連載
〈 この連載・企画は… 〉
毎月コロカル編集部からテーマを出し、
日本各地で活動している地域おこし協力隊の方から集まった写真とメッセージを紹介していきます。
その土地ならではのものだったり、自分の暮らしと変わらないものだったり……。
どんな暮らしをしてどんな景色を見ているのか、ちょっと覗いてみませんか?
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Saki Kunishige, Chihiro Ogawa, Itsumi Shigehisa, Momo*Kinari
國重咲季/小川ちひろ/重久 愛/Momo*Kinari
新しい土地へと移住した人、IターンやUターンをした人など
さまざまな想いを胸に、住まいを移していまの暮らしを楽しんでいる人たちは
新天地でどんなことをしているのでしょうか?
そこで各地で暮らす本連載ライター陣に、
「移住して始めたこと」について教えてもらったところ、
新しい挑戦が人との交流、趣味、仕事へと繋がっていっているようです。
移住を考えている人もそうでない人も
まちの魅力を再発見できるアクション、始めてみませんか?
ちょっとしたことが、自分のフィールドを広げてくれます。
2236メートルの標高を持つ鳥海山と、日本海に囲まれた秋田県にかほ市。
この特異な地形によって絶好のサイクリングコースになっているんです。
山と海の直線距離がわずか16キロという地形のおかげで、
海岸沿いは平坦ですが、山へ向かえばすぐに激坂に。
ロードバイクの醍醐味のひとつであるヒルクライムを堪能でき、
きつい坂道を登りきると、眼前にはダイナミックなパノラマが広がります。
その風景を目にすると
自分の力でこんなに高いところまで登ってきたんだという
達成感でいっぱいになります。
また、その坂道を海に向かって下れば、
視界いっぱいに広がるのは真っ青な海。
まっすぐに延びる水平線や、同じ景色は二度とない夕陽は、
どれだけきつい坂道でもまた登りたくなってしまうほど魅力的。
自転車のレースも行われ、
県外からもサイクリング目的の観光客が耐えないこの地には、
地元のロードバイカーもたくさんいます。
私も地元の方に誘われて、週末自転車部に入部しました。
ママチャリにしか乗ったことのなかった私も、
人生で2番目に高い買い物をしてロードバイクを手に入れました。
これまで車で行っていた場所に自転車で訪れると、
見たことのある景色であっても感動はひとしお。
また、自転車で時間をかけて走ることで、
地形やまちの様子をじっくりと感じることができるのも魅力です。
みなさんもぜひ、絶景ヒルクライムを始めてみませんか。
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國重咲季 くにしげ・さき
京都府出身。秋田県の大学に進学したことを機に、東北各地の1次産業の現場を訪ねるようになる。卒業後は企業に勤めて東京で暮らした後、にかほ市で閉校になった小学校の利活用事業「にかほのほかに」に携わるべく秋田にAターン。地域で受け継がれてきた暮らしを学び、自給力を高めることが日々の目標。夢は食べものとエネルギーの自給自足。
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米どころである奥州へ移住してきた私は、
365日田んぼが広がる景色につつまれて過ごしています。
毎年、田植えと稲刈りの時期になると
農家さんのお手伝いをさせてもらっています。
稲作文化について農家さんからいろいろなお話を聞いているうちに、
食べるお米としてだけではなく、
昔から稲藁が衣食住のさまざまな場面で使われ
余すことなく日々の暮らしのなかで活用されていたことを知り、
「藁」に興味を持つようになっていきました。
去年、初めてしめ縄つくりのワークショップに参加して、
「藁を綯う(なう)」という手仕事に魅了され、
冬の期間はすっかり藁細工づくりにハマってしまいました。
米農家さんから藁をいただいたお礼に、
その藁でつくったしめ飾りをお返しすると
最近ではしめ縄をつくる人もめっきり減ってしまったようで、
とても喜んでもらえました。
この冬も来年の豊作を願いながら稲藁でしめ縄をつくって
お正月に神様を出迎える準備をしたいと思います。
ほかにも藁納豆や藁半紙など、
もっともっと稲藁の利活用を追求していきたいです。
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小川ちひろ おがわ・ちひろ
遊軍スタイルフリーコーディネーター。東京出身。オーストラリアや台湾での海外生活も経験する放浪人間。異なる文化や感覚を持つ「人」に興味を抱く。 転職を機に〈地域おこし協力隊〉の制度を活用して岩手へ移住。現在は遊軍スタイルのフリーコーディネーターとして、旅するように東北の暮らしを堪能中。フットワークの軽さとコミュニティの広さをいかして、人をつなげてケミカルな反応が起こる「場」や「間」を創り出すことを楽しんでいる。
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秋田市に移住して始めたこと。
それは、「からし漬け」です。
からし漬けづくりを始めたというよりは
からし漬けの比較検討をすることを始めたといってもいいのかもしれません。
「からし漬け」とはきゅうりやなすを一晩漬けるだけで
簡単にできちゃう和からしが効いた漬物のことです。
秋田ではこのからし漬けの素は、
調味料がすべて混ざった粉末の「素」として
各地の道の駅などで購入することができます。
私はこの「からし漬けの素」を各地域で買い集めては、
漬け比べすることにハマっているのです。
販売しているお母さんごとに味が少しずつ違っていて、
甘めもあれば、辛めもあったりと、味に違いがあります。
秋田県は縦に長い県なので
からし漬けの素が販売されている期間中に買い集めます。
(からし漬けの素は夏季にしか販売されていないんです)
見た目ではわからないので、
漬けてみて初めて好みの味なのかがわかるというのも、おもしろい点。
この記事を読まれた方は、
「そんな暇な……。変わってる」と思われるかもしれませんが、
秋田の夏に出るお母さんがつくった素でつくる
からし漬けは本当においしいんですよ。
自分の好み(推し)は、どこの道の駅でどのお母さんがつくったからし漬けの素なのか。
わたしのからし漬け探求の旅はまだまだ続きそうです。
地元の商店や道の駅には、おもしろいものがたくさん!
みなさんもぜひ、お出かけの際はこうした
そのまちの「お母さんの味」を探してみるのはいかがでしょうか。
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重久 愛 しげひさ・いつみ
「死ぬまでには一度は行きたい場所」で知られる鹿児島県与論島出身。2019年に縁あって秋田県秋田市にIターン。よそ者から見た秋田市の魅力や移住に至る経験を生かして、秋田市の地域おこし協力隊に着任。YOGAを生かした地域交流を図る事業や、移住者を受け入れる市民団体事業をプロデュース中。山菜採りにすっかり夢中に。自称「立てばタラの芽、座ればバッケ、歩く姿はコシアブラ」。
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わたしが住んでいる三鷹・吉祥寺は、
駅周辺の駐輪場がどこも混んでいて、並ぶこともしばしば。
そんなことがきっかけで最近は自転車に乗るのをやめ、
「歩くこと」を始めました。
コロナ禍で電車に乗るのを避けていたのもあり、
どんどん歩く距離は延びていきました。あっちこっち寄り道しながら、
気がついたら3駅先の高円寺にいたなんてことも(笑)。
今まで当たり前のように歩いてきた道も、
深掘りしていくとおもしろい発見があり、
知らなかったまちのアレコレに触れることも増えました。
歩くことを始めて気づいたのが地元にあまり目を向けていなかったということ。
これまで都心や地方取材を多く行っていましたが
地元のフリーペーパーやローカルサイトへの寄稿も始めました。
仕事柄、没頭してしまうと家から出なくなってしまうので
時には井の頭公園を歩いてかいぼり※後の「井の頭池」に生えている藻や
公園に生息している野鳥をみて歩いています。
※池の水を抜いて泥の除去を行い、池底を干す作業のこと。水質改善や外来種駆除を目的に行われています。
暗いニュースが続いていたせいか、歩いて見つけた
今まで気にもとめなかった発見に喜びを感じられるようになった気がします。
まだまだ油断ができない時節ですが、
少しずつ元の元気なまちに戻りつつあると実感しています。
みなさんも自転車や車を降りて地元散歩を楽しんでみては?
知らなかったまちの一面が見つかるはずです。
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Momo*Kinari きなり・もも
ライター・エディター。東京在住。Webや雑誌、旅行ガイドブックで撮影・執筆。 国内外でグルメや観光スポットを取材。たまに料理やモノづくり、イラストの仕事もしています。 Twitter:@Momo_kinari
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