驚きのある寿司を生み出す丁寧な仕事
そしていよいよ握りへ。
糸魚川市の漁港、能生(のう)であがったアオリイカには
格子状に細かく包丁が入っています。イカは身の厚い部分に甘さが隠れているため、
そこが露出するように包丁を入れることで、甘くねっとりとした食感になるのだそう。
この細かく入った切れ目は、佐藤さんの握りの特徴のひとつで、
味や食感に変化をもたらすのに加えて、目にも美しく食欲が掻き立てられます。

一貫一貫に丁寧な仕事がほどこされている。
塩釜の本マグロのトロにも、イカと同じく格子状に包丁が。
また、地物の大長ナスは、揚げたあとに皮を剥いて使うことで、
肉質がやわらかくとろけるような食感になるそう。
素材を熟知したうえで丁寧に組み立てていくことで、
野菜も新鮮な海の幸と引けをとらない仕上がりになるのです。

地物の大長ナスはその見た目だけでは一見ナスとはわからない。素材の特徴を熟知した佐藤さんだからこそ、野菜も魚に引けをとらない仕上がりになる。
気仙沼のカツオは、コシヒカリのワラで焼いた玉ねぎ、ミョウガ、神楽南蛮とポン酢で。
神楽南蛮は、地元で栽培されてきた青唐辛子で、糸瓜と同じく伝統野菜のひとつです。

気仙沼のカツオ。薬味が絶妙にネタを引き立てる。
きゅうりの佃煮を中に閉じ込めた能生のニシバイ貝は、
貝ときゅうりの食感のコントラストがたまりません。
春にはきゅうりに代わり、ウドを使うそう。
能生のサバは、塩と酢で締めたあとに1週間寝かせることでまろやかに。
「薄くスライスすることでアニサキスも見つけやすいんですよ」とのこと。

サバは塩と酢で締めて1週間寝かせて使う。3枚重ねることで食感に奥行きが生まれる。
北海道のウニと佐渡の鮭から採れたイクラは濃厚さに驚きます。
一転、能生のタチウオポワレは、タチウオに火を通すことで効果的なアクセントに。
薄めのタチウオを2枚重ねて盛ることで、口の中に奥行きのある味わいが広がります。
「うちで使うタチウオは400~500グラムと小さめのもの。
それよりも大きなものは身質が変わってしまうので、
身質と食感のベストなバランスを探った末、
タチウオはネタを2枚重ねてボリュームを出しています」

能生のタチウオポワレ。洋風なアレンジで驚きがある一貫だが、とろけるようにやわらかくおいしい。
宮内庁御用達の淡路島のアナゴに、
締めは「うちにしかないっすよ」と佐藤さんの感性が光る、糸瓜とトロの巻物。
当初は細巻きだったものの、それでは糸瓜の食感が思うように感じられず
太巻きへと改良したそう。
シャリの量も減らし、現在の糸瓜の食感を楽しめるバランスに進化。
脂ののったトロと控えめな味つけながら食感が力強い糸瓜の組み合わせは、
見た目よりもずいぶんと軽く、締めにぴったり。

今回ご紹介したのは10月初旬のネタ。
11月以降旬を迎えるのはマダラの白子、ブリ、あん肝。
1月からは予約制でカニを提供するそうです。

締めを飾るトロと糸瓜の巻物。手前のガリも佐藤さん自ら漬けている。