歴史的な建物をアップデートした〈香林居〉
「いつか金沢でホテルを運営したいと思っていた」と言うのは、
“ライフスタイルホテル”ブームの先駆けともいえる
〈L&Gグローバルビジネス〉代表の龍崎翔子さん。
しかし石川県金沢市で、繁華街といえる香林坊エリアに
〈香林居(こうりんきょ)〉というホテルを新たにオープンさせた。
「金沢は、旅の目的地になるような名店がいくつもあり、
人生の節目の思い出づくりや、ハレの日に訪れるような旅先になっていると思います。
香林居は、大切な旅の舞台にふさわしく、
かつ“世俗から離れた”ようなニュアンスのホテルを目指しました」

〈L&Gグローバルビジネス〉代表の龍崎翔子さん。(写真提供:L&Gグローバルビジネス)
そのようなホテルを目指したのも、L&Gが得意としている
「土地の空気感を織り込んだホテルづくり」という感性に引っかかった、
ある建物があったから。
香林居になったビルは、もともと〈眞美堂〉という九谷焼を中心に
世界の工芸品を扱うギャラリーだった。
ビルの老朽化から一度取り壊す方向になったが、建築的な価値を見いだした西松建設が、
建物を残すために奔走。
L&Gがサン・アド社をはじめとするクリエイティブチームと協働して企画・開発を行い、
ホテルとして建築を残すことになった。
それゆえ内観はフルリノベーションされているが、
外観のアーチを描く独特のファサードはかつてのまま残されている。

全面に施されている外観のアーチ。(写真提供:L&Gグローバルビジネス)

エントランスにもアーチを採用。(写真提供:L&Gグローバルビジネス)
「物件を初めて見たときに、歴史や空間の年輪、堆積した時間の重みなどを感じました。
だから、長きにわたって愛されてきた景色の一部であるこの建物にふさわしい、
情緒的で上質な空間をつくりたいと思いました」

特徴的な外観のアーチを、内側から見られる部屋。
ホテルは地下1階から9階まであり、ルーフトップにはサウナと露天風呂を備える。
ホテルに入っていくと、まず1階に蒸溜所がある。
この場で毎日、石川県の霊峰・白山で採ったスギやクロモジを素材とした
芳香蒸溜水と精油を製造している。

ルーフトップにある露天風呂。
香林坊という地の歴史をひも解くと、向田香林坊という安土桃山時代の僧に行き当たる。
彼は薬局を営んでいて、
あるときつくった目薬で前田利家の目の病気を治したという言い伝えがあった。
かつて、目薬は「蘭引き」と呼ばれる陶器の蒸溜機で精製されていたといわれており、
そこから「蒸溜」というキーワードを抽出して、蒸溜所を併設するに至った。

毎日稼働している蒸溜機。
「植物の状態は、その季節や天候によっても違うし、個体差もある。
さらに蒸溜の際の温度や湿度などによっても仕上がりは異なってきます。
そうしたそのときその瞬間にしか出合えない刹那性の高いものを、
薬局のように“処方”しています」
最上階にあるサウナではセルフロウリュウが可能。
そこに備えてあるこの蒸溜水を焼けた石にかける。
するとスギの葉の、ほどよくスモーキーな香りが漂ってくる。

サウナでは、水をかけて蒸気を発生させるロウリュウを自分の手で行うことができる。その水はホテル内で蒸溜したものだ。

サウナ利用者にはフリーアイス!
2階はエントランスとロビー、3~9階は客室。
中2階には、まだ日本では数少ないアイソレーションタンクを2台設置している。
地下には金沢の古民家を改装した人気台湾料理店〈四知堂(スーチータン)kanazawa〉の
ディレクションによるタイワニーズキュイジーヌがある。
全体的に落ち着いた雰囲気で、金沢らしい日本の伝統を感じさせながら、
モダンで上質な空間になっている。

















































































