連載
〈 この連載・企画は… 〉
毎月コロカル編集部からテーマを出し、
日本各地で活動している地域おこし協力隊の方から集まった写真とメッセージを紹介していきます。
その土地ならではのものだったり、自分の暮らしと変わらないものだったり……。
どんな暮らしをしてどんな景色を見ているのか、ちょっと覗いてみませんか?
text & photo
Asumi Ieiri, Chihiro Ogawa, Momo*Kinari
家入明日美/小川ちひろ/Momo*Kinari
みなさんのまちの「すごい人・モノ」ってなんですか?
風景だったり、食べ物だったり、確かな技術を持つ匠だったりと
住んでいる人たちが自慢したくなるものなはず。
今回は、「すごい人・モノ」をテーマに
お住まいの地域にある偉人や施設を教えてもらいました。
気になった人はぜひ現地で体感してみてください。
初夏、気まぐれな散歩の途中に見つけたそれ。
人も車もほとんど通らない細い道の傍らにポツンと佇む、
「甲斐有雄の道しるべ」。
以来、なんとなく気になって南阿蘇村内を見渡してみれば、
あちらこちらにその道しるべが建っていることに気づきました。
甲斐有雄氏とは何者なのか?
偶然村内のとある区長さん宅を訪ねたときに、そのヒントを見つけました。
区長さん宅の横に、どんと置かれたひと抱えはありそうな石。
うっすらと刻まれた文字は、
「右 阿〇さん 左 くまもと」(おそらく、「右 阿蘇さん」)。
100年以上も前、旅人が道に迷わないようにと、
甲斐氏が自らの材を投じて建てたものであることが、
掲げられた看板に記されていました。
その数、なんと2000基弱!
調べてみたところ、甲斐氏は1829年熊本県高森町の生まれ。
腕のいい石工(いしく)で、その技を駆使して道しるべを建てたようです。
「その由来を知っている人は、
地元にも少ないかもしれない」とは、ある方の言葉。
探し出せた資料はわずかでしたが、
熊本県の中学校道徳資料にも登場するなど
その心映えの豊かさに言及する記述が多く見受けられました。
幕末から明治に至る動乱の時代に
誰かのためを思って自らの技術を活かした甲斐氏。
今なお阿蘇地域周辺に残る道しるべに
「資性篤実にして公益を思う」と伝えられる人柄が伝わってきて、
あたたかい気持ちになれます。
参考資料
『野尻の自然と歴史』甲斐利雄著(熊本出版文化会館/2011年)
『くまもとの心』熊本県教育委員会中学校道徳教育郷土資料
profile
家入明日美 いえいり・あすみ
北海道帯広市から17年ぶりに熊本県へ帰郷。2022年1月南阿蘇村地域おこし協力隊着任。フリー編集者・ライター「たんぽぽのしおり」として活動開始。狼と馬とエゾナキウサギが好き。趣味は読書と散歩。いかにして、「いい肥料となる生き方」ができるか模索中。Instagram:@dandelion_seeds1124
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岩手県はりんご生産量が全国3位なのを知っていますか。
なかでも〈江刺りんご〉は、ここ奥州市を代表するブランド品。
毎年11月頃行われる初競りでは
ひと箱28個入りで100万円を超える高値で落札されたり、
天皇陛下への献上品にもなっていたりと、
“超”がつくほど高級品質なりんごなんです。
その理由は、土、水、気候などりんごに適している環境に加え、
全国に先駆けて木を低くして太陽の光が全体に当たる「わい化栽培」を導入。
収穫時期を遅らせて樹になっている状態で完熟させる
「樹上完熟」といった技術で農家さんたちが
手間暇かけてりんごを育て続けているからです。
実際のお味は? というと、
バランスのいい甘さにシャキシャキとした歯ごたえで、
一度食べるとやみつきになってしまいます。
地元の産直では秋から冬の間は一面りんごで覆い尽くされ、
その風景は圧巻です。
農家さんがそれぞれの思いを込めてつくった上品でおいしい〈江刺りんご〉は
地元の人からも愛されています。
時期によってさまざまな種類を楽しめるので、
りんご好きの方にはたまりません!
photo & text
小川ちひろ おがわ・ちひろ
遊軍スタイルフリーコーディネーター。東京出身。オーストラリアや台湾での海外生活も経験する放浪人間。異なる文化や感覚を持つ「人」に興味を抱く。 転職を機に〈地域おこし協力隊〉の制度を活用して岩手へ移住。現在は遊軍スタイルのフリーコーディネーターとして、旅するように東北の暮らしを堪能中。フットワークの軽さとコミュニティの広さをいかして、人をつなげてケミカルな反応が起こる「場」や「間」を創り出すことを楽しんでいる。
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〈武蔵野クリーンセンター〉は、大きな公園や陸上競技場をはじめとする
総合体育館などがある緑豊かなエリアにあります。
同センターは、2017年4月に「ごみ焼却施設」として稼働開始しました。
武蔵野市の雑木林をイメージした建物の外装に使われているのは
テラコッタルーバーと呼ばれる素焼きの外装材。
ところどころ壁面緑化するなど景観に配慮し、
まちに溶け込むようなデザインになっています。
クリーンセンターの見どころは「ごみピット」。
敷地面積は約1万7000平方メートル、地上3階地下2階の建物になっていて、
5階建てくらいのビルがすっぽりと入る大きさなのだとか。
毎日80台のごみ収集車が運んでくる100トンのごみを
60トンの焼却炉2基を使用し焼却しています。
巨大なクレーンがごみを掴んで運ぶところは迫力満点。
ごみピットの隣には「中央制御室」があり、
装置の稼働状況を24時間監視。
その様子もガラス越しに見学できます。
ごみを燃やしたあとの灰は、金属などが取り除かれたのちに、
エコセメント化する施設に運ばれ、
道路の側溝や歩道のブロックの原料にします。
また、屋上には廃材を活用したリサイクルガーデンもあり、
太陽光発電設備も設置されています。
センター内には、見学をサポートしてくれるコンシェルジュを配備。
ごみ処理の仕組みなどを映像やパネルでわかりやすく学習でき、入場は無料です。
自由に見学が可能でごみを焼却するだけでなく、
楽しく学べる施設になっています。
武蔵野市に来たら、ぜひ足を運んでみてください。
information
武蔵野クリーンセンター
住所:東京都武蔵野市緑町3-1-5
TEL:0422-54-1221
見学時間:10:00〜17:00
休館日:火曜・祝日、年末年始
※月曜日が祝日の場合は開館、その週の水曜日が休館となります。
Web:武蔵野クリーンセンター
photo & text
Momo*Kinari きなり・もも
ライター・エディター。東京在住。Webや雑誌、旅行ガイドブックで撮影・執筆。 国内外でグルメや観光スポットを取材。たまに料理やモノづくり、イラストの仕事もしています。 Twitter:@Momo_kinari
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