〈南三陸311メモリアル〉
アートとラーニングを取り入れた
東日本大震災伝承施設が開館

設計:隈研吾建築都市設計事務所(写真提供:南三陸町)

東日本大震災の経験をどう継承するか

宮城県の北東部、太平洋に面して、三方を山に囲まれる南三陸町。
町境がほぼ分水嶺と重なり、山、里、海がつながっている。
東日本大震災からの復興のなかで、
「森 里 海 ひと いのちめぐるまち」というビジョンを掲げ、
より農山漁村の恵みを循環させる持続可能なまちづくりを進めてきた。

津波でほぼ壊滅し、海抜約10メートルの嵩上げ工事が行われた
志津川地区中心市街地では、防災と共存しながらも、
海と陸が切り離されないようなグランドデザインを建築家・隈研吾さんが行った。
建物には地元産の南三陸杉が使われている。

隈研吾さんがデザインを担った〈道の駅さんさん南三陸〉全景。中央の杉板が見える建物が〈南三陸311メモリアル〉。その右棟がJR志津川駅、左棟が観光案内所〈南三陸ポータルセンター〉となっている。その向こうに軒を連ねるのが〈南三陸さんさん商店街〉。川にかかる手前の橋が中橋。(写真提供:南三陸町)

隈研吾さんがデザインを担った〈道の駅さんさん南三陸〉全景。中央の杉板が見える建物が〈南三陸311メモリアル〉。その右棟がJR志津川駅、左棟が観光案内所〈南三陸ポータルセンター〉となっている。その向こうに軒を連ねるのが〈南三陸さんさん商店街〉。川にかかる手前の橋が中橋。(写真提供:南三陸町)

2022年10月1日には、南三陸町東日本大震災伝承館〈南三陸311メモリアル〉が開館。
2017年に先行オープンした〈南三陸さんさん商店街〉と合わせて、
この一帯を総称する〈道の駅さんさん南三陸〉がグランドオープンした。
被災した鉄道駅の代わりに開通したBRT(高速輸送バス)などが発着する
JR志津川駅も併設する。

震災の経験を共有し、語り合う場として誕生した、
南三陸311メモリアルを中心に、開館までの経緯も併せて紹介したい。

生鮮魚介などが楽しめる南三陸さんさん商店街。(写真提供:南三陸町)

生鮮魚介などが楽しめる南三陸さんさん商店街。(写真提供:南三陸町)

八幡川の向こう〈震災復興祈念公園〉へと渡る中橋。橋の左手に、震災遺構の防災対策庁舎、右手奥に慰霊碑の建つ〈祈りの丘〉がある。

八幡川の向こう〈震災復興祈念公園〉へと渡る中橋。橋の左手に、震災遺構の防災対策庁舎、右手奥に慰霊碑の建つ〈祈りの丘〉がある。

閉校した校舎がまた明るくなった!
MAYA MAXXがつくった
クマのAmiちゃん

できるかわからないから、やってみましょうよ!

地域で3年前に閉校になった旧美流渡(みると)中学校の活用を、
昨年からさまざまなかたちで行ってきた。
なかでも美流渡在住の画家・MAYA MAXXさんは、
今年は年3回の『みんなとMAYA MAXX展』を実施し、
子どもと絵を描くワークショップなども精力的に開催してきた。
さらにもうひとつ、校舎に立体物を設置するプロジェクトも立ち上げた。

みんなとMAYA MAXX展会場にて。(撮影:佐々木育弥)

みんなとMAYA MAXX展会場にて。(撮影:佐々木育弥)

以前からMAYAさんは、グラウンドに大きなクマの像を立てたいという構想を持っていた。
その高さは10メートル以上。もし実際に行うことになれば、
重機を使った大がかりな作業が必要になるのではないかと想像された。

クマの全身像をグラウンドの中央に設置したいとMAYAさんが描いた初期スケッチ。

クマの全身像をグラウンドの中央に設置したいとMAYAさんが描いた初期スケッチ。

資金的にも技術的にも未知数で、すぐに具体化するのは難しかった。
そんなあるとき、MAYAさんと話していて、
「まずはできる範囲から始めてみてはどうか」ということとなった。
クマの全身をつくるのは難しくても、顔だけならなんとかなるんじゃないか。

「『スタイロフォーム』を重ねて立方体をつくって、それを削っていこう!」

MAYAさんはそう語った。
プランは、校舎の玄関口にある庇(ひさし)の上にクマの顔を設置すること。

「スタイロフォーム」とは商品名で、正式な名称は押出発泡ポリスチレン。
住宅の断熱材として使用されている。
発泡スチロールより加工も簡単で丈夫なので、
大きな立体をつくるのにも向いているのではないかとMAYAさん。
早速、市内にある建築資材会社で入手することにした。

32枚の「スタイロフォーム」。

32枚の「スタイロフォーム」。

「スタイロフォーム」の規格サイズは180×90センチ。
厚さはいろいろあるが10センチのものを選んだ。
それを18枚重ね、2列分用意すると立方体となる。
この立方体をノコギリやカッターなどで削っていき球体をつくっていくこととなった。
春からワークショップのかたちにして参加者を公募することにした。

「ワークショップの前に、模型をつくったりしないんですか?」

私がたずねると、

「うん、大丈夫。頭のなかではイメージができてるから」

とMAYAさん。いきなり本番に入ることとなった。

プロジェクト名は〈ビッグベアプロジェクト〉。
活動日は第2、第4木曜。
参加を呼びかけるチラシにMAYAさんはこんなメッセージを添えた。

これ、作るのは大変かも? と思います
でも、出来たらめちゃ可愛い! と思います
大変だから、やってみたいです
出来るかわからないから、やってみましょうよ!
力を貸してください〜!

ワークショップというと、事前に失敗がないように準備するものという固定観念があったが、
「出来るかわからないから、やってみましょうよ!」という呼びかけが、
何ともMAYAさんらしいと思った。
自分自身にとっても未知のことにトライするという、ワクワク感がそこには感じられた。

やさしいまちの偉人から超高級りんご、
おしゃれすぎるごみ処理施設まで。
全国のすごい人とモノ

今月のテーマ 「すごい人・モノ」

みなさんのまちの「すごい人・モノ」ってなんですか?
風景だったり、食べ物だったり、確かな技術を持つ匠だったりと
住んでいる人たちが自慢したくなるものなはず。

今回は、「すごい人・モノ」をテーマに
お住まいの地域にある偉人や施設を教えてもらいました。
気になった人はぜひ現地で体感してみてください。

【阿蘇郡南阿蘇村】
旅人のための道しるべづくりに心を砕いた、甲斐有雄氏

初夏、気まぐれな散歩の途中に見つけたそれ。
人も車もほとんど通らない細い道の傍らにポツンと佇む、
「甲斐有雄の道しるべ」。

以来、なんとなく気になって南阿蘇村内を見渡してみれば、
あちらこちらにその道しるべが建っていることに気づきました。

散歩の途中に見つけた道しるべ。

散歩の途中に見つけた道しるべ。

甲斐有雄氏とは何者なのか?
偶然村内のとある区長さん宅を訪ねたときに、そのヒントを見つけました。

区長さん宅の横に、どんと置かれたひと抱えはありそうな石。
うっすらと刻まれた文字は、
「右 阿〇さん 左 くまもと」(おそらく、「右 阿蘇さん」)。
100年以上も前、旅人が道に迷わないようにと、
甲斐氏が自らの材を投じて建てたものであることが、
掲げられた看板に記されていました。
その数、なんと2000基弱!

道に迷って行き倒れる人が多かったという時代、これを目にした旅人は心救われる思いだったに違いありません。

道に迷って行き倒れる人が多かったという時代、これを目にした旅人は心救われる思いだったに違いありません。

調べてみたところ、甲斐氏は1829年熊本県高森町の生まれ。
腕のいい石工(いしく)で、その技を駆使して道しるべを建てたようです。
「その由来を知っている人は、
地元にも少ないかもしれない」とは、ある方の言葉。

探し出せた資料はわずかでしたが、
熊本県の中学校道徳資料にも登場するなど
その心映えの豊かさに言及する記述が多く見受けられました。

幕末から明治に至る動乱の時代に
誰かのためを思って自らの技術を活かした甲斐氏。
今なお阿蘇地域周辺に残る道しるべに
「資性篤実にして公益を思う」と伝えられる人柄が伝わってきて、
あたたかい気持ちになれます。

参考資料
『野尻の自然と歴史』甲斐利雄著(熊本出版文化会館/2011年)
『くまもとの心』熊本県教育委員会中学校道徳教育郷土資料

profile

家入明日美 いえいり・あすみ

北海道帯広市から17年ぶりに熊本県へ帰郷。2022年1月南阿蘇村地域おこし協力隊着任。フリー編集者・ライター「たんぽぽのしおり」として活動開始。狼と馬とエゾナキウサギが好き。趣味は読書と散歩。いかにして、「いい肥料となる生き方」ができるか模索中。Instagram:@dandelion_seeds1124

〈バリューブックス〉
本にまつわる環境を整え、
「本の生態系」をつくる

「古本屋」を超えた古書店

〈バリューブックス〉の名前は、
〈amazon〉や〈楽天〉で古書を市場など買うときに
目にしたことがある方が多いのではないだろうか。
バリューブックスは、本の買取販売を主軸とする一方で、
販売だけでなく、異業種との協業を含めたさまざまなプロジェクトを展開しており、
もはや「古本屋」の域を超えた企業といっていいだろう。

バリューブックスの「ブックバス」。地域やイベントをまわって本の販売や寄付を行う。同社の事務所がある長野県上田市内の学校や保育園はほぼ訪れたという。

バリューブックスの「ブックバス」。地域やイベントをまわって本の販売や寄付を行う。同社の事務所がある長野県上田市内の学校や保育園はほぼ訪れたという。

例えば、日本各地に本を届ける移動式書店、「ブックバス」。
本の買取査定金額をNPOや大学などに寄付するサービス、「charibon」。

これらはプロジェクトのほんの一部。
ほかにもさまざまな試みがあり、多岐にわたる活動の全体像を把握するのは、
なかなか難しいのではないかと思えるほどだ。
バリューブックスは、なぜこうした事業を行っているのか。
同社が本社を構える、長野県上田市を訪ねた。

毎日1万冊が古紙回収に

上田市内にあるバリューブックスの倉庫の入口付近。搬入出のトラックや仕分け担当のスタッフが常に出入りしている。

上田市内にあるバリューブックスの倉庫の入口付近。搬入出のトラックや仕分け担当のスタッフが常に出入りしている。

向かったのは、バリューブックスの倉庫。
同社では上田市内の4つの倉庫に130~150万の在庫を常時保管するが、
この倉庫だけで70万冊を数えるという。
入口付近で真っ先に目を引いたのは、
大量の段ボール箱と仕分けされている本の脇にある、
あふれんばかりの本でいっぱいになった巨大なコンテナだ。
中身はすべて、古紙リサイクルにまわされる本だという。

倉庫入口付近にあるコンテナ。状態のいい本も含めて、すべて古紙リサイクル工場に送られる。その圧倒的な物量に言葉を失う。

倉庫入口付近にあるコンテナ。状態のいい本も含めて、すべて古紙リサイクル工場に送られる。その圧倒的な物量に言葉を失う。

「バリューブックスの、一見よくわからない取り組みも、
このコンテナを一度見てもらうだけで感じ方が変わると思うんです」と語るのは、
案内してくれた同社取締役副社長の中村和義さん。
同社には買い取り目的を中心に1日で2万冊の本が届けられるが、
うち、実に半分にあたる1万冊が買い取りできず、
紙のリサイクル工場に運ばれるのだ。
倉庫が年中無休で稼働していることを考えると、単純計算で年間365万冊。
とてつもない数になる。

震災後にゼロから始めた
〈三陸ジンジャー〉。
土も歴史も掘り起こす

震災後に生まれた〈三陸ジンジャー〉

岩手県の東南、宮城県気仙沼市と接する陸前高田市。
太平洋に面した三陸海岸はリアス式で知られ、
市内には山地と、湾に囲まれた平野が広がる。
7万本もの松があったとされる「高田松原」のなかで、
津波に唯一耐えた「奇跡の一本松」があり、
東日本大震災でまちの名を知った人も多いだろう。

この土地で、震災後に生まれた〈三陸ジンジャー〉が、岩手の魅力を再発掘している。
栽培するのは千葉県出身の菊地康智さんだ。
農薬や化学肥料を使わずに栽培される生姜で、
収穫したての新生姜はやわらかく瑞々しいのが特徴。
天ぷらや生姜ごはんなど、料理の主役として皮ごといただくのがおすすめだ。

収穫時期は霜が下りる前までとされ、陸前高田では10〜11月中旬。土を掘るとピンクと白い肌が美しい新生姜が顔を出す。これらを熟成させると辛味が増し、薬味に適した黄土色の生姜に変化していく。

収穫時期は霜が下りる前までとされ、陸前高田では10〜11月中旬。土を掘るとピンクと白い肌が美しい新生姜が顔を出す。これらを熟成させると辛味が増し、薬味に適した黄土色の生姜に変化していく。

新生姜の流通は12月上旬くらいまで。以降、翌年の収穫までは通年で黄土色の生生姜が流通する。

新生姜の流通は12月上旬くらいまで。以降、翌年の収穫までは通年で黄土色の生生姜が流通する。

〈三陸ジンジャー〉の畑があるのは、広田湾を見下ろせる高台。
ここではかつて祖父がリンゴを栽培していた。

祖父の家があるため、康智さんも子どもの頃、何度か訪れた記憶があるが、
10代のときに家族と相容れず、
家族は陸前高田で、康智さんだけが千葉で生活する期間が長かったという。

「震災が起こって、みんなが無事だと聞いたときは本当によかったなと。
家族に反発していたのは小さなことで、
生きているだけでありがたいんだなと本当に思いました。
以来、陸前高田に通うようになって、ここ(高台の畑)から海を望んでいたら、
津波は来たけれど、いいところだなって思ったんですよね」

康智さんも好きだという畑からの景色。当時、康智さんは内装業に携わり、現場の多くは東京都内の一等地に建つ高級タワーマンション。ギャップが大きく、自分のリソースを陸前高田に落とすべきだと思うようになっていた。

康智さんも好きだという畑からの景色。当時、康智さんは内装業に携わり、現場の多くは東京都内の一等地に建つ高級タワーマンション。ギャップが大きく、自分のリソースを陸前高田に落とすべきだと思うようになっていた。

同じ頃、映画『先祖になる』(2012年・池谷薫監督)に出合う。
陸前高田市で農林業を営み、津波で家と息子を失った佐藤直志さん(当時77歳)が、
自ら木を伐り、田植えをし、家を建てる。
その様子を追ったドキュメンタリーで、直志さんは康智さんの親戚だった。

「小学生のときに祖父が亡くなって、
葬式でひとりだけ話しかけてきたおじさんがいたんです。
『お前が生きているのも、じいちゃんとか、先祖のおかげなんだからな』って
言われたことを強烈に覚えているのですが、
映画館でスクリーンに映っているよぼよぼのおじいさんを見たら、
あのときのおじさんだ! って思い出して。
何十年経っても、同じことを言っているし、体現していると思ったら、
大号泣してしまって……」

直志さんの近くでもっと話を聞きたい。
そんな思いもあり、康智さんは陸前高田へ移住した。2014年のことだ。

陸前高田では、平地では年貢となる米を、高台では土地が狭い傾斜地でも育てやすいリンゴが多く栽培されてきた。

陸前高田では、平地では年貢となる米を、高台では土地が狭い傾斜地でも育てやすいリンゴが多く栽培されてきた。

日本一透明な海水を13時間焚き続ける
〈おくだ荘の井田塩〉
小さな民宿の伝統的な塩づくり

舞台は「井田ブルー」を臨む西伊豆

その地域に住んでいると気づかない、灯台下暗しな地元の魅力がある。
そんな地域の魅力を再発見し、全国へ届けているのが、
民宿〈おくだ荘〉を営む弓削さん一家だ。

舞台となるのは、静岡県沼津市井田。
「井田ブルー」と名づけられた透き通る青色が美しい海水浴場がある、
山と海に囲まれた西伊豆の地だ。

(写真提供:おくだ荘)

(写真提供:おくだ荘)

この井田の海水に着目し製塩業を始めたのは、民宿〈おくだ荘〉の初代・三樹夫さん。
4年半前に三樹夫さんが他界してからは、娘の美幸さんとその夫の豊さん夫婦を中心に、
3人のお子さんとの分業体制で事業を拡大している。

この日は美幸さんと豊さん、次男の直豊さんの3人にお話をうかがった。

写真左から、美幸さん、直豊さん、豊さん。

写真左から、美幸さん、直豊さん、豊さん。

民宿が塩をつくり始めた理由

おくだ荘の民宿経営が始まったのは、今から50年ほど前の1973年。
民宿の営業と並行して製塩業をはじめたのが、今から17年ほど前だ。

製塩業は、“約1500年前に井田で塩をつくっていた”という
文献を見つけたことをきっかけに、村おこしの一環としてスタートした。

最初はひとつの釜からはじまって、すぐ生産が間に合わなくなってふたつに。
経営が軌道に乗りはじめた頃、知り合いの土産店から発注を受け、専売で塩を卸した。

製塩工場。現在は4基の釜で製塩を行う。

製塩工場。現在は4基の釜で製塩を行う。

はじめは一種類のみを販売していたが、
天候や季節、薪の状態などによっても味が左右される塩を無駄にしないために、
新たに〈おくだ荘の井田塩〉として複数種の塩を販売することに。

3年前からは通販もスタートし、
今では全国でも名だたる高級料亭や寿司屋からも指名を受ける人気っぷりだ。

そんな井田塩は、沖縄・宮古島と並び「透明度日本一」とも称される井田の海水を
13時間焚くことでつくられる。

井田の海水浴場では、なんと熱帯魚と一緒に泳げてしまう。この日も大量の小魚が浅瀬を泳いでいた。

井田の海水浴場では、なんと熱帯魚と一緒に泳げてしまう。この日も大量の小魚が浅瀬を泳いでいた。

「海水を汲みに行くと、必ず1回は味を見ます。
本当においしいと、飲めちゃうんですよ!
ここは小さい集落なのに上下水道が完備されていて排水がないので、
山の水しか海に流れこまないんです」(美幸さん)

「そのうえ岩山だから、よほどの雨が降らない限り、茶色い水が流れてこないんです。
富士山の湧き水が海底から出ているところもあって、海水が透明なんですよね」(豊さん)

1日で150〜200キロほどの薪を消費する。

1日で150〜200キロほどの薪を消費する。

薪材に使われるのは、地元の天然スギやヒノキ。
本来、暖炉やキャンプ、建築などに使われるはずが、
汚れや傷があって出荷できなかったものを譲ってもらっているのだという。

この薪を使い、4基の釜を使って焚く。

約1500年前の文献から着想を得てはじまった〈おくだ荘の井田塩〉では、
昔の焚き方に近い製法で焚くために「平窯式製塩」という製塩方法を採用している。
およそ100年前は、山から木を切り出して海岸で塩を焚いていたと、
美幸さんは祖母から聞いていたという。

平窯式製塩の製法はシンプルだが、多くの時間と労力を要する。

まず井田の海から汲んできた透明な海水を釜に入れ、薪で熱して蒸発させる。
その後、隣の釜であたためた海水を複数回足していき、徐々に塩の濃度を高めていく。

そうして姿をあらわした塩の結晶を網ですくい、
苦汁(ニガリ)を含んだ水分を絞ることで、
サラサラとした〈おくだ荘の井田塩〉が完成するのだ。

15〜20時間で、1釜あたり5キロとれるかとれないか。

手間はかかるが、こうした自然製法を採用することで、
富士山の恵みを豊富に含んだ井田の海水に含まれるさまざまなミネラル分を
そのまま生かすことができ、深い旨みにつながっている。

コミュニティマガジン 『人toひと』が贈るトークイベント 「わたしを生かす」「わたしに還る」

豊かに「生きること」を探求するトークセッション

岩手県紫波町・矢巾町で暮らす人々を取材対象に、
「小さな共同体の営み」を記録し、
発刊しているコミュニティマガジン『人toひと』。

2020年の創刊以来、毎号1世帯に密着し、
働き方、暮らし方、コミュニティのあり方などを探求しています。

10月15日に発売された第4号の主役は、紫波町でコミュニティ畑〈畑多楽縁(はたらくえん)〉を主宰する
コミュニティナースの星真土香さん。
畑多楽縁は、病気の予防から心のケアまで包括的に、
健康的なまちづくりを目指す場で、
薬の処方ではなく、ひとりひとりの身体や心の状況、
ライフスタイルなどを考慮して
地域とのつながりを処方する
「社会的処方」というコンセプトに基づいて運営されています。

コミュニティナースの星真土香さんを特集した『人toひと』第4号。紫波町・矢巾町を中心に、土地や建物の管理、建物のデザインやリノベーションなどでまちの風景をつくる〈株式会社くらしすた不動産〉が発行しています。

コミュニティナースの星真土香さんを特集した『人toひと』第4号。紫波町・矢巾町を中心に、土地や建物の管理、建物のデザインやリノベーションなどでまちの風景をつくる〈株式会社くらしすた不動産〉が発行しています。

第4号では、真土香さんの活動から、
豊かな人間性を開放するための原点「わたしに還る場所」を
いくつかのセクションを通じて探求しています。
この号の刊行を記念して、11月5日(土)、6日(日)の2日間にわたり、
「わたしを生かす」、「わたしに還る」をテーマにしたトークセッションイベントが、
紫波町と盛岡市で開催されます。

有田焼産地から発信する
〈アリタセラ / Arita Será〉の
魅力創出プロジェクト

地元からも観光客からも愛される場所へ

有田焼の産地として知られる佐賀県有田町にある〈アリタセラ/Arita Será〉は、
約2万坪の敷地に日用食器から業務用、美術工芸品まで、
多種多様な陶磁器の専門店が軒を連ねるエリアの総称だ。

かつては〈有田陶磁の里プラザ〉と呼ばれ、
集客に悩んでいた有田焼の商社が集まる卸団地が、
〈アリタセラ/Arita Será〉と改称したことをきっかけに、
今では、「心地よい場所」「また行きたい」と
SNSにもたびたび投稿されるまでに変化を遂げた。

愛される場所へと創生を促す、5年間の歩みを取材した。

陶磁器の専門店が軒を連ねる〈アリタセラ/Arita Será〉。

陶磁器の専門店が軒を連ねる〈アリタセラ/Arita Será〉。

有田焼創業400年事業から踏み出す一歩

毎年ゴールデンウィークに開催される〈有田陶器市〉には、
約120万人の観光客が訪れ賑わいをみせる佐賀県有田町。
しかしながら、それ以外の時期は驚くほど閑散としているのがまちの現状だ。

そんな有田町にとって、2016年は大きな節目となる年だった。

日本で最初の磁器である有田焼が誕生したとされる1616年から
400年を迎える2016年に向け、
佐賀県は〈有田焼創業400年事業〉を立ち上げ、
3か年をかけ17ものプロジェクトが推進されたのだ。

アリタセラ(旧・有田陶磁の里プラザ)も、
有田焼の販売を担ってきた拠点という位置づけから、さらなる産業基盤整備が求められ、
外部のクリエイターやシェフなど食と器文化に関わる専門家や、
広く観光客までを迎え入れられる滞在型の交流および情報発信を強化するべく、
敷地内の空き店舗を活用し、レストランを併設した宿泊施設を開業することが決まった。

そこで事業化推進とプロモーションの依頼を受けたのが、
有田焼創業400年事業の一環で招聘された、
クリエイティブディレクターの浜野貴晴さんだ。

クリエイティブディレクターの浜野貴晴さん(東京在住)。2014年から2017年まで有田に赴任して有田焼創業400年事業の任期を務めた。東京に戻ってからも毎月有田へ通い、産地支援を行なっている。(写真提供:有田ケーブル・ネットワーク「伝トーク!! 令和四年有田場所」)

クリエイティブディレクターの浜野貴晴さん(東京在住)。2014年から2017年まで有田に赴任して有田焼創業400年事業の任期を務めた。東京に戻ってからも毎月有田へ通い、産地支援を行なっている。(写真提供:有田ケーブル・ネットワーク「伝トーク!! 令和四年有田場所」)

魅力は自ら創り出す

事業主となる有田焼卸団地協同組合から、はじめに相談された内容は、
「何かSNSを使ったPRができないか?」というものだったという。

「SNSを使えば、来場者が勝手に発信してくれるのでは」という発想の組合幹部に、
浜野さんは問いかける。

「厳しいことを言うようですが、今、この場所に、
発信したくなるようなどんな魅力があると思いますか?」

組合事業なので、各店舗の運営に口を出すことはできないが、
当時はショーウィンドウや店先など管理の行き届かないケースも散見された。

さらにヒアリングを進めると、この場所に店を構えている組合員たちの悩みと、
ネガティヴな思いが見えてきたという。

「話を聞いていてびっくりしました。
『この場所をどのように活用していったらいいかわからない』
『〈有田陶磁の里プラザ〉という名称が好きではないので誰も使わない』
という声もあったのです」

当事者たる自分たちが悩み、不満を感じている場所で、
来場者が楽しめるはずがない。

「もっと魅力的な場所に、自分たちの手で変えていかなければ!」と
浜野さんの発案で立ち上げられたのが、
〈魅力創出プロジェクト〉だ。2017年10月のことである。

「シオクリビト」
ヒトから入ってモノも好きになる
一期一会を楽しむ
ネットショッピングの新しいカタチ

モノに愛着を持つ近道は、ヒトを知ること

福島県中通りに位置する塙町。
周囲に田んぼが広がるのどかな景色の中に、目的地〈こんにゃく屋生田目屋〉はあった。
取材対象者はこんにゃくのほか、さまざまな食品を製造・販売している
〈ケーフーズ生田目〉の取締役、セレスタ・サントスさんだ。
といっても今回は、
コロカル編集部がサントスさんにお話をうかがうわけではなく、
〈こんにゃく屋生田目屋〉を“取材する人たちを取材する”少々特殊なパターン。

サントスさんを取材しているのは、
「シオクリビト」という福島県商工会連合会のECサイト
(商品を販売するためのウェブサイト)を制作するスタッフだ。

多くの人にとって、今や日常生活を送るうえで欠かせないものとなっている、
インターネットショッピング。
コロナ禍で不要不急の外出を控える日々を経て、
その必要性はますます高まっているのではないだろうか。
ECモールやECサイトも、誰もが利用したことのあるような大手から、
個人で運営しているものまで無数に存在する。
ネットショッピングは、商品を直接手に取って吟味できないぶん、
安さやスピードを重視しがち。
しかしシオクリビトはそんな潮流に逆行するような、
ゆえにECサイトのあり方を根本から考えさせられるウェブサイトといえる。

シオクリビトページイメージ

シオクリビトのページ。

シオクリビトのページ。

一例をあげると、ECサイトなのに商品ではなく生産者の紹介がメインだったり、
トップページがなかったり、商品名を検索できない代わりに
取材中の名場面・名台詞を検索できたり、
購入すると頼んだもの以外のオマケや生産者からの手紙がついてきたり……。

一般的なECサイトの枠に収まらないことは、取材の様子からも伝わってくる。
まずインタビュアーが尋ねたのは、
ネパール出身のサントスさんの生い立ちについて。
たしかに、なぜ福島でこんにゃくを製造販売しているのか、
気になるところである。
サントスさんは、7人きょうだいの長男でかなりやんちゃだったことや、
父親に厳しくしつけられたエピソードをおもしろおかしく話し始める。

セレスタ・サントスさん。

セレスタ・サントスさん。

ネパールではどんな家に住んでいたのか。なぜ日本に来ようと思ったのか。
来日して間もない頃はどんな生活を送っていたのか。
言葉の面で苦労をしたこと。日本の好きなドラマなどなど。
こんにゃくの話はなかなか出てこないが、
サービス精神旺盛なサントスさんの話にどんどん引き込まれる。

インタビュアーの永井史威さんと、カメラマンの佐々木航大さん。

インタビュアーの永井史威さんと、カメラマンの佐々木航大さん。

さらに奥様とのなれ初め(奥様の父親がケーフーズ生田目の社長であることが、
ここでようやく判明)、
日本で初めて食べたこんにゃくの味、
娘と自転車で散歩する幸せなひとときなどに話が広がっていった。

こんにゃく工場を見学

工場でこんにゃく製造の話を聞く。

工場でこんにゃく製造の話を聞く。

自転車を持ち出して、いつもの散歩ルートを一緒に歩く。

自転車を持ち出して、いつもの散歩ルートを一緒に歩く。

取材時間は約3時間、サントスさんの人柄にすっかり魅せられていた。
そしてこのやり取りこそ、シオクリビトが大切にしていることだった。

小豆島に本屋さんがオープン!
〈TUG BOOKS〉で出会う
セレクトされた素敵な本たち

“お店を持たない本屋さん”が、ついにお店をオープン!

小豆島にまたひとつおもしろい場所が増えました。
TUG BOOKS(タグブックス)〉という名の本屋さんです。

TUG BOOKSのこと、本屋の主である田山直樹くんのことは、
以前この小豆島日記で紹介しました。
ちょうど1年前です。
当時はお店を持たない本屋さんとして活動していて、
私たちが運営している〈HOMEMAKERSカフェ〉の庭でも本のイベントを開催してくれました。

HOMEMAKERSカフェで2021年秋に開催されたTUG BOOKSのブックイベント。

HOMEMAKERSカフェで2021年秋に開催されたTUG BOOKSのブックイベント。

本と出会える貴重な機会。島で暮らしている知人や友人がたくさん来てくれました。

本と出会える貴重な機会。島で暮らしている知人や友人がたくさん来てくれました。

さて、田山くんはこのイベントのあとも島のあちこちで本にまつわる企画を実施しながら、
お店オープンにむけてじわじわと準備を進めてきました。
彼が「本屋」という場として選んだのは、古い木造の民家です。
立派な木材でつくられた歴史ある古民家という感じではなくて、古い家です(笑)。
おー、そこで本屋さんをやるんだー、すごいなぁというのが話を聞いたときの最初の印象。
改修工事は2022年3月から始まりました。

海に向かって続く細い道を歩いていくと、ぽつんと建っている古い家があります。ここを本屋として改修。

海に向かって続く細い道を歩いていくと、ぽつんと建っている古い家があります。ここを本屋として改修。

本屋の名前は〈TUG BOOKS〉。書物の海の水先案内。

本屋の名前は〈TUG BOOKS〉。書物の海の水先案内。

岩手の芸能を生で体感 〈ヘンバイバライ2022〉開催

先人たちが芸能を通して伝えてきた、命への感謝と供養を体験する

鹿踊り(ししおどり)や神楽の演舞などの芸能、鹿の解体などを通して
郷土芸能の本質を未来へと継承する催し〈ヘンバイバライ2022〉が
10月16日(日)に、岩手県一関市厳美町の〈祭畤(まつるべ)スノーランド〉で開かれます。

ヘンバイとは「反閇」と書き、
鎮魂や邪気を払い除くために大地を踏みしめる、芸能特有の足さばきのこと。

岩手に伝わる郷土芸能の多くの踊りの中に、
腰を低く大地を踏みしめる反閇の動きがあることから、無病息災や五穀豊穣を願い、
日々の暮らしへの感謝を願い舞います。

岩手の先人たちが芸能を通して伝えてきた、命への感謝と供養という本質を見つめ、
いつの時代も変わることのない大切な価値観を未来へと伝えていく祭り、
それがヘンバイバライです。

岩手の芸能を生で体感する郷土芸能演舞

見どころのひとつは、岩手県内に広く多数伝わる郷土芸能です。

今回のイベントでは、
1700年代に三陸沿岸の水戸辺(みとべ)村(現宮城県南三陸町)から伝授され
現代に伝わる〈行山流舞川鹿子躍〉の、一関市舞川中学校の生徒による演舞や、
遠野市小友町山谷地区に伝わる幕踊り系の獅子踊りである〈山谷獅子踊り〉、
花巻市の無形⺠俗文化財である〈上根子神楽(かみねこかぐら)〉など、
県内6団体の伝統芸能、演舞を見ることができます。

土地に伝わる祈り、伝統、歴史を体感できるまたとない機会です。

〈行山流舞川鹿子躍〉。

〈行山流舞川鹿子躍〉。

北上市の念仏剣舞〈相去鬼剣舞(あいさりおにけんばい)〉。

北上市の念仏剣舞〈相去鬼剣舞(あいさりおにけんばい)〉。

また、一関市で染め物や祭り衣装などのプロダクトを手がける〈京屋染物店〉による、
鹿踊りのお面をもとにデザイン・制作した手ぬぐいが発売中です。
この〈ヘンバイバライ手拭〉の売上金は運営資金に当てるそう。
イベント開催を応援したい方はぜひ、ヘンバイバライ手拭のご購入を。
受付にてヘンバイバライ手拭を提示の方には、
イベントオリジナルステッカーをもらえるという特典もあるそうです。

〈ヘンバイバライ手拭〉2200円(税込)

〈ヘンバイバライ手拭〉2200円(税込)。

コピーライター・日下慶太の旅コラム
「新聞配達員として、
道を切り開くおばあちゃん」

さまざまなクリエイターによる旅のリレーコラム連載。
第29回は、コピーライターとして、
そして「ケイタタ」名義で写真家としても活動する日下慶太さん。
島根県の新聞社〈山陰中央新報社〉の140周年の広告制作として
江津市の山間部で働く
ある新聞配達員のおばあちゃんに会った話。
配達員は、新聞以外にも配るものがあるということに気がついたようです。

新聞配達員の大切さを広告を通じて伝える

大阪に住んでいるが月の半分ぐらいは家にいない。
フリーのコピーライターとしてだいたいローカルで仕事をしている。
写真家としても活動していて、あちこちで展示をしている。
今年、仕事や写真展で主に行ったところは、
北海道、青森、高松、島根、福井、京都、高知など。
仕事をして、写真展をして、写真を撮り、釣りをして、UFOを呼ぶ。
だいたいいつもこんな感じだ。
釣りとUFOのことはまたの機会があれば語りたい。

今取り組んでいる仕事は、島根県の新聞社〈山陰中央新報社〉の140周年の広告である。
新聞配達員にスポットライトを当てた広告をつくってほしいという依頼があった。
配達員が高齢化してリタイアし、なり手がおらず人材不足となっている。
これは山陰だけではなく全国の地方紙が抱える問題となっている。
配達員の大切さを広告を通じて伝えることが私のミッションだった。

山奥のぽつんと一軒家まで新聞を届ける配達員。

山奥のぽつんと一軒家まで新聞を届ける配達員。

配達をしながら新聞が溜まっていないか、不審者はいないか、
電気のつけっぱなしはないかと、配達員は日々の異変をチェックしている。
例えば、ポストに新聞が数日たまっていたならば、
新聞を取りにこれないほど体調に異変があった可能性がある。
独居老人も多い。新聞配達しか他者との継続的な接点がないような山奥の民家も多く見た。
配達員の不在によって、
新聞だけでなく目が行き届かなくなることも地域にとって損失である。

山村の民家にあった手作りのポスト。

山村の民家にあった手づくりのポスト。

広告の仕事でもありながら、社会課題でもある。
私はこういう仕事が好物だ。
島根県内をぐるぐると回っては、新聞配達、印刷所、新聞記者など、十数名に取材をした。
朝何時に起きるか、どうして新聞配達を始めたのか、配達で心がけていることは、
などと聞き出して1枚の原稿を仕上げていく。

絶景ヒルクライムや藁細工、
からし漬けの食べ比べにも挑戦!
わたし、移住してコレ始めました


今月のテーマ 「移住して始めたこと」

新しい土地へと移住した人、IターンやUターンをした人など
さまざまな想いを胸に、住まいを移していまの暮らしを楽しんでいる人たちは
新天地でどんなことをしているのでしょうか?

そこで各地で暮らす本連載ライター陣に、
「移住して始めたこと」について教えてもらったところ、
新しい挑戦が人との交流、趣味、仕事へと繋がっていっているようです。

移住を考えている人もそうでない人も
まちの魅力を再発見できるアクション、始めてみませんか?
ちょっとしたことが、自分のフィールドを広げてくれます。

【秋田県にかほ市】
まちの地形を体感できる週末部活動!

2236メートルの標高を持つ鳥海山と、日本海に囲まれた秋田県にかほ市。
この特異な地形によって絶好のサイクリングコースになっているんです。

山と海の直線距離がわずか16キロという地形のおかげで、
海岸沿いは平坦ですが、山へ向かえばすぐに激坂に。
ロードバイクの醍醐味のひとつであるヒルクライムを堪能でき、
きつい坂道を登りきると、眼前にはダイナミックなパノラマが広がります。

サイクリングコース

その風景を目にすると
自分の力でこんなに高いところまで登ってきたんだという
達成感でいっぱいになります。
また、その坂道を海に向かって下れば、
視界いっぱいに広がるのは真っ青な海。
まっすぐに延びる水平線や、同じ景色は二度とない夕陽は、
どれだけきつい坂道でもまた登りたくなってしまうほど魅力的。

自転車のレースも行われ、
県外からもサイクリング目的の観光客が耐えないこの地には、
地元のロードバイカーもたくさんいます。
私も地元の方に誘われて、週末自転車部に入部しました。

自転車

ママチャリにしか乗ったことのなかった私も、
人生で2番目に高い買い物をしてロードバイクを手に入れました。
これまで車で行っていた場所に自転車で訪れると、
見たことのある景色であっても感動はひとしお。
また、自転車で時間をかけて走ることで、
地形やまちの様子をじっくりと感じることができるのも魅力です。
みなさんもぜひ、絶景ヒルクライムを始めてみませんか。

ヒルクライム

photo & text

國重咲季 くにしげ・さき

京都府出身。秋田県の大学に進学したことを機に、東北各地の1次産業の現場を訪ねるようになる。卒業後は企業に勤めて東京で暮らした後、にかほ市で閉校になった小学校の利活用事業「にかほのほかに」に携わるべく秋田にAターン。地域で受け継がれてきた暮らしを学び、自給力を高めることが日々の目標。夢は食べものとエネルギーの自給自足。

博多駅周辺地区が更にアツい!? 〈FUGLEN FUKUOKA〉併設の 新型オフィス〈Mol.t〉が開業

博多にハイブリット型スモールオフィスと⼈気カフェ&バーが登場

福岡のビジネスの中⼼地、博多。

2022年8⽉に誕⽣した次世代オフィスビル
〈博多イーストテラス〉内に開業した〈Mol.t(モル・ト)〉は、
柔軟なワークスタイルや働く⼈のウェルビーイングを重視した
ハイブリット型スモールオフィスです。

Mol.tは 「Meaning of life」+「Molt」(脱⽪・⽻化)の造語。「⼈⽣の意義と成⻑・進化を得られる場」を意味しているそう。

Mol.tは 「Meaning of life」+「Molt」(脱⽪・⽻化)の造語。「⼈⽣の意義と成⻑・進化を得られる場」を意味しているそう。

Mol.tの提案するハイブリット型オフィスは、
快適に働けるオフィス環境を完備しているのはもちろんのこと、
アクティビティの提案やコミュニティづくりを支援します。

従来の「ワークのためのスモールオフィス」の枠を越えた、
働く人のやりがいや生きがいが見つかるようなサービスを提供。
多面的にハイブリッドな要素を取り入れています。

また博多イーストテラスは、博多駅から徒歩2分という好⽴地。

リモートワークが定着した近年、
快適なワークスペースの確保と都⼼のアクセスの良さという点で、
Mol.tは最適な場になることでしょう。

家具付き個室18室、会員専⽤オープンスペース(コラボレーションスペース)、スタジオ、会議室、Web会議ブース、床下収納を備える。

家具付き個室18室、会員専⽤オープンスペース(コラボレーションスペース)、スタジオ、会議室、Web会議ブース、床下収納を備える。

Mol.tは、個別の空調管理が可能な専用個室や
海外でも評価の高いオフィス家具を導入していて、
快適に執務に専念できる環境が整っています。
さらに、博多イーストテラスの広場や屋上、
カフェを使ったアクティビティベースドワーキングが可能とのこと。

質の⾼い動画配信が可能な機器を揃えた
スタジオにもなる時間貸しの会議室や、
全体で約110平⽶の収納スペースを設けるなど、
さまざまな職種のワークに対応したオフィス空間となっています。

さらには⽉1回、福岡市⻄区の〈SALT〉
古賀市の〈快⽣館〉でのワーケーション利⽤もできるそうで、
⾃然に近い環境でリラックスしながら働けるのです。

利⽤者が柔軟にワークスペースを選べるのはうれしいですね。

現在、〈博多コネクティッド〉と呼ばれるプロジェクトにより、
まちの活性化が進んでいる博多駅周辺地区。

九州の陸の⽞関⼝としてさらなる発展が期待されているまちで、
Mol.tを拠点に⾃分らしい働き⽅を実践してみてはいかがでしょうか?

テーマは「秘境と絶景」。 三大秘境・宮崎県椎葉村で サウナのデザインを大募集!

求めるのは地域材の活用を広げるデザイン

日本三大秘境のひとつである宮崎県椎葉村。
1000メートル級の九州山脈に囲まれ、村の96%が森林、
杉の埋蔵量は日本一ともいわれています。
その分地域材も豊富ですが、ほとんどが村内で活用されていないのだそうです。

CNC加工機「ShopBot」

CNC加工機〈ShopBot〉。

活用を促そうと、2020年には村の交流拠点〈Katerie〉に
CNC(Computer Numerical Control/コンピューター数値制御)加工機
〈ShopBot〉が導入されました。

そして今秋、地域材の可能性を広げる
サウナのデザインアイデアのコンテストが行われます。
テーマは「秘境と絶景〜ととのう空間〜」。

応募に必要なのは、
以下の条件をクリアしたアイデアをA3用紙にまとめたものだけ。

・地域の木材を使用した木造サウナ
・木部の製作加工で使うShopBotを活かした提案とすること
・制作物は、幅×奥行き×高さの合計が16立方メートル以内に収まり、自立する構造体であること
・2〜4人が入ることが可能なサウナであること
・組み立ては人力で行うことができるものであること
・移動可能なサウナであること

最上位の優秀賞に選ばれるのは2点。
賞金15万円とデザインしたアイデアがサウナとしてかたちになります。

今年も大ボリュームで開催。 国内最大級の移住マッチングイベント 〈ふるさと回帰フェア2022〉

今年は参加自治体も増えました!

全国の自治体と連携して移住を支援する〈認定NPO法人ふるさと回帰支援センター〉が、
2022年9月25日(日)東京・有楽町の〈国際フォーラム〉にて、
国内最大級の移住マッチングイベント〈第18回ふるさと回帰フェア2022〉を開催します。
北海道から沖縄まで、全国の350の自治体・団体が一堂に会する移住相談コーナーを設置。
住まい、仕事、子育てなど移住に関わるさまざまな相談に対応します。
イベントは参加無料、事前申込み不要です。

前日の24日(土)には、「地方移住の20年、さらなる飛躍のために」と題した
前夜祭シンポジウムを開催。
パネリストとして、群馬県知事 山本一太氏ら4名をお招きし、
移住推進と地域創生についてたっぷりと話し合います。
こちらの前夜祭シンポジウムは、イベント公式特設サイトからの申し込みが必要です。

また、毎年おなじみになりつつある〈日本全国ふるさとマルシェ〉では、
「わがまちの農産物・特産品を都会の方に届けたい」と、
全国から自治体・団体が、新鮮な生鮮食品や地域で自慢の加工食品などを販売します。

ブースの様子

漠然と移住を考え始めたという方でももちろんOK。
むしろそういう方にとって、たくさんのブースで自治体を比較できるこの機会は、
まさに好機。
ぜひ足を運んでみてくださいね。

information

map

ふるさと回帰フェア2022

日時:2022年9月25日(土)10:00〜16:30

会場:東京国際フォーラム ホールE(地下2階)

住所:東京都千代田区丸の内3-5-1 (JR・東京メトロ有楽町駅より徒歩1分)

主催:認定NPO法人ふるさと回帰支援センター

Web:公式サイト

〈松本十帖〉長野県松本市浅間温泉の 復興プロジェクト。 ただ再生するのではなく 「地域の核として蘇らせる」

松本十帖の外観。

老舗旅館をフルリノベーション

「松本の奥座敷」と呼ばれ、日本書紀にも登場する
開湯1300年以上の歴史ある長野県の浅間温泉。
古くは一般市民をはじめ、殿様から文化人まで
さまざまな人々の心身を癒してきました。

小柳の敷地から見える5世紀の古墳では、
王冠や勾玉が出土し、信濃の大小名が集まる国府的なものがあったりと、
神秘的な地力を宿す温泉地でもあります。

そんな浅間温泉を代表する老舗旅館〈小柳〉は、
人々の寄り合いの場として機能した過去があり、まちの核となる旅館。
しかし近年は後継者不在、2棟のホテルも過大債務で廃業が危ぶまれていました。

それを新潟県南魚沼市で〈里山十帖〉を営む〈自遊人〉が継承。
ただ再生するのではなく、「地域の核として蘇らせる」ことを目的に、
地域全体の経済を盛り上げる「エリアリノベーション」を実践。
観光と経済、双方から注目を集める施設を目指し、
2022年7月23日に〈松本十帖〉として新たなスタートを切りました。

小柳之湯

小柳之湯

新たな価値と命を吹き込み、
地域の未来を担うプロジェクトにするため、
中央棟を解体撤去し、ふたつの客室棟と浴室棟を
スケルトン状態に戻して一からフルリノベーション。
過去の配置にならい、ホテルは中央棟を解体し跡地に「小柳之湯」を復活させ、
東西に棟があるかたちでリノベーションされました。

岩見沢のみなさんに贈り物を。
MAYA MAXXが高さ10メートルの
食品冷凍庫に描いたクマ

「あの壁に描きたい!」そのひと言から始まった

地域の閉校した中学校で、2020年にこの地に移住した
画家・MAYA MAXXさんの展覧会『みんなとMAYA MAXX展』を
7月中旬から月末まで2週間開催した。
展覧会の撤収をした翌日、休む間もなくMAYAさんは、
次のプロジェクトをスタートさせた。

プロジェクトの舞台は、美流渡(みると)地区から車で10分ほどまちのほうへと向かった
志文(しぶん)地区にある食品メーカー〈モリタン〉の巨大な冷凍庫。
全長100メートル、高さ10メートルにもなるこの建物の壁面に絵を描くことになった。

きっかけとなったのは昨年のこと。
私が代表を務める地域団体が、旧美流渡中学校のさまざまな活用の窓口となったことだ。
閉校して3年。
この地域は豪雪地帯であることから、1階の窓すべてに雪除けの板が貼られており、
それらが人気のなくなった場所であることをありありと感じさせていた。
地域の人たちからも、閉鎖されて寂しいという声があがっていた。
そんななかで、MAYAさんがあるとき「ここに絵を描いてみよう」と提案してくれた。

中学校と同時に閉校した、隣接する小学校の校舎も合わせて、窓板は45枚以上。
地域の人々の手を借りながら、MAYAさんは約3か月間絵を描き続けた。
窓板の絵が仕上がったあとには、校舎の向かいに建つ
〈安国寺(あんこくじ)〉にも絵を設置。お寺ということで、
涅槃図(ねはんず、釈迦が入滅する様子を描いた絵)を思わせるクマが描かれた。

2021年、旧美流渡中学校の窓板にMAYAさんは絵を描いた。

2021年、旧美流渡中学校の窓板にMAYAさんは絵を描いた。

安国寺に設置されたクマの涅槃図。

安国寺に設置されたクマの涅槃図。

こうした制作の様子を日々見つめていた人がいた。
それがモリタンの平井章裕(ひらい あきひろ)社長だった。
モリタンは、岩見沢の美流渡地区と志文地区に加工センターを持っていて、
社長はその2か所を行き来する車中から、校舎の制作を見守っていた。
当初は校舎の敷地のみのプロジェクトかと思っていたところ、
お寺に絵が設置されたのを見て「モリタンにも絵を描いてもらいたい」と考え、
私たちに連絡をしてくれた。

モリタンの平井社長(右)。

モリタンの平井社長(右)。

社長は当初、敷地内に看板のようなものを設置し、そこに絵を描いてもらおうと考えていた。
しかし、打ち合わせの席でMAYAさんは思いがけない提案をした。

「敷地が広いので看板を立ててもそんなに目立たないと思います。
冷凍庫の壁に大きなクマの絵を描きたい」

高さが10メートルにもなる壁に描くとなると、これは大きなプロジェクトだ。
その場で、すぐには了承が得られないのではないかと思ったが、
この提案に対して社長は具体的な方策を考えてくれた。

「倉庫の土台は、土が盛られているので足場を組むのは難しそうだな」

打ち合わせから1か月ほど経った昨年末、社長から
「足場を組むとなるとかなり大がかりになることから、
高所作業車をレンタルして進めたい」という提案があった。
そして、自ら高所作業車の技能講習を受けてくれることになった。

高所作業車。「ブーム」と呼ばれる部分が伸びて、高い位置での作業が可能になる。

高所作業車。「ブーム」と呼ばれる部分が伸びて、高い位置での作業が可能になる。

いま「気になるもの」のは、コレ!
まちがザワつくいろいろ


今月のテーマ 「気になるもの」

日常のなかにあるちょっとしたモノやコトで
気になっているものってありませんか?

今回は全国にお住まいのみなさんに
いま「気になっているもの」を教えてもらったところ、
「人」や「食べ物」はもちろん、
行動制限が緩和された現在ならではの「お祭り」という声も。

あなたがいまいちばん気になってるものはなんですか?

【秋田県にかほ市】
森が育てる「岩牡蠣」のおいしさ

秋田県にかほ市に暮らし始めたわたしを
もっとも驚かせたのは「岩牡蠣」です。
夏になると漁港のあたりがいつもより賑やかになったり、
魚屋さんや飲食店が色めき立つような雰囲気を感じます。
その理由は、市内の海で獲れる岩牡蠣。

殻つきのまま売られていて、その場で剥いてもらい生で食べるのが定番。
大きい実をひと口でほおばると、
口の中には海の香りと濃厚な牡蠣のミルクが広がります。
ひと口でこんなに幸せな気持ちになれるのかと、
わたしもすっかり魅力にとりつかれてしまいました。

なぜこんなにおいしい岩牡蠣が獲れるのか。
その秘密、実は“森”にあるんです。

まちのシンボルである鳥海山に降り注いだ雨や雪は、
森の養分をたくさん吸収して地下へと浸透します。
それがまちのあちこちで地表に湧き出し、
海へと流れて、おいしい牡蠣を育てているという訳です。

このまちの自然との営みを象徴するような岩牡蠣。
にかほを訪れた際には、その味をぜひ一度お試しあれ!

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國重咲季 くにしげ・さき

京都府出身。秋田県の大学に進学したことを機に、東北各地の1次産業の現場を訪ねるようになる。卒業後は企業に勤めて東京で暮らした後、にかほ市で閉校になった小学校の利活用事業「にかほのほかに」に携わるべく秋田にAターン。地域で受け継がれてきた暮らしを学び、自給力を高めることが日々の目標。夢は食べものとエネルギーの自給自足。

函館市〈大三坂ビルヂング〉後編
まちの暮らしを見つける宿
〈SMALL TOWN HOSTEL〉

富樫雅行建築設計事務所 vol.5

函館市で設計事務所を営みながら、建築施工や不動産賃貸、
ポップアップスペースの運営など、幅広い手法で地域に関わる
〈富樫雅行建築設計事務所〉の富樫雅行さんによる連載です。

今回は前編と後編にわたって、地域のパン屋、デザイナー、不動産屋とともに
〈箱バル不動産〉を立ち上げ、小さな複合施設づくりに挑んでいくお話をお届けします。
「函館移住計画」や古民家の再生、〈大三坂ビルヂング〉との出合いをご紹介した前編に続き、
後編では〈大三坂ビルヂング〉の工事からオープンまでの様子をお送りします。

函館の暮らしを見つける宿〈SMALL TOWN HOSTEL〉

2016年秋、〈大三坂ビルヂング〉土蔵の外壁が歩道に崩れ落ちたため、
外壁をネットで覆って応急処置を施し、何とかその年の冬を持ち堪えました。

冬の間、これまで取り組んできた「函館移住計画」と、
これから先、取り組んでいくべきことを話し合いました。
この小さなまちで、旅人と地域住民が交流し、暮らすようにして
まち全体を楽しんでもらえるような、それぞれの「暮らしを見つける宿」になりたい。
その拠点となるゲストハウスとして、〈SMALL TOWN HOSTEL〉と名づけました。

宿の立ち上げには新メンバーも加わり、僕たちの暮らしを表現するムービーを作成。
ゲストハウスに併設する店舗のテナント募集と同時に公開しました。

宿の立ち上げには、代表をつとめる蒲生寛之の妻・奈緒子と、函館にUターンしてきた泉加奈、函館移住計画2017から参加した工藤知子も参加。ムービーは箱バル不動産の蒲生と芋坂淳、〈BOTAN〉の加藤公章や〈Brant&sons〉谷藤崇司が参加する〈スモールタウンバンド〉の音源と、奈緒子が巡る西部地区のまち並み、そして〈Beyond the Lenz〉馬場雄介によるもの。土蔵の土壁が崩れた直後から応急処置前の様子を映像におさめた。

宿の立ち上げには、代表をつとめる蒲生寛之の妻・奈緒子と、函館にUターンしてきた泉加奈、函館移住計画2017から参加した工藤知子も参加。ムービーは箱バル不動産の蒲生と芋坂淳、〈BOTAN〉の加藤公章や〈Brant&sons〉谷藤崇司が参加する〈スモールタウンバンド〉の音源と、奈緒子が巡る西部地区のまち並み、そして〈Beyond the Lenz〉馬場雄介によるもの。土蔵の土壁が崩れた直後から応急処置前の様子を映像におさめた。

また、市販のガイドブックに載っていない、僕らの日常のオススメのお店を紹介する
マップの制作も手がけていきました。

市販のガイドブックには載っていないオススメのスポットを〈箱バル不動産〉の芋坂淳のイラストで紹介する『箱マップ』。

市販のガイドブックには載っていないオススメのスポットを〈箱バル不動産〉の芋坂淳のイラストで紹介する『箱マップ』。

路面電車から石畳を登った大三坂沿いにある〈大三坂ビルヂング〉。さらに上に行くと、〈箱バル不動産〉メンバーの芋坂が経営するパン屋〈トンボロ〉があり、そのすぐ上には重要文化財で日本最初のコンクリート寺院の〈東本願寺〉、その向かいには〈カトリック元町教会〉〈函館ハリストス正教会〉〈函館聖ヨハネ教会〉〈妙福寺〉など、異なる宗教施設が立ち並ぶ世界平和の象徴のような坂。「日本の道百選」にも認定されている。

路面電車から石畳を登った大三坂沿いにある〈大三坂ビルヂング〉。さらに上に行くと、〈箱バル不動産〉メンバーの芋坂が経営するパン屋〈トンボロ〉があり、そのすぐ上には重要文化財で日本最初のコンクリート寺院の〈東本願寺〉、その向かいには〈カトリック元町教会〉〈函館ハリストス正教会〉〈函館聖ヨハネ教会〉〈妙福寺〉など、異なる宗教施設が立ち並ぶ世界平和の象徴のような坂。「日本の道百選」にも認定されている。

これはあとからわかったことですが、ペリー来航以降、
西部地区の主要な坂のひとつ〈基坂〉には奉行所が置かれ、
大三坂の坂下には地方から公用で訪れる人々の宿があり、
その屋号が〈大三〉でした。大三坂はその宿名をもとに名づけられたとのこと。
それから160年余り、いま僕らがここで宿を始める巡り合わせが、
これから始まる多くの出会いを予感させました。

〈graf〉服部滋樹が手がける
ローカルのブランディング。
「リサーチ力」が物を言う

つくり方からデザインする

ローカルのものづくりを都心部のデザイナーがお手伝いする。
そんな図式はここ数年で定番化してきた。
そうした活動をもう10年以上前から行ってきたのは、大阪の〈graf〉だ。
プロダクトや家具、グラフィックを中心とするデザイン集団だったgrafのなかで
ローカル活動が増えていくきっかけは、プロダクトのデザイン依頼だった。

「ある東大阪のものづくりの産地から、
“この土地らしいものをつくりたい”という商品のデザイン依頼がありました。
それで現地に行ってみて倉庫を開けてみたら、
90年代に先輩方がデザインしたものが在庫として積み上がっていたんです。
ぜんぜん売れていなかったんですよね」と話す、graf代表の服部滋樹さん。

graf代表の服部滋樹さん。

graf代表の服部滋樹さん。

そうした現状を目の当たりにして、
「ものをつくるだけではなく、つくられる以前からしっかり整えていかないといけない。
そうしないとまた同じようなものばかりできてしまう」と、
“つくり方自体をデザインする”というところから入り込むように心がけた。

2003〜5年あたりは、デザイナーとして産地に行っても、
必ずしも歓迎ムードではなかったという。
しかも上記のようなgraf流のやり方でいると、
半年経っても肝心のデザインそのものが上がってこない、なんてことも。
それで怒られたり、批判されたりもした。
しかし、服部さんは粘り強く、クライアントを説いた。

「例えば、“工場で機械を入れたときに解雇した職人さんはいますか?”と聞くと、
数人いると。
定年した職人さんも含めて、そういう人たちにインタビューしたいと提案するんです。
すると機械生産の前に行われていたこと、先代や先々代の社長が考えていたこと、
その社長たちが実は当時の技術を機械化したかったことなど、
会社の哲学がわかってきます」

服部さんがそこまで遡るのは、
デザインと歴史や風土は、密接に絡み合っていると考えるからだ。

「その土地にあった資源や素材があったから、技術が生まれ、産業になり、
コミュニティができ上がる。
そこまで遡って土地らしさを見出さないと、デザインはできません」

学生経営のセレクトショップ 〈アナザー・ジャパン〉が 東京駅前に開業!

学生経営×地方創生がキーワード

“学生が本気で商売を学び実践する”、
47都道府県地域産品を集めるセレクトショップ
〈アナザー・ジャパン〉が、8月に東京駅前の
〈TOKYO TORCH〉内に開業し注目を浴びています。

〈三菱地所株式会社〉と〈株式会社中川政七商店〉が進める
アナザー・ジャパンは、三菱地所がプラットフォームを提供、
中川政七商店が教育し学生の経営に伴走するという
新しいかたちのプロジェクト。

若い世代がそれぞれの地域を深く学び、
経営を実践することで地方創生を目指す、
「日本を元気にする循環の始まりの場所」として始動しました。

東京駅八重洲口日本橋出口より徒歩5分! 赤いロゴが目印。撮影:西岡潔

東京駅八重洲口日本橋出口より徒歩5分! 赤いロゴが目印。撮影:西岡潔

アナザー・ジャパン最大の特徴は、
店舗スタッフ18名が各地域出身の学生であるということ。

学生を“セトラー(開拓者)”と名づけ、
経営・企画展運営・店舗運営・プロモーション・接客販売という
ショップ経営の一連を担います。

北海道・東北、中部、関東、近畿、
中国・四国、九州・沖縄の6エリアに分けられ、
2か月ごとに特集地域が入れ替わる企画展です。

そのトップバッターは「キュウシュウ」!

2022年8月2日から10月2日まで
〈アナザー・キュウシュウ〉として、
学生自らがセレクトした九州各地の商品約350点を販売します。

店内の様子。撮影:西岡潔

店内の様子。撮影:西岡潔

現在開催中の企画展アナザー・キュウシュウは、
“キュウシュウという宴が、あなたを待ってる。”
をコンセプトに地域産品が揃えられました。

宴といえば、かかせないお酒。
九州の地酒やクラフトビール、
おつまみなどの食品に、乾杯のための酒器も並びます。

また、お香や風鈴など、宴の時間や空間を
五感で楽しむ「宴の彩り」、
下駄や花火、郷土玩具など夏の宴を盛り上げる
「宴のお祭り」といったセレクトで、
キュウシュウの宴を演出します。

限定色の〈有限会社ながさわ結納店〉水引の箸置きや、西日本唯一の国産線香花火製造所〈筒井時正玩具花火製造所〉の花火、6つの窯元の特色ある器、装い華やかなアクセサリーなど豊富なラインナップに。

限定色の〈有限会社ながさわ結納店〉水引の箸置きや、西日本唯一の国産線香花火製造所〈筒井時正玩具花火製造所〉の花火、6つの窯元の特色ある器、装い華やかなアクセサリーなど豊富なラインナップに。

尾崎人形の絵付けの様子。小さなお子さんも一緒に楽しめそう。

尾崎人形の絵付けの様子。小さなお子さんも一緒に楽しめそう。

物販だけでなく、週末には、
佐賀県の〈尾崎人形〉の絵付け体験や、
竹鈴(竹細工)づくりなどの
ワークショップも複数企画されているとのこと。

ワークショップなどのイベント詳細は、
こちらの公式LINEで最新情報を配信中!
早めの予約がおすすめです。

「淹れる」をテーマに、喫茶文化をリスペクトしたカフェを併設。撮影:西岡潔

「淹れる」をテーマに、喫茶文化をリスペクトしたカフェを併設。撮影:西岡潔

地域産品をぐるりと見て回ったら、
〈KITASANDO Kissa〉で一息つきましょう。

カジュアルなカウンタースタイルで、
九州・沖縄産の食材を使ったデザートやドリンク、
夜はアルコールドリンクの提供もあるとのことで
仕事帰りにも気軽に使えそうですね。

この機会に新たなキュウシュウを味わってみてはいかがでしょう?

〈WORKATION IN TOYOOKA @KIAC〉 〈城崎国際アートセンター〉が テレワークの拠点に

ワーケーションの需要に対応

舞台芸術を中心とした芸術活動のための滞在制作
(=アーティスト・イン・レジデンス)を行う施設として、
開館以来、多くの国内外のアーティストを受け入れてきた、
兵庫県の〈城崎国際アートセンター〉。

2022年4月1日、そんな同施設に、テレワーク拠点となるスペース
〈WORKATION IN TOYOOKA @KIAC〉が誕生しました。

観光の核を「モノ」や「食」の消費から、
「豊岡のローカル」への憧れや共感へと切り替え、
来訪者が市内の人々と交流することで、まちに共感し、
あこがれや愛着を抱き、何度も訪れ、長期滞在してもらう
「コミュニティツーリズム」の実現を目指す豊岡市。

新たにできたここは、城崎温泉の「まち全体がひとつの旅館」という考えのもと、
まちぐるみで人々を迎え入れてきた経緯から、泊まる・食べる・買うに、
今回新しく「働く」を加え、新たなテレワーク拠点としてつくられました。

設計は、スキーマ建築計画が担当。
近年の急速な働き方の変化でワーケーションの需要拡大が予想される中、
城崎温泉の強みを活かし、豊岡独自のローカルを感じ、
メリハリをつけて仕事ができる環境をコンセプトに設計。

ワーキングデスク

ワーキングデスク

ワーキングデスク

ワーキングデスク

個人客が多い城崎温泉の特徴から、独立したワーキングデスク(11台)と、
オンライン会議にも対応する空間としてワーキングルーム(個室/2室)を整備。

まちを盛り上げる
「クリエイター」の活動にフォーカス!


今月のテーマ 「まちのクリエイター」

SNSを日常的に使う現代において
何かをつくり、発信したり、表現したりする人も少なくありません。

辞書を引いてみると、クリエイターとは「何かを創造する人」という
一説が記されています。

今回紹介するのは、
まちの特産品や特色を生かして“創造”している人たち。

あなたのまちにはどんなクリエイターがいますか?
その活動から地元を盛り上げるヒントを見つけてみてください。

【岡山県浅口市】
牡蠣の貝殻がアクセサリーに! アクセサリーでまちおこし

岡山県浅口市の港町・寄島町で生まれ育った三宅由希子さんは
「このまちを知ってほしい」という思いから、
貝殻アクセサリーをつくっています。

ハンドメイドでアクセサリーづくりをしている三宅由希子さん。

ハンドメイドでアクセサリーづくりをしている三宅由希子さん。

コンセプトは「アクセサリーでまちおこし」。
近くの海岸で見つけた貝殻を砕き、レジンで固め、
色とりどりのアクセサリーに仕上げていきます。
なかには、寄島の特産品の牡蠣の貝殻からつくられるものも。

こちらは牡蠣貝殻の紫色の部分を手作業で選別し、色つきのレジン液と混ぜて制作しているもの。

こちらは牡蠣貝殻の紫色の部分を手作業で選別し、色つきのレジン液と混ぜて制作しているもの。

天文関連施設が多くあることから
「天文のまち あさくち」と呼ばれている浅口市。
アクセサリーの名前はまちの特色を反映し、
〈星のかけら〉になりました。

「うちの店でも販売したい」「こんなアクセサリーはつくれる?」と、
星のようにきらめく貝殻アクセサリーの輪が広がってきています。

photo & text

こばん

大阪府出身。〈カブ〉で旅するフォトライター。全国各地を愛車と旅する様子をインスタグラムに投稿するのが趣味。フォトジェニックな「星と海のまちあさくち」に一目惚れし、2017年5月、岡山県浅口市地域おこし協力隊に着任。浅口の魅力を取材し、紙面やWEB、SNSで発信中。