湿原カヌーに、阿寒湖アイヌコタンと
伝説の彫刻家。釧路から旭川へ、
大自然とアイヌ文化に触れる旅

彫刻のまち旭川で、砂澤ビッキ作品に出合う

阿寒湖から石北峠を経て、車でさらに北西へ向かうこと約4時半、
札幌市に次ぎ、北海道第2位の人口を有する旭川市に到着。
北海道のほぼ中央に位置し、道北の産業や文化の中心でありつつ、
北海道の最高峰、旭岳を含む大雪山系と、石狩川など多数の河川に囲まれ、
都市と自然が融け合ったまちだ。

また、市内各所で野外彫刻作品を見られる「彫刻のまち」としても知られる。
そんな旭川市出身の彫刻家のひとりが砂澤ビッキだ。

市内でも、ビッキの彫刻作品がいくつか見られるスポットがある。
そのひとつが、旭川駅構内にある
〈中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館ステーションギャラリー〉。
彫刻のまちの玄関口として、彫刻を身近に親しんでもらおうと、
ビッキの大型作品を含め、道内ゆかりの彫刻家の作品を中心に紹介している。

〈中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館ステーションギャラリー〉に展示された、砂澤ビッキ作品『樹鮭 樹蝶』。右奥に見えるのが『カムイミンダラ』。いずれも旭岳温泉〈こまくさ荘〉(2008年閉館)の依頼で1977年に制作された。取材時には、著名な椅子の研究家、織田憲嗣さんの「織田コレクション」も展示。

〈中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館ステーションギャラリー〉に展示された、砂澤ビッキ作品『樹鮭 樹蝶』。右奥に見えるのが『カムイミンダラ』。いずれも旭岳温泉〈こまくさ荘〉(2008年閉館)の依頼で1977年に制作された。取材時には、著名な椅子の研究家、織田憲嗣さんの「織田コレクション」も展示。

ビッキは1931年、アイヌ民族として木彫りをたしなむ父と、
アイヌ刺繍の名手だった母の間に生まれた。
本名は恒雄。愛称である「ビッキ」はアイヌ語でカエルを意味する。

旭川では農業に従事したのち、22歳頃から彫刻の道へ。
阿寒や鎌倉、札幌などを拠点に制作し、晩年は道北の音威子府(おといねっぷ)に移住。
1989年に57歳で亡くなるまで、国内外で活躍し続けた。 

アイヌ文様とはまた違う、オリジナルの「ビッキ文様」ともいえる、
モダンで繊細なデザイン。そこからは、アイヌ民族という枠を超え、
ひとりの彫刻家として評価してほしいという思いが伝わってくる。

『樹鮭』に施されたビッキ文様。

『樹鮭』に施されたビッキ文様。

ステーションギャラリーの本館にあたる
〈中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館〉の山腋雄一館長は、
「ビッキはさまざまな動物や虫、甲殻類などをモチーフに玩具のように可動部をつけて、
遊びながら鑑賞できるような作品を多く制作していました」と話す。

『カムイミンダラ』は縦1.6メートル、横3.38メートルの巨大レリーフ。

『カムイミンダラ』は縦1.6メートル、横3.38メートルの巨大レリーフ。

「ビッキ作品最大のレリーフ『カムイミンダラ』は、
アイヌ語で神々が遊ぶ庭という意味。
大雪山連峰を指し、そこにある自然や動物、人の営みを包括するようなイメージで
つくられました。見る人によって、山の連なりや、魚の遡上など、
さまざまなものを想起させる作品です」

旭川ゆかりの彫刻家・中原悌二郎の作品や中原悌二郎賞受賞の彫刻作品を展示する〈中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館〉。旧陸軍第七師団が設営されたときに将校の社交場として建築された旧旭川偕行社(国の指定重要文化財)を美術館として活用。

旭川ゆかりの彫刻家・中原悌二郎の作品や中原悌二郎賞受賞の彫刻作品を展示する〈中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館〉。旧陸軍第七師団が設営されたときに将校の社交場として建築された旧旭川偕行社(国の指定重要文化財)を美術館として活用。

市内にはアイヌ民族ゆかりの施設も点在している。
旭川市から上川郡鷹栖町にわたる広大な嵐山公園内にある、
旭川市博物館分館〈アイヌ文化の森 伝承のコタン〉には、
「チセ」と呼ばれるアイヌの人々の伝統的家屋3棟などが復元されており、
自然と共生していたアイヌ民族の暮らしを体感できる。

〈アイヌ文化の森 伝承のコタン〉に復元されたチセ。(写真提供:旭川市博物館)

〈アイヌ文化の森 伝承のコタン〉に復元されたチセ。(写真提供:旭川市博物館)

旭川を含む上川地域のアイヌの人々は、自然豊かな嵐山を
神と人間をつなぐ「チ・ノミ・シ(われら・いのる・山)」、
すなわち「聖なる地」と呼び、自分たちが手をかけた動物の霊魂や、
愛用してきた器物に宿る霊魂を神々の世界に送り返す「送り場」としていた。
現在も、毎年春に、伝統儀式「チノミシ・カムイノミ」を開き、
人々の幸福や平和を祈っている。

厳しい自然から身を守るため、チセの屋根や壁に使用している笹は、
新芽ではなくひと冬越した強いものを採取するなど、かなり吟味して制作しているそう。
笹葺きは女性がメインとなって作業し、男性は笹の採集を担っていたという。
じっと見ていると、忙しく働く、たくましいアイヌの人々の姿が
目に浮かんでくるようだ。

嵐山公園センター内にある資料館では、おもにアイヌの女性が担ってきた
植物利用に関する資料が紹介され、公園内では春になると
アイヌの人々が実際に活用していた植物が咲く様子も見られるなど、
自然とアイヌ民族のつながりを強く感じられるスポットだ。

また、〈旭川市博物館〉でも、数千点におよぶ収蔵資料から
上川アイヌの歴史を学ぶことができるので、
地域により異なるアイヌ文化の多様性にもぜひ触れてみてほしい。

〈旭川市博物館〉。上層階には竪穴住居やチセを復元したもの、明治以降に入植してきた屯田兵の住まい(屯田兵屋)、下層階では自然と人文系の資料を展示。(写真提供:旭川市博物館)

〈旭川市博物館〉。上層階には竪穴住居やチセを復元したもの、明治以降に入植してきた屯田兵の住まい(屯田兵屋)、下層階では自然と人文系の資料を展示。(写真提供:旭川市博物館)

information

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中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館ステーションギャラリー

住所:北海道旭川市宮下通8-3-1

TEL:0166-46-6277

アクセス:JR旭川駅東口直結

開館時間:10:30~18:30(入館は閉館15分前まで)

休館日:月曜(祝日の場合は翌日)、12月30日~1月4日

料金:無料

Web:中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館ステーションギャラリー

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旭川市博物館分館 
アイヌ文化の森 伝承のコタン

住所:北海道上川郡鷹栖町字近文9線西4号

TEL:0166-55-9779

アクセス:旭川駅から車で約20分

開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)

休館日:毎月第2・第4月曜(祝日の場合は翌日、4月下旬~10月は無休)、12月30日~1月4日

料金:無料

Web:旭川市博物館分館 アイヌ文化の森 伝承のコタン

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旭川市博物館

住所:北海道旭川市神楽3条7丁目(大雪クリスタルホール内)

TEL:0166-69-2004

アクセス:旭川駅から車で約5分

開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)

休館日:毎月第2・第4月曜(祝日の場合は翌日、6月~9月は無休)、12月30日~1月4日

料金:350円、高校生230円、旭川市内在住70歳以上170円、中学生以下無料

Web:旭川市博物館

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