エントリー締め切り直近! 地域の実践者に学ぶ 〈LIVE DESIGN School〉が開校

これからの地域、これからのデザインのあり方について話し学び合う

新年度を迎え、何か新しいことを始めたいと考えている方に朗報です!

「地域」と「デザイン」をテーマに、
地域で活躍する現役デザイナーとともに学ぶ
〈LIVE DESIGN School〉が始まります。

参加者はデザイナーに限らず、地域の事業者さん、自治体職員さん、
地域で暮らす人、これからのデザインに関心ある方ならどなたでも大歓迎とのこと。

さて、いったいどんなスクールなのでしょう?

LIVE DESIGN Schoolとは?

「デザイン」という言葉を聞くと、
見た目の意匠や広告などを思い浮かべる人も多いはず。

でもそれだけではなく、「計画」や「仕組みづくり」も
大きな意味でデザインと言えます。

そういった「広義のデザイン」をもっと実践的に伝えたいと、
全国各地で活動するデザイナーやクリエイターが集結し、学びの場を共有します。

左上から時計回りで、リードデザイナーの新山直広(福井県鯖江市、TSUGI)/坂本大祐(奈良県東吉野村、オフィスキャンプ)/迫 一成(新潟県新潟市、hickory03travelers)/福田 まや(大分県耶馬溪町、星庭)/小林 新也(兵庫県小野市+島根県温泉津、シーラカンス食堂+里山インストール)/佐藤 かつあき(熊本県熊本市、BRIDGE KUMAMOTO)/稲波 伸行(三重県菰野町+愛知県名古屋市、こものデザイン研究所+RW)/佐藤 哲也(福島県郡山市、Helvetica Design)/羽田 純(富山県高岡市、ROLE)/吉野 敏充(山形県新庄市、吉野敏充デザイン事務所)/堀内 康広(兵庫県神戸市、TRUNK DESIGN)

左上から時計回りで、リードデザイナーの新山直広(福井県鯖江市、TSUGI)/坂本大祐(奈良県東吉野村、オフィスキャンプ)/迫 一成(新潟県新潟市、hickory03travelers)/福田 まや(大分県耶馬溪町、星庭)/小林 新也(兵庫県小野市+島根県温泉津、シーラカンス食堂+里山インストール)/佐藤 かつあき(熊本県熊本市、BRIDGE KUMAMOTO)/稲波 伸行(三重県菰野町+愛知県名古屋市、こものデザイン研究所+RW)/佐藤 哲也(福島県郡山市、Helvetica Design)/羽田 純(富山県高岡市、ROLE)/吉野 敏充(山形県新庄市、吉野敏充デザイン事務所)/堀内 康広(兵庫県神戸市、TRUNK DESIGN)

LIVE DESIGN Schoolは、教える、教育するための学校ではなく、
“学び合う、知恵を出し合う”ための学校です。

そのため、参加するデザイナーのことを「講師」とは呼ばず、
「リードデザイナー(リード:先導する)」としています。

実はこのLIVE DESIGN School、昨年2022年に発行された
『おもしろい地域には、おもしろいデザイナーがいる -地域×デザインの実践』、
通称「おもデザ本」が発端となってスタートしたのだそう。

ゲストハウスから空き物件の紹介まで。
歩いて楽しいまちを目指す
〈ワカヤマヤモリ舎〉

古いビルをリノベーションして複合ゲストハウスに

和歌山市の中心部にある〈Guesthouse RICO〉(以下、RICO)は
5階建てのビルに宿泊、賃貸アパート、コワーキングスペース、
バー&ダイニングなど複数の機能を併せ持つゲストハウスだ。

数日間の旅行のために滞在する人もいれば、仕事のために数か月単位で長期滞在する人、
週末だけ過ごす学生や、ふらっとコーヒーを飲みにくる人もいる。
「RICOに行けば、おもしろい人やコトに出会える」と認識している地元の人も少なくない。

2015年のオープン以来、人が途絶えない、まさにコミュニティの渦のような場所。
だから「僕はゲストハウスをするつもりはなかったんです」と、
オーナーの宮原崇さんが語るとちょっとびっくりしてしまう。

宮原さんは、和歌山県和歌山市出身。
地元の大学で建築を学んだあと、神戸と大阪で建築事務所に勤務。
一級建築士の資格を取得し、独立しようかなと思っていたなか、
「リノベーションスクール@和歌山」に参加したのがすべての始まりだ。

RICOを運営するワカヤマヤモリ舎代表の宮原崇さん。ゲストハウス運営とまちづくりの企画・運営の傍らで設計の仕事も手がける。

RICOを運営するワカヤマヤモリ舎代表の宮原崇さん。ゲストハウス運営とまちづくりの企画・運営の傍らで設計の仕事も手がける。

「独立するとしても、設計だけを生業にするよりは
自分で手を動かして、古い建物を改修したり、
そこに新しいコンテンツが入るようなことができればと思っていたんです。
そんなときにリノベーションスクールが和歌山市で開催されると知って
寂れつつある和歌山のために何かできたら、と思って参加しました」

リノベーションスクールは、遊休不動産を活用した事業計画を
チームで作成する短期集中型のワークショップ。
全国規模で展開され、実際に事業展開につながる実例もたくさんある。
宮原さんたちが担当することになった建物、
つまり現在〈RICO〉が入居するビルは、
タクシー会社が所有して、長年アパートとして使われていた。

RICOが入居するユタカビル。1階はゲストハウスのロビー、コワーキングスペース、バー&ダイニング、2階と3階が賃貸アパート、4階から5階がゲストハウス。

RICOが入居するユタカビル。1階はゲストハウスのロビー、コワーキングスペース、バー&ダイニング、2階と3階が賃貸アパート、4階から5階がゲストハウス。

石川県小松市の廃校を活用した オーベルジュ〈Auberge “eaufeu”〉。 若きシェフが卒業生を招いた ホームカミングレストランを開催

過疎化が進む地域で、廃校になった母校でのレストラン体験を

〈Auberge "eaufeu" (オーベルジュ オーフ)〉は、
少子化に伴って閉校した旧小松市立西尾小学校の建物をコンバージョンし、
12室の客室とガストロノミーレストランを擁する宿泊施設です。
小松空港から車で30分ほどの石川県小松市観音下町(かながそまち)にあります。

〈Auberge

その〈Auberge "eaufeu"〉のレストランで、
旧西尾小学校の閉校時に在籍していた子どもたちを招待する
ホームカミングレストランと称したイベントが、2023年3月19日(日)に行われました。

旧西尾小学校の閉校時に在籍していた子どもたちを招待するホームカミングレストランと称したイベントが行われました。

里山に囲まれた旧西尾小学校の校下は、少子化が進み、
平成30(2018)年3月の閉校時には30人あまりの児童が在籍していました。
2023年3月時点で当時の1年生が小学6年生、6年生は高校2年生に成長し
ホームカミングレストランに訪れたのは、そのうち17人。
もちろん保護者の付き添いはありません。

盛りつけは子どもたちの目の前で。切り分ける前の大きな黒豚のローストも登場

カードには参加者へのメッセージと食材の生産者などの名前が書かれています。裏にはスタッフからの直筆メッセージも。

カードには参加者へのメッセージと食材の生産者などの名前が書かれています。裏にはスタッフからの直筆メッセージも。

メインダイニングは、元は職員室だった部屋が使われています。
テーブルには、ナイフ、フォークなどのカトラリー、グラスなどが整然と並びます。

料理に使われる食材とその生産者らが記されたカードもテーブルに。
表にシェフの糸井章太さん、裏にはスタッフの全員が一人ひとり、
歓迎のメッセージを書き入れて、子どもたちを迎えました。

シェフの糸井章太さん。

シェフの糸井章太さん。

子どもたちが揃うと、
糸井シェフが歓迎の挨拶をして、自家製のホワイトコーラで乾杯してイベントがスタート。
ホワイトコーラは近隣の山に自生する樹木、黒文字をベースに
さまざまなスパイスの香りを移したものです。

自家製のホワイトコーラで乾杯してイベントがスタート。

この日に用意された料理はすベて、このイベントのための特別な料理。
ゲストである子どもたちの目の前で盛りつけをするスタイルで行われました。

手際良く盛り付ける様もみどころになっていました。

手際良く盛りつける様もみどころになっていました。

1皿目のサラダがテーブルにそろったところで、
各テーブルにスタッフが回ります。

添えられたパンについても「お皿に残った卵をつけて食べるとおいしいです」などと、レストランでの振る舞いについて伝えます。

「サラダはフォークとナイフで食べてもいいし、お箸で食べてもいいですよ」と声をかけ、
添えられたパンについても「お皿に残った卵をつけて食べるとおいしいです」などと、
レストランでの振る舞いについて伝えます。

「サラダはフォークとナイフで食べてもいいし、お箸で食べてもいいですよ」と声をかける

2皿目は黒豚のロースト。
はちみつを塗りながらオーブンで焼いたという丸ごとのロース肉です。
各テーブルで子どもたちに見せてから、シェフがみんなの前で切り分けました。

子どもたちは「想像していたのと違って、塊の肉が出てきたからインパクトがあった」と
普段は見ることのない大きな肉に惹きつけられた様子。

デザートのシュークリームは焼きたて。

デザートのシュークリームは焼きたて。
目の前で2種類のクリームが絞られ、粉糖で仕上げられました。
テーブルにサクサクのシュークリームが配られると、嬉しそうな表情も見えました。

仲のいい同学年でテーブルを囲み、ときどき若いスタッフと話すなど、和やかな雰囲気で食事が進みました。

食事中、子どもたちは口々に「おいしい」を連発。
最初こそ緊張した表情も見えましたが、
仲のいい同学年でテーブルを囲み、ときどき若いスタッフと話すなど、
和やかな雰囲気で食事が進みました。

約1時間半に渡ったイベントの終了後、子どもたちは、館内ツアーへ。
図書室や教室だったスペースを利用した客室や、
在校時には立ち入ることがなかった屋上にも足を踏み入れました。

「本と温泉」を軸に地域創生。
文学と芸術で広がる
〈城崎温泉〉のまちづくりとは?

まち全体が「ひとつの旅館」
1300年の歴史を積み重ねてきた“共存共栄”の精神

志賀直哉の短編『城の崎にて』をはじめ、
多くの文人墨客が足を運んだ兵庫県豊岡市の温泉街、城崎温泉。
羽田空港から伊丹空港経由の飛行機で約2時間。

柳並木が続き、まちの中心をながれる大谿川(おおたにがわ)沿いには、木造3階建の旅館が軒を連ねる。そんな温泉街で下駄をカランコロンとならし、浴衣姿でそぞろ歩きながら7つの外湯を巡るのも城崎温泉を楽しむ醍醐味だ。(写真提供:山本屋)

柳並木が続き、まちの中心をながれる大谿川(おおたにがわ)沿いには、木造3階建の旅館が軒を連ねる。そんな温泉街で下駄をカランコロンとならし、浴衣姿でそぞろ歩きながら7つの外湯を巡るのも城崎温泉を楽しむ醍醐味だ。(写真提供:山本屋)

約80軒の旅館がある城崎温泉では、
“駅が玄関、通りが廊下、旅館が客室、外湯が大浴場、商店が売店。
城崎に住む者は、皆同じ旅館の従業員である”という。
まち全体でひとつの旅館としておもてなしする「共存共栄」の精神が自然と根づき、
開湯1300年の歴史を積み重ね、関西屈指の温泉街を支えてきた。

温泉と文学。伝統を継承しながら変革を

関西に住む人にとっては毎年11月になったら解禁となる松葉蟹の城崎温泉、
というのが広く浸透してきた。2013年の志賀直哉来湯100年を機に、
城崎の文化価値をもう一度見つめ直し、これからの100年を見据えた
本づくりをすすめる〈本と温泉〉プロジェクトが
城崎温泉旅館経営研究会(若旦那)によって立ち上がった。

そのきっかけについて、志賀直哉が泊まっていた宿としても知られる
〈三木屋〉の10代目当主であり、NPO法人〈本と温泉〉副理事長を務める
片岡大介さんは当時をこう振り返る。

片岡さんは大学進学を機に京都へ。ホテル勤務を経て地元である城崎に戻り、2011年から〈三木屋〉の10代目を務めている。

片岡さんは大学進学を機に京都へ。ホテル勤務を経て地元である城崎に戻り、2011年から〈三木屋〉の10代目を務めている。

「志賀直哉が初めて城崎を訪れたのが1913年。そこから100周年を迎えたタイミングで、
旅館経営に関わる若旦那衆(通称2世会)を集めた〈城崎温泉旅館経営研究会〉を中心に、
もう一度“文学のまち、城崎温泉”を復活させようと、
ユニークな本をつくるプロジェクトが動き始めました」

創業300年以上の〈三木屋〉は国の登録有形文化財にも指定され、木造建築の随所に歴史の趣が感じられる。(写真提供:三木屋)

創業300年以上の〈三木屋〉は国の登録有形文化財にも指定され、木造建築の随所に歴史の趣が感じられる。(写真提供:三木屋)

「宿のなかで完結するのではなく、お客さまがまち全体を巡る“ひとつの旅館”
としての考えを、それぞれの旅館が長年貫き、守ってきました。
城崎温泉が“文学のまち”として浸透し、
みんなが一団となり取り組んできたことが今につながっているのだと思います」と片岡さん。

老朽化のため、2013年より段階的に改修を進め、2022年にはかつて皇族を迎えた特別室「22号室」をリニューアル。最も広い面積をもつ特別室は、もともと2部屋の和室を和洋折衷の新しい客室として更新された。(写真提供:三木屋)

老朽化のため、2013年より段階的に改修を進め、2022年にはかつて皇族を迎えた特別室「22号室」をリニューアル。最も広い面積をもつ特別室は、もともと2部屋の和室を和洋折衷の新しい客室として更新された。(写真提供:三木屋)

2015年7月にリニューアルした「つつじの湯」。城崎温泉では、戦後から内湯の大きさを旅館の規模に応じて制限しているそう。各旅館でも、まちの外湯を楽しんでもらえるよう案内している。(写真提供:三木屋)

2015年7月にリニューアルした「つつじの湯」。城崎温泉では、戦後から内湯の大きさを旅館の規模に応じて制限しているそう。各旅館でも、まちの外湯を楽しんでもらえるよう案内している。(写真提供:三木屋)

information

map

三木屋

住所:兵庫県豊岡市城崎町湯島487

TEL:0796-32-2031(8:00〜20:00)

宿泊料金:「22号室」5万5000円~/大人2名1泊(定員:2~5名)

※宿泊料金はシーズン・人数により変動します。

Web:三木屋

〈BEARD〉原川慎一郎
地元食材にこだわった料理で
「種採り野菜」の文化を伝える

雲仙へ移住するきっかけとなった、ある農家

長崎県雲仙市。街中から湯けむりが上がる小浜温泉で、
原川慎一郎さんが約2年前に〈BEARD〉をオープンした。
それには農家の岩崎政利さんの存在が強く影響している。

昼間には明るい日差しが注ぐ店内。

昼間には明るい日差しが注ぐ店内。

原川さんがかつて東京の神田に〈the Blind Donkey〉をオープンしてまもなくのこと。
アリス・ウォータースの『アート オブ シンプルフード』という本を和訳した人がお店に来て、
雲仙に岩崎さんというすごい「種採り農家」がいると教えてくれた。
そして、岩崎さんが最初に種採りを始めたというニンジンを持ってきてくれた。

種採り野菜とは、育った野菜から種を自家採種すること。
そうして育てていくと地域の風土に合った固定種・在来種といわれる野菜ができ上がる。

「種採り野菜や在来種・固定種の野菜ということを本などで読んだ知識はありましたが、
まだそのときは本当の意味では理解していませんでしたね」

その後、料理家仲間である長田佳子さんと一緒に、
雲仙で〈タネト〉という野菜直売所を運営する
奥津爾(ちかし)さんがthe Blind Donkeyにやって来た。
そこで奥津さんは「自分は岩崎さんという農家さんがいるから雲仙に移住した」と言う。

「違う人から何度も“岩崎さん”が登場してすごい、と思いましたね」

そこで2018年秋に、奥津さんの案内で岩崎さんの畑を訪れることになった。

「それなりにいろいろな産地の畑を訪れてきたので、
そう驚くことはないと思っていたのですが、
岩崎さんの畑に行ったらただの野菜じゃない。
アニメみたいに、ニンジンの葉っぱが踊っているように感じました。
家に帰ったら犬が飛びついてくるくらいの人懐っこさもニンジンから感じました」

現BEARDで提供される「黒田五寸人参」。岩崎さんが最初に挑戦し、40年以上種採りをしているニンジンだ。

現BEARDで提供される「黒田五寸人参」。岩崎さんが最初に挑戦し、40年以上種採りをしているニンジンだ。

そこでつながりを持って以来、
岩崎さんから定期的に野菜を購入することになった。
ただし個人経営である岩崎さんの野菜の量では、
当時40席以上のコース料理を提供していた
the Blind Donkeyの使用量を賄うことはできない。

そこで、コース料理を提供するメインレストランの手前にあるカウンターバーで、
原川さんが岩崎さんの野菜を使った料理を提供することにした。
そのとき蒸したブロッコリーを食べて衝撃を受けたという。

「種採りブロッコリーではありませんでしたが、
想像するブロッコリーの味をめちゃくちゃ超えてきたんです。
岩崎さんの野菜のおいしさって、無意識に襲ってきます。懐あたりが反応する感じ。
おふくろの味や地元の味って、思い出を含めて“おいしい”じゃないですか。
僕は岩崎さんに対して何か思い出があるわけではないのに、この感覚はなんだろうと」

その日のコース料理に使用される野菜を最初に紹介してくれる。

その日のコース料理に使用される野菜を最初に紹介してくれる。

非加熱の〈みさとみそ〉。
〈海南社〉が加工場もレシピも
まるごと事業承継する

photo:Itsuko Shimizu

「金山寺みそ」のルーツから、再び。

いくつもの緑のトンネルを越え
蛇のようにクネクネと曲がる川のほとりに
すっくと建つ〈美里農産物加工場〉。

JAの農産物集荷場として建設された2階建てのこの小さな建物では、
地域の伝統の味「金山寺味噌」と
お味噌汁に使う味噌や麹の生産と販売が行われている。

「金山寺味噌」とは、今からおよそ700年ほど前。
中国の径山寺(きんざんじ)で修行した法燈国師という僧が
当地から紀州に味噌を持ち帰ったことで製造が始まったと伝わる
甘じょっぱいおかず味噌。
麦と米と豆でつくった麹に刻んだナスやウリの漬物がたっぷり入っているのが特徴だ。
ちなみに味噌の発酵途中で、こうした野菜から出る液体の
「たまり」を利用して生まれたのが醤油ともいわれている。
つまり、和歌山県湯浅地方は醤油の発祥地。
そして金山寺味噌はこの湯浅地方を中心に、家々で仕込まれてきた伝統食。
保存食では梅干しと双璧をなす郷土の味だ。

金山寺味噌をおともにすれば、ごはんがいくらでも食べられる。

金山寺味噌をおともにすれば、ごはんがいくらでも食べられる。

しかし、多くの伝統食がそうであるように、欧米化が食が進んだ結果、
金山寺味噌が食卓の定番として上がることはうんと少なくなった。
停滞する売り上げを前に、このまま経営を続けていくことは困難と判断したJAは
2018年に加工場をクローズすることにした。

それを惜しみ「なんとかして継続できないか」と考えた人地域の々は、
〈海南社〉の源じろうさんに味噌工場の跡を継がないか、と声をかけた。

こんな新潟があったのか! 『新潟コメジルシプロジェクト』を 制作・運営して知る新潟のリアル

地域の魅力を地元の人が発信するメディアは、そのまちの暮らしぶりや産業が知れ、
旅行や移住検討の際の貴重な情報源にもなります。

自分のまちの良さをより多くの人に届けたい。そのためにはメディアが必要ですし、
コンテンツをつくる人、運営する人、デザインする人など、
多くの人材を必要とします。
きっと『コロカル』の読者のなかにも、
こうした「ローカルメディア」の立ち上げに携わった経験のある方もいるでしょう。

今回はそんなローカルメディアのひとつの事例として、
新潟県が運営する『新潟コメジルシプロジェクト』を紹介します。

実際に『新潟コメジルシプロジェクト』のコンテンツ制作に携わる
コメジルシ編集部の3名に、制作にまつわるエピソードを聞きました。

県民の数だけある“魅力の回収”がおもしろい

新潟在住のコメジルシ編集部中心メンバーは、
金澤李花子さん、齋藤華さん、小日山隼輔さん。
この体制になったのは、2022年春のことでした。

主力企画である「#新潟のコメジルシ」にて、
県民の方々のお気に入りの場所やモノ、暮らしぶりなど、
「だから新潟がいい!」というエピソードを、テキストと写真で紹介。
こうしたコンテンツ化をこの3名が担っています。

それぞれの役割については、
新潟市古町の複合施設〈上古町の百年長屋SAN〉で副館長を務めている
金澤さんが統括編集し、
新潟市内のデザインコンサルの企業に勤める齋藤さんと、
人材系サービスの企業でディレクターを務めている小日山さんが
インタビュー・執筆業務にあたっているといいます。
県民それぞれの「新潟愛」を記事というかたちにする
「影武者のような存在です」と、金澤さん。

皆、本業を持っているものの、「時間の融通がきく仕事」というのは
3人の共通点でもあります。
その本業の合間を縫って週に2回ほど
『新潟コメジルシプロジェクト』のコンテンツ制作業務に携わっているのです。

東京からUターン移住を果たし、『新潟コメジルシプロジェクト』には2020年から携わる金澤李花子さん(写真右)。齋藤華さんは、群馬県出身、新卒で新潟市内の印刷会社に入社した際に新潟のグルメなどを紹介するオウンドメディアでコンテンツ制作の経験を持つ(写真左)。小日山隼輔さんは、以前は新潟の産直品が買えるサイト〈新潟直送計画〉に従事していました(写真中央)。

東京からUターン移住を果たし、『新潟コメジルシプロジェクト』には2020年から携わる金澤李花子さん(写真右)。齋藤華さんは、群馬県出身、新卒で新潟市内の印刷会社に入社した際に新潟のグルメなどを紹介するオウンドメディアでコンテンツ制作の経験を持つ(写真左)。小日山隼輔さんは、以前は新潟の産直品が買えるサイト〈新潟直送計画〉に従事していました(写真中央)。

基本的には県民へのインタビューはリモートで実施。
「新潟県は縦長で、面積が広いのでインタビューして回るのは難しい」と金澤さん。
リモート会議ツールや電話を駆使しています。

「大体ひとり1時間くらいインタビューに要していると思います。
特に電話は顔を合わせていない分、リズムを掴むのが難しいですね」(小日山さん)
「話し始めると地元愛が止まらない。
それを聞いて私たちもうれしい気持ちになりました」(齋藤さん)

インタビューを重ねるうちに、自分たちも知らなかった新潟の姿を発見することは多く、
「新潟のリアルを知れたのはよかった」と小日山さんは言います。
たとえば、佐渡島に古くから伝わる伝統芸能「鬼太鼓」。
観光協会のサイトなどでは「おんでこ」という表記だったため、
インタビューの際も編集部メンバーはそう読むのだと思っていたそうですが、
取材した佐渡の地域振興事業に携わる上之山博文さんや一部地域では
昔から「おにだいこ」と呼んでいたそうです。

佐渡市で地域振興事業に携わる上之山博文さんの「鬼太鼓」にまつわるお話。

佐渡市で地域振興事業に携わる上之山博文さんの「鬼太鼓」にまつわるお話。

「小学校の時も『おんでこ』と習ったので、そんな読み方があったとは」(小日山さん)
「地域や世代によって神事も読み方が異なるということを
初めて知りました」(金澤さん)
「このインタビューがなかったら、
ずっと知らないままだったかもしれません」(齋藤さん)

※記事はこちら。

こうした県民主体のメディアを運用するおもしろさについて、金澤さんはこう話します。

「“新潟の魅力”が大きなテーマですが、
ひとりひとりに聞いていっても同じ内容になることがない。
たとえば『米について教えてください』と聞いても、話が被らないような気がします。
『あなたの地域のことを教えてください』というテーマは
全県民に聞けるテーマだと思うので、自分たちで新潟の良さを考えるよりも、
人に聞いて回りたいです。人から言われて私もまた魅力を知る。
その“魅力の回収”を、私はおもしろいと感じています。
そして、そういうプロジェクトをやっている新潟県も
また魅力的な県だと感じています」

弟子屈中学校の授業で
アカエゾマツの森を学ぶ。
動画『森の中へ』も完成!

地元の中学生と歩いた「アカエゾマツの森」

きっかけは、地域おこし協力隊の同期、高橋志学くんからの誘いだった。
「弟子屈中学校の先生から
『協力隊と一緒にできることはないでしょうか?』と相談を受けました」

昨年の初夏のこと。
「アカエゾマツの森」を、できるだけ多くの人(とくに町民)に
知ってもらいたいと考えていた私は、迷わず手を挙げた。

そして実現したのが、2日間におよぶ
弟⼦屈中学校1年生 × 東京農業⼤学教授・上原巌先⽣
「川湯の森の散策と森林講座」
(この模様は、上原先生のブログに楽しく紹介されているので、
ぜひご覧ください)

2020年から毎年、弟子屈町の森を訪れている、東京農業大学教授・上原巌先生。「川湯の森の散策と森林講座」は、弟子屈町の広報誌の表紙も飾った。

2020年から毎年、弟子屈町の森を訪れている、東京農業大学教授・上原巌先生。「川湯の森の散策と森林講座」は、弟子屈町の広報誌の表紙も飾った。

1日目は中学校の講堂でスライドを観ながら、
「森とは何なのか?」「弟子屈町にはどんな森があるのか?」など
アカエゾマツなどの蒸留をしつつ学んだ。

2日目は「アカエゾマツの森」と、近くにある「川湯の森」をみんなで歩いた。
「この森は、どんな風に感じる?」「この葉っぱ、どんな形をしている?」
上原先生は、いつも問いかける。
そして参加者は、眺めるだけでなく、考えるようになる。
すると木や森は、いつもとは違う姿をどんどん見せてくれるのだ。

2日目には「アカエゾマツの森」。中学生はタブレットを持ち、写真を撮りながら歩く。

2日目には「アカエゾマツの森」。中学生はタブレットを持ち、写真を撮りながら歩く。

木更津〈KURKKU FIELDS〉に 本を読み耽られる〈地中図書館〉 がオープン

「農」「食」「自然」の循環を体験できるサステナブルファーム&パーク〈KURKKU FIELDS〉

千葉県木更津市、約9万坪(30ha)の広大な敷地で「農」「食」
そして「自然」の循環を体験できるサステナブルファーム&パークの
〈KURKKU FIELDS(クルックフィールズ)〉。
「育てる・作る・食べる・循環する」といった“人が本質的に生きる心地よさと喜び”を
感じる場所を目指し、広大な土地を10年前からゆっくりとすこしずつ育てています。

2022年秋には宿泊施設“創る暮らしを体感するvilla”〈cocoon(コクーン)〉がオープン。
そして2023年2月16日(木)、〈KURKKU FIELDS〉に、
〈NAP建築設計事務所〉の中村拓志氏の設計による
新たな施設〈地中図書館〉がオープンしました。

〈KURKKU FIELDS〉〈地中図書館〉で体験する一歩先行く晴耕雨読

天井から自然の光が差し込むホール

地中図書館はその名のとおり土の下に、ひっそりと隠されたように存在します。
晴れた日には畑を耕し、雨の日には読書をする。
地中図書館はそんな人のために構想されています。

すり鉢状の特徴的な形をした土地の中腹にあって、大地にそびえ立つのではなく、
洞窟のように地中に横たわる空間です。
訪れた人はKURKKU FIELDSをさまようなかで、突如入り口を見つけて
大地の中へと潜り込み、思いがけない空間と本に出合うことになります。
オープン時は約3000冊を収容し、自然や農的な暮らしに関するものを中心に詩、
哲学、歴史、宗教、科学や経済にも独自の広がりやつながりが感じられる選書です。

本棚の間を抜けると天井から自然の光が差し込むホールが現れます。
〈cocoon〉、〈TINY HOUSE VILLAGE〉の宿泊者は閉館後の17時以降も、
優しい明かりがこぼれる幻想的な〈地中図書館〉で夜の特別な時間を過ごせます。

〈福味鶏 ふくふくレバー〉 長野アップサイクル・フード第1弾  信州福味鶏レバー・ハツを使用した缶詰

食品製造段階で発生する食品ロスを缶詰に

余剰になっている未利用食品原料に付加価値を付けて
新しい食品を生み出す「長野アップサイクルフード」として、
信州福味鶏のレバー及びハツを使用した缶詰〈福味鶏 ふくふくレバー〉が、
2023年2月20日(月)より販売されました。

仕掛け人は、食品原料のWEB売買プラットフォーム
〈シェアシマ〉を運営する〈ICS-net〉。
創業時から、日本の食品廃棄の約20%が食品メーカー由来で、
製造段階での廃棄が生じている現実に着目。
その課題解決をミッションのひとつとしている企業です。

このたび同社と、長野市発の新産業の創出と地域課題の解決に向け活動している
産学官金の連携組織〈NAGANOスマートシティコミッション〉(以下、NASC)
との協働により、福味鶏 ふくふくレバーは生み出されました。

アップサイクルマーク

このプロジェクトは、NASCの令和4年度実証プロジェクトに採択されて実施がスタート。
長野市内の食品企業の未利用食品原料の定量及び定性調査を行い、
そこから、長野県に眠る原料や端材から、また新しい商品として生まれ変わらせた
「長野アップサイクル・フード」の企画・開発に至ったといいます。

福味鶏 ふくふくレバー ご褒美パテ 各1382円(参考価格)煮切った白ワイン、コショウ、ローリエを入れ、レバーの旨味をぎゅっと詰め込んだしっとりなめらかなパテ。パンや茹でたじゃがいもと合わせて。

福味鶏 ふくふくレバー ご褒美パテ 各1382円(参考価格)煮切った白ワイン、コショウ、ローリエを入れ、レバーの旨味をぎゅっと詰め込んだしっとりなめらかなパテ。パンや茹でたじゃがいもと合わせて。

福味鶏 ふくふくレバー 生姜香る時雨煮 各1382円(参考価格)ホッとする定番の味・甘辛い醤油味のしぐれ煮は、生姜のピリリとした辛味と風味がアクセント。普段の食卓にプラス一品して。

福味鶏 ふくふくレバー 生姜香る時雨煮 各1382円(参考価格)ホッとする定番の味・甘辛い醤油味のしぐれ煮は、生姜のピリリとした辛味と風味がアクセント。普段の食卓にプラス一品して。

福味鶏 ふくふくレバー 至福のアヒージョ 各1382円(参考価格)ピリリとした鷹の爪、パンチのあるニンニクにハーブの香りが重なるオイル煮。温めてパンと一緒に、パスタの具にも。

福味鶏 ふくふくレバー 至福のアヒージョ 各1382円(参考価格)ピリリとした鷹の爪、パンチのあるニンニクにハーブの香りが重なるオイル煮。温めてパンと一緒に、パスタの具にも。

〈モノサス〉副社長・永井智子さん
「どこでも仕事はできる」
周防大島町に
サテライトオフィスをつくる

リモートワークやテレワークという言葉は今や日常的に使われるようになった。
実際に、ネットワーク環境さえ整っていれば働けるという職種も少なくない。

東京・代々木に本社を構える〈株式会社モノサス〉は、
Web制作事業を主にマーケティングやプランニング、
デザイン、コーディング、運用などを行うIT企業である。
2017年、取締役副社長の永井智子さんが東京から山口県の周防大島町に移住し、
徳島県の神山町に続くふたつめのサテライトオフィスを開設した。

永井さんは島ではどのような働き方、暮らし方をしているのだろう。

周防大島町の母の生家をオフィスに

周防大島町は青い海に囲まれ、平均気温15℃ほどという年間を通して温暖な気候だ。
モノサスのサテライトオフィスがある地家室(じかむろ)は
周防大島町の中心部から離れた南の沿岸部に位置する。

山口県のガードレールは夏みかん色。その奥に見える集落が地家室と呼ばれる地区だ。

山口県のガードレールは夏みかん色。その奥に見える集落が地家室と呼ばれる地区だ。

オフィス周辺に到着すると永井さんが出迎えてくれた。

「目印になるものはコカ・コーラの自販機です」

この地区唯一の自販機を曲がった突き当たりの木造の建物が
モノサスのサテライトオフィスだ。

この辺りは海に近く、塩害から家を守るために焼杉を使った民家が多いという。

この辺りは海に近く、塩害から家を守るために焼杉を使った民家が多いという。

オフィスに改装した古民家はもともと永井さんの母親の生家だった。
東京と変わらない快適なネット環境を整えたオフィスで、
現在4名の仲間と日々仕事に励む。

「主にホームページを制作する会社で、
私はWebディレクターとして各スタッフにデザインやコーディングの指示、
プロジェクトの進行状況を管理しています。
クライアントによっては週1で打ち合わせをしたり、
メンテナンスやサポートの仕事を行ったりします」

企業のコーポレートサイトなどの制作に関わる業務内容は
東京にいた頃とさほど変わっていないという。
変わったことといえば、打ち合わせの方法。
以前は月に2、3回ほど打ち合わせのために上京していたが、
コロナ禍で東京に行くことは大幅に減った。

「移住して3年くらいは、
東京に行って打ち合わせしないと仕事になりませんでした。
でも最近ではお客さまからリモート会議でお願いしますといわれることも増えて、
環境のほうが変わりましたね」

地方で仕事をする距離的なデメリットが減り、偶然にも時代の流れにマッチした。

近所を一望できる高台へ。仕事の気分転換のためによく散歩するという。

近所を一望できる高台へ。仕事の気分転換のためによく散歩するという。

永井さんは都会から島へ生活環境を変えて、すんなり地域に溶け込めたのだろうか。

「地域に溶け込むのにハードルは感じませんでした。
閉校した近くの地蔵小学校で祖父母が先生をしていたので、
『先生にお世話になったから』といって近所の方によくしてもらうこともありました。
もう50〜60年も前の話なのにね」

学校の夏休みに遊びに来ていた記憶から、地域での暮らしをある程度は予想できたという。

「インターネット通販で注文すれば、翌々日には届きます。
車の運転は、20年以上ペーパードライバーだったんですけど、
さすがに車を買って練習しました。
最初の1、2年は大変でしたが、Wi-Fi環境はむしろ東京よりもいいし、
不自由を感じることはありませんね」

東京ではほぼ外食だったが、移住してからは自炊が増えたという。
自分たちの畑で育てた野菜や魚屋さんで手に入る新鮮な魚が永井家の食卓を彩る。

オフィスの裏手にある畑で季節に合わせた野菜をつくっている。夫婦ふたりで食べる野菜は8割がた賄えるそう。

オフィスの裏手にある畑で季節に合わせた野菜をつくっている。夫婦ふたりで食べる野菜は8割がた賄えるそう。

「スーパーで食材を買ったり、親戚がお米をつくっているので送ってもらったり。
といっても、ピザもパスタもインスタントラーメンも食べるし、
田舎ならではのメニューばかりでもないですよ」

移住後すぐは新しい拠点整備に大わらわだったそうだが、
今では生活にも慣れ地域に馴染んでいる。

〈川上ノ森OWNER’S CLUB〉 キャンプを楽しみながら、 間伐体験をして森の再生に貢献!

キャンプ場〈喜多川CAMPING BASE〉で
森を守る仲間を大募集!

まちの75%が森林で、
かつて林業や織物のまちとして栄えていた埼玉県飯能市。
しかし、林業の衰退により森林が徐々に荒廃していき、
現在その整備が深刻な問題となっています。

まちの75パーセントが森林で、
かつて林業や織物のまちとして栄えていた埼玉県飯能市。

飯能市の建設会社〈株式会社森田建設緑化〉の森田美明社長と奥むさし飯能観光協会は、
奥武蔵のキャンプや登山など山を遊び場にする人たちに間伐の担い手になってもらおうと、
キャンプを楽しみながら森を学び、間伐体験で森を再生する
〈川上ノ森OWNER’S CLUB〉を始動。
現在会員を募集しています。

埼玉県飯能市に位置する喜多川キャンピングベースを利用

このプログラムは、
「100年続く森を育てるための、間伐を知る」をテーマに、
キャンパーや登山家などで人気を博す
埼玉県飯能市に位置する喜多川キャンピングベースを利用し、
地元の木材・西川材の「伐採~加工~植林」までを
1年かけて体験することによって、自然を楽しみながら
伐採・植樹など間伐のサポートを行うというもの。

〈田万里家 FARM STAY〉 広島県田万里町で農業体験できる宿!

現在クラファン実施中!

南北両サイドを山に囲まれた自然豊かな場所・広島県竹原市田万里町。
2023年3月、ここに農業体験ができる宿〈田万里家 FARM STAY〉がオープンします。

田んぼが多く、自然豊かな田万里町。

田んぼが多く、自然豊かな田万里町。

農ライファーズ株式会社のみなさん。

農ライファーズ株式会社のみなさん。

手がけたのは、“世界を農でオモシロくする”をミッションに、
次世代型農家の営み方を学ぶ「コンパクト農ライフ塾」や
限界集落を再生するプロジェクトなどを展開する〈農ライファーズ株式会社〉。
同社はこれまで、田万里町で大豆や米や野菜を生産し、加工食品を製造しながら、
「田万里家(たまりや)」という屋号で農業と六次化事業を展開していました。

今回オープンする〈田万里家 FARM STAY〉は、
地元の集会場を山小屋風にフルリノベーションし、
ドーナツカフェも併設したホステル型の農泊宿。
「宿泊したその日から全員が家族になる」をコンセプトに、
単に泊まるだけではなく、農ライフ(=自然とともにある暮らし)
を通じたリトリートを楽しむことができます。

阿武町地域おこし協力隊・
藤尾凜太郎さん
全国で山口県に200頭しかいない
「無角和牛」の未来をつくる

「なにもない」を解決する人間になりたい

山口県北部にある人口約3000人のまち、阿武町。

日本海に面しているので冬は降雪もあるが年間を通して温暖な気候だ。
阿武町は萩市と合わせておよそ50か所に小型火山が分布する
阿武火山群と呼ばれる火山性土壌で、
古くから野菜や穀物、果物などの栽培が盛んに行われてきた。

山口市の中心部から車を1時間ほど走らせると、
緑豊かな山間にある〈無角和種繁殖センター〉に到着する。
そこで地域おこし協力隊として「無角和牛」に携わるのは藤尾凜太郎さんである。

無角和種繁殖センターの入口では牛が彫り込まれた巨大な看板が出迎える。

無角和種繁殖センターの入口では牛が彫り込まれた巨大な看板が出迎える。

神奈川県出身の藤尾さんは、
阿武町の地域おこし協力隊に着任する前は横浜の大学に通う大学生だった。

幼少期に祖父母の暮らす田舎への帰省や家族と訪れた旅先での思い出から、
生まれ育ったまち以外の地域に対する興味や憧れが芽生えたという。
大学では海外へ日本のよさを伝えたいと語学やまちづくりを学べる学科を選び、
4年次は地理学を専攻した。

「旅行や在学時のフィールドワークで地方を訪れたとき、
自分の知らない日本がまだまだ沢山あることに気づきました。
同時に、訪問した地域の人たちが『なにもない所によく来たね』と言うんです。
それがすごくもったいない。
『なにかある』と思って訪れているのに
『なにもない』と地元の人が突き返してしまうミスマッチ。
謙遜なんかいらないと感じていました。
もっと自信を持ってもらうには、
その地域をおもしろがる若者が必要なのではないだろうか。
将来、その『なにもない』を解決する人間になりたいと思っていました」

さらに、同級生が学校を休学して地域おこし協力隊の活動を始めたことも、
進路を考えるうえで大きなきっかけになったという。

飛騨高山の食と工芸をギフトする産地限定ブランド〈hiHIDA〉

飛騨のよいものがここに

2020年に設立された、飛騨のより良いものを世界に伝える〈合同会社地域商社飛騨〉は、
産地限定ブランド〈hiHIDA(ハイヒダ)〉を立ち上げ、
2022年12月9日にECサイトをオープンしました。

デザインディレクターを務めるのは、TOKYO2020大会表彰台プロジェクトで知られ、
飛騨高山でも〈東急ステイ飛騨高山・結の湯〉や
〈飛騨高山蒸溜所〉などを手がける平本知樹氏。

家具工房オークヴィレッジの国産材を使った木製玩具と飛騨産アロマオイルのベビーギフトセット 5500円〜8420円

家具工房オークヴィレッジの国産材を使った木製玩具と飛騨産アロマオイルのベビーギフトセット 5500円〜8420円

よしま農園(自然栽培野菜加工品)の無農薬・無堆肥・無肥料で育てられた野菜のペースト加工品や瓶詰め商品とギフトセット 929円〜5260円

よしま農園(自然栽培野菜加工品)の無農薬・無堆肥・無肥料で育てられた野菜のペースト加工品や瓶詰め商品とギフトセット 929円〜5260円

飛騨の伝統工芸である木工と飛騨さしこを掛け合わせたhiHIDAオリジナルスツール 39600円

飛騨の伝統工芸である木工と飛騨さしこを掛け合わせたhiHIDAオリジナルスツール 39600円

同ブランドは「飛騨のよいものを世界に」をミッションに、
自然栽培の野菜ペースト、アロマ製品、木のおもちゃ、
日進木工と飛騨さしことタッグを組んだhiHIDAオリジナルさしこスツールなどを発売。
さしこスツールは、昨年10月に開催された飛騨高山家具フェスティバルでお披露目され、
今冬から観光地や地元の飲食店でも使用されはじめています。
今後は、飛騨牛革を使ったプロダクトや、
飛騨で採れた旬の野菜のセットなども展開予定。

アニメの聖地から
林業、漁業、航空開発まで。
まちを支える産業について
調査してみました!


今月のテーマ 「まちの産業」

特色を生かしたそのまちならではの特産物や名産品は全国に数多くあります。
今回はまちで盛んな「仕事」「産業」という側面から
全国の都市を深堀りしてみました。

自然の恵みを産業にしている地域から、
新たなものを創造する都市まで幅広く紹介します!

みなさんのお住まいのまちの産業について
ちょっと考えてみてください。
まちの新たな魅力が見つかるはずです。

【北海道羅臼町】
サケ、イカ、ブリ、サバがどっさり! 「魚の城下町」の定置網漁

世界自然遺産の知床を有する羅臼町は自然だけでなく
「魚の城下町」といわれるほど漁業も盛んなところ。
羅臼の海は一年通してさまざまな魚種がとれるのですが、
いちばん盛り上がるのは9~11月の秋鮭定置網漁。
漁獲量もほかの魚に比べて最も多いんです。

深夜2時頃、まちは寝静まっていますが、港にぞくぞくと漁師さんが集まってきます。
船に乗り込み、真っ暗な海原へ出港。

15分ほど進んで、定置網のポイントに着いたら全員で一斉に網を手繰ります。
網の中にはサケを中心にイカ、ブリ、サバなど
さまざまな魚がどっさり入っていました。

港に戻り、種類、雌雄、大きさごとに1匹ずつていねいに選別していきます。

港に戻り、種類、雌雄、大きさごとに1匹ずつていねいに選別していきます。

この魚たちは朝の間に羅臼漁港市場で競りにかけられて、
その日のうちに札幌や東京へ配送されていきます。
町内の加工場や飲食店へもすぐに配送されます。

羅臼で鮮魚を買うなら、道の駅〈知床・らうす〉の隣、羅臼漁協直営の〈海鮮工房〉へ。その日にとれた魚たちが並んでいるので、旬の魚を知るのにももってこいです!

羅臼で鮮魚を買うなら、道の駅〈知床・らうす〉の隣、羅臼漁協直営の〈海鮮工房〉へ。その日にとれた魚たちが並んでいるので、旬の魚を知るのにももってこいです!

遠くにお住まいの方は、ふるさと納税でも
羅臼の海産物がたくさん出品されていますのでぜひご覧ください!
ほかには、ブリやウニも羅臼のものはおいしい! と評判です。

information

map

海鮮工房

住所:北海道目梨郡羅臼町本町361番地

TEL:0120-530-370

Web:海鮮工房

photo & text

佐脇 星 さわき・ひかり

兵庫県神戸市の人工島で生まれ育つ。子どものときに読んだ「シートン動物記」をきっかけに野生動物が好きになり、「野生動物の息吹を身近に感じられるところに住んでみたい」という思いから、大学卒業後、世界自然遺産の町である知床羅臼町の地域おこし協力隊に着任。関西人から見た羅臼町の魅力をSNSで発信している。

クラフトサケ醸造所〈稲とアガベ〉
岡住修兵さんがつくる、
日本酒の未来、まちの未来

男鹿を「クラフトサケ」の聖地に

2021年、秋田県男鹿市に誕生したクラフトサケ醸造所〈稲とアガベ〉。
代表の岡住修兵さんは、
男鹿を日本酒(清酒)製造免許の新規取得ができる「日本酒特区」にしようと奔走し、
「クラフトサケ」というジャンルを確立したことで注目を集めている。

酒税法において「米、米麹、水を原料に発酵させ、こしたもの」と
定義されている「日本酒(清酒)」。
その製造免許は、輸出限定には解禁されたものの、新規に取得することができない。

〈稲とアガベ〉が日本市場向けにつくるのは、日本酒の製造技術をベースにした、
こさないどぶろくや、フルーツやハーブなど副原料を加えた「その他の醸造酒」だ。

出荷準備中のどぶろく。購入できる全国の酒販店は〈稲とアガベ〉のホームページでチェックできる。

出荷準備中のどぶろく。購入できる全国の酒販店は〈稲とアガベ〉のホームページでチェックできる。

岡住さんは、これらを「クラフトサケ」と呼び、
発起人となって〈クラフトサケブリュワリー協会〉を設立。
フランスでの「SAKE」造りで注目を集める〈WAKAZE〉、
福島県の〈haccoba〉など、
近年「その他の醸造酒製造免許」を活用して各地に誕生した醸造所が
一堂に会するイベント『猩猩宴(しょうじょうえん)』を男鹿と東京・下北沢で開催した。

「クラフトサケの認知が高まることで、参入する人が増えて
サケ業界が活性化してほしいという思いもあるし、
日本酒製造の新規参入解禁にもつなげたい。
若い醸造家が活躍できる未来をつくりたいと思っています。
初めて『猩猩宴』を開催した男鹿が聖地になって、
全国から人が集まるようになってくれたらうれしい」と岡住さんは話す。

醸造所は旧男鹿駅舎を改装した建物内にある。新駅は、道の駅おが〈なまはげの里オガーレ〉の整備にともない約100メートル南に新設された。

醸造所は旧男鹿駅舎を改装した建物内にある。新駅は、道の駅おが〈なまはげの里オガーレ〉の整備にともない約100メートル南に新設された。

「きっぷうりば」の表示が残る自動ドア。駅の名残がある醸造所の奥には改札があり、隣接する線路を電車が走り抜けていく。

「きっぷうりば」の表示が残る自動ドア。駅の名残がある醸造所の奥には改札があり、隣接する線路を電車が走り抜けていく。

2022年末には「TAMESHIOKE(試し桶)」シリーズとして
山梨県勝沼産のブドウ「甲州」を発酵させた「稲とブドウ」(2950円)を発表。
今後も5種類の新製品を予定している。

「副原料は、僕が人生において日本各地・世界中で出会った人たちとの縁」
と考える岡住さん。
米は秋田県産に限るが、副原料にはその制限を設けない。

「クラフトサケでは、米農家とつくり手の物語に加えて、
副原料の物語も伝えることができるおもしろさがあります。
副原料は、男鹿を知ってもらい、
男鹿に来てもらうきっかけになってくれる力があると思うのです」

〈ショップハウスプロジェクト〉 瀬戸田の空き店舗がお店や宿泊施設に。 関係人口増加にも貢献!

Puddle Inc.が空間デザインを担当

〈Azumi Setoda〉 〈SOIL Setoda〉の開業で盛り上がりを見せる広島・瀬戸田。
しかし、これらの施設のある瀬戸田港周辺、昔から観光地として知られる
耕三寺・平山郁夫美術館のあるエリアのしおまち商店街は、現在空き店舗が目立ちます。

SOIL Setodaを運営する〈株式会社Staple〉の子会社〈株式会社しおまち企画〉は、
そのようなしおまち商店街を活性させるプロジェクトとして、
店舗と住宅兼宿泊が一体化した建築ユニット〈ショップハウス〉の開発を開始しました。

しおまち商店街を活性させるプロジェクト

瀬戸田の空き店舗は、設備の老朽化に伴う空き家再活用の難化や、
空き店舗の第三者への貸出が進まないといった課題が起因しています。
さらに近年は、移住者増加に伴う住宅供給不足などの新たな課題も。

しおまち企画が参加した「しおまちとワークショップ」では、
空き物件の活用を地域活性化の最優先課題と捉え、
今回のショップハウスプロジェクトの構想が生まれました。

小規模不動産の開発を面で展開、
商店街の店舗にさまざまな事業者を誘致することで多様性を生み出し、
まちの関係人口を増やすための受け入れ態勢を整える。
上記の点に基づき、地域ににぎわいをもたらす新しい仕組みとして
建築ユニット「ショップハウス」が開発され、商店街に展開されます。

2025年までに、空き家のリノベーション型と新築型を合わせて、
10棟を超えるショップハウスがしおまち商店街近辺にオープン予定。
第1弾はSOIL Setodaの隣に、ショップハウス1号(リノベーション型)が春、
ショップハウス2号(新築型)が夏に開業予定。
中長期的には、瀬戸田でのショップハウスの開発事例をもとに、
同様の課題を抱える地域へのショップハウスの展開・情報共有なども計画されています。

萩市の魅力って?
山口県の移住者に会えるイベントで
地域の暮らしと仕事のイリグチを探る

「萩の入口」となる拠点を知ることから始める

移住への第一歩として、まずは地元の人たちに話を聞くのが近道だと考える。
でも実際には、都心で地方在住者や移住者に
どうやって出会えばいいかわからないという人もいるだろう。

先日、山口県萩市での移住に関するイベントが都内で開催された。
2022年10月2日(日)、場所は東京・有楽町の〈東京交通会館〉。
今年度4回目の開催となる〈YY! ターンカレッジ〉は、
山口県と密接につながりながら
新しい働き方・暮らし方・生き方を見つけた先輩たちなどと語り合えるイベントだ。

今回は「山口とつながる」part.1として、
「地域へのイリグチからシゴトまで」をテーマに開催、約40名の参加者が集まった。

“YY! ターン”とは、「やまぐち」のYと「わいわい楽しい暮らし」のYを組み合わせた山口県へUJIターンを意味するキャッチフレーズ。

“YY! ターン”とは、「やまぐち」のYと「わいわい楽しい暮らし」のYを組み合わせた山口県へUJIターンを意味するキャッチフレーズ。

ゲストは〈株式会社b.note〉の代表取締役である新井達夫さん、
〈萩市商工観光部 企業誘致推進課〉課長の大平憲二さん、
〈萩市総合政策部おいでませ、豊かな暮らし応援課〉課長補佐の
釼物(けんもつ)佳代子さん。

「地域の入口」となる拠点をつくる3名が、萩市内でどんな事業や取り組みを行っているか、
地域とのつながりや地域性を交えながら“萩の魅力”を探っていった。

左から釼物さん、大平さん、新井さん。

左から釼物さん、大平さん、新井さん。

まちを編む、ひらかれた宿。
長野・浅間温泉〈松本十帖〉が目指す
エリアリノベーションプロジェクト

旅館だけではなく、温泉街全体の再生が目的

長野県松本市・浅間温泉にある〈松本十帖〉は、〈自遊人〉が手がける複合体であり、
創業336年の老舗旅館〈小柳〉の再生プロジェクトの総称でもある。
「松本の奥座敷」と呼ばれ、開湯1300年以上の歴史をもつ浅間温泉。
江戸時代には松本藩の城主が通ったことから湯治場として発展し、
今もなお地域住民の共同浴場が多く残っている。
明治以降は多くの文人に愛され、昭和に入ると多くの団体旅行客たちで賑わった。

しかしながら近年、時代の変化とともに経営難に直面する旅館が増加し、
温泉街は寂れていく一方。
こういったケースは全国各地に見られ、浅間温泉に限ったことではない。

温泉街を人が回遊することをイメージしているため、敷地内には4か所の入り口が設けられている。シームレスな設計は、各施設への移動もスムーズ。

温泉街を人が回遊することをイメージしているため、敷地内には4か所の入り口が設けられている。シームレスな設計は、各施設への移動もスムーズ。

自遊人が小柳の再生を引き受けたのは2018年のこと。
後継者不在による廃業の危機にあった旅館単体の
リノベーション事業としてスタートしたものの、
プロジェクトを進めていくうちに、
温泉街の高齢化や空き家の増加などの問題が浮かび上がり、
まち全体のエリアリノベーションプロジェクトが模索されていった。

特筆すべきは、公的資金の投入なしに民間企業が担っているという点だろう。
同じような問題を抱える温泉街再生のモデルケースとしても、今後注目されていくはずだ。

「小柳という旅館をひとつ再生するだけではなく、
浅間温泉そのものが活性化していかなければ、
地方都市の温泉街にとって持続可能とはいえないのではないか?」。

その問いに対するアクションのかたちは、松本十帖のいたるところに散りばめられ、
浅間温泉というまち全体の動きとしても、ポジティブな変化が生まれようとしている。

「豊かな知と出会う」をコンセプトにしたブックホテル〈松本本箱〉。隣にはバリアフリーかつお子さま連れも利用しやすい〈小柳〉がある。いずれも客室には源泉かけ流し露天風呂付き。

「豊かな知と出会う」をコンセプトにしたブックホテル〈松本本箱〉。隣にはバリアフリーかつお子さま連れも利用しやすい〈小柳〉がある。いずれも客室には源泉かけ流し露天風呂付き。

自社の森の木材でリノベーションする
盛岡の〈三田農林〉と、
築115年の古民家を住み継ぐ〈リタ〉

(写真提供:金野大介)

盛岡のまちづくりに大きな貢献をしてきた〈三田農林〉は、
2010年頃から自社の森で育てた木材などを利用して、
明治・大正・昭和期の古民家のリノベーションに取り組んでいる。
その一部は、商業店舗として活用され、まちににぎわいをもたらす事業となっている。
まずは、そのひとつとして、100年を超える古民家を見事に生かした〈リタ〉の話。

土と植物と暮らしたい

盛岡駅から、北上川に架かる〈開運橋〉を渡り、
盛岡城跡へと続く市街地の入口に〈リタ〉がオープンしたのは2021年10月。
築115年の古民家を生かした美しい空間には、
「温める」に重きを置き出合ったものや、つくり手の顔が見える商品が並ぶ。

店に立つのは、長年アパレルの世界で働いて来た金野大介さんと下山久美さん。
「土に近い場所で、植物とともに暮らしたい」と住まいを探すなかでこの建物と出合い、
〈リタ〉の物語は動き出した。

日本間を土間に改修したショップスペース。設計・施工は雫石町の〈森の音〉。(写真提供:金野大介)

日本間を土間に改修したショップスペース。設計・施工は雫石町の〈森の音〉。(写真提供:金野大介)

久美さんが資格をもつ古式マッサージの施術やイベントなどを行う日本間。襖や縁側はそのまま残されている。

久美さんが資格をもつ古式マッサージの施術やイベントなどを行う日本間。襖や縁側はそのまま残されている。

「20年くらい前に、息子と一緒に畑の真ん中にある貸し家に住んでいたことがあって、
野菜を育てたり、植物に囲まれた畑にテーブルを出してごはんを食べたりしていたんです。
その思い出がすごく豊かで、その空間をまちなかに持って来たいとずっと思っていました」
と話す久美さん。

より自然の多い山の近くでの暮らしも模索したが、
久美さんは市内のセレクトショップ〈kasi-friendly〉のオーナーでもあり、
同店を続けながら「自分たちにできること」を考えるうちにこの場所にたどり着いた。

白洲次郎と白洲正子が暮らした〈武相荘〉をイメージした庭。花巻市の〈イーサゴ ナーセリー & ガーデン〉に監修を依頼し、いちから整備した。縁側にあった踏み石を切り、敷き詰めるなど、この場所にあったものが生かされている。

白洲次郎と白洲正子が暮らした〈武相荘〉をイメージした庭。花巻市の〈イーサゴ ナーセリー & ガーデン〉に監修を依頼し、いちから整備した。縁側にあった踏み石を切り、敷き詰めるなど、この場所にあったものが生かされている。

「畑をやりたいけれども、
周りを見渡せばすでに美しい仕事やしっかりとした生業をもっている方たちがいる。
自分たちにできることは、生産者のプロフェッショナルになるのではなく、
その術や取り組んでいることを伝えることだと考えたんです」と大介さんも話す。

人が行き交うまちなかでありながら、
小さな畑と、庭を愛でることができるこの空間は、ふたりにとっての理想だった。

縁側に美しい光が差し込む。屋内にいても四季の移ろいを感じることができる場所だ。

縁側に美しい光が差し込む。屋内にいても四季の移ろいを感じることができる場所だ。

人気銭湯の一番風呂や プラネタリウム貸切も。 足立区のふるさと納税がパワーアップ!

足立区のふるさと納税が64品目に拡大

地方創生に寄与するために創設されたふるさと納税制度。

しかし、ふるさと納税による都市部の税減収(流出)額は年々増加し、
東京都足立区では、令和3年度には約16億4千万円の減収、
令和4年度には約20億7千万円の減収見込みになるそうです。
その額は学校改築費用の約半分相当だとか。

足立区ではそのような税減収に歯止めをかけ、
返礼品を通じて区の魅力を区外に広く発信しようと、
返礼品の提供可能な事業者を広く公募し、
今秋返礼品を12品目から64品目に拡大。
足立区施設(ギャラクシティ、生物園、都市農業公園)の
体験型の新規返礼品もいくつか追加されました。

その中でも本記事では、とりわけユニークなものをご紹介。

まず、常連さんが並んでも入りたいというほど人気の銭湯の一番風呂に
2時間貸切入浴できる利用券です。これは寄附金額5万円以上で申請可能。
足立区内にある25の銭湯の中から好みに近い銭湯を自治体の方に選んでもらい、
沸かしたての、その日まだ誰も入っていない銭湯に貸切で入れます。
これからさらに寒くなる時期にこそ味わいたい贅沢なのでは?
※特定の銭湯の選択は不可。

〈南三陸311メモリアル〉
アートとラーニングを取り入れた
東日本大震災伝承施設が開館

設計:隈研吾建築都市設計事務所(写真提供:南三陸町)

東日本大震災の経験をどう継承するか

宮城県の北東部、太平洋に面して、三方を山に囲まれる南三陸町。
町境がほぼ分水嶺と重なり、山、里、海がつながっている。
東日本大震災からの復興のなかで、
「森 里 海 ひと いのちめぐるまち」というビジョンを掲げ、
より農山漁村の恵みを循環させる持続可能なまちづくりを進めてきた。

津波でほぼ壊滅し、海抜約10メートルの嵩上げ工事が行われた
志津川地区中心市街地では、防災と共存しながらも、
海と陸が切り離されないようなグランドデザインを建築家・隈研吾さんが行った。
建物には地元産の南三陸杉が使われている。

隈研吾さんがデザインを担った〈道の駅さんさん南三陸〉全景。中央の杉板が見える建物が〈南三陸311メモリアル〉。その右棟がJR志津川駅、左棟が観光案内所〈南三陸ポータルセンター〉となっている。その向こうに軒を連ねるのが〈南三陸さんさん商店街〉。川にかかる手前の橋が中橋。(写真提供:南三陸町)

隈研吾さんがデザインを担った〈道の駅さんさん南三陸〉全景。中央の杉板が見える建物が〈南三陸311メモリアル〉。その右棟がJR志津川駅、左棟が観光案内所〈南三陸ポータルセンター〉となっている。その向こうに軒を連ねるのが〈南三陸さんさん商店街〉。川にかかる手前の橋が中橋。(写真提供:南三陸町)

2022年10月1日には、南三陸町東日本大震災伝承館〈南三陸311メモリアル〉が開館。
2017年に先行オープンした〈南三陸さんさん商店街〉と合わせて、
この一帯を総称する〈道の駅さんさん南三陸〉がグランドオープンした。
被災した鉄道駅の代わりに開通したBRT(高速輸送バス)などが発着する
JR志津川駅も併設する。

震災の経験を共有し、語り合う場として誕生した、
南三陸311メモリアルを中心に、開館までの経緯も併せて紹介したい。

生鮮魚介などが楽しめる南三陸さんさん商店街。(写真提供:南三陸町)

生鮮魚介などが楽しめる南三陸さんさん商店街。(写真提供:南三陸町)

八幡川の向こう〈震災復興祈念公園〉へと渡る中橋。橋の左手に、震災遺構の防災対策庁舎、右手奥に慰霊碑の建つ〈祈りの丘〉がある。

八幡川の向こう〈震災復興祈念公園〉へと渡る中橋。橋の左手に、震災遺構の防災対策庁舎、右手奥に慰霊碑の建つ〈祈りの丘〉がある。

閉校した校舎がまた明るくなった!
MAYA MAXXがつくった
クマのAmiちゃん

できるかわからないから、やってみましょうよ!

地域で3年前に閉校になった旧美流渡(みると)中学校の活用を、
昨年からさまざまなかたちで行ってきた。
なかでも美流渡在住の画家・MAYA MAXXさんは、
今年は年3回の『みんなとMAYA MAXX展』を実施し、
子どもと絵を描くワークショップなども精力的に開催してきた。
さらにもうひとつ、校舎に立体物を設置するプロジェクトも立ち上げた。

みんなとMAYA MAXX展会場にて。(撮影:佐々木育弥)

みんなとMAYA MAXX展会場にて。(撮影:佐々木育弥)

以前からMAYAさんは、グラウンドに大きなクマの像を立てたいという構想を持っていた。
その高さは10メートル以上。もし実際に行うことになれば、
重機を使った大がかりな作業が必要になるのではないかと想像された。

クマの全身像をグラウンドの中央に設置したいとMAYAさんが描いた初期スケッチ。

クマの全身像をグラウンドの中央に設置したいとMAYAさんが描いた初期スケッチ。

資金的にも技術的にも未知数で、すぐに具体化するのは難しかった。
そんなあるとき、MAYAさんと話していて、
「まずはできる範囲から始めてみてはどうか」ということとなった。
クマの全身をつくるのは難しくても、顔だけならなんとかなるんじゃないか。

「『スタイロフォーム』を重ねて立方体をつくって、それを削っていこう!」

MAYAさんはそう語った。
プランは、校舎の玄関口にある庇(ひさし)の上にクマの顔を設置すること。

「スタイロフォーム」とは商品名で、正式な名称は押出発泡ポリスチレン。
住宅の断熱材として使用されている。
発泡スチロールより加工も簡単で丈夫なので、
大きな立体をつくるのにも向いているのではないかとMAYAさん。
早速、市内にある建築資材会社で入手することにした。

32枚の「スタイロフォーム」。

32枚の「スタイロフォーム」。

「スタイロフォーム」の規格サイズは180×90センチ。
厚さはいろいろあるが10センチのものを選んだ。
それを18枚重ね、2列分用意すると立方体となる。
この立方体をノコギリやカッターなどで削っていき球体をつくっていくこととなった。
春からワークショップのかたちにして参加者を公募することにした。

「ワークショップの前に、模型をつくったりしないんですか?」

私がたずねると、

「うん、大丈夫。頭のなかではイメージができてるから」

とMAYAさん。いきなり本番に入ることとなった。

プロジェクト名は〈ビッグベアプロジェクト〉。
活動日は第2、第4木曜。
参加を呼びかけるチラシにMAYAさんはこんなメッセージを添えた。

これ、作るのは大変かも? と思います
でも、出来たらめちゃ可愛い! と思います
大変だから、やってみたいです
出来るかわからないから、やってみましょうよ!
力を貸してください〜!

ワークショップというと、事前に失敗がないように準備するものという固定観念があったが、
「出来るかわからないから、やってみましょうよ!」という呼びかけが、
何ともMAYAさんらしいと思った。
自分自身にとっても未知のことにトライするという、ワクワク感がそこには感じられた。