小説を肴に日本酒を一杯。 〈ほろ酔い文庫〉創刊。 第一弾は山内マリコの恋愛小説

日本酒を嗜むときは、その土地のものを肴に。
と、いうのは飲兵衛の人たちの間ではよく耳にする言葉。
お酒の造り手やその土地に住む人や風土、歴史などを知ることは
より日本酒を深く味わえることができるのは間違いないでしょう。

そんな人と土地、お酒との関係性を「お酒と物語」という
新しいスタイルに編み直したお酒〈ほろよい文庫〉が創刊。
“文庫”と銘打たれた通り、短編小説付きの日本酒なのです。

男女の絵柄でそれぞれ異なる2通りの味わいと物語。

日本酒に付属された2つの短編小説。左から〈一杯目『運命の人かもしれないけど「じゃあ、ここで』〉、〈二杯目『あしたはまだ到着していない』〉。

日本酒に付属された2つの短編小説。左から〈一杯目『運命の人かもしれないけど「じゃあ、ここで』〉、〈二杯目『あしたはまだ到着していない』〉。

〈ほろよい文庫〉第一弾は、新潟の酒処・長岡が舞台。
小説を担当した作家・山内マリコが
実際に訪れて土地の空気を感じながら書き下ろしたものです。
長岡での男女の出会いを、
男性と女性それぞれの視点からリアルに描いています。

〈ryugon(りゅうごん)〉 四季を通じて雪国の叡智を体感する、 デザインコンシャスな宿

有名宿〈温泉御宿 龍言〉が2019年秋にリニューアル

平成の大合併により六日町、大和町、塩沢町の3町が合併して誕生した南魚沼市。
日本随一の米どころ、そして1日の降雪量が1メートルを超える年もある豪雪地です。
このまちのはっきりとした四季は、足を運ぶごとにまた違った魅力を感じさせます。

まちのシンボル八海山

まちのシンボル八海山。

その旧六日町で数少ない温泉宿だった〈温泉御宿 龍言〉。
2万坪の敷地の中に、文化文政時代(1804〜1829年)の六日町の豪農の館や、
武家屋敷など8つの古民家を移築してつくられ、
重要文化財にも指定された龍言は、多くの著名人や文人から愛され、
近年では将棋の竜王戦の会場としても名を馳せていました。

もともとの宿の姿をベースに歴史を引き継ぎつつ、
雪国の風土や文化、食生活を体験できる旅館としてリノベーションを果たし、
2019年10月にリスタートしたのが〈ryugon〉です。

リノベーションは〈蘆田暢人建築設計事務所〉によって手がけられました。
まずは、その館内をご紹介。

白い囲炉裏

レセプション奥にあるryugonのランドマーク、白い囲炉裏。
吹き抜けの天井は、雪が積もっているときは薄暗く、
晴れた日は木漏れ日のようなやさしい光が射します。
冬の間は火が入り、冷え切った体を緩やかに温めてくれます。

その囲炉裏の奥、昼はウエルカムドリンクや軽食が置かれ、
夜はお酒がいただけるバースペースでは、新潟の地酒はもちろん、
日本全国のクラフトジンや、オリジナルカクテルがいただけます。
食後や風呂上がりのお楽しみに。

岡山県西粟倉村〈ようび〉のオリジナル造作家具〈snow cover〉。冬の空の色のようなグレーがすてき。

岡山県西粟倉村〈ようび〉のオリジナル造作家具〈snow cover〉。冬の空の色のようなグレーがすてき。

ガーデンラウンジで目を惹くインテリアは、
岡山県西粟倉村〈ようび〉がこのryugonのためにつくった
オリジナル造作家具〈snow cover〉。
無垢の板を削り出してつくられた職人の手づくりです。

 囲炉裏の炭火で料理する、〈立焼〉の様子。

囲炉裏の炭火で料理する、〈立焼〉の様子。

食事はレストランで。
雪国で昔から受け継がれてきた野山の食材や文化を今に伝える、
伝統料理をベースにしたコース料理〈雪国ガストロノミー〉をいただけます。
龍言の時代から名物だった〈立焼〉と呼ばれる、
レストラン中央の囲炉裏の炭火で焼いた地元食材をメインディッシュとした
和の創作フルコース。
なかでも絶対的な自信があるのは、土鍋で提供される魚沼産コシヒカリ。
精米したて炊きたてのご飯を、多種多様なご飯のお供とともに頬張れば
多幸感で満たされるでしょう。

〈カールベンクス古民家民宿YOSABEI〉 200年の時と住まう、佐渡の農家民宿

古色蒼然とした屋敷を宿として再生

佐渡の中央部に位置する、国仲平野。
ふたつの山脈に挟まれ、美しい自然を有するこのエリアは
「トキの森公園」などの観光スポットもあり、
ほかのエリアにもアクセスしやすい地区です。

山から平野へ、清らかな水が流れるこの辺りは、その昔、豊かな農村地帯でした。
いまでも、穏やかな農村風景の名残をここかしこに見ることができます。
今回ご紹介するのは、同エリアにある農家民宿
〈カールベンクス古民家民宿YOSABEI(よさべい)〉。

両津港から15分ほど車を走らせ、林を抜けると、
オレンジ色の外壁に黒い屋根の建物が現れました。
その向こうには、畑が広がっています。

実はこの建物、江戸時代の家をリノベーションしたもの。
一歩、中に入ると、吹き抜けのダイナミックな空間が広がり、
正面には江戸時代に広まった階段箪笥が。
天井には太い梁が張り巡らされています。

リビングはかつて、村をあげての結婚式やお葬式に人々が集った場所。ダイニングテーブルはカール・ベンクスさんのデザイン。イスは佐渡の家具店で購入したもの。

リビングはかつて、村をあげての結婚式やお葬式に人々が集った場所。ダイニングテーブルはカール・ベンクスさんのデザイン。イスは佐渡の家具店で購入したもの。

床はフローリング、壁は桜色の漆喰壁。
新築のようにぴかぴかでありながら何ともいえず落ち着くのは、
古い木に包まれているせいでしょうか。木材のほとんどは、
元の家で使われていた200年前の木を使用しているといいます。

宿のオーナーは仲塚周子さん、雄輝さん夫妻。
娘の木春ちゃん(5歳)、木ノ芽ちゃん(1歳半)と家族4人でこの家に暮らし、
住み開きの宿を営んでいます。

東京に暮らしていたふたりは、東日本大震災を機に
「いつかは移住を」と考えるようになり、
2015年に周子さんの実家がある佐渡にIターン。
佐渡に移る大きなきっかけとなったのは、周子さんが受け継いだこの家でした。

「私の家は、祖父の代まで400年間ここに根ざしていました。
この辺りが農村として栄えていた頃は、庄屋さんを務めていたこともあったようです。
ところが祖父が他界して数年後に、この家が壊されるという話が持ち上がって。
そのときに、これまで受け継がれてきたものがなくなってしまうことに
強い抵抗を感じたんですね。それで最初は移住するつもりもなく、
老朽化した家を直すことにしたんです。とにかく“家を直そう”と」(周子さん)

仲塚雄輝さん、周子さん夫妻と娘の木春ちゃん、木ノ芽ちゃん。

仲塚雄輝さん、周子さん夫妻と娘の木春ちゃん、木ノ芽ちゃん。

その頃に雄輝さんが見つけたのが、ドイツ出身の建築デザイナー、
カール・ベンクスさんのことを紹介している本。
数々の古民家を再生させてきたベンクスさんは、新潟県十日町市に暮らしていました。
ふたりはすぐに会いにいき、ベンクスさんに改修をゆだねることに。
そしてベンクスさんと打ち合わせを重ねるうちに、
いつしか移住を決心していたといいます。

「ドイツでは街道沿いで暮らす農家はゲストルームを持っていて、
お客様をお迎えするそうです。そういうことにチャレンジしてみては、
とベンクスさんに提案されて、ひと部屋くらいやってみよう! と決めたんです」

かくして完成したのは、お客さんを迎え、暮らしながらもてなせる家。
ゲストルームは2階の角部屋にあり、風通しがよく、光溢れる空間。
窓からは林や蔵、長屋門を改装した新館が見えます。
また、宿泊客には専用のシャワールームと洗面台、トイレも用意されています。

2階に上がると吹き抜けを囲んで回り廊下のようなっており、奥に客室が。

2階に上がると吹き抜けを囲んで回り廊下のようなっており、奥に客室が。

ベッドとソファ、小さなアンティークのテーブルが置かれたシンプルで過ごしやすい部屋。

ベッドとソファ、小さなアンティークのテーブルが置かれたシンプルで過ごしやすい部屋。

ベンクスさんがデザインしたテーブルが置かれているリビングは、
その昔、囲炉裏があった場所。
家に囲炉裏があった時代は、囲炉裏から立ち上る煙が建物と茅葺き屋根を燻し、
湿気や害虫から家を守るという、火を中心とした暮らしが営まれていました。

囲炉裏は祖父の代でガス台に変わりましたが、
今回の改修では、リビングに大きな薪ストーブを設置。
薪ストーブは上に鍋を置き、炉として使うこともできます。
揺らめく火を眺めながらじんわり温まる感覚は、エアコンでは味わえないもの。
やっぱり、火を囲む暮らしはよいものです。

薪ストーブが置かれたリビングスペース。

薪ストーブが置かれたリビングスペース。

柱や梁は、ベンクスさんのこだわりで“煤黒”色にペイント。
これは、囲炉裏の煙が家屋を染める色をイメージした色なのだとか。
柱や漆喰を塗る作業は、地元の腕のいい職人さんに教わりながら、
雄輝さんと周子さんも行いました。

〈Agawa〉 老朽化した阿川駅が 山陰の魅力を発信するスポットに! クラウドファウンディングも

京都駅から下関駅まで、日本海沿岸のまちを結ぶ、山陰本線。
海、山、田畑を走る汽車は、
日本の原風景と出会える、情感あふれる乗りものです。

山陰本線

山陰本線

2020年3月下旬、その山陰本線にある阿川駅に
山陰の魅力を発信する商業施設〈Agawa〉がオープンします。
施設内には山陰のお酒や軽食などを楽しめるカフェ、
地元のおみやげを扱うショップ、レンタサイクルなどが展開するそう。
空間設計を手がけるのは、人気デザインスタジオ〈TAKT PROJECT〉。
山陰に、またすてきな施設が登場しそうです。

〈Agawa〉完成イメージ(TAKT PROJECT)

〈Agawa〉完成イメージ(TAKT PROJECT)

これは、山口県萩市にある〈萩ゲストハウスruco〉と
JR西日本、山口県、下関市による行政プロジェクト。
発起人は、萩ゲストハウスrucoのオーナー、塩満直弘さん。

〈萩ゲストハウスruco〉オーナー、塩満直弘さん

〈萩ゲストハウスruco〉オーナー、塩満直弘さん

山口県萩市に生まれ、アメリカ、カナダ、東京、鎌倉での生活を経て、
萩市にUターンした塩満さんは、自分の生まれ育ったまちに
「既存の価値観だけでなくもっと多様な選択肢をつくりたい」と、
2013年10月に萩ゲストハウスrucoをオープンさせました。

〈萩ゲストハウスruco〉

〈萩ゲストハウスruco〉

そんな塩満さんが友人の案内で山陰本線沿線の無人駅を訪れ、
そこに溢れる旅情に圧倒されたのだとか。

阿川駅

阿川駅

それから、「この景色をもっとたくさんの人たちと共有できないものか」
「山陰本線と景観とを再編集することで新たな価値を
生むことができるのではないか」と、思考を巡らせた塩満さん。
1週間後にはJR 西日本・地域共生室の方と出会い、
老朽化していた駅待合室の新設に合わせ、
本プロジェクトが始動することになりました。

宿から感じる地域の文化。
鎌倉の小さなホテル〈hotel aiaoi〉を
営む夫婦が大切にしたいこと

鎌倉から考えるローカルの未来

長い歴史と独自の文化を持ち、豊かな自然にも恵まれた日本を代表する観光地・鎌倉。
年間2000万人を超える観光客から、鎌倉生まれ鎌倉育ちの地元民、
そして、この土地や人の魅力に惹かれ、移り住んできた人たちが
交差するこのまちにじっくり目を向けてみると、
ほかのどこにもないユニークなコミュニティや暮らしのカタチが見えてくる。

東京と鎌倉を行き来しながら働き、暮らす人、
移動販売からスタートし、自らのお店を構えるに至った飲食店のオーナー、
都市生活から田舎暮らしへの中継地点として、この地に居を移す人etc……。

その暮らし方、働き方は千差万別でも、彼らに共通するのは、
いまある暮らしや仕事をより豊かなものにするために、
あるいは、持続可能なライフスタイルやコミュニティを実現するために、
自分たちなりの模索を続ける、貪欲でありマイペースな姿勢だ。

そんな鎌倉の人たちのしなやかなライフスタイル、ワークスタイルにフォーカスし、
これからの地域との関わり方を考えるためのヒントを探していく。

鎌倉・長谷にある〈hotel aiaoi〉から数分も歩けば、眼前には穏やかな海が広がる。

鎌倉・長谷にある〈hotel aiaoi〉から数分も歩けば、眼前には穏やかな海が広がる。

独自の存在感を放つ、全6室の小さなホテル

季節を問わず多くの観光客が訪れる鎌倉だが、東京から日帰りができることや、
十分な敷地を確保することが難しいことなどから、大規模なホテルはそう多くない。
一方、古民家を活用したゲストハウスなどは市内に点在し、
鎌倉ならではの滞在が楽しめる宿として人気を集めているが、
今回紹介する〈hotel aiaoi〉は、これらとも一線を画す全6室の小さなホテルだ。

オーナーは、結婚を機に東京から鎌倉に移住した小室剛さん・裕子さん夫妻。
鎌倉で暮らし始めたことで仕事観、価値観が大きく変わったふたりは、
このまちらしいシンプルで心地良い時間が過ごせる宿として、
2016年にhotel aiaoiを鎌倉・長谷にオープンさせた。

hotel aiaoiを切り盛りする小室剛さん・裕子さん夫妻。

hotel aiaoiを切り盛りする小室剛さん・裕子さん夫妻。

空間や部屋のしつらえからアメニティ、食器・食材などのセレクト、
宿泊客とのコミュニケーション、そしてWebサイトにいたるまで
あらゆる部分に、小室夫妻の美意識が表現されているhotel aiaoi。

ここには、大規模ホテルのようなサービスや、高級旅館のようなおもてなし、
あるいはゲストハウスのようなフレンドリーさはないかもしれないが、
hotel aiaoiならではのコミュニケーションを通じて、宿泊客たちは、
鎌倉という土地で育まれてきた文化や暮らしを感じることができるはずだ。

鎌倉での生活、そして、宿の運営を通して、
自分たちが大切にしたい暮らしのあり方や美意識を研ぎ澄ませ、
ホテルという場を起点に、観光地としての鎌倉とは少し異なる、
このまちの魅力を感じさせてくれる小室夫妻を訪ねた。

およそ築40年のビルの3階にあるhotel aiaoi。以前に女性専用の宿泊施設として使われていた物件を改装したという。

およそ築40年のビルの3階にあるhotel aiaoi。以前に女性専用の宿泊施設として使われていた物件を改装したという。

〈F/style(エフスタイル)〉 「使ってみたい」が揃う 生活道具のショールーム

使われてこそ磨かれる、スタンダード

新潟市の中心部から南へ車を走らせること、十数分。
にぎやかなまちの気配が途切れ、すかんと空が広がるエリアに
〈F/style(エフスタイル)〉のショールームはありました。

エフスタイルショールーム外観

倉庫を改装した建物に入ると、天井の高い凛とした空間に
衣類と生活の道具たちが並んでいます。
山形を発祥とする「月山緞通(がっさんだんつう)」のマット、
新潟市亀田に伝わる亀田縞のシャツやエプロン、
ジーンズの産地、岡山でつくられるジーンズ、
新潟県燕市産の行平鍋……。

いずれも、ロゴも装飾もない、シンプルなものばかり。
それでいて、肌触りがよく手に馴染むものであったり、ユニークな形であったり。
どれも「使ってみたい」と思わせる魅力にあふれていました。

銅の鍋や再生ビンの計量カップなど、調理器具も取り揃える。上段のわっぱ鍋の鍋は〈イソダ器物〉によるもの。

銅の鍋や再生ビンの計量カップなど、調理器具も取り揃える。上段のわっぱ鍋の鍋は〈イソダ器物〉によるもの。

新潟県燕市のイソダ器物の行平鍋。1枚の銅板をへら絞りという昔ながらの技法で成形している。持ち手は新潟の間伐材を使用した、阿賀野市の〈工房るるの小屋〉制作のもの。このほかに銅の片口や燭台、皿なども揃う。

新潟県燕市のイソダ器物の行平鍋。1枚の銅板をへら絞りという昔ながらの技法で成形している。持ち手は新潟の間伐材を使用した、阿賀野市の〈工房るるの小屋〉制作のもの。このほかに銅の片口や燭台、皿なども揃う。

店に立つのは、エフスタイルを主宰する五十嵐恵美さんと星野若菜さん。
彼女たちの仕事は「製造以外で商品が流通するまでに必要なことはすべて」。
デザインを核に、商品化から流通、接客までを担っています。

最初に拠点を構えた市街地からいまの場所に移ってきたのは2012年のこと。
友人の建築家、〈暮らしと建築社〉の須永次郎さん、理葉さん夫妻に設計を依頼し、
広大な空間に“箱を置くように”仕事場を設けて売場とスペースを分け、
開放感のあるショールームに仕上げてもらいました。

天井までさえぎる壁もドアもない、開放感あふれる空間。向かって左が仕事場、上は「コンテナ」と名づけられたフリースペース。梯子のような階段で上り、高い所を歩くのも楽しい。

天井までさえぎる壁もドアもない、開放感あふれる空間。向かって左が仕事場、上は「コンテナ」と名づけられたフリースペース。梯子のような階段で上り、高い所を歩くのも楽しい。

学生時代から一緒にものづくりをしている星野若菜さん(左)と五十嵐恵美さん(右)。

学生時代から一緒にものづくりをしている星野若菜さん(左)と五十嵐恵美さん(右)。

階段を上り2階へ上がると、エフスタイルの原点ともいえる
〈ハウスドギーマット〉が並んでいました。
ベースは麻のループ織り、犬の部分はウールのカット織り。
温かみのある素材で織り込まれた犬のシルエットが印象的です。

山形県の〈穂積繊維工業〉の職人がハンドフックを用いて織り上げた〈ハウスドギーマット〉。

山形県の〈穂積繊維工業〉の職人がハンドフックを用いて織り上げた〈ハウスドギーマット〉。

このマットの原型が生まれたのは、大学生の頃。
新潟市に生まれ育ったふたりは、山形県にある東北芸術工科大学へ進み、
プロダクトデザインを専攻。学内で開催されたワークショップに参加したときに
マットのアイデアを思いついたといいます。

「そのワークショップは工場が自社で企画・生産する能力を養うことを
目的としたもので、地元の企業を招いて開催されました。
私たちは月山緞通の高い技術を持つ〈穂積繊維工業〉とものづくりをすることになり、
社長さんに“麻とウールをミックスした、これからの暮らしに使えるマットをつくりたい”
と言われたんです。

そこで私たちが提案したのが、犬が体を休めるための室内犬用のマットでした。
そのアイデアが形になっていくときに、尊敬の気持ちが
プロダクトに変わっていったという感覚があったんですね。
いまも私たちの根底にあるスタンスは、その頃と変わっていません」(星野さん)

大学を卒業して新潟市へ戻り、「さて、何をしようか」と思ったふたり。
ふと可能性を感じていたあのマットのことを思い出し、それを世に届けたいと想起。
穂積繊維工業へ相談を持ちかけるとすぐに商品化が決まり、
2001年に「身近な産地に仕事が生まれるようなデザインと流通のかたちを」
という思いのもと、活動をスタートさせました。

月山緞通のハウスドギーマット

いざマットが発売されると玄関にマットを置く人が多く、
当初犬のためにデザインされたマットは、帰宅時に犬が迎えてくれるイメージに。
吸湿性、通気性にすぐれた素材も玄関にフィットし、
エフスタイルのヒット商品になりました。

その後、シナ織りや亀田縞などのつくり手と出会って少しずつアイテムを増やし、
これまでに約200種のアイテムを手がけています。

大正14年築の駅舎を ホテルにリノベーション! 〈NIPPONIA HOTEL 高野山 参詣鉄道 Operated by KIRINJI〉 がオープン

古民家や歴史的建築物をホテルにリノベーションしたという
施設情報を見かけることは少なくありませんが、
この〈NIPPONIA HOTEL 高野山 参詣鉄道 Operated by KIRINJI〉はひと味違います。
なんとこのホテル、
駅舎を改修し、2019年11月に開業したちょっとユニークな宿泊施設なのです。

南海電気鉄道高野線の高野下駅外観。

こちらのホテルは、現在でも南海電気鉄道高野線の駅として利用されている
大正14年に建てられた高野下駅の構内にあります。
近代化産業遺産にも認定されていて、歴史的観点からみても重要な建物。
客室からは列車を眺めることができ、
鉄道好きにはたまらない宿泊施設となっています。

野毛〈酒蔵 石松〉
「ローカル酒場巡りは小旅行」
ツウから教わる、野毛の飲み方、愛し方

旅の醍醐味はローカル酒場!
全国おすすめ酒場探訪記 横浜・野毛編
酒場から知るまちのうつろい、新たな幸せ

今回のローカル酒場は、関東圏の聖地のひとつ、
神奈川県は横浜・野毛にご案内。
JR桜木町駅と京浜急行日ノ出町駅の間にあるこの地は、
横浜の昔と今、文化と喧騒が混在。
丘の上には緑と瀟洒(しょうしゃ)な世界、海に向かえばみなとみらい。
そして、まちなかはと言えば……。

昭和の時代は、港湾、市場関係者が元気と癒しを求めたまち。
ギャンブルも艶もあって、だからこその人情もある。
その歴史を見続けてきたのが立ち飲みの〈酒蔵 石松〉。

野毛のまちのネオンに誘われ、ふらりふらりとはしご酒を楽しむのも粋。

野毛のまちのネオンに誘われ、ふらりふらりとはしご酒を楽しむのも粋。

桜木町駅から〈野毛ちかみち〉を使ってわずか5分で酒飲みのパラダイスへ。複合施設ぴおシティ地下2階の一角にある〈石松〉。平日の午後3時でもカウンターはすでにこの様子。

桜木町駅から〈野毛ちかみち〉を使ってわずか5分で酒飲みのパラダイスへ。複合施設ぴおシティ地下2階の一角にある〈石松〉。平日の午後3時でもカウンターはすでにこの様子。

大将の早乙女節夫さんは、
「やんちゃなことは散々やってきたよ! 今はもう全部やめたけどさ。
昭和の時代にここにいたら、そりゃそうなっちゃうよ」
とカラッと明るい笑顔。

1968(昭和43)年にフルーツ屋として開業し、
1977(昭和52)年に立ち飲み屋に転業。
現在は〈ぴおシティ〉となっているビルが、
まだ〈桜木町ゴールデンセンター〉という名前だったころから、
この飲食店街で営んでいるのは〈石松〉を含めて
「もう4軒ぐらいになっちゃったかね」と早乙女さん。
今と昔のこの土地を感じる。それがローカル酒場の楽しみです。

今回の案内人は、ヘアスタイリストの平田克也さん。
趣味がローカル酒場巡りで、野毛はもうホーム感覚で、
お気に入りの店やコースはいくつもあります。

平田さんはヘアスタイリストという仕事柄、平日が休日。ローカル酒場を巡る人にとって週末の混雑を避けることができて好都合なのだとか。

平田さんはヘアスタイリストという仕事柄、平日が休日。ローカル酒場を巡る人にとって週末の混雑を避けることができて好都合なのだとか。

「血の一滴」なんて堅い言葉も早乙女さんの笑顔で聞くと心躍るひと言に。コップ酒(290円)、2杯分飲める徳利(530円)。

「血の一滴」なんて堅い言葉も早乙女さんの笑顔で聞くと心躍るひと言に。コップ酒(290円)、2杯分飲める徳利(530円)。

平田さんは、ローカル酒場巡りは「小旅行」と言います。
予定は詰め込まず、さっと飲んで食べて、
その時の気分で次へ、というのが彼のゆるやかな流儀。

「最初にハマったのは、4、5年前、大井町でした」。
狭い路地に並ぶ酒場を歩き、数軒はしごすれば
そのまちの昔と今が感じられる不思議。
初めて訪れるまちでも、ローカル酒場がその地のことを教えてくれる。
まさにそれは小旅行なのでしょう。

平田さんが独立し、〈TSUKI〉というサロンをオープンしたのは1年前。
自身がが手掛けるTシャツや、海外で買い付けてきたアクセサリーが並ぶ、
クリエイティブなスペースでもありますが、
ロケーションはと言えば、中目黒駅すぐの酒場街の雑居ビル。
変わりゆく中目黒の高架下、昭和の面影が残る酒場。
その両方を感じられる場所に引き寄せられたのは、
平田さんにとって自然なことだったのでしょうか。

ホステル〈ロマンス座カド〉から広がる 熱海の新しい楽しみ方

近年熱海はV字回復と言われるほど
観光客が増え、賑わいをみせているエリア。
新しい店舗も増えていますが、
建物の2階以上は依然として空室のところが多く、
大きな課題となっているそうです。

そんな熱海の繁華街・熱海銀座にある〈ロマンス座〉に隣接する
ビルの2~4階をフルリノベーションした、
新しい宿泊スポット〈ロマンス座カド〉がオープンしました。

ホテルロマンス座カド

名前にある〈ロマンス座〉とは、かつて熱海にあった映画館。
十数年前に惜しまれつつ廃館となりました。
温泉地として有名な熱海ですが、
一方で小津安二郎監督の『東京物語』や、アニメ『おもひでぽろぽろ』など
熱海を舞台にした作品が数多くあることでも知られる地。
廃館した映画館に隣接する〈ロマンス座カド〉は、
そんな映画のワンシーンのような熱海の日常を体験できる宿泊施設となっています。

物語は宿泊者次第。かつての熱海を表現した客室。

フロアマップは映画館に飾られたポスターのよう。

フロアマップは映画館に飾られたポスターのよう。

〈ロマンス座カド〉にはシングルとツインの部屋がそれぞれ3つずつあり、
どの部屋からも熱海銀座が見下ろすことが可能。
現地の人たちの暮らしを映画を観るように体験することができます。
部屋ごとに内装のテイストが異なり、
熱海の歴史や街のストーリーを感じながら宿泊ができるのも特徴のひとつです。

「普段着の旭川」を味わう。 北海道・旭川にカフェ兼ゲストハウス 〈旭川公園〉が誕生!

かわいらしい外観の宿泊棟タイニーハウス。左から〈土〉、〈風〉、〈森〉。

北海道は可能性の大地

北海道のほぼ中央に位置し、〈旭山動物園〉を有する旭川に、
ゲストハウス〈旭川公園〉が誕生しました。

最寄り駅は、「旭川」駅からJR宗谷本線で約15分の「永山」駅。
手がけたのは兵庫県西宮市出身の松本浩司さん。
東海地方を中心とする『中日新聞』の記者を経て、
2018年、家族で静岡県浜松市から旭川へ移り住みます。

松本さんご一家。3人のお子さまと奥さまと。

松本さんご一家。3人のお子さまと奥さまと。

伝え手の記者という第三者の立場から、
「それぞれに良さはあるんですけど、当事者の感動の量には勝てない」と、
北海道でゲストハウス運営の道を選んだ松本さん。

「自分で企画した高校の卒業旅行を成功させた思い出の地でもありますし、
日本最北という、突き抜けている感じも好きで。
南はみんな行きたがるけど北はそれほどでもないですよね(笑)
未開拓の素材がたくさんあるイメージがあって、
まだまだ新しいことができる可能性の大地だと思って。」

冬の〈旭川公園〉。手前は地域の子どもたちの遊び道具になっている土管。奥はカフェにもなる〈コモン棟〉。

冬の〈旭川公園〉。手前は地域の子どもたちの遊び道具になっている土管。奥はカフェにもなる〈コモン棟〉。

「特に旭川は、北海道で2番目に大きなまちだけど、
目立たないというか色がないというか、存在感が薄いなと前から思っていて。
経済も人口も右肩下がり。
十勝や札幌には地域をおもしろくする波が来ているけど、ここにはまだ来ていない。
自分にできることがあるなと思ったんです」

“友達の実家”のような場所にしたい

旭川公園があるのは駅から徒歩15分の住宅や学校が立ち並ぶ、
いわゆる観光地ではないエリア。

コモン棟の窓から見える“普段”の景色

コモン棟の窓から見える“普段”の景色

道産のアカマツをフローリングに使った〈風〉の内観。(撮影:鈴木裕矢)

道産のアカマツをフローリングに使った〈風〉の内観。(撮影:鈴木裕矢)

「海外や本州では、“ローカルの暮らしにふれる旅”がトレンドになってきています。
住宅街にあるので近所の人もふらっと立ち寄ることができるし、
森が近くて自然の遊び場に囲まれている。
調べてみると、職人やおもしろい人がたくさん暮らしていて、
遊びに行ったり、来てもらえたり、
ゲストが地元の人といろんなことができる可能性があると感じたんです」

伝えるのは、「普段着の旭川」。目指すのは、「いろんな人が交差する公園のような場所」。

土管など敷地内の遊具は、近隣の子どもたちと一緒にペンキを塗ったり、廃材を利用してつくったもの。これを機に地域の人も集う場所に。(撮影:鈴木裕矢)

土管など敷地内の遊具は、近隣の子どもたちと一緒にペンキを塗ったり、廃材を利用してつくったもの。これを機に地域の人も集う場所に。(撮影:鈴木裕矢)

「ホテルのように何時に必ず送迎しますというお約束はせず、
その都度相談にしています。
“普段の暮らしのなか”でゲストを迎えることを大切にしているので、
公園には地域の人も遊びに来ていますし、
“親戚の家や友達の実家”に遊びに来たような感覚で
リクエストしてもらうのが理想です。

アクティビティも、メニューがあって選んでもらうのではなく、
ゲストの気分によって、車で動物園に送ることもあれば、
地域のプロフェッショナルを紹介して山に登ったり、森で火おこししたり、
畑仕事をやってみたり、“地元の人と一緒に遊ぶ”体験を提案しています」

冬場自然のなかで体を動かしたい人におすすめしたいのはスノーシューやスノーハイク。写真の案内人は土地の資源を生かした遊びを生み出している当麻町の石黒康太郎さん。

冬場自然のなかで体を動かしたい人におすすめしたいのはスノーシューやスノーハイク。写真の案内人は土地の資源を生かした遊びを生み出している当麻町の石黒康太郎さん。

「人を通じて得た思い出は絶対忘れないし、関係人口にもつながっていくと思うんです。
いい意味でこの土地に縛られて暮らしている、
土っぽい人たちに土地の魅力を話してもらう。その方が旅行者もうれしいはず」

〈mountain△grocery〉 沼垂テラス商店街にオープンした ヴィーガン料理店

山と畑の恵みたっぷりの、おいしいヴィーガンを

新潟駅から車で5分ほど、信濃川河口近くにあるまち、沼垂(ぬったり)。
かつて港町として栄え、いまは静かなそのまちに、
観光客や地元の人が行き交い、にぎわいを取り戻した通りがあります。

名前は「沼垂テラス商店街」。
長屋を改装した建物に個性豊かな店がひしめき合い、
どこか懐かしい趣も漂わせています。
2019年8月、同商店街にヴィーガン(*)料理の店
〈mountain△grocery(マウンテン・グロサリー)〉がオープンしました。

*ヴィーガン:動物の命を尊重し、人間は動物を搾取することなく生きるべきであるという考え。肉、魚介類、卵、乳製品などの動物性食品を口にせず、日常生活においても、極力毛皮や皮革をはじめとする動物性の素材を使用しない。動物愛護や環境保全の観点からその主義を守り抜く人が多い。

料理家yoyo.さんがオープンさせた〈mountain△grocery〉。

料理家yoyo.さんがオープンさせた〈mountain△grocery〉。

目印は淡いピンクのドアに窓枠、そしてちょっとポップなネオンサイン。
店の中に入ると、キッチンに面したカウンター席とテーブル席がひとつ。
奥には個室もあります。

キッチンに立つのは、店主のyoyo.(ヨーヨー)さん。
きびきびと動き、元気な声で迎えてくれます。

東京に生まれ、もともとファッションの世界で活動していたyoyo.さんは、
30歳のときに南インドを旅し、古くから伝わる菜食主義の文化に
感銘を受けたのだとか。

それからは野菜中心の食生活に切り替え、2006年頃には
東京・高円寺にて〈VEGEしょくどう〉という名で料理を提供するように。
その後、原宿、沖縄県那覇市などへと拠点を移し、
その土地土地の食文化を吸収しながら料理の腕を磨いてきました。

店内の椅子と一枚板を用いたテーブルは新潟県産の木材を用い、DIYで制作したもの。店舗デザインと家具の制作を手がけたのは〈デザインムジカ〉の安藤僚子さん。

店内の椅子と一枚板を用いたテーブルは新潟県産の木材を用い、DIYで制作したもの。店舗デザインと家具の制作を手がけたのは〈デザインムジカ〉の安藤僚子さん。

そんなyoyo.さんの店で食べられるのは、地場産の自然栽培の野菜をたっぷり使った
「ファラフェルサンドプレート」。

自家製天然酵母のピタパンに揚げたてのファラフェルと総菜を挟んでいただくと、
口の中に野菜の甘みやほろ苦さが広がり、
野菜ってこんなに複雑な味わいがあるんだ、と新鮮な気持ちに。
yoyo.さんが旅先で出会った、さまざまな料理のエッセンスが加えられているのも、
この店ならではです。

ぜひ味わってほしいのは、なめらかなフムス。
すーっと体に入っていくように感じられるのは、
大量生産された加工品や添加物を使っていないせいかもしれません。

「ファラフェルサンドプレート」(1200円)ファラフェル(ひよこ豆のコロッケ)と、ビーツのフムス、人参とブロッコリーのクミンソテー、長ネギと柿のマリネなど、日替わりの総菜が色鮮やかに並ぶ。ピタパン、スープつき。

「ファラフェルサンドプレート」(1200円)。ファラフェル(ひよこ豆のコロッケ)と、ビーツのフムス、人参とブロッコリーのクミンソテー、長ネギと柿のマリネなど、日替わりの総菜が色鮮やかに並ぶ。ピタパン、スープつき。

ファラフェルのほか、〈ホシノコーヒーラボ〉の珈琲やヴィーガンケーキもおいしい。
ヴィーガン料理は初めて、という方にもおすすめできるお店です。

そもそもyoyo.さんは、完全菜食主義ではないのだそう。
新潟市に拠点を移す以前は、県内の山深い地域にも暮らしており、
自然と共生してきた食文化と出会い、近所の猟師さんがしとめた猪をいただくことも。
獣害の深刻さも知り、いろいろな料理にアレンジして、
野生のお肉のおいしさを率先して周りに伝えていたといいます。

旧沼垂市場の長屋を改装して誕生した沼垂テラス商店街。手づくり総菜と佐渡牛乳ソフトクリームの店〈ルルックキッチン〉のスイーツもおすすめ。ぜひお立ち寄りを。

旧沼垂市場の長屋を改装して誕生した沼垂テラス商店街。手づくり総菜と佐渡牛乳ソフトクリームの店〈ルルックキッチン〉のスイーツもおすすめ。ぜひお立ち寄りを。

マウンテン・グロサリーのある商店街の長屋は、もともと市場として使われていた建物。
近年は高齢化や郊外化の影響からシャッター街と化していましたが、
この界隈に昭和40年から店を構える大衆割烹〈大佐渡たむら〉の
2代目店主、田村寛さんが2010年に〈ルルックキッチン〉をオープン。
その後、田村さんの呼びかけによって店が集まり始め、
いまでは30近くの店が営業しています。

総合格闘家・宇野薫の旅コラム
「徳島とブラジリアン柔術、
不思議なコミュニティの循環」

さまざまなクリエイターによる旅のリレーコラム連載。
第5回は、総合格闘家の宇野薫さんが
徳島に家族で遊びに行った話から始まります。
しかしただ遊びに行くだけではなく
格闘技やブラジリアン柔術を経由することで大きく膨れ上がり、
宇野さんを徳島にどんどん引き込んでいったようです。

すべては試合用のトランクスから始まった

総合格闘技の試合をするときのコスチュームには、いろいろなタイプがあるが、
僕はピタッとフィットしたタイプのものを使っている。
古いタイプの水着のようなカタチ、といえばわかりやすいかもしれない。

2012年頃から愛用しているのは〈ナルトトランクス〉のものだ。
いまはサーフトランクスがファッションアイテムとしても人気を博しているが、
昔からスイムウェアをつくり続けてきたブランドである。

ナルトトランクスがつくってくれた試合用コスチューム。(写真提供:SUSUMU NAGAO)

ナルトトランクスがつくってくれた試合用コスチューム。(写真提供:SUSUMU NAGAO)

ナルトトランクスは名前からわかる通り、徳島県鳴門市に工房を構えている。
2代目の山口輝陽志さんに誘われ、初めて鳴門に遊びに行ったのは、
2014年の夏休みだったと思う。

僕が住んでいる横浜から車で8〜10時間かけて、家族みんなでドライブだ。
鳴門に着いてからはサーフィンをしたり、海や川で遊んだり、釣りをしたり。
自然のなかで遊ぶことがほとんど。
普段は例に漏れずゲームが好きな子どもたちも、ここぞとばかりに楽しんでいた。
それ以来、宇野家の徳島行きは、毎年夏休みの恒例行事となっていった。

徳島の海を満喫。

徳島の海を満喫。

〈ホテルロイヤルクラシック大阪〉が 大阪・なんばに開業。 そのみどころ、魅力を 一挙紹介!

旧新歌舞伎座の意匠を復元 アートを身近に感じるホテル

大阪・ミナミのランドマーク旧新歌舞伎座跡地に、
宿泊施設〈ホテルロイヤルクラシック大阪〉が、12月1日に開業。
旧新歌舞伎座の在りし日を思い起こさせる姿が、今注目を集めています。

さまざまな伝統文化の発信地として、
長年大阪の人たちに愛されてきた新歌舞伎座ですが、
老朽化などにより2009年6月に惜しまれつつ閉館。
冠婚葬祭事業を展開する〈ベルコ〉が跡地を引き継ぎ、
当時の意匠を受け継ぐ都市型ホテルとして産声をあげることになりました。

ホテルの設計は、東京オリンピック・パラリンピックの拠点となる
新国立競技場の完成も記憶に新しい、建築家・隈研吾氏が担当。
隈氏も敬愛する村野藤吾氏設計の旧新歌舞伎座の象徴とも言える、
幾重にもなった唐割風(からはふ)を低層部に復元するなど、
長く親しまれてきた“ミナミの顔”の意匠を継承した外観が特徴となっています。

2階のカフェラウンジ〈コアガリ〉や共有スペース、エントランスには、
旧新歌舞伎座で使用されていた金物や鬼瓦などが展示されており、
その歴史を垣間見ることができます。

旧新歌舞伎座 懸魚 真鍮製(直径600mm)

旧新歌舞伎座 懸魚 真鍮製(直径600mm)

旧新歌舞伎座 鬼瓦銅板製 辻普堂左・歌舞伎十八番「嫐(うわなり)」で使用された隈取をイメージ右・歌舞伎十八番「暫(しばらく)」で使用された隈取をイメージ

旧新歌舞伎座 鬼瓦銅板製 辻普堂 左・歌舞伎十八番「嫐(うわなり)」で使用された隈取をイメージ 右・歌舞伎十八番「暫(しばらく)」で使用された隈取をイメージ

館内は、天然木をふんだんに取り入れた和モダンな佇まい。
館内の階数表示やお手洗いのピクトグラムにも木を用いるなど、
スタイリッシュながらも温かみのある空間に仕上がっています。

全天候型のチャペルアトリウム〈大空〜SORA〜〉も木でつくるこだわりよう。

全天候型のチャペルアトリウム〈大空〜SORA〜〉も木でつくるこだわりよう。

新潟の海の幸を里山で味わう。 南魚沼〈龍寿し〉が名店といわれる理由

南魚沼市と魚沼市のちょうど中間にあたる大崎集落。
住宅や商店がポツリポツリと点在するこのエリアに、
遠路はるばる車を走らせ顧客が集う寿司屋〈龍寿し〉があります。

先代の頃は出前と宴会が売り上げの多くを占める、
いわゆる農村地帯のお寿司屋さんだった同店は、
2代目大将の佐藤正幸さんの手により、
新潟でも屈指のレベルと評判の名店へと進化を遂げました。

現在では県外からのお客さんが約3割を占め、
南魚沼市の高級宿〈里山十帖〉をプロデュースする
〈自遊人〉の代表取締役である岩佐十良(とおる)さんをはじめ、
食通たちに愛されています。
その道の通たちをうならせる秘密はどこにあるのでしょう。

手間、時間、独自のアイデアが生む、ここにしかない味

この日はカウンターで、つまみと握りのおまかせコース
「信楽(しがらき)」(7500円・税別)をいただくことに。
おつまみ4~5品、握りが10~12貫にお味噌汁がついた
バラエティに富んだ人気メニューです。

まずはおつまみから。
細くシャキシャキとした食感が心地よい岩もずくに始まり、
幻の魚と呼ばれるアラの刺身、甘エビの刺身、ノドグロの塩焼きと続きます。
岩もずくからノドグロまでこの日の主役はすべて佐渡産です。

ノドグロの塩焼きに添えられた枝豆も地物。

ノドグロの塩焼きに添えられた枝豆も地物。

アラと甘エビに添えられたつまは、だしで漬けた南魚沼産の糸瓜。
糸瓜は「糸かぼちゃ」「そうめんかぼちゃ」とも呼ばれる長岡の伝統野菜です。
大根よりも味が濃く、身が詰まっているため、佐藤さんがひと手間加えることで、
それだけで立派な一品として仕上がっています。

甘エビの刺身には、長岡野菜の糸瓜のつまを。八海山の伏流水で育てた魚沼わさびはその都度すりおろす。

甘エビの刺身には、長岡野菜の糸瓜のつまを。八海山の伏流水で育てた魚沼わさびはその都度すりおろす。

「糸瓜を使い始めたのは3年前から。
2015年に〈雪国A級グルメ〉というプロジェクトの講演会に参加したときに
山形の〈アル・ケッチャーノ〉の奥田政行シェフのお話を聞いて、
もっと地元の食材に目を向けてみようと思ったのがきっかけです。
糸瓜はまず巻物の具として使い始めて、その具をそのまま
『これ、つまにも使えるじゃん!』とひらめいたんです」

大将の佐藤正幸さん。

大将の佐藤正幸さん。

おつまみの締めは地物トマトと新潟県産ぶどうのカプレーゼ風味。
トマトは2種、ぶどうは3種使用し、
酒粕、アーモンド、砂糖、クリームチーズと和えたもの。

トマトとぶどうの酸味や甘みにクリームチーズのコクが絶妙に絡み合う
爽やかな味わいで、おつまみの終わりと握りの始まりをつなぐための
一品としての役割を果たしている印象を受けました。
佐藤さんの気遣いとクリエイティビティが伝わってきます。

おつまみの締めは、地物トマトと新潟県産ぶどうのカプレーゼ風味。佐藤さんのお客さんへの気遣いを感じる一品。

おつまみの締めは、地物トマトと新潟県産ぶどうのカプレーゼ風味。佐藤さんのお客さんへの気遣いを感じる一品。

〈Maple Activity Center〉
岩見沢の移住者たちが立ち上げた
地域に根ざしたアクティビティ

北海道岩見沢市の美流渡(みると)に移住した來嶋路子さんが、
いまとても気になっているというのが、
美流渡のお隣、毛陽というエリアで始まった
〈Maple Activity Center(メープルアクティビティセンター)〉。
今回はその活動と、アクティビティセンターを立ち上げたメンバーたちを取材しました。

広大な敷地で体験できるアクティビティ

札幌から車で約1時間、岩見沢市街地から車で約20分のところにある〈メープルロッジ〉。

札幌から車で約1時間、岩見沢市街地から車で約20分のところにある〈メープルロッジ〉。

岩見沢市の自然豊かなエリア、毛陽に佇む宿〈ログホテル メープルロッジ〉。
総面積20万平米という広大な敷地には、屋外テニスコートと屋内テニスコート、
りんごや桃などが収穫できる果樹園などもある。

一歩足を踏み入れると、開放感のあるホールが。太い丸太を柱や梁に使ったログハウス風ホテル。

一歩足を踏み入れると、開放感のあるホールが。太い丸太を柱や梁に使ったログハウス風ホテル。

スイートルーム「ホワイトバーチ」は広々として家族で泊まるのに最適。4名利用で1名13550円~(税別)。

スイートルーム「ホワイトバーチ」は広々として家族で泊まるのに最適。4名利用で1名13550円~(税別)。

以前から宿泊施設だったが、老朽化した設備などを一新し、
2018年4月に大幅リニューアル。料理も北海道産の食材にこだわるなど、
よりこの地域の魅力を生かす宿に生まれ変わった。
天然温泉や本格的なフィンランド式サウナも備え、グランピングも楽しめる快適な宿だ。

敷地内には菜園もあり、ここでとれた野菜やエディブルフラワーもレストランの料理に使用されている。

敷地内には菜園もあり、ここでとれた野菜やエディブルフラワーもレストランの料理に使用されている。

そのメープルロッジのフィールドで、4輪バギーなどのアクティビティを提供するのが、
〈Maple Activity Center(メープルアクティビティセンター)〉だ。
ここでは4輪バギーで公道を走ることはできないが、
免許はなくてもスタッフの講習を受け、広大な敷地の中を駆け巡ることができる。
近年、各地で人気が高まっているアクティビティだ。

ほかにも「焚き火カフェ」や地域の歴史を知ることができるようなサイクリング、
冬はスノーシューなど、このエリアで楽しめるアクティビティを企画、実施している。

4輪バギーはバイクのような乗り物だが、4輪でバイクよりも安定感がある。

4輪バギーはバイクのような乗り物だが、4輪でバイクよりも安定感がある。

このアクティビティセンターを立ち上げたのは、
イラン出身でアメリカ育ちのスティーブン・ホジャティさん。

「ここは草地が広がる広場もあるし、4輪バギーだったら
この敷地内でも楽しめるんじゃないかと思いつきました」

12歳未満の子どもは大人と同乗すれば乗車できるので、
家族でも、大人同士でも楽しめると好評だ。

図書室にウール工房、そして遊び道具!?
東広島市の古民家は自由自在!

広島県の中央に位置する東広島市。
週末にそこかしこで開放されている西条の酒蔵通りが観光の定番だ。
そんな「お酒のまち」としてのイメージが強い東広島市だが、
実は各地に個性際立つ古民家が点在している。

そこで地域に住まう人の息遣いが感じられる旅をするならぜひ訪れたい、
「場」として古民家をうまく活用している
〈ほたる荘〉〈豊栄ウール工房〉〈Belly Button Products〉の3軒を紹介する。

〈ほたる荘〉
みんなの力を借りて、愛すべき茅葺き古民家を残すための図書室

築約100年の茅葺き古民家を〈ほたる荘〉として活用している。

築約100年の茅葺き古民家を〈ほたる荘〉として活用している。

東広島市の志和堀地区はいくつもの茅葺き古民家が残る風情豊かな田園地帯。
そこに〈ほたる荘〉という茅葺き屋根の小さな図書室がある。

有名どころからコアなものまで、「経済・ビジネス」「科学」「社会・未来」などのジャンルで分けられている本棚。左奥のスペースには文豪たちの作品がずらりと並んでいた。

有名どころからコアなものまで、「経済・ビジネス」「科学」「社会・未来」などのジャンルで分けられている本棚。左奥のスペースには文豪たちの作品がずらりと並んでいた。

ここでは寄贈された本をまったりと読むことができるうえ、
カフェや畑仕事を楽しんだり、
音楽ライブなどのイベント会場として利用することもできる。

〈つくれば工房〉は水、土曜にオープン。

〈つくれば工房〉は水、土曜にオープン。

2019年には隣の蔵をリノベーションし、〈つくれば工房〉を迎え入れた。
3Dプリンタを備える木工室や機織り機が登場し、
子どもも大人も一緒になって学べる「ものづくりの場」としても機能している。

柔らかい光が差し込む窓際では気持ちよく読書できる。

柔らかい光が差し込む窓際では気持ちよく読書できる。

さらに直近では漫画図書室が新設され、
曜日ごとにテーマが変わる室長制度もスタートした。
〈ほたる荘〉はまさに、朝から晩まで入り浸りたくなるような空間へと
年々変化し続けている。

そんな〈ほたる荘〉の代表を務めるのは、鹿児島県出身の杉川幸太さん。
広島大学で教鞭を執るべく、5年前に東広島市へと引っ越してきた。

杉川幸太さん。最近は曜日ごとに室長さんがいるので、杉川さん自身が常に〈ほたる荘〉にいなくても回る体制になった。

杉川幸太さん。最近は曜日ごとに室長さんがいるので、杉川さん自身が常に〈ほたる荘〉にいなくても回る体制になった。

「子どもと一緒に志和堀を散歩していたら、
茅葺き古民家がいくつもあって衝撃を受けたのと同時に、とても感動しました!
とはいえ、志和堀の茅葺き古民家の数はここ10年で半分以下になったようです。
茅の修理や調達は経済的にも時間的にも負担が大きいことが原因でしょう。
効率的なものばかりが選ばれる世の中において、
いいものであってもいわば非効率な茅葺き古民家を
どうしたら残していけるのかということを考えていきました」

茅葺き古民家をできるだけ長く保全するためには、
個人で管理するのではなく、みんなで管理することが大切だ。
多くの人を巻き込むためには、ただ訪れてもらうだけではなく、
もっと踏み込んだ関わりを通して愛着を持ってもらう必要がある。
そこで生まれたのが「図書室」というアイデアだった。

「かしだしノート」を見ると、小さな子どもから年配の方まで、さまざまな人が〈ほたる荘〉を利用していることがわかる。

「かしだしノート」を見ると、小さな子どもから年配の方まで、さまざまな人が〈ほたる荘〉を利用していることがわかる。

「基本的に、ここにあるのは訪れた人が置いていった本なんですよ。
その多くは、捨てたり売ったりできずに手元に残っていた本です。
簡単には手放せなかった思い入れのある本を寄贈した場所のことは
一生忘れないだろうなと。そういう作戦です(笑)」

〈ほたる荘〉の本は近隣に住む人だけでなく、
旅行で訪れた遠方在住の人も借りることができる。

「いちおう返却期限は1か月にしてみたんですが、
そのままずっと持っていたり自由なルールで借りてる方も多いですよ(笑)。
引っ越しなどのタイミングで『あっ、〈ほたる荘〉の本だ!』と
思い出してくれたら、それでもいいのかなと思いますね」

取材でうかがった水曜日の室長は彦坂智恵さん。「新しい学びの場づくり」をテーマに活動している。焼き芋がとてもおいしそうだった。

取材でうかがった水曜日の室長は彦坂智恵さん。「新しい学びの場づくり」をテーマに活動している。焼き芋がとてもおいしそうだった。

古民家の改修は、
クラウドファンディングと杉川さんらの手持ち資金をもとに行った。
隣町の井上工務店(井上富雄さん)から指導を受け、
広島の建築系学生団体〈scale〉に所属する学生や地域の人々、
そして茅葺き職人とともにほぼセルフでリノベーションを進めた。

「はらぺこあおむし」風の本棚。

「はらぺこあおむし」風の本棚。

「学生たちは人手としてもそうですが、
アイデアをたくさん出してくれたのがとてもありがたかったですね。
例えば、表紙を見せて並べられる絵本用の本棚をつくってほしいと
学生にお願いしたんですが、結局は、
「はらぺこあおむし」風の本棚ができあがって(笑)。
学生が自由にやるとおもしろくなるんだなあと思いました」

〈つくれば工房〉と同じく、水、土曜ならば利用できる機織りスペース。

〈つくれば工房〉と同じく、水、土曜ならば利用できる機織りスペース。

図書室でありながら、実践的な学びの場であり、
自分の居場所を自分でつくる場にもなっている〈ほたる荘〉。
親子連れで行けば、基本的に誰かが子どもと一緒に遊んでくれるという。
本に読み耽ったり機織りをしてみたり、思い思いの時間をここで過ごしてほしい。

information

map

ほたる荘

住所:広島県東広島市志和町志和堀469

TEL:090-9088-5739

開室時間:11:00〜15:00

開室日:火・水・木・土曜

※つくれば工房は水・土曜にオープン

Web:http://www.openhotaru.mimoza.jp/

『BEAMS EYE ON』 BEAMSが独自の目線で キュレーションした ローカルガイドブックを無料配布中!

BEAMSスタッフ一押しの高感度なローカル情報が満載!

全国各地のBEAMSスタッフだからこそ知る、
その土地にしか存在しない文化、そこでしか手に入らないもの、
現地の人が足繁く通うローカル店……。

トレンドに敏感で感度の高い彼らだからこそ、
心をグッと掴むローカル情報を熟知しているのは間違いない。
そんな狙いでまとめられたかのごとく誕生したのが、
全国のBEAMSスタッフがキュレーションしたシティガイド『BEAMS EYE ON』です。

新宿、静岡、大阪、神戸、広島、福岡、松山、長崎、熊本、
それぞれの都市をフィーチャーした第一弾を今年の7月にリリースし
人気を博した本シリーズですが、現在、第二弾となる
札幌、京都、大阪、仙台、金沢、名古屋の計6都市分が、
新宿の〈ビームス ジャパン〉などで無料配布されています。

〈清津峡渓谷トンネル〉 日本三大峡谷の名勝地が インスタ映えの聖地になるまで

[tunnel of Light]Ma Yansong / MAD Architects(大地の芸術祭)

水面に反転した峡谷。その美しい風景を見るために、
そしてその風景の一部になってポーズをとり、写真を撮影するために。
いま、新潟県十日町市の山奥にある〈清津峡渓谷トンネル〉には
連日続々と人が訪れています。

SNSなどでこの光景を目にしたことがある人も多いと思いますが、
Instagramでハッシュタグ検索してみると「清津峡」で投稿された写真は2万件を超え、
インスタ映えするフォトスポットとして非常に人気が高いスポットです。

リニューアル前年の2017年に年間5万人だった来場者数は、
2018年に18万人へと大きく飛躍。2019年のお盆には、
1日の来場者数が過去最高となる5000人を突破しました。
なぜこれほどの人気スポットになったのでしょう?

水鏡のアイデアで大人気の撮影スポットに

そのきっかけは、越後妻有で2000年から3年に1度開催されている
世界最大級の国際芸術祭〈大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ〉
(以下、大地の芸術祭)。清津峡渓谷トンネルは、
この芸術祭の作品のひとつとしてリニューアルされ、来場者数が激増しました。

もともとは、日本三大峡谷にも数えられる絶景「清津峡」を目にしようと、
全国から訪れる観光客のためにつくられた清津峡渓谷トンネル。
全長750メートルのトンネル内には、当時から3か所の見晴台と
終点のパノラマステーションが設けられています。

そう、トンネル自体は20年以上前から同じ場所にあり、
基本的な構造はほぼ変わっていません。

大きく変わったのは、現在フォトスポットとなっている終点のパノラマステーション。
リニューアル前は、清津峡の歴史を学べる資料館として開放されていましたが、
2018年の大地の芸術祭に合わせて、中国出身の建築家であるマ・ヤンソンと、
彼によって設立された建築事務所〈MADアーキテクツ〉が
『Tunnel of Light』というタイトルのアートへと昇華させたのです。

床一面に沢水を張り、壁面にステンレス板を貼ることで、
外の景色が水に反転して映る現在の姿へ。
落石から身を守るためにつくられたトンネルを、
人々にとって“ツール”から“目的”へと生まれ変わらせた、
発明と言えるほどの画期的なアイデアだったのです。

終点の「ライトケーブ(光の洞窟)」。この日は風の影響で水面が波立っているが、普段はもっとくっきりと景色と人が反転して映る。水位が低い右端から壁を伝うように進んでいく。[tunnel of Light]Ma Yansong / MAD Architects(大地の芸術祭)

終点の「ライトケーブ(光の洞窟)」。この日は風の影響で水面が波立っているが、普段はもっとくっきりと景色と人が反転して映る。水位が低い右端から壁を伝うように進んでいく。[tunnel of Light]Ma Yansong / MAD Architects(大地の芸術祭)

webサイト『低空飛行』が美しい! 原研哉さんが 日本のよりすぐりスポットを紹介

写真や動画、文章も原さんが手がける

グラフィックデザイナーの原研哉さんが、
「こんな日本はいかがですか」と日本国内の
よりすぐりのスポットを紹介するwebサイト『低空飛行』を立ち上げました。

webサイトの名前となっている「低空飛行」は、
地上の景色をつぶさに眺められるような低い高度での飛行のこと。
日本の深部あるいは細部をくまなく見てまわる旅をイメージし、
そのように名付けたといいます。

サイトには原さんがセレクトした日本各地のスポットが
自身が手がけた動画、写真、文章とともに紹介。
そのほか観光にまつわるエッセイも掲載されています。

ちなみに現在までに公開されているスポットはこちら。
どれでも日本の奥深さを感じる美しいところばかりです。

・北海道 釧路湿原 塘路湖と釧路川

・北海道 倶知安町 坐忘林

・秋田県 乳頭温泉 鶴の湯

・石川県 能登 さか本

・石川県 山代温泉 べにや無何有

・栃木県 那須 アートビオトープ 水庭

・群馬県 みなかみ町 法師温泉

・神奈川県 湯河原 石葉

・神奈川県 小田原 江之浦測候所

・長野県 修善寺 あさば

・長野県 小布施 枡一客殿

・三重県 志摩 アマネム

・和歌山県 椿温泉 海椿葉山

・奈良県 吉野町 吉野杉の家

・瀬戸内海 客船旅館 ガンツウ

・鹿児島県 妙見温泉 雅叙苑

・鹿児島県 霧島連峰 テンクウ

音楽家・蓮沼執太の旅コラム
「現代まで使用されている
江戸時代のキネティックアート」

さまざまなクリエイターによる旅のリレーコラム連載。

第4回は、音楽家の蓮沼執太さんが
香川県の〈金毘羅山〉を訪れた話。
四国駆け足旅の一貫として登った金毘羅山ですが
現地で知った歌舞伎舞台の仕組みには、とても驚いたようです。

「海」と「山」を意識させる金毘羅山

去年の冬、香川県西部に位置する琴平山、通称〈金毘羅山〉へ行ってきました。

この旅ではまず、新幹線で東京駅から岡山駅へ向かい、
そこからはレンタカーで、四国を駆け足で回ろうという2泊3日の計画です。
旅の目的は、
有名無名を問わず四国のモダニズム建築を観に行くこと、
予約した〈イサム・ノグチ庭園美術館〉への訪問、
気になっていた陶器を買いに窯元を訪れる、
さまざまな種類の温泉に入る
など、リサーチと楽しみを詰め込んだ、わりと“旅”の定番のようなものでした。

今振り返ると、四国周辺をレンタカーで3日間、
倉敷、尾道、道後、琴平、丸亀、鳴門、高松と回って、
再び岡山に戻ってくるルートは
かなりかっ飛ばすような、勢いある道中のようにも思えます。

この日は、晴れ間にプカプカと白い雲が浮かぶ天気の良い日。
車を走らせていると、
丸みを帯びたみどり色とつち色の台形が、地面とくっついた山が見えてきました。
これが琴平山。この辺りの山はひとつひとつが独立していて、
山脈のような連なりを感じさせない、まさに「山」が存在している印象でした。

高山〈みかど〉
ドライな焼酎ハイボールに最高のアテ
飛騨牛を朴葉みそで
“チリチリ”と焼く幸せ

旅の醍醐味はローカル酒場!
全国おすすめ酒場探訪記 飛騨高山編
こだわる。でも飾らず、自然体で

今回のローカル酒場は岐阜県高山市で創業約80年、
高山の郷土料理にこだわった〈みかど〉。
酒場であり、郷土料理の定食店としても人気です。
地元の人にも愛されつつ、多くの観光客も迎え入れ、
外国人客向けに英語のメニューも用意されています。
現在、店を引き継ぐのは地元出身の加賀江徹さん。
3代目としてお店を引き継いで20年になります。

昭和の風情も残る商店街に、昔ながらの純和風な建物。でも近づいてみると英語の表記もあって、高山の昔と今が一緒に感じられます。

昭和の風情も残る商店街に、昔ながらの純和風な建物。でも近づいてみると英語の表記もあって、高山の昔と今が一緒に感じられます。

もともとは〈みかど食堂〉という名で長年愛されていたお店ですが、
店の継承で困っていたところ、加賀江さんのお父様が権利を取得。
板前さんを雇い存続していました。
そのころ加賀江さんはバックパッカーとして世界を放浪。
25歳、バンコクに滞在していた時に一本の電話。
「母親から店を継いでほしいと連絡がありました。さすがに親不孝も続けられないなと」
調理師免許を持っていたことも幸いし、〈みかど〉の名を継ぐことを決断したのです。

やわらかい笑顔でお客様を迎える加賀江さん。世界を訪ねるバックパッカーから、世界から訪れる人たちを迎え入れる仕事へ。

やわらかい笑顔でお客様を迎える加賀江さん。世界を訪ねるバックパッカーから、世界から訪れる人たちを迎え入れる仕事へ。

今回の案内人のふたり、朝倉圭一さんと、飲み仲間の中島亮二さんも、
加賀谷さんと同じように、一度は県外に出て、そして戻ってきたUターン組。
この〈みかど〉を紹介してくれた朝倉さんは、名古屋に出て、27歳で高山に戻りました。

自営業を継ぐ同級生たちが多い中で、サラリーマン家庭育ちの朝倉さん。
「一生続けられる仕事ってなんだろう?」と自問し、
「ここでこそやれる仕事をしたい」という思いから、
地元の器や民芸品を扱う〈やわい家〉を開業。

「高山市は、市区町村の面積で日本一。とはいえ98%は山と山林ですからね(笑)」
と笑う朝倉さんですが、だからこそ木材に恵まれ、
生活道具にも毎日を豊かに暮らす知恵が込められます。
2階にサロン的な古本屋を立ち上げましたが、
これも知の部分から高山を掘り下げていく試みです。

中島さんも新潟の建築会社に就職し、設計の仕事をしていましたが、
ほうれん草などを栽培する実家を継ぐために帰郷。
その傍ら、地元ゆかりの若手クリエイター7人で、アートイベント「山の日展」を開催。
今年8月に2回目を終えたこのイベントは、
デザイン、絵、写真、左官、猟&レザークラフト、
生態学研究に、中島さんが手がける建築&農業と多彩。
第1回では中島さんの実家にある築150年の蔵を、
多目的スペースに転用する事例を展示したのです。
さらに今年は、温室を使った空間の展示や表現に挑戦しました。

この取り組みを紹介するパンフレットで中島さんはこんな言葉を残しています。
「盆地である高山に、新しい道を通すことにもつながるのではないか」
高山を囲む自然は大いなる恵みをもたらす一方、
交流を阻む要因ともなっていたかもしれません。
だからこそ大いなる自然が残り、そこで幸せに生きる知恵が生まれ
独自の食文化、郷土料理が育まれました。

しかし、高山は不思議なまち。
江戸情緒が残る「さんまち通り」などを歩いていると
多くの人たちが行き交う豊かな商都としての賑わいがあります。

江戸時代の趣を残す昼のさんまち通り。外国人観光客も多く、平日にも関わらず賑わっています。

江戸時代の趣を残す昼のさんまち通り。外国人観光客も多く、平日にもかかわらず賑わっています。

朝倉さんによれば、
「江戸時代は幕府の天領でした。ということはそれだけ豊かなものがあり、
交流の地でもあったんです」
郷土の恵みがあるからこそ人々が集う。
そして集った人たちとともになにかが生まれる。それが飛騨高山。

ほろ酔いの会話も次々とすてきな言葉になる朝倉さん。郷土への愛を軽やかな言葉にのせて語っていただきました。

ほろ酔いの会話も次々とすてきな言葉になる朝倉さん。郷土への愛を軽やかな言葉にのせて語っていただきました。

今夜の酒は、タカラ「焼酎ハイボール」〈ドライ〉。
強炭酸のガツンとしたキレと、宝酒造ならではの焼酎の旨みが楽しめるお酒です。
朝倉さんはぐっとひと口飲んで、
「スッキリ感がいいですね。高山ならではの濃い味の料理にも合いますよ」
そういいながら朝倉さんはメニューから
定番料理とちょっと変わったものをセレクトしました。

「定番といえばやはり飛騨牛と朴葉みそ。味は濃いめですよ。
そして、あまり知られていないものでいえば、こもどうふ。
それから……これは僕もよく知らないのですが、かわきも」

郷土料理のこもどうふは、わらを編んだ「こも」で豆腐を包み、
だし汁などで煮込んだもの。
豆腐の表面の模様と、食感が特徴的で、お盆やお正月のごちそうでもありました。

料亭のだし巻き玉子焼きにも見えるけれど、これが豆腐。高野豆腐ほど濃い出汁ではなく、素朴な風味も味わえます。400円(税抜き)

料亭のだし巻き玉子焼きにも見えるけれど、これが豆腐。高野豆腐ほど濃い出汁ではなく、素朴な風味も味わえます。400円(税抜き)

かわきもは、鶏の皮とレバーを、甘くて濃い醤油ベースのたれで煮た、岐阜・郡上の郷土料理。
これがまたドライな焼酎ハイボールとよく合う。

こちらがかわきも。タレのコクとドライな焼酎ハイボールの相性は抜群。お酒はもちろん、残ったタレを白米にかけたくなる誘惑。500円(税抜き)

こちらがかわきも。タレのコクとドライな焼酎ハイボールの相性は抜群。お酒はもちろん、残ったタレを白米にかけたくなる誘惑。500円(税抜き)

酒場の定番コロッケは飛騨牛入り。フライものも手は抜きません。600円(税抜き)

酒場の定番コロッケは飛騨牛入り。フライものも手は抜きません。600円(税抜き)

ひとり旅にうれしい定食は、昼夜問わず提供。定食なら飛騨牛も手軽にいただけます。〈飛騨牛陶板焼き定食〉2000円(税抜き)

ひとり旅にうれしい定食は、昼夜問わず提供。定食なら飛騨牛も手軽にいただけます。〈飛騨牛陶板焼き定食〉2000円(税抜き)

〈岩の原葡萄園〉 マスカット・ベーリーAのふるさとへ。 老舗ワイナリーで味わう日本ワイン

〈マスカット・ベーリーA〉。
ワイン好きに限らず、この名を耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか? 
それもそのはず、マスカット・ベーリーAは
日本で生産されている赤ワイン用のぶどうのなかで最も生産量が多い品種だから。

そんな日本のワインぶどうの代名詞ともいえるマスカット・ベーリーAが生まれたのが、
新潟県上越市にあるワイナリー〈岩の原葡萄園〉です。

今年6月に開催された「G20大阪サミット2019」では、
赤ワイン〈深雪花(みゆきばな)〉が振る舞われるなど、
1890(明治23)年の開設以来、日本のワインのパイオニアとして、
ワイン界を牽引してきた同園。
ここでは、創業者であり「日本のワインぶどうの父」と称される
川上善兵衛氏と日本のワインがたどってきた歴史に触れることができます。

岩の原葡萄園のワインができるまで

岩の原葡萄園があるのは、新幹線の上越妙高駅から車で25分ほどの距離にある
上越市の頸城(くびき)平野。
1時間ほどあればすべてを見て回れる広さの園内には、葡萄畑はもちろん、
ワインを製造・販売する施設とオフィスが併設されています。

生産棟、第一号・第二号石蔵、雪室、
ワインショップ・レストラン・資料室からなる川上善兵衛記念館などがあり、
生産棟とオフィスを除くすべての施設が開放されています。

赤ワインの仕込み風景。ぶどうを除梗破砕機に入れ、果梗と実に分ける。

赤ワインの仕込み風景。ぶどうを除梗破砕機に入れ、果梗と実に分ける。

取材に訪れたこの日は、県外から仕入れた約600キロの
マスカット・ベーリーAを乗せたトラックが横づけされ、
赤ワインの仕込みをしているところでした。

「このマスカット・ベーリーAは、糖と酸のバランスがほどよくて、
そのまま食べてもおいしいんですよ」

善兵衛が生んだ日本固有種〈マスカット・ベーリーA〉。日本で最も多く栽培されている赤ワイン用ぶどうで、生食兼用のぶどう。

善兵衛が生んだ日本固有種〈マスカット・ベーリーA〉。日本で最も多く栽培されている赤ワイン用ぶどうで、生食兼用のぶどう。

ぶどうは丸ごと除梗破砕機に入れられ、まずは果梗と実に。
次に搾汁機で実を搾り、果汁になります。
常温だと発酵の温度が上がり、苦味や雑味が出てしまうため、
冷やしたぶどうを使ってなめらかに仕上げます。
園内で収穫したぶどうで仕込む際には、7度前後の冷蔵庫でひと晩冷やすのだそうです。
1キロの葡萄から約800ミリリットルのワインができます。

次に向かったのは葡萄畑。取材で訪れた10月上旬は収穫の最盛期。
晴天の空の下、約20名の方々が斜面に立てた脚立を器用に使って、
ロゼワイン用のマスカット・ベーリーAの収穫をしていました。

サイズと糖度の基準を満たしたぶどうから順に収穫。斜面に器用に脚立を立て、高いところのぶどうも手際よく。

サイズと糖度の基準を満たしたぶどうから順に収穫。斜面に器用に脚立を立て、高いところのぶどうも手際よく。

岩の原葡萄園のぶどう収穫

園内では、〈ブラック・クイーン〉、〈ローズ・シオター〉、
〈レッドミルレンニューム〉、〈ベーリー・アリカントA〉を主に栽培。
糖度とサイズを計測し、条件に達したぶどうから収穫していきます。

収穫したぶどうはカゴへ

小豆島のキャンプ場で遊ぼう!
「小豆島アウトドアフェスティバル」

クライミングで小豆島の魅力を味わう

小豆島にはいくつかキャンプ場があります。
施設が充実していていろんなスタイルを選べる〈小豆島ふるさと村キャンプ場〉、
海のすぐそばにある〈小部キャンプ場〉や〈田井浜キャンプ場〉、
天然温泉を楽しめる〈小豆島オートビレッジYOSHIDA〉などなど。
海も山もすぐそばにあって、おまけに天然温泉も島内に何か所かあるので、
小豆島でキャンプ! おすすめだったりします。

先日、そんな小豆島のキャンプ場の中のひとつ、小豆島オートビレッジYOSHIDAで、
「小豆島アウトドアフェスティバル」というイベントが開催されました。

今年初開催の「小豆島アウトドアフェスティバル」。

今年初開催の「小豆島アウトドアフェスティバル」。

会場となった〈小豆島オートビレッジYOSHIDA〉は人気のキャンプ場。

会場となった〈小豆島オートビレッジYOSHIDA〉は人気のキャンプ場。

小豆島アウトドアフェスは、岡山県玉野市と小豆島を舞台とした
クライミングと音楽の複合型フェス「瀬戸内JAM」の一環。
瀬戸内海を目の前に臨む玉野市には、
王子が岳というすばらしい景観に恵まれたエリアがあり、
このエリアは海の眺めが美しいだけではなく、
40年以上も前に開拓されたボルダリングスポット。

このエリアの魅力をもっとたくさんの人たちに知ってもらい、
瀬戸内エリアのツーリズムにつなげていきたいという思いから、
瀬戸内JAMは始まりました。2018年から始まり、
2回目となる今年から小豆島も新たな舞台として加わりました。

今回の小豆島アウトドアフェスは、
小豆島のクライミングジム〈ミナウタリ〉の渡利知弘さん、みきさんご夫婦を中心に、
ジムに通う皆さんで準備・運営をされていました。

会場に設置されたボルダリングウォール。いつかあの奥にある岩を登る日が来るかも。

会場に設置されたボルダリングウォール。いつかあの奥にある岩を登る日が来るかも。

登るのってシンプルで楽しい。小さな子どもたちがずっと遊んでました。

登るのってシンプルで楽しい。小さな子どもたちがずっと遊んでました。

小豆島には岩場があちこちにあって、
昔から小豆島にクライミング目的で来られる方も多いのですが、
島で暮らす人で、クライミングの場としての小豆島の魅力、
小豆島の山や岩場の魅力をを知って楽しんでいる人はあまり多くありません。

こんなにもすばらしい環境で暮らしているのにそれはもったいない。
まずは外で遊ぶことの楽しさに気づいてもらいたい、
クライミングのフィールドである「吉田の岩場」に足を運んでもらって
理解を深めてもらいたいという思いから、
吉田の岩場のすぐそばにあるキャンプ場、小豆島オートビレッジYOSHIDAを舞台に
小豆島アウトドアフェスを開催することにしたそうです。

家族で遊びに来てくれてる方がたくさんいました。

家族で遊びに来てくれてる方がたくさんいました。

スラックラインで遊ぶ子どもたち。

スラックラインで遊ぶ子どもたち。

写真家・石塚元太良の旅コラム
「芸術的な思考に適していた
〈秋芳洞〉の暗闇空間」

さまざまなクリエイターによる旅のリレーコラム連載。
第3回は、写真家の石塚元太良さんが
山口県美祢市の〈秋芳洞〉に行った話。
フィルムカメラで撮影をすることにこだわる石塚さんは、
フィルムを現像する暗室作業と洞窟の暗闇に共通する思いを抱いたようです。

暗室作業と洞窟の闇は似ているのかもしれない

洞窟には惹かれるものがある。このデジタルカメラ全盛の時代でも、
フィルムカメラでの撮影をこだわり続けているのは、
暗室作業というある種の「洞窟」での作業プロセスを
愛しているからかもしれないと思う。

真っ暗な状況というものは、不思議と居心地が良いものである。
「見る/見られる」という視覚のチャンネルが無化されると、
初めの不安がだんだんと安堵に変わっていくような感覚があるのだ。

考えてみたら、人はあまり都市生活の日常のなかで
「真っ暗な」状況というものを経験しないのではないだろうか?
まちは隅々まで明るいし、都市はどこかで犯罪抑止的に「真っ暗な」状況を抹殺する。
けれど、人はもしかしたらどこかで「闇」を必要としているかもしれない。
洞窟での奇妙な居心地の良さを思い出すと、そんな風にも思うのだ。