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〈岩の原葡萄園〉
マスカット・ベーリーAのふるさとへ。
老舗ワイナリーで味わう日本ワイン

おでかけコロカル|新潟編

posted:2019.11.27   from:新潟県上越市  genre:旅行 / 食・グルメ

PR 新潟県

〈 おでかけコロカルとは… 〉  一人旅や家族旅行のプラン立てに。ローカルネタ満載の観光ガイドブックとして。
エリアごとに、おすすめのおでかけ情報をまとめました。ぜひ、あれこれお役立てください。

writer profile

Hiromi Kajiyama

梶山ひろみ

かじやま・ひろみ●熊本県出身。フリーランスのライターとして、インタビュー記事を中心に執筆する。著書に『しごととわたし』(イースト・プレス)。最近興味があるのは湯治宿。

credit

撮影:川瀬一絵

〈マスカット・ベーリーA〉。
ワイン好きに限らず、この名を耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか? 
それもそのはず、マスカット・ベーリーAは
日本で生産されている赤ワイン用のぶどうのなかで最も生産量が多い品種だから。

そんな日本のワインぶどうの代名詞ともいえるマスカット・ベーリーAが生まれたのが、
新潟県上越市にあるワイナリー〈岩の原葡萄園〉です。

今年6月に開催された「G20大阪サミット2019」では、
赤ワイン〈深雪花(みゆきばな)〉が振る舞われるなど、
1890(明治23)年の開設以来、日本のワインのパイオニアとして、
ワイン界を牽引してきた同園。
ここでは、創業者であり「日本のワインぶどうの父」と称される
川上善兵衛氏と日本のワインがたどってきた歴史に触れることができます。

岩の原葡萄園のワインができるまで

岩の原葡萄園があるのは、新幹線の上越妙高駅から車で25分ほどの距離にある
上越市の頸城(くびき)平野。
1時間ほどあればすべてを見て回れる広さの園内には、葡萄畑はもちろん、
ワインを製造・販売する施設とオフィスが併設されています。

生産棟、第一号・第二号石蔵、雪室、
ワインショップ・レストラン・資料室からなる川上善兵衛記念館などがあり、
生産棟とオフィスを除くすべての施設が開放されています。

赤ワインの仕込み風景。ぶどうを除梗破砕機に入れ、果梗と実に分ける。

赤ワインの仕込み風景。ぶどうを除梗破砕機に入れ、果梗と実に分ける。

取材に訪れたこの日は、県外から仕入れた約600キロの
マスカット・ベーリーAを乗せたトラックが横づけされ、
赤ワインの仕込みをしているところでした。

「このマスカット・ベーリーAは、糖と酸のバランスがほどよくて、
そのまま食べてもおいしいんですよ」

善兵衛が生んだ日本固有種〈マスカット・ベーリーA〉。日本で最も多く栽培されている赤ワイン用ぶどうで、生食兼用のぶどう。

善兵衛が生んだ日本固有種〈マスカット・ベーリーA〉。日本で最も多く栽培されている赤ワイン用ぶどうで、生食兼用のぶどう。

ぶどうは丸ごと除梗破砕機に入れられ、まずは果梗と実に。
次に搾汁機で実を搾り、果汁になります。
常温だと発酵の温度が上がり、苦味や雑味が出てしまうため、
冷やしたぶどうを使ってなめらかに仕上げます。
園内で収穫したぶどうで仕込む際には、7度前後の冷蔵庫でひと晩冷やすのだそうです。
1キロの葡萄から約800ミリリットルのワインができます。

次に向かったのは葡萄畑。取材で訪れた10月上旬は収穫の最盛期。
晴天の空の下、約20名の方々が斜面に立てた脚立を器用に使って、
ロゼワイン用のマスカット・ベーリーAの収穫をしていました。

サイズと糖度の基準を満たしたぶどうから順に収穫。斜面に器用に脚立を立て、高いところのぶどうも手際よく。

サイズと糖度の基準を満たしたぶどうから順に収穫。斜面に器用に脚立を立て、高いところのぶどうも手際よく。

岩の原葡萄園のぶどう収穫

園内では、〈ブラック・クイーン〉、〈ローズ・シオター〉、
〈レッドミルレンニューム〉、〈ベーリー・アリカントA〉を主に栽培。
糖度とサイズを計測し、条件に達したぶどうから収穫していきます。

収穫したぶどうはカゴへ

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ワインを貯蔵する知恵とは…?

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現存する日本最古のワイン蔵も

文化財に指定されている石蔵も必見です。
1894(明治27)年に建てられ、現存する日本最古のワイン蔵として
国の登録有形文化財となっている第一号石蔵と、
その4年後に建てられた第二号石蔵は、岩の原葡萄園の歴史の長さと、
川上善兵衛の先鋭的なアイデアを体感できる空間。

1898(明治31)年につくられ、上越市の指定文化財となっている第二号石蔵入り口。

1898(明治31)年につくられ、上越市の指定文化財となっている第二号石蔵入り口。

第一号石蔵は斜面を開削し、凝灰岩切石でつくられたワインの貯蔵庫。
面積は93平方メートル、建造当時は現在よりも
3メートルほど低い位置にある地下の石蔵として設計されました。

第一号石蔵の脇には冷気隧道(れいきずいどう)の跡が。
冷気隧道とは、山からの冷たい湧き水を流す道のことで、
湧き水によって冷やされた空気を利用して、温度管理に役立てていたそうです。
現在は16度~17度に保たれ、一番の販売数を誇る赤ワイン
〈深雪花〉の原料を熟成しています。

第二号石蔵に保存されている当時の樽。岩の原葡萄園では、ビール樽工場から技術を導入し、1892(明治25)年には6人の樽工で大小2種類のワイン用木樽を製造していた。1937(昭和12)年にはウイスキー用木樽の製造も開始。ワイン、ウイスキー共に日本最古の樽製造所でもあった。

第二号石蔵に保存されている当時の樽。岩の原葡萄園では、ビール樽工場から技術を導入し、1892(明治25)年には6人の樽工で大小2種類のワイン用木樽を製造していた。1937(昭和12)年にはウイスキー用木樽の製造も開始。ワイン、ウイスキー共に日本最古の樽製造所でもあった。

冬に積もった雪を貯蔵して野菜やお米などを保存し、
天然の冷蔵庫ともいわれる古来からの雪国の知恵「雪室」。
新潟県各地に見られる雪室ですが、ここでも第二号石蔵は雪室から冷気を取り込み、
ワインを熟成させています。雪の冷気を利用してワインを低温発酵させる技術は、
日本初となる画期的な発明でした。

第二号石蔵に当初併設されていた雪室を、2005年に再建して復活させた。4~10月に公開。(写真提供:岩の原葡萄園)

第二号石蔵に当初併設されていた雪室を、2005年に再建して復活させた。4~10月に公開。(写真提供:岩の原葡萄園)

雪室内の温度は2度。毎年2月に約330トン、
大型トラック60台分にもなる雪を天井近くまで積み上げます。
時間が経つにつれて雪は溶けていきますが、夏でも雪は残り、一年中ひんやり。
ただ、有数の豪雪地だった頚城平野も年々積雪量が減っているため、
ここ数年は隣の牧区からも雪を運んでいるそうです。

岩の原葡萄園ぶどう畑

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できたての“赤ちゃんワイン”を試飲!

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ショップで「ペルレ」を試飲、レストランで食事とワインも

園内をぐるりと巡ったあとは、川上善兵衛記念館のワインショップや
レストランでひと休み。
岩の原葡萄園のワインがフルラインナップされたワインショップでは、
お土産を選んだり、さまざまな銘柄の試飲ができます。

同園の顔ともいえる〈深雪花〉の赤(2219円・税込)は、完熟したマスカット・ベーリーAを厳選して醸造したもの。先のG20大阪サミットでも振る舞われた。

同園の顔ともいえる〈深雪花〉の赤(2219円・税込)は、完熟したマスカット・ベーリーAを厳選して醸造したもの。先のG20大阪サミットでも振る舞われた。

なかでもぜひトライしてほしいのが、一般には流通していない
「ペルレ」という発酵途中のワイン。
通常ぶどうの果汁は仕込みからワインになるまでに1~2週間かかるところ、
ペルレはまだ2、3日目という“赤ちゃんワイン”。
やさしい甘さとしゅわしゅわとした泡とが合わさって、
まるでぶどうサイダーのような飲み心地です。

一般に流通していない発酵途中の赤ちゃんワイン「ペルレ」。30ミリリットル400円で試飲できる。

一般に流通していない発酵途中の赤ちゃんワイン「ペルレ」。30ミリリットル400円で試飲できる。

お腹が空いたら2階のワイナリーレストラン〈金石の音(きんせきのね)〉で舌鼓を。
以前は上越市の市街地で長年フレンチレストランを営んでいたシェフのおすすめは、
岩の原葡萄園で人気の赤ワイン〈善〉を贅沢に使用した「和牛ほほ肉の赤ワイン煮」。
じっくりと煮込まれたお肉は、箸でも切れるやわらかさです。

赤ワイン〈善〉で煮込んだ「和牛ほほ肉の赤ワイン煮」(単品1800円、ランチコース3200円ともに税別)。

赤ワイン〈善〉で煮込んだ「和牛ほほ肉の赤ワイン煮」(単品1800円、ランチコース3200円ともに税別)。

ほかにもぶどうの木を燃やして焼く「和牛サーロインの薪火焼きステーキ」や
ハンバーグ、オムライスなど、家族連れでも楽しめる
スタンダードな洋風メニューが並びます。

ランチコースは「和牛ほほ肉の赤ワイン煮」、
「和牛サーロインの薪火焼きステーキ」、「本日の地魚料理」などのメインに、
雪室で貯蔵された野菜を使った前菜盛り合わせ、デザート、パンとコーヒーが付きます。
それぞれの料理に合わせてワインを楽しんで。

コースの前菜盛り合わせも地の食材を主に使用。

コースの前菜盛り合わせも地の食材を主に使用。

日本ワインの未来を変えた善兵衛の思い

岩の原葡萄園のある頚城平野は、いまでこそのどかな田園風景が広がっているものの、
善兵衛が自宅の庭園に鍬を入れ、葡萄園を創業した当時は、
豪雪と平野を横切る河川の洪水のために「三年一作」と表現されるほど
米が収穫できず、苦労する農民たちの姿があったといいます。

創業者で“日本ワインぶどうの父”と称される川上善兵衛の銅像。

創業者で“日本ワインぶどうの父”と称される川上善兵衛の銅像。

葡萄園がある一帯に50ヘクタールもの土地を有する
大地主の6代目として生まれた善兵衛は、
人々の生活をどうにか楽にできないものかと、
川上家とつながりのあった勝海舟のもとを訪ね、相談をしていました。

そこで振る舞われたワインが、善兵衛とその周りの人々と、
日本ワインの未来を変えました。
ワインの原料となるぶどうは、田畑を潰すことなく、
荒れ果てた土地でも栽培できることを知ったのです。

葡萄園の向こうに田んぼが広がるのもこの地域らしい風景。

葡萄園の向こうに田んぼが広がるのもこの地域らしい風景。

善兵衛は、1万回以上にも及ぶ交雑の末、
日本のワインぶどうの代名詞的存在となっているマスカット・ベーリーAをはじめ、
日本の風土に合った22品種のぶどうを開発。

それだけにとどまらず、〈ナイアガラ〉など海外の優れた品種を輸入し、
その栽培に取り組み、自らの体験をもとに
『葡萄全書』や『交配に依る葡萄品種の育成』など、
後の日本ワインの発展に寄与する多数の著書を執筆しました。
善兵衛なくして、日本のワインの歴史を語ることはできないのです。

老舗ワイナリーを訪れ、その歴史や創業者の思いに触れると、
ワインがまた一段と味わい深くなりそうです。

左からローズ・シオターのみを使った〈ローズ・シオター2018〉(3300円・税込)、マスカット・ベーリーAとブラック・クイーンを15か月かけて熟成させた〈ヘリテイジ2016〉(5500円・税込)、2016年産の有機栽培ぶどうによる〈マスカット・ベーリーA2016〉(4950円・税込)。すべて岩の原葡萄園のぶどうを使用。

左からローズ・シオターのみを使った〈ローズ・シオター2018〉(3300円・税込)、マスカット・ベーリーAとブラック・クイーンを15か月かけて熟成させた〈ヘリテイジ2016〉(5500円・税込)、2016年産の有機栽培ぶどうによる〈マスカット・ベーリーA2016〉(4950円・税込)。すべて岩の原葡萄園のぶどうを使用。

information

map

岩の原葡萄園

住所:新潟県上越市北方1223番地

TEL:025-528-4002(岩の原葡萄園)/025-520-9002(レストラン)

開園時間:9:30~16:30(見学、試飲の受付は16:00まで)

金石の音(レストラン)営業時間:11:00~16:30(水曜定休)

定休日:年末年始及び1~2月の日曜日、3月の特定日(冬季は天候などによる臨時休業あり)

Web:http://www.iwanohara.sgn.ne.jp/

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