〈大阪中之島美術館〉がオープン! 約30年の収集が結実した 近現代美術コレクションを一挙公開
約40年の道のりを経て、待望のオープン
大阪のキタとミナミの間、堂島川と土佐堀川に囲まれた「中之島」は、
〈大阪市立東洋陶磁美術館〉
〈中之島 香雪美術館〉
〈国立国際美術館〉といった文化施設や歴史的建造物が立地し、
訪ね歩くのが楽しいエリアです。
さらに2月2日、〈大阪中之島美術館〉がついに開館しました。
開館までには約40年にわたる長い道のりがありました。
1983年、大阪市制100周年記念事業基本構想のひとつとして
近代美術館の建設構想が持ち上がり、
1990年に近代美術館建設準備室が設置されましたが、
バブル崩壊や大阪市の財政悪化で計画が停滞し、ようやくオープンに至ったのです。

一方、準備室ができてから30年の間には、
美術館の根幹はコレクションであるという姿勢で、
19世紀後半から現在までの国内外の美術とデザインを核として収集を続けたため、
約6000点を超えるコレクションが形成されました。
開館記念展『Hello! Super Collection 超コレクション展 99のものがたり』では、
その中から選び抜いた約400点の代表的な所蔵品を一挙公開。
国内外の展覧会にも積極的に貸し出されていたため、ホームへの里帰り感もあります。
30年間館長を務めてきた菅谷富夫館長は、喜びとともに
「ここからが始まり」と決意を新たにしていました。
大阪のコレクターを起点とした大阪のアートシーン
展覧会場は4、5階です。展示作品には併せて99の物語が紹介され、
100個目の物語は観客から募集しています。
見どころをピックアップしましょう。
まず第1章「Hello! Super Collectors」では、コレクション形成史の源を辿ります。
最初に紹介するのは、美術館構想の起点となった山本發次郎コレクション。
大阪の実業家で美術コレクター、山本發次郎が特に熱心に収集したのが、
1898年大阪に生まれ、パリで学んだ後、30歳で早逝した画家・佐伯祐三でした。
その数は最大150点にも及んだと言われますが、1945年6月の空襲で多くが焼失、
その前に疎開させていた約3分の1の作品が戦災を免れ、
そのうちの33点が山本の遺族から同館に受贈されたのでした。
亡くなる4か月前ほどに描かれた『郵便配達夫』もその貴重な一作。
今回はパリで描いた風景画なども併せて見られます。

佐伯祐三『郵便配達夫』1928年 病に伏す佐伯に郵便物を届けに来た配達夫をモデルとして描いた作品。
同館にとって、大阪の美術やデザインに関する収集は大きな柱のひとつです。
大阪のまちを描いた風景画からは時の流れも感じられます。
池田遙邨『雪の大阪』は、1928年2月11日、
22年ぶりの大雪に雪化粧されたまちを描いた貴重な屏風作品です。

池田遙邨『雪の大阪』1928年
大阪は早期に写真が盛んになった「写真のまち」でもあります。
渡米して写真を学んだあと、1930年代以降、大阪で写真スタジオを構えた山沢栄子は
女性写真家の草分け的存在です。

70歳を超えて抽象表現に挑んだ山沢栄子の『What I am doing』シリーズ。いずれも1982年。
戦後の前衛美術運動の中でも「GUTAI」の名で世界的に再評価著しいのが、
1954年に兵庫県芦屋市で結成された〈具体美術協会〉です。
1962年からこの中之島が本拠地となり、
1970年まですぐ近くに私設展示施設〈グタイピナコテカ〉がありました。
この施設にちなんだ黒い壁に、リーダーでもあった吉原治良の作品が展示されています。
今後、具体美術協会の展覧会も予定されています。

吉原治良 左から『作品(White Circle on Red)』1963年、『作品』1965年、『作品』1965年
本物に触れて近代・現代美術史が学べる
続いて第2章「Hello! Super Stars」では、
近代・現代美術の代表作がズラリと並びます。
ジャン(ハンス)・アルプの抽象彫刻、
ルネ・マグリットのシュルレアリスム絵画といった20世紀初頭のヨーロッパ美術から、
第2次世界大戦後にアート界の中心となったアメリカ美術への流れを紹介。
いまも人気のジャン=ミシェル・バスキアまで、ワクワクする展示エリアです。
さらに大阪を拠点に国際的に活躍する森村泰昌などの作品も肩を並べています。

アメデオ・モディリアーニ『髪をほどいた横たわる裸婦』1917年 4月からの同館企画展『モディリアーニ ―愛と創作に捧げた35年―』でも中心となる作品。

手前はジャン(ハンス)・アルプ『植物のトルソ』1959年、奥はルネ・マグリット『レディ・メイドの花束』1957年。

森村泰昌『美術史の娘(劇場A)』『美術史の娘(劇場B)』1989年
家具とグラフィックデザインの調和を楽しむ
最後の第3章「Hello! Super Visions」は、
19世紀以降のデザインを中心とした展示です。
「生活の美術」をテーマとして最初に収集したウィーン工房の作品群から始まり、
空間の雰囲気ごと味わえます。

展示風景より。右はウィーン工房のミヒャエル・トーネット『椅子No.14』デザイン1859年(製造1859年)。大阪中之島美術館が最初に購入した家具コレクションの中で最もデザインされた年が古い。
壁には、ロートレックやミュシャをはじめとする
ポスター芸術が展示されています。これらグラフィック作品は、
休館した〈サントリーミュージアム「天保山」〉から2010年末に預かった、
約18000点に及ぶサントリーポスターコレクションからの展示です。

展示風景より。20世紀初頭のリートフェルトの椅子とカッサンドルのポスターが並ぶ。
東京生まれで大阪にも馴染み深い倉俣史朗の作品も見逃せません。
その独創性で世界に「クラマタ・ショック」とも評されたインテリア・デザイナーです。
アクリルの中に浮かぶ造花のバラの花。
代表作『ミス・ブランチ』は、テネシー・ウィリアムス
『欲望という名の電車』の主人公の名にちなんだ詩的な作品です。

展示風景より、手前は倉俣史朗『ミス・ブランチ』デザイン1988年(製造1989年)。
世界の近代美術史やデザイン史を押さえながら、
大阪および関西のアート&デザインの再発見もできる贅沢な展覧会。
枠組みの外へ飛び出そうとするアーティストの心意気も感じます。
4階の階段横には、大阪生まれの作家ヤノベケンジによる
巨大な常設作品が立っています。
正面広場には、猫をモチーフにした守神となる彫刻も。

ヤノベケンジ『ジャイアント・トラやん』
なお1、2階は無料で入場でき、
ミュージアムショップ〈dot to dot today〉などが利用できます。
3月18日にはデンマーク発インテリアプロダクトブランド
〈HAY OSAKA〉がオープン予定です。
中之島エリアの美術館やコンサートホール、科学館など14機関が参加し、
施設や人や文化をつなぐネットワーク「クリエイティブアイランド中之島」
も立ち上がっています。大きなビルが建ち並ぶ開発地、
一歩路地に入れば昔ながらのまち並みも残っています。
イベントなどをチェックしながら回遊してはいかがでしょうか。
*作品はすべて大阪中之島美術館蔵。
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