odekake
posted:2020.2.19 from:新潟県佐渡市 genre:旅行
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〈 おでかけコロカルとは… 〉
一人旅や家族旅行のプラン立てに。ローカルネタ満載の観光ガイドブックとして。
エリアごとに、おすすめのおでかけ情報をまとめました。ぜひ、あれこれお役立てください。
writer profile
Yu Miyakoshi
宮越裕生
みやこし・ゆう●神奈川県出身。大学で絵を学んだ後、ギャラリーや事務の仕事をへて2011年よりライターに。アートや旅、食などについて書いています。音楽好きだけど音痴。リリカルに生きるべく精進するまいにちです。
credit
撮影:ただ(ゆかい)
佐渡の中央部に位置する、国仲平野。
ふたつの山脈に挟まれ、美しい自然を有するこのエリアは
「トキの森公園」などの観光スポットもあり、
ほかのエリアにもアクセスしやすい地区です。
山から平野へ、清らかな水が流れるこの辺りは、その昔、豊かな農村地帯でした。
いまでも、穏やかな農村風景の名残をここかしこに見ることができます。
今回ご紹介するのは、同エリアにある農家民宿
〈カールベンクス古民家民宿YOSABEI(よさべい)〉。
両津港から15分ほど車を走らせ、林を抜けると、
オレンジ色の外壁に黒い屋根の建物が現れました。
その向こうには、畑が広がっています。
実はこの建物、江戸時代の家をリノベーションしたもの。
一歩、中に入ると、吹き抜けのダイナミックな空間が広がり、
正面には江戸時代に広まった階段箪笥が。
天井には太い梁が張り巡らされています。
床はフローリング、壁は桜色の漆喰壁。
新築のようにぴかぴかでありながら何ともいえず落ち着くのは、
古い木に包まれているせいでしょうか。木材のほとんどは、
元の家で使われていた200年前の木を使用しているといいます。
宿のオーナーは仲塚周子さん、雄輝さん夫妻。
娘の木春ちゃん(5歳)、木ノ芽ちゃん(1歳半)と家族4人でこの家に暮らし、
住み開きの宿を営んでいます。
東京に暮らしていたふたりは、東日本大震災を機に
「いつかは移住を」と考えるようになり、
2015年に周子さんの実家がある佐渡にIターン。
佐渡に移る大きなきっかけとなったのは、周子さんが受け継いだこの家でした。
「私の家は、祖父の代まで400年間ここに根ざしていました。
この辺りが農村として栄えていた頃は、庄屋さんを務めていたこともあったようです。
ところが祖父が他界して数年後に、この家が壊されるという話が持ち上がって。
そのときに、これまで受け継がれてきたものがなくなってしまうことに
強い抵抗を感じたんですね。それで最初は移住するつもりもなく、
老朽化した家を直すことにしたんです。とにかく“家を直そう”と」(周子さん)
その頃に雄輝さんが見つけたのが、ドイツ出身の建築デザイナー、
カール・ベンクスさんのことを紹介している本。
数々の古民家を再生させてきたベンクスさんは、新潟県十日町市に暮らしていました。
ふたりはすぐに会いにいき、ベンクスさんに改修をゆだねることに。
そしてベンクスさんと打ち合わせを重ねるうちに、
いつしか移住を決心していたといいます。
「ドイツでは街道沿いで暮らす農家はゲストルームを持っていて、
お客様をお迎えするそうです。そういうことにチャレンジしてみては、
とベンクスさんに提案されて、ひと部屋くらいやってみよう! と決めたんです」
かくして完成したのは、お客さんを迎え、暮らしながらもてなせる家。
ゲストルームは2階の角部屋にあり、風通しがよく、光溢れる空間。
窓からは林や蔵、長屋門を改装した新館が見えます。
また、宿泊客には専用のシャワールームと洗面台、トイレも用意されています。
ベンクスさんがデザインしたテーブルが置かれているリビングは、
その昔、囲炉裏があった場所。
家に囲炉裏があった時代は、囲炉裏から立ち上る煙が建物と茅葺き屋根を燻し、
湿気や害虫から家を守るという、火を中心とした暮らしが営まれていました。
囲炉裏は祖父の代でガス台に変わりましたが、
今回の改修では、リビングに大きな薪ストーブを設置。
薪ストーブは上に鍋を置き、炉として使うこともできます。
揺らめく火を眺めながらじんわり温まる感覚は、エアコンでは味わえないもの。
やっぱり、火を囲む暮らしはよいものです。
柱や梁は、ベンクスさんのこだわりで“煤黒”色にペイント。
これは、囲炉裏の煙が家屋を染める色をイメージした色なのだとか。
柱や漆喰を塗る作業は、地元の腕のいい職人さんに教わりながら、
雄輝さんと周子さんも行いました。
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仲塚家の敷地内には、蔵を含め、6棟の建物があります。
2019年冬、かつて長屋門として使われていた棟を改装し、
一棟貸しの宿〈青の家〉が完成しました。
こちらは、周子さんの夢を実現させた場所。
玄関から裏の畑へと続く廊下は、長屋門の通路を生かしたつくり。
庄屋を務めていた頃は、村の人たちがこの門をくぐり、主を訪ねてきたといいます。
広々としたリビングにはアイランドキッチンがあり、
料理しながら食事を楽しむことができます。
バスルームには広々としたバスタブがあり、
1階と2階にトイレがついているのもうれしい。
青の家の設計・施工を手がけたのは、地元の木材店。
周子さんは、佐渡の人に直してもらいたかったといいます。
「母屋の施工は新潟市の工務店にお願いしたのですが、
青の家は地元の人に直してもらいたいと思って、大工さんを探していたんです。
そんなときに、たまたまごはんを食べに来ていた、
地元に根づいた木材店の〈吉井木材〉さんが
“よかったらうちで直しますよ”と言ってくださって。
以来、ずっとお世話になっています。
内装はすべて私のわがままを聞いていただき、社長さんに図面をひいてもらいました。
アイランドキッチンも出来合いのものではなく、吉井さんに造作してもらったんですよ」
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こちらに泊まったら、お楽しみは朝。
周子さんが自家製の無農薬野菜と佐渡産の食材を使い、朝ごはんをつくってくれます。
佐渡に来て、初めて農業に挑戦したという夫妻。野菜づくりは本で学んだり、
近所の農家さんから教えてもらいながら試行錯誤したそうです。
この日のメニューは、タラの塩焼き、蒸し野菜、
完熟梅のドレッシングでいただくサラダ、卵焼き、にんじんのきんぴら、
お吸いもの、YOSABEIの田んぼで収穫された特Aランクのお米を使った
さつまいもと栗の炊き込みご飯。
サラダにはルッコラ、サンチュ、水菜、ディルなど、葉野菜がたっぷり。
とにかく野菜の種類が豊富なのがうれしい。これぞ、農家民宿の醍醐味です。
「佐渡の食は、おいしいものがたくさんある新潟市の人が
わざわざ食べにくるくらい、特別なんです。
ワタリガニなんかも安く売っていますし、市場をまわるだけでも楽しいですよ。
日本酒は〈エールフランス〉のファーストクラスで出している〈真野鶴〉や
世界に展開するレストラン〈NOBU〉でも出している〈北雪〉などが有名ですが、
ほかにもおいしいお酒がたくさんあります。
夫のおすすめは〈加藤酒造〉さんの〈金鶴〉、
私が最近気に入っているのは〈逸見酒造〉さんの〈至〉です。
夕食はおつくりしていないのですが、というのも、
近くにおいしいお店がたくさんあるので、食べに行っていただきたいんです。
ぜひ、たくさん食べて飲んで、おいしいものを持って帰ってください」と、周子さん。
佐渡へ行くなら、グルメを堪能するべし。
YOSABEIの近隣には〈長三郎鮨〉をはじめとする名店が揃っており、
佐渡最大級の直売所〈よらんか舎〉や、
地元のお母さんたちが店頭に立つ〈うまいもんや〉などの直売所・市場も。
暮らすように泊まりたいという方には、キッチンで料理をしたり、
ケイタリングを頼み、家の中でゆっくり過ごすのもおすすめです。
2020年4月からは、育児のために休んでいたカフェも再開予定。
自家製野菜をじっくり煮込んだカレーや、
佐渡の牛乳と新潟市の卵をたっぷり使った、とろける食感のプリンなどがいただけます。
「この家を直していたときに、近所の方に
“ここは何になるの? 近所にお茶を飲むところがほしいわ”と言われて、
そう言ってくださるならカフェスペースもつくろう、と始めたんです。
そうやってみなさんの声に応えながらいまのかたちになりました。
地元の方たちのお力添えがなければいまの暮らしもないし、
長屋門も直せなかったと思います」と、周子さん。
また、周子さんは佐渡市の移住コンシェルジュとしても活動しているそう。
移住を検討しているなら、こちらに滞在して
佐渡暮らしを体験してみるのもいいかもしれません。
現代の建築技術で蘇った木の家は、なんとも居心地のいい、ほっとくつろげる空間。
佐渡へおでかけの際は、ぜひ。
information
カールベンクス古民家民宿YOSABEI
住所:新潟県佐渡市三瀬川549
TEL:0259-67-7284
宿泊料金:母屋 1泊朝食付1名あたり9000円~(税別)/青の家 1棟貸切 32000円(税別)
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