南魚沼市と魚沼市のちょうど中間にあたる大崎集落。
住宅や商店がポツリポツリと点在するこのエリアに、
遠路はるばる車を走らせ顧客が集う寿司屋〈龍寿し〉があります。
先代の頃は出前と宴会が売り上げの多くを占める、
いわゆる農村地帯のお寿司屋さんだった同店は、
2代目大将の佐藤正幸さんの手により、
新潟でも屈指のレベルと評判の名店へと進化を遂げました。
現在では県外からのお客さんが約3割を占め、
南魚沼市の高級宿〈里山十帖〉をプロデュースする
〈自遊人〉の代表取締役である岩佐十良(とおる)さんをはじめ、
食通たちに愛されています。
その道の通たちをうならせる秘密はどこにあるのでしょう。

手間、時間、独自のアイデアが生む、ここにしかない味
この日はカウンターで、つまみと握りのおまかせコース
「信楽(しがらき)」(7500円・税別)をいただくことに。
おつまみ4~5品、握りが10~12貫にお味噌汁がついた
バラエティに富んだ人気メニューです。
まずはおつまみから。
細くシャキシャキとした食感が心地よい岩もずくに始まり、
幻の魚と呼ばれるアラの刺身、甘エビの刺身、ノドグロの塩焼きと続きます。
岩もずくからノドグロまでこの日の主役はすべて佐渡産です。

ノドグロの塩焼きに添えられた枝豆も地物。
アラと甘エビに添えられたつまは、だしで漬けた南魚沼産の糸瓜。
糸瓜は「糸かぼちゃ」「そうめんかぼちゃ」とも呼ばれる長岡の伝統野菜です。
大根よりも味が濃く、身が詰まっているため、佐藤さんがひと手間加えることで、
それだけで立派な一品として仕上がっています。

甘エビの刺身には、長岡野菜の糸瓜のつまを。八海山の伏流水で育てた魚沼わさびはその都度すりおろす。
「糸瓜を使い始めたのは3年前から。
2015年に〈雪国A級グルメ〉というプロジェクトの講演会に参加したときに
山形の〈アル・ケッチャーノ〉の奥田政行シェフのお話を聞いて、
もっと地元の食材に目を向けてみようと思ったのがきっかけです。
糸瓜はまず巻物の具として使い始めて、その具をそのまま
『これ、つまにも使えるじゃん!』とひらめいたんです」

大将の佐藤正幸さん。
おつまみの締めは地物トマトと新潟県産ぶどうのカプレーゼ風味。
トマトは2種、ぶどうは3種使用し、
酒粕、アーモンド、砂糖、クリームチーズと和えたもの。
トマトとぶどうの酸味や甘みにクリームチーズのコクが絶妙に絡み合う
爽やかな味わいで、おつまみの終わりと握りの始まりをつなぐための
一品としての役割を果たしている印象を受けました。
佐藤さんの気遣いとクリエイティビティが伝わってきます。

おつまみの締めは、地物トマトと新潟県産ぶどうのカプレーゼ風味。佐藤さんのお客さんへの気遣いを感じる一品。