東温泉のイメージビジュアル

その後は始球式ならぬ「始まくら式」にて、まくら投げを披露。

始まくら式での畠山愛理さん。

始まくら式での畠山愛理さん。

さらには、まくら投げ競技体験も。

まくら投げ競技に挑戦する畠山さん。

まくら投げ競技に挑戦する畠山さん。

競技体験後には、
「まくら投げは笑顔になりながら楽しめるスポーツです。
すてきなスポーツですね。ほかのスポーツにはない魅力があると思います」
とコメントしました。

今年は、新型コロナウイルスによる肺炎の影響が懸念された本大会。
参加者全員にマスクが配布され、会場の常時換気、
アルコール消毒の呼び掛けを行ったうえでの開催となりました。

参加者は、1道2府1都17県から384名の選手と子供の部含めた総勢434名。
接戦の戦いの結果、教員免許を持つイメージバーで
結成された「知多半島教員選抜with Bouzu」が
2020年のまくら投げチャンピオンに輝きました。

一般の部・優勝チーム「知多半島教員選抜 with Bouzu」

一般の部・優勝チーム「知多半島教員選抜 with Bouzu」

子供の部・優勝チーム「コロンパA」

子供の部・優勝チーム「コロンパA」

〈滔々 二階の宿〉 観光地・倉敷美観地区内で、 暮らしの延長にある 静かな時間を過ごす

普段の暮らしに近いような宿で、気持ちも穏やかに

岡山県倉敷市美観地区内、大原美術館そばで
暮らすように泊まることができる〈滔々(とうとう) 倉敷町屋の宿〉。
こちらの宿に続いて、昨年7月、〈滔々 二階の宿〉がオープンしました。

右手にあるソファは〈さしものかぐたかはし〉の〈ふとんのソファ〉。

右手にあるソファは〈さしものかぐたかはし〉の〈ふとんのソファ〉。

アパートメントの部屋の中にいるような、
普段の暮らしに近い生活感がありつつ、
手仕事の温もりを感じられるさりげないしつらえが
居心地の良さをつくり出しています。
移ろう時間とともに表情を変える、光と白の美しさに気づかされる宿です。

白を基調に洗練されたバスルーム。床暖房を完備しています。

白を基調に洗練されたバスルーム。床暖房を完備しています。

「旅中のお客さまがこの空間で過ごしていただく間、
さまざまな刺激を受けた気持ちを穏やかに整えていただけるように、
華美でない閑居なしつらえとしています」と、
〈滔々 二階の宿〉の設計を手がけた山本圭一さん。

小説を肴に日本酒を一杯。 〈ほろ酔い文庫〉創刊。 第一弾は山内マリコの恋愛小説

日本酒を嗜むときは、その土地のものを肴に。
と、いうのは飲兵衛の人たちの間ではよく耳にする言葉。
お酒の造り手やその土地に住む人や風土、歴史などを知ることは
より日本酒を深く味わえることができるのは間違いないでしょう。

そんな人と土地、お酒との関係性を「お酒と物語」という
新しいスタイルに編み直したお酒〈ほろよい文庫〉が創刊。
“文庫”と銘打たれた通り、短編小説付きの日本酒なのです。

男女の絵柄でそれぞれ異なる2通りの味わいと物語。

日本酒に付属された2つの短編小説。左から〈一杯目『運命の人かもしれないけど「じゃあ、ここで』〉、〈二杯目『あしたはまだ到着していない』〉。

日本酒に付属された2つの短編小説。左から〈一杯目『運命の人かもしれないけど「じゃあ、ここで』〉、〈二杯目『あしたはまだ到着していない』〉。

〈ほろよい文庫〉第一弾は、新潟の酒処・長岡が舞台。
小説を担当した作家・山内マリコが
実際に訪れて土地の空気を感じながら書き下ろしたものです。
長岡での男女の出会いを、
男性と女性それぞれの視点からリアルに描いています。

〈ryugon(りゅうごん)〉 四季を通じて雪国の叡智を体感する、 デザインコンシャスな宿

有名宿〈温泉御宿 龍言〉が2019年秋にリニューアル

平成の大合併により六日町、大和町、塩沢町の3町が合併して誕生した南魚沼市。
日本随一の米どころ、そして1日の降雪量が1メートルを超える年もある豪雪地です。
このまちのはっきりとした四季は、足を運ぶごとにまた違った魅力を感じさせます。

まちのシンボル八海山

まちのシンボル八海山。

その旧六日町で数少ない温泉宿だった〈温泉御宿 龍言〉。
2万坪の敷地の中に、文化文政時代(1804〜1829年)の六日町の豪農の館や、
武家屋敷など8つの古民家を移築してつくられ、
重要文化財にも指定された龍言は、多くの著名人や文人から愛され、
近年では将棋の竜王戦の会場としても名を馳せていました。

もともとの宿の姿をベースに歴史を引き継ぎつつ、
雪国の風土や文化、食生活を体験できる旅館としてリノベーションを果たし、
2019年10月にリスタートしたのが〈ryugon〉です。

リノベーションは〈蘆田暢人建築設計事務所〉によって手がけられました。
まずは、その館内をご紹介。

白い囲炉裏

レセプション奥にあるryugonのランドマーク、白い囲炉裏。
吹き抜けの天井は、雪が積もっているときは薄暗く、
晴れた日は木漏れ日のようなやさしい光が射します。
冬の間は火が入り、冷え切った体を緩やかに温めてくれます。

その囲炉裏の奥、昼はウエルカムドリンクや軽食が置かれ、
夜はお酒がいただけるバースペースでは、新潟の地酒はもちろん、
日本全国のクラフトジンや、オリジナルカクテルがいただけます。
食後や風呂上がりのお楽しみに。

岡山県西粟倉村〈ようび〉のオリジナル造作家具〈snow cover〉。冬の空の色のようなグレーがすてき。

岡山県西粟倉村〈ようび〉のオリジナル造作家具〈snow cover〉。冬の空の色のようなグレーがすてき。

ガーデンラウンジで目を惹くインテリアは、
岡山県西粟倉村〈ようび〉がこのryugonのためにつくった
オリジナル造作家具〈snow cover〉。
無垢の板を削り出してつくられた職人の手づくりです。

 囲炉裏の炭火で料理する、〈立焼〉の様子。

囲炉裏の炭火で料理する、〈立焼〉の様子。

食事はレストランで。
雪国で昔から受け継がれてきた野山の食材や文化を今に伝える、
伝統料理をベースにしたコース料理〈雪国ガストロノミー〉をいただけます。
龍言の時代から名物だった〈立焼〉と呼ばれる、
レストラン中央の囲炉裏の炭火で焼いた地元食材をメインディッシュとした
和の創作フルコース。
なかでも絶対的な自信があるのは、土鍋で提供される魚沼産コシヒカリ。
精米したて炊きたてのご飯を、多種多様なご飯のお供とともに頬張れば
多幸感で満たされるでしょう。

〈カールベンクス古民家民宿YOSABEI〉 200年の時と住まう、佐渡の農家民宿

古色蒼然とした屋敷を宿として再生

佐渡の中央部に位置する、国仲平野。
ふたつの山脈に挟まれ、美しい自然を有するこのエリアは
「トキの森公園」などの観光スポットもあり、
ほかのエリアにもアクセスしやすい地区です。

山から平野へ、清らかな水が流れるこの辺りは、その昔、豊かな農村地帯でした。
いまでも、穏やかな農村風景の名残をここかしこに見ることができます。
今回ご紹介するのは、同エリアにある農家民宿
〈カールベンクス古民家民宿YOSABEI(よさべい)〉。

両津港から15分ほど車を走らせ、林を抜けると、
オレンジ色の外壁に黒い屋根の建物が現れました。
その向こうには、畑が広がっています。

実はこの建物、江戸時代の家をリノベーションしたもの。
一歩、中に入ると、吹き抜けのダイナミックな空間が広がり、
正面には江戸時代に広まった階段箪笥が。
天井には太い梁が張り巡らされています。

リビングはかつて、村をあげての結婚式やお葬式に人々が集った場所。ダイニングテーブルはカール・ベンクスさんのデザイン。イスは佐渡の家具店で購入したもの。

リビングはかつて、村をあげての結婚式やお葬式に人々が集った場所。ダイニングテーブルはカール・ベンクスさんのデザイン。イスは佐渡の家具店で購入したもの。

床はフローリング、壁は桜色の漆喰壁。
新築のようにぴかぴかでありながら何ともいえず落ち着くのは、
古い木に包まれているせいでしょうか。木材のほとんどは、
元の家で使われていた200年前の木を使用しているといいます。

宿のオーナーは仲塚周子さん、雄輝さん夫妻。
娘の木春ちゃん(5歳)、木ノ芽ちゃん(1歳半)と家族4人でこの家に暮らし、
住み開きの宿を営んでいます。

東京に暮らしていたふたりは、東日本大震災を機に
「いつかは移住を」と考えるようになり、
2015年に周子さんの実家がある佐渡にIターン。
佐渡に移る大きなきっかけとなったのは、周子さんが受け継いだこの家でした。

「私の家は、祖父の代まで400年間ここに根ざしていました。
この辺りが農村として栄えていた頃は、庄屋さんを務めていたこともあったようです。
ところが祖父が他界して数年後に、この家が壊されるという話が持ち上がって。
そのときに、これまで受け継がれてきたものがなくなってしまうことに
強い抵抗を感じたんですね。それで最初は移住するつもりもなく、
老朽化した家を直すことにしたんです。とにかく“家を直そう”と」(周子さん)

仲塚雄輝さん、周子さん夫妻と娘の木春ちゃん、木ノ芽ちゃん。

仲塚雄輝さん、周子さん夫妻と娘の木春ちゃん、木ノ芽ちゃん。

その頃に雄輝さんが見つけたのが、ドイツ出身の建築デザイナー、
カール・ベンクスさんのことを紹介している本。
数々の古民家を再生させてきたベンクスさんは、新潟県十日町市に暮らしていました。
ふたりはすぐに会いにいき、ベンクスさんに改修をゆだねることに。
そしてベンクスさんと打ち合わせを重ねるうちに、
いつしか移住を決心していたといいます。

「ドイツでは街道沿いで暮らす農家はゲストルームを持っていて、
お客様をお迎えするそうです。そういうことにチャレンジしてみては、
とベンクスさんに提案されて、ひと部屋くらいやってみよう! と決めたんです」

かくして完成したのは、お客さんを迎え、暮らしながらもてなせる家。
ゲストルームは2階の角部屋にあり、風通しがよく、光溢れる空間。
窓からは林や蔵、長屋門を改装した新館が見えます。
また、宿泊客には専用のシャワールームと洗面台、トイレも用意されています。

2階に上がると吹き抜けを囲んで回り廊下のようなっており、奥に客室が。

2階に上がると吹き抜けを囲んで回り廊下のようなっており、奥に客室が。

ベッドとソファ、小さなアンティークのテーブルが置かれたシンプルで過ごしやすい部屋。

ベッドとソファ、小さなアンティークのテーブルが置かれたシンプルで過ごしやすい部屋。

ベンクスさんがデザインしたテーブルが置かれているリビングは、
その昔、囲炉裏があった場所。
家に囲炉裏があった時代は、囲炉裏から立ち上る煙が建物と茅葺き屋根を燻し、
湿気や害虫から家を守るという、火を中心とした暮らしが営まれていました。

囲炉裏は祖父の代でガス台に変わりましたが、
今回の改修では、リビングに大きな薪ストーブを設置。
薪ストーブは上に鍋を置き、炉として使うこともできます。
揺らめく火を眺めながらじんわり温まる感覚は、エアコンでは味わえないもの。
やっぱり、火を囲む暮らしはよいものです。

薪ストーブが置かれたリビングスペース。

薪ストーブが置かれたリビングスペース。

柱や梁は、ベンクスさんのこだわりで“煤黒”色にペイント。
これは、囲炉裏の煙が家屋を染める色をイメージした色なのだとか。
柱や漆喰を塗る作業は、地元の腕のいい職人さんに教わりながら、
雄輝さんと周子さんも行いました。

〈Agawa〉 老朽化した阿川駅が 山陰の魅力を発信するスポットに! クラウドファウンディングも

京都駅から下関駅まで、日本海沿岸のまちを結ぶ、山陰本線。
海、山、田畑を走る汽車は、
日本の原風景と出会える、情感あふれる乗りものです。

山陰本線

山陰本線

2020年3月下旬、その山陰本線にある阿川駅に
山陰の魅力を発信する商業施設〈Agawa〉がオープンします。
施設内には山陰のお酒や軽食などを楽しめるカフェ、
地元のおみやげを扱うショップ、レンタサイクルなどが展開するそう。
空間設計を手がけるのは、人気デザインスタジオ〈TAKT PROJECT〉。
山陰に、またすてきな施設が登場しそうです。

〈Agawa〉完成イメージ(TAKT PROJECT)

〈Agawa〉完成イメージ(TAKT PROJECT)

これは、山口県萩市にある〈萩ゲストハウスruco〉と
JR西日本、山口県、下関市による行政プロジェクト。
発起人は、萩ゲストハウスrucoのオーナー、塩満直弘さん。

〈萩ゲストハウスruco〉オーナー、塩満直弘さん

〈萩ゲストハウスruco〉オーナー、塩満直弘さん

山口県萩市に生まれ、アメリカ、カナダ、東京、鎌倉での生活を経て、
萩市にUターンした塩満さんは、自分の生まれ育ったまちに
「既存の価値観だけでなくもっと多様な選択肢をつくりたい」と、
2013年10月に萩ゲストハウスrucoをオープンさせました。

〈萩ゲストハウスruco〉

〈萩ゲストハウスruco〉

そんな塩満さんが友人の案内で山陰本線沿線の無人駅を訪れ、
そこに溢れる旅情に圧倒されたのだとか。

阿川駅

阿川駅

それから、「この景色をもっとたくさんの人たちと共有できないものか」
「山陰本線と景観とを再編集することで新たな価値を
生むことができるのではないか」と、思考を巡らせた塩満さん。
1週間後にはJR 西日本・地域共生室の方と出会い、
老朽化していた駅待合室の新設に合わせ、
本プロジェクトが始動することになりました。

宿から感じる地域の文化。
鎌倉の小さなホテル〈hotel aiaoi〉を
営む夫婦が大切にしたいこと

鎌倉から考えるローカルの未来

長い歴史と独自の文化を持ち、豊かな自然にも恵まれた日本を代表する観光地・鎌倉。
年間2000万人を超える観光客から、鎌倉生まれ鎌倉育ちの地元民、
そして、この土地や人の魅力に惹かれ、移り住んできた人たちが
交差するこのまちにじっくり目を向けてみると、
ほかのどこにもないユニークなコミュニティや暮らしのカタチが見えてくる。

東京と鎌倉を行き来しながら働き、暮らす人、
移動販売からスタートし、自らのお店を構えるに至った飲食店のオーナー、
都市生活から田舎暮らしへの中継地点として、この地に居を移す人etc……。

その暮らし方、働き方は千差万別でも、彼らに共通するのは、
いまある暮らしや仕事をより豊かなものにするために、
あるいは、持続可能なライフスタイルやコミュニティを実現するために、
自分たちなりの模索を続ける、貪欲でありマイペースな姿勢だ。

そんな鎌倉の人たちのしなやかなライフスタイル、ワークスタイルにフォーカスし、
これからの地域との関わり方を考えるためのヒントを探していく。

鎌倉・長谷にある〈hotel aiaoi〉から数分も歩けば、眼前には穏やかな海が広がる。

鎌倉・長谷にある〈hotel aiaoi〉から数分も歩けば、眼前には穏やかな海が広がる。

独自の存在感を放つ、全6室の小さなホテル

季節を問わず多くの観光客が訪れる鎌倉だが、東京から日帰りができることや、
十分な敷地を確保することが難しいことなどから、大規模なホテルはそう多くない。
一方、古民家を活用したゲストハウスなどは市内に点在し、
鎌倉ならではの滞在が楽しめる宿として人気を集めているが、
今回紹介する〈hotel aiaoi〉は、これらとも一線を画す全6室の小さなホテルだ。

オーナーは、結婚を機に東京から鎌倉に移住した小室剛さん・裕子さん夫妻。
鎌倉で暮らし始めたことで仕事観、価値観が大きく変わったふたりは、
このまちらしいシンプルで心地良い時間が過ごせる宿として、
2016年にhotel aiaoiを鎌倉・長谷にオープンさせた。

hotel aiaoiを切り盛りする小室剛さん・裕子さん夫妻。

hotel aiaoiを切り盛りする小室剛さん・裕子さん夫妻。

空間や部屋のしつらえからアメニティ、食器・食材などのセレクト、
宿泊客とのコミュニケーション、そしてWebサイトにいたるまで
あらゆる部分に、小室夫妻の美意識が表現されているhotel aiaoi。

ここには、大規模ホテルのようなサービスや、高級旅館のようなおもてなし、
あるいはゲストハウスのようなフレンドリーさはないかもしれないが、
hotel aiaoiならではのコミュニケーションを通じて、宿泊客たちは、
鎌倉という土地で育まれてきた文化や暮らしを感じることができるはずだ。

鎌倉での生活、そして、宿の運営を通して、
自分たちが大切にしたい暮らしのあり方や美意識を研ぎ澄ませ、
ホテルという場を起点に、観光地としての鎌倉とは少し異なる、
このまちの魅力を感じさせてくれる小室夫妻を訪ねた。

およそ築40年のビルの3階にあるhotel aiaoi。以前に女性専用の宿泊施設として使われていた物件を改装したという。

およそ築40年のビルの3階にあるhotel aiaoi。以前に女性専用の宿泊施設として使われていた物件を改装したという。

〈F/style(エフスタイル)〉 「使ってみたい」が揃う 生活道具のショールーム

使われてこそ磨かれる、スタンダード

新潟市の中心部から南へ車を走らせること、十数分。
にぎやかなまちの気配が途切れ、すかんと空が広がるエリアに
〈F/style(エフスタイル)〉のショールームはありました。

エフスタイルショールーム外観

倉庫を改装した建物に入ると、天井の高い凛とした空間に
衣類と生活の道具たちが並んでいます。
山形を発祥とする「月山緞通(がっさんだんつう)」のマット、
新潟市亀田に伝わる亀田縞のシャツやエプロン、
ジーンズの産地、岡山でつくられるジーンズ、
新潟県燕市産の行平鍋……。

いずれも、ロゴも装飾もない、シンプルなものばかり。
それでいて、肌触りがよく手に馴染むものであったり、ユニークな形であったり。
どれも「使ってみたい」と思わせる魅力にあふれていました。

銅の鍋や再生ビンの計量カップなど、調理器具も取り揃える。上段のわっぱ鍋の鍋は〈イソダ器物〉によるもの。

銅の鍋や再生ビンの計量カップなど、調理器具も取り揃える。上段のわっぱ鍋の鍋は〈イソダ器物〉によるもの。

新潟県燕市のイソダ器物の行平鍋。1枚の銅板をへら絞りという昔ながらの技法で成形している。持ち手は新潟の間伐材を使用した、阿賀野市の〈工房るるの小屋〉制作のもの。このほかに銅の片口や燭台、皿なども揃う。

新潟県燕市のイソダ器物の行平鍋。1枚の銅板をへら絞りという昔ながらの技法で成形している。持ち手は新潟の間伐材を使用した、阿賀野市の〈工房るるの小屋〉制作のもの。このほかに銅の片口や燭台、皿なども揃う。

店に立つのは、エフスタイルを主宰する五十嵐恵美さんと星野若菜さん。
彼女たちの仕事は「製造以外で商品が流通するまでに必要なことはすべて」。
デザインを核に、商品化から流通、接客までを担っています。

最初に拠点を構えた市街地からいまの場所に移ってきたのは2012年のこと。
友人の建築家、〈暮らしと建築社〉の須永次郎さん、理葉さん夫妻に設計を依頼し、
広大な空間に“箱を置くように”仕事場を設けて売場とスペースを分け、
開放感のあるショールームに仕上げてもらいました。

天井までさえぎる壁もドアもない、開放感あふれる空間。向かって左が仕事場、上は「コンテナ」と名づけられたフリースペース。梯子のような階段で上り、高い所を歩くのも楽しい。

天井までさえぎる壁もドアもない、開放感あふれる空間。向かって左が仕事場、上は「コンテナ」と名づけられたフリースペース。梯子のような階段で上り、高い所を歩くのも楽しい。

学生時代から一緒にものづくりをしている星野若菜さん(左)と五十嵐恵美さん(右)。

学生時代から一緒にものづくりをしている星野若菜さん(左)と五十嵐恵美さん(右)。

階段を上り2階へ上がると、エフスタイルの原点ともいえる
〈ハウスドギーマット〉が並んでいました。
ベースは麻のループ織り、犬の部分はウールのカット織り。
温かみのある素材で織り込まれた犬のシルエットが印象的です。

山形県の〈穂積繊維工業〉の職人がハンドフックを用いて織り上げた〈ハウスドギーマット〉。

山形県の〈穂積繊維工業〉の職人がハンドフックを用いて織り上げた〈ハウスドギーマット〉。

このマットの原型が生まれたのは、大学生の頃。
新潟市に生まれ育ったふたりは、山形県にある東北芸術工科大学へ進み、
プロダクトデザインを専攻。学内で開催されたワークショップに参加したときに
マットのアイデアを思いついたといいます。

「そのワークショップは工場が自社で企画・生産する能力を養うことを
目的としたもので、地元の企業を招いて開催されました。
私たちは月山緞通の高い技術を持つ〈穂積繊維工業〉とものづくりをすることになり、
社長さんに“麻とウールをミックスした、これからの暮らしに使えるマットをつくりたい”
と言われたんです。

そこで私たちが提案したのが、犬が体を休めるための室内犬用のマットでした。
そのアイデアが形になっていくときに、尊敬の気持ちが
プロダクトに変わっていったという感覚があったんですね。
いまも私たちの根底にあるスタンスは、その頃と変わっていません」(星野さん)

大学を卒業して新潟市へ戻り、「さて、何をしようか」と思ったふたり。
ふと可能性を感じていたあのマットのことを思い出し、それを世に届けたいと想起。
穂積繊維工業へ相談を持ちかけるとすぐに商品化が決まり、
2001年に「身近な産地に仕事が生まれるようなデザインと流通のかたちを」
という思いのもと、活動をスタートさせました。

月山緞通のハウスドギーマット

いざマットが発売されると玄関にマットを置く人が多く、
当初犬のためにデザインされたマットは、帰宅時に犬が迎えてくれるイメージに。
吸湿性、通気性にすぐれた素材も玄関にフィットし、
エフスタイルのヒット商品になりました。

その後、シナ織りや亀田縞などのつくり手と出会って少しずつアイテムを増やし、
これまでに約200種のアイテムを手がけています。

大正14年築の駅舎を ホテルにリノベーション! 〈NIPPONIA HOTEL 高野山 参詣鉄道 Operated by KIRINJI〉 がオープン

古民家や歴史的建築物をホテルにリノベーションしたという
施設情報を見かけることは少なくありませんが、
この〈NIPPONIA HOTEL 高野山 参詣鉄道 Operated by KIRINJI〉はひと味違います。
なんとこのホテル、
駅舎を改修し、2019年11月に開業したちょっとユニークな宿泊施設なのです。

南海電気鉄道高野線の高野下駅外観。

こちらのホテルは、現在でも南海電気鉄道高野線の駅として利用されている
大正14年に建てられた高野下駅の構内にあります。
近代化産業遺産にも認定されていて、歴史的観点からみても重要な建物。
客室からは列車を眺めることができ、
鉄道好きにはたまらない宿泊施設となっています。

野毛〈酒蔵 石松〉
「ローカル酒場巡りは小旅行」
ツウから教わる、野毛の飲み方、愛し方

旅の醍醐味はローカル酒場!
全国おすすめ酒場探訪記 横浜・野毛編
酒場から知るまちのうつろい、新たな幸せ

今回のローカル酒場は、関東圏の聖地のひとつ、
神奈川県は横浜・野毛にご案内。
JR桜木町駅と京浜急行日ノ出町駅の間にあるこの地は、
横浜の昔と今、文化と喧騒が混在。
丘の上には緑と瀟洒(しょうしゃ)な世界、海に向かえばみなとみらい。
そして、まちなかはと言えば……。

昭和の時代は、港湾、市場関係者が元気と癒しを求めたまち。
ギャンブルも艶もあって、だからこその人情もある。
その歴史を見続けてきたのが立ち飲みの〈酒蔵 石松〉。

野毛のまちのネオンに誘われ、ふらりふらりとはしご酒を楽しむのも粋。

野毛のまちのネオンに誘われ、ふらりふらりとはしご酒を楽しむのも粋。

桜木町駅から〈野毛ちかみち〉を使ってわずか5分で酒飲みのパラダイスへ。複合施設ぴおシティ地下2階の一角にある〈石松〉。平日の午後3時でもカウンターはすでにこの様子。

桜木町駅から〈野毛ちかみち〉を使ってわずか5分で酒飲みのパラダイスへ。複合施設ぴおシティ地下2階の一角にある〈石松〉。平日の午後3時でもカウンターはすでにこの様子。

大将の早乙女節夫さんは、
「やんちゃなことは散々やってきたよ! 今はもう全部やめたけどさ。
昭和の時代にここにいたら、そりゃそうなっちゃうよ」
とカラッと明るい笑顔。

1968(昭和43)年にフルーツ屋として開業し、
1977(昭和52)年に立ち飲み屋に転業。
現在は〈ぴおシティ〉となっているビルが、
まだ〈桜木町ゴールデンセンター〉という名前だったころから、
この飲食店街で営んでいるのは〈石松〉を含めて
「もう4軒ぐらいになっちゃったかね」と早乙女さん。
今と昔のこの土地を感じる。それがローカル酒場の楽しみです。

今回の案内人は、ヘアスタイリストの平田克也さん。
趣味がローカル酒場巡りで、野毛はもうホーム感覚で、
お気に入りの店やコースはいくつもあります。

平田さんはヘアスタイリストという仕事柄、平日が休日。ローカル酒場を巡る人にとって週末の混雑を避けることができて好都合なのだとか。

平田さんはヘアスタイリストという仕事柄、平日が休日。ローカル酒場を巡る人にとって週末の混雑を避けることができて好都合なのだとか。

「血の一滴」なんて堅い言葉も早乙女さんの笑顔で聞くと心躍るひと言に。コップ酒(290円)、2杯分飲める徳利(530円)。

「血の一滴」なんて堅い言葉も早乙女さんの笑顔で聞くと心躍るひと言に。コップ酒(290円)、2杯分飲める徳利(530円)。

平田さんは、ローカル酒場巡りは「小旅行」と言います。
予定は詰め込まず、さっと飲んで食べて、
その時の気分で次へ、というのが彼のゆるやかな流儀。

「最初にハマったのは、4、5年前、大井町でした」。
狭い路地に並ぶ酒場を歩き、数軒はしごすれば
そのまちの昔と今が感じられる不思議。
初めて訪れるまちでも、ローカル酒場がその地のことを教えてくれる。
まさにそれは小旅行なのでしょう。

平田さんが独立し、〈TSUKI〉というサロンをオープンしたのは1年前。
自身がが手掛けるTシャツや、海外で買い付けてきたアクセサリーが並ぶ、
クリエイティブなスペースでもありますが、
ロケーションはと言えば、中目黒駅すぐの酒場街の雑居ビル。
変わりゆく中目黒の高架下、昭和の面影が残る酒場。
その両方を感じられる場所に引き寄せられたのは、
平田さんにとって自然なことだったのでしょうか。

ホステル〈ロマンス座カド〉から広がる 熱海の新しい楽しみ方

近年熱海はV字回復と言われるほど
観光客が増え、賑わいをみせているエリア。
新しい店舗も増えていますが、
建物の2階以上は依然として空室のところが多く、
大きな課題となっているそうです。

そんな熱海の繁華街・熱海銀座にある〈ロマンス座〉に隣接する
ビルの2~4階をフルリノベーションした、
新しい宿泊スポット〈ロマンス座カド〉がオープンしました。

ホテルロマンス座カド

名前にある〈ロマンス座〉とは、かつて熱海にあった映画館。
十数年前に惜しまれつつ廃館となりました。
温泉地として有名な熱海ですが、
一方で小津安二郎監督の『東京物語』や、アニメ『おもひでぽろぽろ』など
熱海を舞台にした作品が数多くあることでも知られる地。
廃館した映画館に隣接する〈ロマンス座カド〉は、
そんな映画のワンシーンのような熱海の日常を体験できる宿泊施設となっています。

物語は宿泊者次第。かつての熱海を表現した客室。

フロアマップは映画館に飾られたポスターのよう。

フロアマップは映画館に飾られたポスターのよう。

〈ロマンス座カド〉にはシングルとツインの部屋がそれぞれ3つずつあり、
どの部屋からも熱海銀座が見下ろすことが可能。
現地の人たちの暮らしを映画を観るように体験することができます。
部屋ごとに内装のテイストが異なり、
熱海の歴史や街のストーリーを感じながら宿泊ができるのも特徴のひとつです。

「普段着の旭川」を味わう。 北海道・旭川にカフェ兼ゲストハウス 〈旭川公園〉が誕生!

かわいらしい外観の宿泊棟タイニーハウス。左から〈土〉、〈風〉、〈森〉。

北海道は可能性の大地

北海道のほぼ中央に位置し、〈旭山動物園〉を有する旭川に、
ゲストハウス〈旭川公園〉が誕生しました。

最寄り駅は、「旭川」駅からJR宗谷本線で約15分の「永山」駅。
手がけたのは兵庫県西宮市出身の松本浩司さん。
東海地方を中心とする『中日新聞』の記者を経て、
2018年、家族で静岡県浜松市から旭川へ移り住みます。

松本さんご一家。3人のお子さまと奥さまと。

松本さんご一家。3人のお子さまと奥さまと。

伝え手の記者という第三者の立場から、
「それぞれに良さはあるんですけど、当事者の感動の量には勝てない」と、
北海道でゲストハウス運営の道を選んだ松本さん。

「自分で企画した高校の卒業旅行を成功させた思い出の地でもありますし、
日本最北という、突き抜けている感じも好きで。
南はみんな行きたがるけど北はそれほどでもないですよね(笑)
未開拓の素材がたくさんあるイメージがあって、
まだまだ新しいことができる可能性の大地だと思って。」

冬の〈旭川公園〉。手前は地域の子どもたちの遊び道具になっている土管。奥はカフェにもなる〈コモン棟〉。

冬の〈旭川公園〉。手前は地域の子どもたちの遊び道具になっている土管。奥はカフェにもなる〈コモン棟〉。

「特に旭川は、北海道で2番目に大きなまちだけど、
目立たないというか色がないというか、存在感が薄いなと前から思っていて。
経済も人口も右肩下がり。
十勝や札幌には地域をおもしろくする波が来ているけど、ここにはまだ来ていない。
自分にできることがあるなと思ったんです」

“友達の実家”のような場所にしたい

旭川公園があるのは駅から徒歩15分の住宅や学校が立ち並ぶ、
いわゆる観光地ではないエリア。

コモン棟の窓から見える“普段”の景色

コモン棟の窓から見える“普段”の景色

道産のアカマツをフローリングに使った〈風〉の内観。(撮影:鈴木裕矢)

道産のアカマツをフローリングに使った〈風〉の内観。(撮影:鈴木裕矢)

「海外や本州では、“ローカルの暮らしにふれる旅”がトレンドになってきています。
住宅街にあるので近所の人もふらっと立ち寄ることができるし、
森が近くて自然の遊び場に囲まれている。
調べてみると、職人やおもしろい人がたくさん暮らしていて、
遊びに行ったり、来てもらえたり、
ゲストが地元の人といろんなことができる可能性があると感じたんです」

伝えるのは、「普段着の旭川」。目指すのは、「いろんな人が交差する公園のような場所」。

土管など敷地内の遊具は、近隣の子どもたちと一緒にペンキを塗ったり、廃材を利用してつくったもの。これを機に地域の人も集う場所に。(撮影:鈴木裕矢)

土管など敷地内の遊具は、近隣の子どもたちと一緒にペンキを塗ったり、廃材を利用してつくったもの。これを機に地域の人も集う場所に。(撮影:鈴木裕矢)

「ホテルのように何時に必ず送迎しますというお約束はせず、
その都度相談にしています。
“普段の暮らしのなか”でゲストを迎えることを大切にしているので、
公園には地域の人も遊びに来ていますし、
“親戚の家や友達の実家”に遊びに来たような感覚で
リクエストしてもらうのが理想です。

アクティビティも、メニューがあって選んでもらうのではなく、
ゲストの気分によって、車で動物園に送ることもあれば、
地域のプロフェッショナルを紹介して山に登ったり、森で火おこししたり、
畑仕事をやってみたり、“地元の人と一緒に遊ぶ”体験を提案しています」

冬場自然のなかで体を動かしたい人におすすめしたいのはスノーシューやスノーハイク。写真の案内人は土地の資源を生かした遊びを生み出している当麻町の石黒康太郎さん。

冬場自然のなかで体を動かしたい人におすすめしたいのはスノーシューやスノーハイク。写真の案内人は土地の資源を生かした遊びを生み出している当麻町の石黒康太郎さん。

「人を通じて得た思い出は絶対忘れないし、関係人口にもつながっていくと思うんです。
いい意味でこの土地に縛られて暮らしている、
土っぽい人たちに土地の魅力を話してもらう。その方が旅行者もうれしいはず」

〈mountain△grocery〉 沼垂テラス商店街にオープンした ヴィーガン料理店

山と畑の恵みたっぷりの、おいしいヴィーガンを

新潟駅から車で5分ほど、信濃川河口近くにあるまち、沼垂(ぬったり)。
かつて港町として栄え、いまは静かなそのまちに、
観光客や地元の人が行き交い、にぎわいを取り戻した通りがあります。

名前は「沼垂テラス商店街」。
長屋を改装した建物に個性豊かな店がひしめき合い、
どこか懐かしい趣も漂わせています。
2019年8月、同商店街にヴィーガン(*)料理の店
〈mountain△grocery(マウンテン・グロサリー)〉がオープンしました。

*ヴィーガン:動物の命を尊重し、人間は動物を搾取することなく生きるべきであるという考え。肉、魚介類、卵、乳製品などの動物性食品を口にせず、日常生活においても、極力毛皮や皮革をはじめとする動物性の素材を使用しない。動物愛護や環境保全の観点からその主義を守り抜く人が多い。

料理家yoyo.さんがオープンさせた〈mountain△grocery〉。

料理家yoyo.さんがオープンさせた〈mountain△grocery〉。

目印は淡いピンクのドアに窓枠、そしてちょっとポップなネオンサイン。
店の中に入ると、キッチンに面したカウンター席とテーブル席がひとつ。
奥には個室もあります。

キッチンに立つのは、店主のyoyo.(ヨーヨー)さん。
きびきびと動き、元気な声で迎えてくれます。

東京に生まれ、もともとファッションの世界で活動していたyoyo.さんは、
30歳のときに南インドを旅し、古くから伝わる菜食主義の文化に
感銘を受けたのだとか。

それからは野菜中心の食生活に切り替え、2006年頃には
東京・高円寺にて〈VEGEしょくどう〉という名で料理を提供するように。
その後、原宿、沖縄県那覇市などへと拠点を移し、
その土地土地の食文化を吸収しながら料理の腕を磨いてきました。

店内の椅子と一枚板を用いたテーブルは新潟県産の木材を用い、DIYで制作したもの。店舗デザインと家具の制作を手がけたのは〈デザインムジカ〉の安藤僚子さん。

店内の椅子と一枚板を用いたテーブルは新潟県産の木材を用い、DIYで制作したもの。店舗デザインと家具の制作を手がけたのは〈デザインムジカ〉の安藤僚子さん。

そんなyoyo.さんの店で食べられるのは、地場産の自然栽培の野菜をたっぷり使った
「ファラフェルサンドプレート」。

自家製天然酵母のピタパンに揚げたてのファラフェルと総菜を挟んでいただくと、
口の中に野菜の甘みやほろ苦さが広がり、
野菜ってこんなに複雑な味わいがあるんだ、と新鮮な気持ちに。
yoyo.さんが旅先で出会った、さまざまな料理のエッセンスが加えられているのも、
この店ならではです。

ぜひ味わってほしいのは、なめらかなフムス。
すーっと体に入っていくように感じられるのは、
大量生産された加工品や添加物を使っていないせいかもしれません。

「ファラフェルサンドプレート」(1200円)ファラフェル(ひよこ豆のコロッケ)と、ビーツのフムス、人参とブロッコリーのクミンソテー、長ネギと柿のマリネなど、日替わりの総菜が色鮮やかに並ぶ。ピタパン、スープつき。

「ファラフェルサンドプレート」(1200円)。ファラフェル(ひよこ豆のコロッケ)と、ビーツのフムス、人参とブロッコリーのクミンソテー、長ネギと柿のマリネなど、日替わりの総菜が色鮮やかに並ぶ。ピタパン、スープつき。

ファラフェルのほか、〈ホシノコーヒーラボ〉の珈琲やヴィーガンケーキもおいしい。
ヴィーガン料理は初めて、という方にもおすすめできるお店です。

そもそもyoyo.さんは、完全菜食主義ではないのだそう。
新潟市に拠点を移す以前は、県内の山深い地域にも暮らしており、
自然と共生してきた食文化と出会い、近所の猟師さんがしとめた猪をいただくことも。
獣害の深刻さも知り、いろいろな料理にアレンジして、
野生のお肉のおいしさを率先して周りに伝えていたといいます。

旧沼垂市場の長屋を改装して誕生した沼垂テラス商店街。手づくり総菜と佐渡牛乳ソフトクリームの店〈ルルックキッチン〉のスイーツもおすすめ。ぜひお立ち寄りを。

旧沼垂市場の長屋を改装して誕生した沼垂テラス商店街。手づくり総菜と佐渡牛乳ソフトクリームの店〈ルルックキッチン〉のスイーツもおすすめ。ぜひお立ち寄りを。

マウンテン・グロサリーのある商店街の長屋は、もともと市場として使われていた建物。
近年は高齢化や郊外化の影響からシャッター街と化していましたが、
この界隈に昭和40年から店を構える大衆割烹〈大佐渡たむら〉の
2代目店主、田村寛さんが2010年に〈ルルックキッチン〉をオープン。
その後、田村さんの呼びかけによって店が集まり始め、
いまでは30近くの店が営業しています。

総合格闘家・宇野薫の旅コラム
「徳島とブラジリアン柔術、
不思議なコミュニティの循環」

さまざまなクリエイターによる旅のリレーコラム連載。
第5回は、総合格闘家の宇野薫さんが
徳島に家族で遊びに行った話から始まります。
しかしただ遊びに行くだけではなく
格闘技やブラジリアン柔術を経由することで大きく膨れ上がり、
宇野さんを徳島にどんどん引き込んでいったようです。

すべては試合用のトランクスから始まった

総合格闘技の試合をするときのコスチュームには、いろいろなタイプがあるが、
僕はピタッとフィットしたタイプのものを使っている。
古いタイプの水着のようなカタチ、といえばわかりやすいかもしれない。

2012年頃から愛用しているのは〈ナルトトランクス〉のものだ。
いまはサーフトランクスがファッションアイテムとしても人気を博しているが、
昔からスイムウェアをつくり続けてきたブランドである。

ナルトトランクスがつくってくれた試合用コスチューム。(写真提供:SUSUMU NAGAO)

ナルトトランクスがつくってくれた試合用コスチューム。(写真提供:SUSUMU NAGAO)

ナルトトランクスは名前からわかる通り、徳島県鳴門市に工房を構えている。
2代目の山口輝陽志さんに誘われ、初めて鳴門に遊びに行ったのは、
2014年の夏休みだったと思う。

僕が住んでいる横浜から車で8〜10時間かけて、家族みんなでドライブだ。
鳴門に着いてからはサーフィンをしたり、海や川で遊んだり、釣りをしたり。
自然のなかで遊ぶことがほとんど。
普段は例に漏れずゲームが好きな子どもたちも、ここぞとばかりに楽しんでいた。
それ以来、宇野家の徳島行きは、毎年夏休みの恒例行事となっていった。

徳島の海を満喫。

徳島の海を満喫。