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〈清津峡渓谷トンネル〉
日本三大峡谷の名勝地が
インスタ映えの聖地になるまで

おでかけコロカル|新潟編

posted:2019.12.13   from:新潟県十日町市  genre:旅行 / アート・デザイン・建築

PR 新潟県

〈 おでかけコロカルとは… 〉  一人旅や家族旅行のプラン立てに。ローカルネタ満載の観光ガイドブックとして。
エリアごとに、おすすめのおでかけ情報をまとめました。ぜひ、あれこれお役立てください。

writer profile

Hiromi Kajiyama

梶山ひろみ

かじやま・ひろみ●熊本県出身。フリーランスのライターとして、インタビュー記事を中心に執筆する。著書に『しごととわたし』(イースト・プレス)。最近興味があるのは湯治宿。

credit

撮影:川瀬一絵

[tunnel of Light]Ma Yansong / MAD Architects(大地の芸術祭)

水面に反転した峡谷。その美しい風景を見るために、
そしてその風景の一部になってポーズをとり、写真を撮影するために。
いま、新潟県十日町市の山奥にある〈清津峡渓谷トンネル〉には
連日続々と人が訪れています。

SNSなどでこの光景を目にしたことがある人も多いと思いますが、
Instagramでハッシュタグ検索してみると「清津峡」で投稿された写真は2万件を超え、
インスタ映えするフォトスポットとして非常に人気が高いスポットです。

リニューアル前年の2017年に年間5万人だった来場者数は、
2018年に18万人へと大きく飛躍。2019年のお盆には、
1日の来場者数が過去最高となる5000人を突破しました。
なぜこれほどの人気スポットになったのでしょう?

水鏡のアイデアで大人気の撮影スポットに

そのきっかけは、越後妻有で2000年から3年に1度開催されている
世界最大級の国際芸術祭〈大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ〉
(以下、大地の芸術祭)。清津峡渓谷トンネルは、
この芸術祭の作品のひとつとしてリニューアルされ、来場者数が激増しました。

もともとは、日本三大峡谷にも数えられる絶景「清津峡」を目にしようと、
全国から訪れる観光客のためにつくられた清津峡渓谷トンネル。
全長750メートルのトンネル内には、当時から3か所の見晴台と
終点のパノラマステーションが設けられています。

そう、トンネル自体は20年以上前から同じ場所にあり、
基本的な構造はほぼ変わっていません。

大きく変わったのは、現在フォトスポットとなっている終点のパノラマステーション。
リニューアル前は、清津峡の歴史を学べる資料館として開放されていましたが、
2018年の大地の芸術祭に合わせて、中国出身の建築家であるマ・ヤンソンと、
彼によって設立された建築事務所〈MADアーキテクツ〉が
『Tunnel of Light』というタイトルのアートへと昇華させたのです。

床一面に沢水を張り、壁面にステンレス板を貼ることで、
外の景色が水に反転して映る現在の姿へ。
落石から身を守るためにつくられたトンネルを、
人々にとって“ツール”から“目的”へと生まれ変わらせた、
発明と言えるほどの画期的なアイデアだったのです。

終点の「ライトケーブ(光の洞窟)」。この日は風の影響で水面が波立っているが、普段はもっとくっきりと景色と人が反転して映る。水位が低い右端から壁を伝うように進んでいく。[tunnel of Light]Ma Yansong / MAD Architects(大地の芸術祭)

終点の「ライトケーブ(光の洞窟)」。この日は風の影響で水面が波立っているが、普段はもっとくっきりと景色と人が反転して映る。水位が低い右端から壁を伝うように進んでいく。[tunnel of Light]Ma Yansong / MAD Architects(大地の芸術祭)

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終点までアートが点在

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終点に行き着くまでもおもしろい!

しかも、見どころは終点だけではありません。
入り口から終点まで、明暗、色、音などさまざまな要素を掛け合わせ、
来場者をトンネルの奥へと誘う仕掛けが施されています。

たとえば、見晴台から見晴台までの間には、異なる色の光がトンネル内を照らします。
どこかの民族音楽のような不思議な歌が流れるゾーンも。
そのミステリアスな雰囲気に耐えられず、
「これ以上先に行きたくない!」と泣き出してしまう子どももいるのだとか。
たしかに神聖で神秘的なムードが漂っています。

トンネル内の様子。奥に進むにつれ、ライトの色が変化していく。[tunnel of Light]Ma Yansong / MAD Architects(大地の芸術祭)

トンネル内の様子。奥に進むにつれ、ライトの色が変化していく。[tunnel of Light]Ma Yansong / MAD Architects(大地の芸術祭)

また第2展望台には、カプセルのようなトイレが鎮座。
外から見るとメタリックな素材で覆われており、まるで宇宙船のような存在感。
中に入ってみると、あっと驚くような仕掛けが。
これも遊び心のあるアート作品なのです。

こうしたアートの存在が、
「この先にはいったいどんな景色が広がっているんだろう?」と
終点まで好奇心を掻き立てます。

第2展望台に突如現れる、「見えない泡」と名づけられたトイレ。訪れたらぜひ中に入ってみて。[tunnel of Light]Ma Yansong / MAD Architects(大地の芸術祭)

第2展望台に突如現れる、「見えない泡」と名づけられたトイレ。訪れたらぜひ中に入ってみて。[tunnel of Light]Ma Yansong / MAD Architects(大地の芸術祭)

トンネルの入り口にある施設「ペリスコープ」にもぜひ足を運んでみてください。
建物に入った瞬間に硫黄の香りがぷ~んと漂います。
1階に売店とカフェ、2階には足湯の機能を備えているからです。

エントランス施設「ペリスコープ」はトンネルのリニューアル後、ほどなくして完成。こちらも〈マ・ヤンソン/MAD Architects〉による作品。[tunnel of Light]Ma Yansong / MAD Architects(大地の芸術祭)

エントランス施設「ペリスコープ」はトンネルのリニューアル後、ほどなくして完成。こちらも〈マ・ヤンソン/MAD Architects〉による作品。[tunnel of Light]Ma Yansong / MAD Architects(大地の芸術祭)

階段を上ると、近所の日帰り温泉〈湯処よーへり〉から引いた
源泉掛け流しの単純硫黄温泉の足湯と、
天窓の鏡に映る清津川が目に飛び込んできます。

2階では足湯に浸かりながら、天窓の鏡に映る清津川を眺めることができる。足を拭くタオルの準備をお忘れなく。

2階では足湯に浸かりながら、天窓の鏡に映る清津川を眺めることができる。足を拭くタオルの準備をお忘れなく。

ペリスコープの天窓から見える景色

年間を通して42度に設定されているお湯は熱すぎず、ぬるすぎない、心地よい温度で、
天井の鏡に映る清津川を眺めながらのんびり浸かることができます。
体がじんわりあたたまったら、1階の売店で販売している
「生クリーム仕立ての濃厚ソフトクリーム」に舌鼓。

1階で販売しているソフトクリームは、スタッフもオススメの一品。さまざまなグッズもあり、十日町で採れた10種の山菜を図鑑のように並べたプリントが独特な「山菜Tシャツ」も人気です。

1階で販売しているソフトクリームは、スタッフもオススメの一品。さまざまなグッズもあり、十日町で採れた10種の山菜を図鑑のように並べたプリントが独特な「山菜Tシャツ」も人気です。

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トンネルがつくられた理由

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自然の猛威から人々を守るために生まれた清津峡渓谷トンネル

1941年に国の名勝天然記念物に。
1949年には上信越高原国立公園の一部に指定されるなど、
見る者を圧倒させる大峡谷、清津峡。
その始まりは1600万年前に海底火山の噴火活動により、
火山灰が海底に降り積もったところまで遡り、
長い歴史を経て変化したことがわかっています。

国立公園に指定され、名勝としての知名度が上がるのに伴い、
温泉街として観光客を受け入れる動きも活発化していき、
清津峡を愛でるための遊歩道が整備されました。
このときは、まだトンネルはありません。

しかし、1984年2月には大規模な雪崩が発生し、
その後も1988年に落石事故が起きるなど、死傷者が出る大惨事に見舞われました。

落石事故が起きる以前から遊歩道の危険性は指摘されてきました。
十日町は豪雪地帯。雪崩や残雪のほか、
落石や土砂崩れの発生が懸念されていたからです。

落石事故の原因になったのは、清津峡の特徴のひとつである
柱状節理(ちゅうじょうせつり)でした。
清津峡の岩崖は一枚岩ではなく、マグマが冷えて固まる際に収縮し、
四~六角形の柱状が寄せ集まってできているため、もろく崩れやすいのです。

切り立った柱状節理の岸壁が見事な清津峡は、日本三大峡谷に数えられる。以前はこの絶景を見るために遊歩道を使う必要があったが、現在はトンネルのおかげで安全に楽しむことができる。

切り立った柱状節理の岸壁が見事な清津峡は、日本三大峡谷に数えられる。以前はこの絶景を見るために遊歩道を使う必要があったが、現在はトンネルのおかげで安全に楽しむことができる。

この事故を機に、峡谷美を愛でるために必要な清津川沿いの遊歩道は、
通行はおろか立ち入りさえも一切禁止となりました。
遊歩道の立ち入り禁止は、名勝といわれ、地元の人たちにとって
誇りでもある峡谷美を見ることができなくなることを意味します。

「せめて峡谷美だけでも見られるようにしてほしい」

事故から4年の閉鎖期間の後、遊歩道の代替案として
清津峡渓谷トンネルの建設が始まりました。
安全に通行ができること、国立公園内にふさわしく外観を損ねないという理由から、
遊歩道の代替施設となったのです。

こうした経緯を経て、1996年に清津峡は
観光地として新たなスタートを踏み出しました。

[tunnel of Light]Ma Yansong / MAD Architects(大地の芸術祭)

[tunnel of Light]Ma Yansong / MAD Architects(大地の芸術祭)

自然の猛威に対し人々が立ち上がり、安全を確保する方法を探り、
トンネルという方法を見つけたこと。
絶景を見るための通り道であったトンネルを
アートの力で人気観光地へと盛り上げたこと。
いま再び清津峡は、たくさんの人々から熱い視線が注がれています。

第3展望台の壁に散りばめられた作品「しずく」。[tunnel of Light]Ma Yansong / MAD Architects(大地の芸術祭)

第3展望台の壁に散りばめられた作品「しずく」。[tunnel of Light]Ma Yansong / MAD Architects(大地の芸術祭)

紅葉の時期も多くの人がここを訪れます。
SNS越しでは感じることができない、水鏡に至るまでの過程も、
ぜひ体感してみてください。

information

map

清津峡渓谷トンネル

住所:新潟県十日町市小出癸2126

TEL:025-763-4800(清津峡渓谷トンネル管理事務所)

定休日:冬季休業(年末年始は営業、冬季休業は降雪状況により異なるため、詳細は公式HP)

Web:日本三大峡谷 清津峡公式サイト

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