〈graf〉服部滋樹が手がける
ローカルのブランディング。
「リサーチ力」が物を言う

リサーチでわかるローカルの背景

だから服部さんは、「リサーチ」を重要視している。

「リサーチはつくるためでもありますが、実のところ、
その先において商品を“伝えるため”のものでもあります。
なぜこのデザインが生まれたか、なぜこれをつくってきたか。
こうしたことを理解してもらいやすいので」

つくり方と伝え方。いいものをつくれたとして、売ることも大切。
そのためにはリサーチを行うことで、
背景や隠れたストーリー、ナラティブを炙り出していくのだ

取材は、2020年にオープンしたオルタナティブスペース〈graf porch〉で行われた。

取材は、2020年にオープンしたオルタナティブスペース〈graf porch〉で行われた。

大きくは5つくらいの手段でリサーチを行う。
まず文献、そしてフィールドワーク、インターネットリサーチ、インタビュー、
定点観測や映像を使ったものだ。

リサーチは、半年〜1年かけることもある。
その労力は、全体の「6〜7割」だという。かなり高い割合だ。
それだけ服部さんにとって重要度が高いものなのだ。
実際はそこまでやりたくてもやり切れなかったり、
クライアントからすぐにデザインを上げてくれと期限を切られることも多いだろう。
だから服部さんは、ある程度の段階で仮説を立てて示していくという。

「リサーチをきちんとやっていれば、2、3か月したら、仮説を立てられるはずです。
そして数案を企画にして見せてみる。
大体の予算とこんなことができそうという話をします。
そうしながら一緒に計画して巻き込んでいく。企みの要素を見出すんです」

途中経過を共有していくという作業が、巻き込みや“参加感”には重要かもしれない。
そして素案を話すと、「この人に聞いてみれば? この場所に行ってみれば?」という
アイデアも出てくる。そうしてまたリサーチを繰り返す。

「その仮説の解像度を上げるためのリサーチともいえます」

2014年から17年にかけて服部さんがブランディングディレクターとして就任していた
『湖と、陸と、人々と。MUSUBU SHIGA』という
滋賀県のブランディングプロジェクトでは、
すでにものづくりに留まらず、新たな地域の魅力を発見し、
ブランディングとして完成させていくこととなる。
リサーチ自体をコンテンツ化し展開する方法をとった。

「滋賀は地域ごとに歴史が深い場所。僕ひとりで作業するのではなく、
そこに専門的な脈絡のある人たちを呼んで一緒にリサーチしました」

こうして外部から、料理家の野村友里さんや写真家の濱田英明さん、
編集者のルーカス・B.B.さん、ナガオカケンメイさんなどをリサーチャーとして招いた。

「アウトプットまでにこんなことが起こっていると、
リサーチのプロセスをしっかりと見せたかったんです。
リサーチで見つけ出したことを、そのままPRに採用するという戦略でしたね」

ルーカス・B.B.さんと巡る鯖街道の旅の様子。(写真提供:graf)

ルーカス・B.B.さんと巡る鯖街道の旅の様子。(写真提供:graf)

「見えなかったものを見えるようにする」こともリサーチの役割だと言う服部さん。

「地域でアピールしたいと思っているものは、もう世の中に出ているんですが、
実際にはリーチしていないという現状が多い。
むしろその周辺に引き立てる要素があるのではないか。
コンテンツよりコンテクストを揺さぶっていくっていう作業。
それがリサーチをすると出てくるんです」

リサーチや過程、文脈を大切にし、
さらに共有していくようなやり方はいまどきであるといえる。

「自分たちがこうあるべきなんじゃないかということは、割と信じています。
なんとなく使命で動いているからこんなことになっているけど、
超効率悪いですよ(笑)」

そうは言うが、「効率がいいものが正義」という価値観が
すべてではなくなってきているのも事実。
grafのローカルの関わり方は、とてもテマヒマがかかるのだ。

writer profile

大草朋宏 Tomohiro Okusa
おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

photographer profile

佐伯慎亮 Shinryo Saeki
広島出身、写真家。関西を拠点に雑誌、広告などのカメラマンとして活動。淡路島と大阪の2拠点生活が始まり、淡路の草刈りのことばかり考えている。おもな書籍に『挨拶』『リバーサイド』(赤々舎)などがある。
http://www.saekishinryo.com/

Recommend 注目のコンテンツ

Special 関連サイト

What's New 最新記事