湿原カヌーに、阿寒湖アイヌコタンと
伝説の彫刻家。釧路から旭川へ、
大自然とアイヌ文化に触れる旅

旭川ローカルのアイヌ文化を伝える〈川村カ子トアイヌ記念館〉

1965年築の木造平屋建ての〈川村カ子トアイヌ記念館〉。外観の意匠は砂澤ビッキによるもの。

1965年築の木造平屋建ての〈川村カ子トアイヌ記念館〉。外観の意匠は砂澤ビッキによるもの。

旭川駅から車で10分ほどの住宅地の中に、ひっそりとその建物はあった。
〈川村カ子(ネ)トアイヌ記念館〉は、上川地方を代表する
アイヌ民族の旧家である川村家の7代目、川村イタキシロマと
その息子カ子トが、アイヌ文化を正しく伝えるためにつくった
日本最古で唯一の私設のアイヌ資料館だ。

手づくり感の風情たっぷりの館内には、日本遺産構成文化財のひとつ
「上川アイヌに関する資料一式」を含む生活用具や資料約500点が展示されている。
多種多様な木彫り熊、儀式用の道具、女性たちがつくった日用品、
川村家と親交のあった作家らの作品など、
公設の博物館とは違う、庶民的で多様な展示物が目に楽しい。

明治時代中期、旭川近隣のアイヌの人々は
近文(ちかぶみ)地域で大きなコタンをつくり、
この見学者が増えたことから、アイヌ文化を正しく理解してもらおうと、
上川地方のアイヌ民族の長(おさ)だった川村イタキシロマが、
1916年(大正5年)に、自宅を公開するかたちで
私設資料館として開設したのが現在の記念館の前身となっている。

息子のカ子トは1893年(明治26年)に旭川で生まれ、
測量技師の名手としても多くの業績を残した。
晩年は目を患い測量の仕事を離れたものの、
私財を投じてアイヌ文化を後世に伝えるために記念館として拡充させた。
館内では、カ子トの測量道具や当時の鉄道資料なども展示されている。

上川地方のアイヌ民族の長だった川村一族の写真。右上が川村カ子ト。

上川地方のアイヌ民族の長だった川村一族の写真。右上が川村カ子ト。

その後、カ子トの息子、兼一(アイヌ名:シンリツ・エオリパック・アイヌ)氏が
館長を引き継ぎ、伝統儀式や古式舞踊の指導など
多岐にわたりアイヌ文化発信に尽力してきたが、昨年2月に亡くなった。

兼一氏の妻で副館長の久恵さんは、
「みなさんが想像するアイヌ民族の生活は数百年前のもの。
カ子トが測量技師として活動していたように、アイヌの人々それぞれのリアルな姿を、
この施設を通して伝えていきたい」と話す。

3代目館長、故・川村兼一氏の妻で副館長の久恵さん。アイヌ音楽ユニット〈マレウレウ〉のメンバーでもある。

3代目館長、故・川村兼一氏の妻で副館長の久恵さん。アイヌ音楽ユニット〈マレウレウ〉のメンバーでもある。

また、若き日に近文地域に暮らした彫刻家の砂澤ビッキや、
藤戸竹喜の作品をどちらも見ることができるのがうれしい。

「カ子トは、ビッキを養子にしようとしたことがあったくらい、
親戚のように仲良しでしたよ」とのこと。

藤戸竹喜の木彫り作品。

藤戸竹喜の木彫り作品。

記念館の隣には、久恵さんと兼一氏が市民ボランティアらとつくった、
笹を葺いたチセが建っていた。大量の笹を山から刈り、編み、
何か月もかかってつくり上げたという。

大量の笹を集めてつくった、アイヌ民族の家屋「チセ」。

大量の笹を集めてつくった、アイヌ民族の家屋「チセ」。

中に入ると天井が高く開放感があり、焚き火をすれば、想像以上の暖かさに包まれる。
ひととき、自然を敬い、活用するアイヌの人々の暮らしに思いを馳せた。

開放感あふれるチセの内部。

開放感あふれるチセの内部。

久恵さんは亡くなった兼一氏について、
「時代が変わっても、アイヌ文化を伝承することを諦めない、忍耐の人でした」
と振り返り、
「若い世代でアイヌ文化に興味を持ってくれる人は増えたけれど、
20~30年前と比べて伝える側の人材が確実に減ってきている」と話す。

アイヌ記念館として開設し106年目、いまの建物として築57年目を迎え、
老朽化が進んでいることから、2023年夏を目指し、隣接して新しい建物が建設される。
アイヌ文化の展示スペースに加え、古式舞踊の舞台や、
アイヌ料理をつくることができる調理室も備える予定だという。

久恵さんは
「公設の博物館はアイヌ全般のことを紹介している施設が多いけれど、
私設であるここではローカルにこだわり、
近文地域に根づいたアイヌの人たちを紹介していきたい」と抱負を語る。

兼一氏はじめ、アイヌ民族の伝統を受け継ぐ人々が少なくなっているいま、
ローカルでのアイヌ文化の維持は、ひときわ難しくなっているようだ。
漫画やアニメなどでアイヌ文化の人気が高まる一方、
リアルなアイヌ民族の存在自体や文化の継承が遠ざからぬよう、願うばかりだ。

「アイヌ記念館は、地元のアイヌにとって砦のような存在である」

案内文のひと言を心に留め、旭川空港へ向かった。

information

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川村カ子トアイヌ記念館

住所:北海道旭川市北門町11丁目

TEL:0166-51-2461

アクセス:JR旭川駅から車で約10分

開館時間:9:00~17:00(5月~11月無休、12月~3月は要問い合わせ)

料金:500円、中高生400円、小学生300円

Web:川村カ子トアイヌ記念館

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