写真家・若木信吾
浜松で本屋を営んで11年。
次世代の文化をつくる

BOOKS AND PRINTSが浜松に残したもの

大手書店とは異なるこだわりのセレクトで、店主の個性が垣間見える。
そんなブックストアが、東京や都心部のみならず、全国に増えてきた。
その先駆けとなったのは、静岡県浜松市にある〈BOOKS AND PRINTS〉だろう。
数々の雑誌の表紙撮影や写真集なども発売している写真家・若木信吾さんが、
生まれ故郷である浜松市で始めた本屋だ。
しかし当時、本人には“先駆け”なんてつもりもないし、“地域貢献”のつもりでもなかった。

ビルの前には大きな立て看板。

ビルの前には大きな立て看板。

若木さんは浜松で生まれ育ち、高校生までを過ごした。
自宅から高校まで、自転車で毎日まちなかを通り抜けて通っていたという。

「写真部でしたけど、実質は帰宅部のようなもの。
学校が終わったら、すぐに帰って、映画を観たり、本屋さんに立ち寄ったり。
今はひとつしかないけど、映画館はもう少しありましたね。
当時は浜松に写真集なんて売ってなかったから、写真に触れ合うといえば雑誌がメイン。
『POPEYE』や『BRUTUS』などをよく読んでいました」

写真自体は小学生から興味を持ち、撮影もしていたという。

「海外の写真家に興味を持ったのは、ポストカードから。近くに額装屋さんがあって、
そこでアンリ・カルティエ=ブレッソンとかのポストカードを売っていたんです」

店内に入ると、左手一面に本棚が。

店内に入ると、左手一面に本棚が。

高校卒業後、写真家を目指す若木さんが選んだのは、東京ではなくニューヨークの大学。
当時は、海外旅行のハードルも低くなり、同時に海外留学する人も多かった。
地方の人が東京に憧れるのと並列に、
海外という選択肢も選べる時代になりつつあったのだ。

大学を卒業後は日本、ニューヨーク、サンフランシスコを行き来しながら
仕事をする生活が10年ほど続いた。
そして徐々に日本での仕事が増えてきて、東京に腰を据えたのが1999年のこと。
このとき、選択肢は浜松ではなかった。

「雑誌が好きで写真を始めたけど、浜松には雑誌がないですもんね。
いまほど、物理的にも精神的にも、東京と浜松が近くは感じなかったです」

writer profile

大草朋宏 Tomohiro Okusa
おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

photographer

五十嵐一晴 Kazuharu Igarashi

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