小豆島に本屋さんがオープン!
〈TUG BOOKS〉で出会う
セレクトされた素敵な本たち

“お店を持たない本屋さん”が、ついにお店をオープン!

小豆島にまたひとつおもしろい場所が増えました。
TUG BOOKS(タグブックス)〉という名の本屋さんです。

TUG BOOKSのこと、本屋の主である田山直樹くんのことは、
以前この小豆島日記で紹介しました。
ちょうど1年前です。
当時はお店を持たない本屋さんとして活動していて、
私たちが運営している〈HOMEMAKERSカフェ〉の庭でも本のイベントを開催してくれました。

HOMEMAKERSカフェで2021年秋に開催されたTUG BOOKSのブックイベント。

HOMEMAKERSカフェで2021年秋に開催されたTUG BOOKSのブックイベント。

本と出会える貴重な機会。島で暮らしている知人や友人がたくさん来てくれました。

本と出会える貴重な機会。島で暮らしている知人や友人がたくさん来てくれました。

さて、田山くんはこのイベントのあとも島のあちこちで本にまつわる企画を実施しながら、
お店オープンにむけてじわじわと準備を進めてきました。
彼が「本屋」という場として選んだのは、古い木造の民家です。
立派な木材でつくられた歴史ある古民家という感じではなくて、古い家です(笑)。
おー、そこで本屋さんをやるんだー、すごいなぁというのが話を聞いたときの最初の印象。
改修工事は2022年3月から始まりました。

海に向かって続く細い道を歩いていくと、ぽつんと建っている古い家があります。ここを本屋として改修。

海に向かって続く細い道を歩いていくと、ぽつんと建っている古い家があります。ここを本屋として改修。

本屋の名前は〈TUG BOOKS〉。書物の海の水先案内。

本屋の名前は〈TUG BOOKS〉。書物の海の水先案内。

団地リノベーションで
新しいライフスタイルを生み出す。
北九州市〈本城中央団地〉

タムタムデザインvol.3

福岡県北九州市で建築設計事務所を営み、転貸事業や飲食店運営を行う
田村晟一朗(たむら せいいちろう)さんによる連載です。

今回は団地のリノベーションがテーマです。
団地といえば建物の老朽化や住民の高齢化などの課題を抱える一方で、
郊外の静かでゆったりした立地条件やコミュニティが育みやすいことなどの魅力もあります。
近年ではリノベーションを取り入れることで、子育てファミリーをはじめとする
若い世代に団地暮らしの価値が見直されるようになってきました。

今回は北九州市八幡西区にある〈本城中央団地〉を舞台に、
デザインの工夫やプロジェクトチームの編成など、
昭和の団地を現代に合わせてアップデートさせていくプロセスをお届けします。

昭和から時が止まった団地の姿

独立してから2年目の2014年、〈リノベーション住宅推進協議会〉
(現在はリノベーション協議会。以下:リノ協)という団体の定例会に参加していました。
この団体はリノベーションにまつわる情報交換の会合やイベント、
懇親会などを随時開催していて、そこには不動産事業者、建設会社、
メーカー、設計事務所などが集まっていました。

近しい業種ではありましたが、意外にも協働することがなかった業種のみなさんと
リノベーションについて語り合うことが楽しく、
だからといって会員に勧誘されることもなく、年会費を払うこともないまま
非会員のオブザーバーとして楽しんでいました(笑)。

2014年9月頃のリノベーション住宅推進協議会。

2014年9月頃のリノベーション住宅推進協議会。

そんなときに〈福岡県住宅供給公社(以下、公社)〉という
第三セクターの団地運営管理企業が公募を発表しました。
公募の内容は、公社が管理する福岡県内8エリアの団地、約20戸の改修案を募集するもので、
なおかつ設計から施工、入居者の斡旋(あっせん)までパッケージとして実施できる
企業や団体に向けた公募でした。

僕たちが応募することになったのは北九州市八幡西区にある〈本城中央団地〉。
RC造5階建てで、玄関が狭く、中廊下式で室内の中央がとても暗い間取りで、
トイレは洗面所を通る動線上にあったり、和室は畳と襖(ふすま)で構成されていたり、
あらゆる機能が古くなっていました。
さらには入退去時のリフォーム更新では畳や襖を取り換えなければならず、
公社のランニングコストもかさばる仕様でした。

ビフォーの間取り。

ビフォーの間取り。

ビフォーの外観。RC造の5階建てで壁式構造という丈夫なつくり。柱と梁の代わりに耐力壁で建物の荷重を支える構造。

ビフォーの外観。RC造の5階建てで壁式構造という丈夫なつくり。柱と梁の代わりに耐力壁で建物の荷重を支える構造。

トイレは洗面所を通る動線上にあった。

トイレは洗面所を通る動線上にあった。

旧式の流し台と間仕切りに使われた襖。

旧式の流し台と間仕切りに使われた襖。

公募内容が設計から施工、入居者の斡旋までということで、
はじめは大手デベロッパーの参入が前提かと思ったのですが、
リノ協の集いや近業種間の仲間から「みんなで組んで応募しない?」と
弊社にもお声がけをいただきました。
おもしろそうだったし、もちろん断る理由はありません。
設計事務所のジョイントベンチャー(以下JV)はよくある話でしたが、
「不動産企業、建設会社と設計事務所がJVで応募するのは新しいな!」と
心躍りながら参加したことを覚えています。

札幌〈500m美術館〉で
上遠野敏さんの個展。
祈りを込めた無数の作品たち

三笠の幾春別(いくしゅんべつ)地区で制作を続けるアーティスト

3年前に閉校した旧美流渡(みると)中学校の活用プロジェクトを
私たちが本格的に始めたのは昨年の夏。
その頃から、親身になって活動をともにしてくれたアーティストがいる。

三笠市の幾春別地区にアトリエがあり、札幌市立大学名誉教授の
上遠野敏(かとおの・さとし)さんだ。
その来歴や美流渡との関わりについては以前の連載で紹介したが、
今回は、札幌にある〈500m美術館〉で10月26日まで開催中の
『上遠野敏展 命と祈りの約束』が生まれるまでのプロセスについて書いてみたい。

幾春別のアトリエで制作する上遠野さん。撮影:佐々木育弥

幾春別のアトリエで制作する上遠野さん。撮影:佐々木育弥

〈500m美術館〉は、札幌市営地下鉄の大通駅とバスセンター前駅を結ぶ
コンコースを利用してつくられており、今回は8基あるガラスケースに作品が展示された。

それぞれにテーマが設けられていて、「羊毛・毛皮」「綿毛・植物」「塩」といった
上遠野さんが関心を寄せる素材から展開したものや、
神仏の伝承がある風景を撮影した写真や天気図を集めたものなど、多様な作品が発表された。

8基あるガラスケースごとにテーマが設けられている。全国各地の神仏の伝承がある場所を40年以上撮影し続けている『ネ・申・イ・ム・光景』シリーズ。

8基あるガラスケースごとにテーマが設けられている。全国各地の神仏の伝承がある場所を40年以上撮影し続けている『ネ・申・イ・ム・光景』シリーズ。

1基目のガラスケースには、羊毛を素材とした作品が並べられている。
羊の原毛に洗剤をかけ圧力や振動を加えてフェルト化させることによって、
これまでさまざまな作品が生み出されてきた。

例えば『MOTHER』シリーズでは、ガウンのようなかたちのなかに
臍の緒をかたどった紐状のものがあり、内側には1頭の子羊が隠れている。
このシリーズは、塩などの別の素材によっても展開されていて、
それらは「生命はどこから来て、どこへ向かうのか」という、
大きな問いかけのなかから生まれてきたものだという。

中央が『MOTHER』。

中央が『MOTHER』。

『MOTHER』の奥に目を凝らすと1頭の羊が。羊毛を使用するのは、母体のなかで生命を育む「羊水」に通じるから。

『MOTHER』の奥に目を凝らすと1頭の羊が。羊毛を使用するのは、母体のなかで生命を育む「羊水」に通じるから。

羊毛による新シリーズとなったのは『家族の肖像』。
SNSで提供を呼びかけ集まった9家族のぬいぐるみをフェルトで包んだ作品。
ぬいぐるみには、子どもたちが愛情を傾けた想いや家庭で過ごした時間が蓄積されている。
それらをフェルト化させた羊毛で封印し一堂に並べることで、
時代性や地域性が浮かび上がってくるのではないか。そんな考えをもとに制作された。

「僕は彫刻家ですが、作為的ではない表現をしていきたいと思っています」

アトリエで制作中の『家族の肖像』。

アトリエで制作中の『家族の肖像』。

昨年、上遠野さんのアトリエを訪ねたとき、ちょうど『家族の肖像』シリーズの制作中だった。
ぬいぐるみの表面に羊毛を置いてニードルという専用針で刺すことによって、
繊維を絡ませフェルト化していくのだが、予想を超える手間のかかる作業だった。
ぬいぐるみの色が透けないようにするためには、羊毛を3層以上重ねる必要がある。
さらに縫い目の部分にニードルが当たると、針が折れてしまうことがあるので、
慎重にそこを避けながら刺さなければならない。

「大きいものだと1か月くらいかかります」

今回の展覧会では、60体のフェルトでくるまれたぬいぐるみが展示された。
集まったぬいぐるみは全部で270体。展示終了後もこのシリーズは継続されるという。

ぬいぐるみを羊毛で包む。ニードルで何度も刺してフェルト化していく。

ぬいぐるみを羊毛で包む。ニードルで何度も刺してフェルト化していく。

展示された『家族の肖像』。

展示された『家族の肖像』。

スマホを置いて、
芋を掘り、栗を剥く。
デジタル・ミニマリストと田舎暮らし

いつのまにかスマホに時間を奪われていない?

最近、『デジタル・ミニマリスト 本当に大切なことに集中する』
(著者:カル・ニューポート、翻訳:池田真紀子/早川書房)
という本を読みました。

ついつい手にとって見てしまうスマートフォン。
無意識にSNSアプリを立ち上げて、スクロールしながら「いいね!」して、
はっと気づけば大切な自分の時間が、知らないうちに30分も1時間もなくなっていたり。
どうやったら、スマホやSNSに時間を奪われず、余計な情報を見て
心をざわつかすこともなく、自分のやりたいこと、大切なことに集中できるのか、
そんなことが書かれている本です。

今やどんな地方の末端でもインターネットに接続できる環境があって、
離島の農村で暮らしている私たちも、もれなく活動時間のうちの
ほとんどがオンライン状態で、ピコーンピコーンと鳴る通知に毎日気をとられています。
でも地方で商売をする上で、オンラインであることが必須なのも間違いないです。
お客さまと直接つながることができて、私たちのことを知ってもらうことができる。

要はその使い方さえ間違わなければすばらしいツールなんですが、
最近の私はスマホに時間を奪われぎみ、集中を奪われぎみな状態です。

すっかり秋らしい風景になった小豆島。柿があちこちで実っています。

すっかり秋らしい風景になった小豆島。柿があちこちで実っています。

今年の秋は彼岸花が一斉にとてもきれいに咲きました。

今年の秋は彼岸花が一斉にとてもきれいに咲きました。

この本のなかで、ちょっと興味深かったことがあったので、
今回はそのことについて考えてみようと思います。

著者は、「すばらしい人生には質の高い余暇活動が不可欠である」という前提のもと、
充実した余暇活動、言い換えると趣味、好きなことを生活に取り入れ始めることで、
それまでのスマホ習慣が急につまらないものに思えるようになる。
それがデジタル・ミニマリストにつながっていくと書いています。

その質の高い余暇活動としてあげているのが、家をDIYで直したり、
草刈りしたり、薪を集めたりする、体を動かす活動。
一見すると、それ仕事じゃんというような重労働を
趣味として楽しんでいる人たちがいると。

おや?
それって、私たちの生活そのものじゃないか!
畑で野菜を地道に育て、草刈りをして、薪を集めて、家を直して。
この、日々やらなきゃいけないと思っていたことが、
実は素晴らしい人生に必要不可欠な趣味として捉えることができるのかと、
はっとしたんです。

畑にある大きな栗の木。台風で何本か枝が折れてしまったのでその片付けと栗拾い。

畑にある大きな栗の木。台風で何本か枝が折れてしまったのでその片付けと栗拾い。

廃校舎が日を追うごとに活気づく。
「本物」のアートと
音楽が集まった40日間

撮影:佐々木育弥

年3回の開催で4300人が来場!

岩見沢市の山あいにある、3年前に閉校した旧美流渡(みると)中学校にて、
私が代表を務める地域PR団体が、今年は年3回、ふたつの展覧会を同時開催してきた。
地域のつくり手の作品を集めた『みる・とーぶ展』と
美流渡に移住した画家・MAYA MAXXさんによる『みんなとMAYA MAXX展』。
春、夏、秋で合計40日間開催した展覧会が、先日ついに閉幕した。

校舎のひさしには、MAYA MAXXさんが制作した赤いクマの立体「Amiちゃん」が設置され、来場者を出迎えた。

校舎のひさしには、MAYA MAXXさんが制作した赤いクマの立体「Amiちゃん」が設置され、来場者を出迎えた。

美流渡地区は過疎化が進んでおり、人口わずか330人。
告知も会場設営も、参加メンバーが知恵を出し合い手づくりだったけれど、
札幌や空知(そらち)管内などから多くの人が足を運んでくれ、
トータルで約4300人の来場者があった。
秋の開催で実施したアンケートによるとリピーターが約半数。
徐々にこの展覧会が定着していることが実感できた。

MAYA MAXXさんが筒状の段ボールに絵を描いた作品。「どうくつ」というタイトルで、子どもがくぐって遊べるようになっている。(撮影:佐々木育弥)

MAYA MAXXさんが筒状の段ボールに絵を描いた作品。「どうくつ」というタイトルで、子どもがくぐって遊べるようになっている。(撮影:佐々木育弥)

秋のみる・とーぶ展では、作品発表とともに、土日祝日はイベントが目白押しだった。
特に人気だったのは、MAYAさんによる『自画像を描こう』。

「鏡で自分の顔をよーく見てください」

そんなMAYAさんの呼びかけから始まり、
目、まつげ、まゆ、鼻と顔のパーツを順番に描き、
パーツが全部描けたあとに輪郭を描いていった。

MAYAさんによると、最初に輪郭を決めてしまうと、
そこに収めなければならないという意識が働き、
のびのびとした気持ちで描くことができなくなってしまうそうだ。
また、描いたのは紙でなくキャンバス。
一度はキャンバスに絵を描いてほしいという思いと、
子どもが描いた絵は、年月が経つと整理してしまうことが多いが、
キャンバスであれば大切に保管してもらえるのではないかという思いからだ。

「子どもが描いた自画像は、リビングなど、よく見える場所にかけておいてほしいです」

年齢ごとの自分の顔を残しておくのは大切なことだとMAYAさんは語った。

自画像を描いた参加者と記念撮影。(撮影:佐々木育弥)

自画像を描いた参加者と記念撮影。(撮影:佐々木育弥)

函館市〈spAce ICHIGoICHIe〉。
土蔵に暮らし、
ギャラリーを開く

提供:山田健太郎

富樫雅行建築設計事務所 vol.6

函館市で設計事務所を営みながら、建築施工や不動産賃貸、
ポップアップスペースの運営など、幅広い手法で地域に関わる
〈富樫雅行建築設計事務所〉の富樫雅行さんによる連載です。

今回は、朽ちかけた土蔵をハーフセルフビルドでリノベーションし、
自宅兼ギャラリーとして地域に開いていくお話をお届けします。

提供:山田健太郎

提供:山田健太郎

“土蔵で暮らす”という冒険

今回の主人公は、世界を旅して山登りしながら、
その土地の人々の写真を撮りためている山田健太郎さん。普段は公務員でもあります。
そんな山田さんに出会ったのは、前回ご紹介した〈SMALL TOWN HOSTEL〉の
DIYサポーターにご夫婦で参加いただいたのがキッカケでした。

その頃から、山田さん夫妻は函館市西部地区に引っ越したいと
賃貸物件で古民家などを検討されていましたが、
箱バル不動産〉の蒲生寛之(がもう ひろゆき)くんの案内でこの土蔵と出合い、
ダイナミックな梁(はり)にひと目惚れしてしまった山田さんは、
蔵に暮らすという冒険に挑むことになります。

スモールタウンホステルのDIYサポーターとして参加する山田さん夫婦(左手前)。

スモールタウンホステルのDIYサポーターとして参加する山田さん夫婦(左手前)。

朽ちかけた明治の土蔵

この土蔵は〈常盤坂の家〉(vol.1)の坂を降りて1ブロック先の
弁天町というエリアにあります。

この物件と出合ったのは、〈港の庵〉(vol.2)をともに運営するメンバーである
和田一明さんのワインショップをリノベーションした際に、
「斜め向かいにある蔵も空き家になっているから、誰か活用してくれれば」
と話していて、所有者の方を箱バル不動産にご紹介いただいたのがキッカケでした。

当初は古民家や賃貸なども探していた山田さんですが、
この土蔵に出合ってこれまでの選択肢はすべて取り払われました。

弁天町エリア。左端の建物が〈港の庵〉の運営メンバーである和田さんのご自宅のガレージをリノベした〈ワインショップ・丸又・和田商店〉。その前には路面電車が走り、この先は終点の「函館ドック前」。右端の長屋の奥隣が山田さんの土蔵になる。

弁天町エリア。左端の建物が〈港の庵〉の運営メンバーである和田さんのご自宅のガレージをリノベした〈ワインショップ・丸又・和田商店〉。その前には路面電車が走り、この先は終点の「函館ドック前」。右端の長屋の奥隣が山田さんの土蔵になる。

土偶と動物マスクを制作! 
心からやりたいことを
自由に発表できる『みる・とーぶ展』

出版活動を超えた作品づくりが始まって

北海道岩見沢市の閉校した旧美流渡(みると)中学校で年3回、
有志が集まって展覧会を開催することになり、
これまでこの連載ではさまざまな角度からそれについて書いてきた。

地域のつくり手の作品を集めた『みる・とーぶ展』と、
画家MAYA MAXXさんによる『みんなとMAYA MAXX展』。
そこに関わるメンバーたちはつねに新作を生み出したり、
クオリティアップを目指したりと日々進化を遂げている。

万字地区でハーブブレンドティーをつくる〈麻の実堂〉。回を重ねるごとにブレンドの種類も増え、秋の展覧会では試飲会も開催。

万字地区でハーブブレンドティーをつくる〈麻の実堂〉。回を重ねるごとにブレンドの種類も増え、秋の展覧会では試飲会も開催。

変化は、私自身にも起こっていて、いま新たな作品づくりが始まっている。
これまで『みる・とーぶ展』では、〈森の出版社 ミチクル〉という活動名で、
オリジナルの書籍を販売してきた。
私が2016年にこの地域に山を買った体験談をまとめた『山を買う』や、
北海道に暮らす人々と協力しながら本をつくる「ローカルブックス」というレーベルなど。
展覧会に合わせて毎回1冊ずつのペースで新刊を出していた。

森の出版社ミチクルの書籍。北海道の人々とつくった書籍をはじめ、この地に自生する植物をテーマにした絵本なども。

森の出版社ミチクルの書籍。北海道の人々とつくった書籍をはじめ、この地に自生する植物をテーマにした絵本なども。

この夏には縄文時代につくられた、ヒトをかたどった土偶をテーマに絵本『DOGU』を刊行。
このとき私は、以前からつくり続けていた土偶や土器も発表しようと考えた。
昨年、一昨年と冬の間、MAYAさんが、近くにあった陶芸のできる施設に通っていて、
私も一緒に週1回、土偶や土器制作を行っていた。
もともと美術大学に通っていたこともあって、何かをそっくりに写しとることが得意。
ずっと興味を持っていた縄文時代の造形を、いつか自分で再現してみたいとつねづね思っていた。

夏の展覧会。中央に絵本『DOGU』を置き、周りに再現した土偶や土器を並べた。

夏の展覧会。中央に絵本『DOGU』を置き、周りに再現した土偶や土器を並べた。

主に青森の三内丸山遺跡で出土した板状土偶を再現。野焼きで焼成した。

主に青森の三内丸山遺跡で出土した板状土偶を再現。野焼きで焼成した。

小豆島へのアクセス方法は?
それぞれの港の特徴や
運行時刻でルートを選ぼう

小豆島への航路は8つ。瀬戸内海を眺めながらの船旅

私たちが暮らす小豆島は離島です。
字の通り、離れた島。
本州とも四国とも橋でつながっていないので、
小豆島に行くには船に乗って海を渡る必要があります。

ちなみに石垣島や奄美大島みたいに空港があるわけでもないので、
ヘリコプターをチャーターするとかでない限り、
空を飛んで行くなんて人もほとんどいません。

この「船に乗って瀬戸内海を渡る」という時間が、
小豆島へ旅する魅力のひとつだと思うんです! 
穏やかな瀬戸内海を眺めながら、海の上を移動する時間。
いい時間なんですよねぇ。

キラキラ光る瀬戸内海と行き交う船を眺めながらの船旅。

キラキラ光る瀬戸内海と行き交う船を眺めながらの船旅。

夕景の中、瀬戸内海をすすむフェリー。美しい。

夕景の中、瀬戸内海をすすむフェリー。美しい。

小豆島に渡る船のルートはいくつかあって、運航時間が違うのはもちろん、
船の雰囲気も、到着する港の様子もだいぶ違います。
どの船に乗って小豆島に行くのがいいか、
今回は小豆島への船旅ルートについて紹介したいと思います。

小豆島へのアクセス案内マップ。

小豆島へのアクセス案内マップ。

本州や四国から小豆島に向かう航路は、全部で8航路。

本州から行くなら、

1.神戸三宮港から小豆島坂手港へ

2.姫路港から小豆島福田港へ

3.岡山日生(ひなせ)港から小豆島大部(おおべ)港へ

4.新岡山港から小豆島土庄(とのしょう)港へ

5.岡山宇野港から豊島を経由して小豆島土庄港へ

四国から行くなら、

6.高松港から小豆島土庄港へ

7.高松港から小豆島池田港へ

8.高松東港から小豆島坂手港へ

どこから来るのか、車なのか電車なのかなどの条件を考慮すると
自然と選択肢が絞られてくると思いますが、
それでもいくつか行き方があるので迷いますよね。

岡山日生港から小豆島大部港へ向かうフェリーのデッキから夕陽を眺める。

岡山日生港から小豆島大部港へ向かうフェリーのデッキから夕陽を眺める。

航路によって船会社が違うので、船も違います。新しい船もあれば昭和感漂うレトロな船も。

航路によって船会社が違うので、船も違います。新しい船もあれば昭和感漂うレトロな船も。

北九州市〈Linked Office “LIO"〉
クリエイターがコラボレーションし、
まちに還元するシェアオフィス

タムタムデザインvol.2

福岡県北九州市で建築設計事務所を営み、転貸事業や飲食店運営を行う
田村晟一朗(たむら せいいちろう)さんによる連載です。

今回は田村さんが独立して2年目に開設したオフィスのお話。
人やスキル、情報がつながりクリエイティブな活動が生まれ、まちに還元していく。
そんな新たなタイプのオフィスが誕生したプロセスを振り返っていきます。

人やスキルがリンクするシェアオフィス

僕は建築設計事務所とインテリアデザイン事務所での勤務を経て、2012年に独立しました。
前回の最後に少し触れた小倉・魚町の〈メルカート三番街〉のなかに拠点を設けて、
グラフィックデザイナーの岡崎友則(おかざき・とものり)くんとルームシェアをしながら
ふたりで〈余白〉というデザインユニットでも活動していました。

2012年のデザインユニット〈余白〉の部屋。5坪をふたりでシェアして個展やイベント開催などを行っていた。本棚の奥の両サイドにデスクがあり、背中をつき合わせて仕事をしていた。

2012年のデザインユニット〈余白〉の部屋。5坪をふたりでシェアして個展やイベント開催などを行っていた。本棚の奥の両サイドにデスクがあり、背中をつき合わせて仕事をしていた。

例えば店舗設計の場合、僕が店の空間設計をして、ロゴやチラシ、名刺などは
岡崎くんにお願いするなど「建築×グラフィック」の相性は抜群。
これまで数えきれないほどのプロジェクトを一緒にやってきましたが、
僕にもスタッフがついてこの5坪ではさすがに手狭になり、移転を考えたんです。
どうせ移転するなら「建築×グラフィック×〇〇」というように
かけ算をもっと増やそうと思い、シェアオフィスの企画を始めました。

シェアオフィスとは場所をシェアすることを指しますが、
もっと人やコトなどあらゆる関係性が深くなる仕組みがいいなと思い、
コンセプトを固めていきました。

Linked Office”LIO”のコンセプト。

Linked Office”LIO”のコンセプト。

グラフィックデザイナーとコラボしたプロジェクトはどれもクオリティが高く、
スムーズに進んだ経験から、入居するみんながお互いにリンクして
高め合える場を考えました。それが〈Linked Office “LIO"〉です。

岩見沢のみなさんに贈り物を。
MAYA MAXXが高さ10メートルの
食品冷凍庫に描いたクマ

「あの壁に描きたい!」そのひと言から始まった

地域の閉校した中学校で、2020年にこの地に移住した
画家・MAYA MAXXさんの展覧会『みんなとMAYA MAXX展』を
7月中旬から月末まで2週間開催した。
展覧会の撤収をした翌日、休む間もなくMAYAさんは、
次のプロジェクトをスタートさせた。

プロジェクトの舞台は、美流渡(みると)地区から車で10分ほどまちのほうへと向かった
志文(しぶん)地区にある食品メーカー〈モリタン〉の巨大な冷凍庫。
全長100メートル、高さ10メートルにもなるこの建物の壁面に絵を描くことになった。

きっかけとなったのは昨年のこと。
私が代表を務める地域団体が、旧美流渡中学校のさまざまな活用の窓口となったことだ。
閉校して3年。
この地域は豪雪地帯であることから、1階の窓すべてに雪除けの板が貼られており、
それらが人気のなくなった場所であることをありありと感じさせていた。
地域の人たちからも、閉鎖されて寂しいという声があがっていた。
そんななかで、MAYAさんがあるとき「ここに絵を描いてみよう」と提案してくれた。

中学校と同時に閉校した、隣接する小学校の校舎も合わせて、窓板は45枚以上。
地域の人々の手を借りながら、MAYAさんは約3か月間絵を描き続けた。
窓板の絵が仕上がったあとには、校舎の向かいに建つ
〈安国寺(あんこくじ)〉にも絵を設置。お寺ということで、
涅槃図(ねはんず、釈迦が入滅する様子を描いた絵)を思わせるクマが描かれた。

2021年、旧美流渡中学校の窓板にMAYAさんは絵を描いた。

2021年、旧美流渡中学校の窓板にMAYAさんは絵を描いた。

安国寺に設置されたクマの涅槃図。

安国寺に設置されたクマの涅槃図。

こうした制作の様子を日々見つめていた人がいた。
それがモリタンの平井章裕(ひらい あきひろ)社長だった。
モリタンは、岩見沢の美流渡地区と志文地区に加工センターを持っていて、
社長はその2か所を行き来する車中から、校舎の制作を見守っていた。
当初は校舎の敷地のみのプロジェクトかと思っていたところ、
お寺に絵が設置されたのを見て「モリタンにも絵を描いてもらいたい」と考え、
私たちに連絡をしてくれた。

モリタンの平井社長(右)。

モリタンの平井社長(右)。

社長は当初、敷地内に看板のようなものを設置し、そこに絵を描いてもらおうと考えていた。
しかし、打ち合わせの席でMAYAさんは思いがけない提案をした。

「敷地が広いので看板を立ててもそんなに目立たないと思います。
冷凍庫の壁に大きなクマの絵を描きたい」

高さが10メートルにもなる壁に描くとなると、これは大きなプロジェクトだ。
その場で、すぐには了承が得られないのではないかと思ったが、
この提案に対して社長は具体的な方策を考えてくれた。

「倉庫の土台は、土が盛られているので足場を組むのは難しそうだな」

打ち合わせから1か月ほど経った昨年末、社長から
「足場を組むとなるとかなり大がかりになることから、
高所作業車をレンタルして進めたい」という提案があった。
そして、自ら高所作業車の技能講習を受けてくれることになった。

高所作業車。「ブーム」と呼ばれる部分が伸びて、高い位置での作業が可能になる。

高所作業車。「ブーム」と呼ばれる部分が伸びて、高い位置での作業が可能になる。

小豆島で草木染めをする〈月樹舎〉と
『植物からのメッセージ』を
伝える本をつくる

美しい植物の色に。月樹舎の草木染め

「植物からのメッセージを伝える本をつくりたい」

そんな話が始まったのは、2020年夏。もう2年前になります。
長い時間をかけて、『植物からのメッセージ』という本が
この夏にようやくできあがりました。
今回は、この本ができるまでのお話をしたいと思います。

この本の著者は、〈月樹舎(つききしゃ)〉の植松優子さん。
優子さんは、2013年に小豆島に引っ越してきて、
瀬戸内海の見えるとても素敵なアトリエで、
レッグウォーマーや腹巻きなどの衣類を草木で染めています。
優子さんの染めたレッグウォーマーは、色もつけ心地もやさしくて、
私も一年中お世話になっています。

小豆島で草木染めをする月樹舎の植松優子さん。

小豆島で草木染めをする月樹舎の植松優子さん。

月樹舎のレッグウォーマー。手や足先が冷えやすい私も一年中愛用しています。

月樹舎のレッグウォーマー。手や足先が冷えやすい私も一年中愛用しています。

月樹舎のアトリエ兼自宅の窓からは瀬戸内海が一望できます。いつもここに行くと癒やされます。

月樹舎のアトリエ兼自宅の窓からは瀬戸内海が一望できます。いつもここに行くと癒やされます。

月樹舎の草木染は、植物を集めるところから始まります。
小豆島で生育している草花や、畑で育てたハーブなど、
染める日に合わせて、その時期いちばん力強いと感じる植物を選びます。

セージ、ラベンダー、ミント、びわ、よもぎ、けやき、マリーゴールドなど、
これまで染めで使った植物は50種類ほど。
集めた植物をきれいに洗い、植物のエキスがたっぷり出るように細かく刻み、
大きな鍋でぐつぐつと煮込みます。

ゆっくり植物エキスを抽出し、
黄色、オレンジ、ピンク、紫、シルバー、グリーン、茶色、水色など
天然の美しい色を布に移し込んでいきます。

販売されている粉の染料などを使うのではなく、生きている植物を集めたり、
自分で育てるところから草木染めを始めるというのは
手間と時間のかかる大変なことだと思います。
でも、そうやって植物に接することで、優子さん自身も
植物からパワーをもらったり癒やされたりしているそう。

ホームメイカーズの畑にも染める植物を収穫しに来てくれます。これはマリーゴールドの花。

ホームメイカーズの畑にも染める植物を収穫しに来てくれます。これはマリーゴールドの花。

マリーゴールドの花で鮮やかな黄色に染まったレッグウォーマーと腹巻き。

マリーゴールドの花で鮮やかな黄色に染まったレッグウォーマーと腹巻き。

函館市〈大三坂ビルヂング〉後編
まちの暮らしを見つける宿
〈SMALL TOWN HOSTEL〉

富樫雅行建築設計事務所 vol.5

函館市で設計事務所を営みながら、建築施工や不動産賃貸、
ポップアップスペースの運営など、幅広い手法で地域に関わる
〈富樫雅行建築設計事務所〉の富樫雅行さんによる連載です。

今回は前編と後編にわたって、地域のパン屋、デザイナー、不動産屋とともに
〈箱バル不動産〉を立ち上げ、小さな複合施設づくりに挑んでいくお話をお届けします。
「函館移住計画」や古民家の再生、〈大三坂ビルヂング〉との出合いをご紹介した前編に続き、
後編では〈大三坂ビルヂング〉の工事からオープンまでの様子をお送りします。

函館の暮らしを見つける宿〈SMALL TOWN HOSTEL〉

2016年秋、〈大三坂ビルヂング〉土蔵の外壁が歩道に崩れ落ちたため、
外壁をネットで覆って応急処置を施し、何とかその年の冬を持ち堪えました。

冬の間、これまで取り組んできた「函館移住計画」と、
これから先、取り組んでいくべきことを話し合いました。
この小さなまちで、旅人と地域住民が交流し、暮らすようにして
まち全体を楽しんでもらえるような、それぞれの「暮らしを見つける宿」になりたい。
その拠点となるゲストハウスとして、〈SMALL TOWN HOSTEL〉と名づけました。

宿の立ち上げには新メンバーも加わり、僕たちの暮らしを表現するムービーを作成。
ゲストハウスに併設する店舗のテナント募集と同時に公開しました。

宿の立ち上げには、代表をつとめる蒲生寛之の妻・奈緒子と、函館にUターンしてきた泉加奈、函館移住計画2017から参加した工藤知子も参加。ムービーは箱バル不動産の蒲生と芋坂淳、〈BOTAN〉の加藤公章や〈Brant&sons〉谷藤崇司が参加する〈スモールタウンバンド〉の音源と、奈緒子が巡る西部地区のまち並み、そして〈Beyond the Lenz〉馬場雄介によるもの。土蔵の土壁が崩れた直後から応急処置前の様子を映像におさめた。

宿の立ち上げには、代表をつとめる蒲生寛之の妻・奈緒子と、函館にUターンしてきた泉加奈、函館移住計画2017から参加した工藤知子も参加。ムービーは箱バル不動産の蒲生と芋坂淳、〈BOTAN〉の加藤公章や〈Brant&sons〉谷藤崇司が参加する〈スモールタウンバンド〉の音源と、奈緒子が巡る西部地区のまち並み、そして〈Beyond the Lenz〉馬場雄介によるもの。土蔵の土壁が崩れた直後から応急処置前の様子を映像におさめた。

また、市販のガイドブックに載っていない、僕らの日常のオススメのお店を紹介する
マップの制作も手がけていきました。

市販のガイドブックには載っていないオススメのスポットを〈箱バル不動産〉の芋坂淳のイラストで紹介する『箱マップ』。

市販のガイドブックには載っていないオススメのスポットを〈箱バル不動産〉の芋坂淳のイラストで紹介する『箱マップ』。

路面電車から石畳を登った大三坂沿いにある〈大三坂ビルヂング〉。さらに上に行くと、〈箱バル不動産〉メンバーの芋坂が経営するパン屋〈トンボロ〉があり、そのすぐ上には重要文化財で日本最初のコンクリート寺院の〈東本願寺〉、その向かいには〈カトリック元町教会〉〈函館ハリストス正教会〉〈函館聖ヨハネ教会〉〈妙福寺〉など、異なる宗教施設が立ち並ぶ世界平和の象徴のような坂。「日本の道百選」にも認定されている。

路面電車から石畳を登った大三坂沿いにある〈大三坂ビルヂング〉。さらに上に行くと、〈箱バル不動産〉メンバーの芋坂が経営するパン屋〈トンボロ〉があり、そのすぐ上には重要文化財で日本最初のコンクリート寺院の〈東本願寺〉、その向かいには〈カトリック元町教会〉〈函館ハリストス正教会〉〈函館聖ヨハネ教会〉〈妙福寺〉など、異なる宗教施設が立ち並ぶ世界平和の象徴のような坂。「日本の道百選」にも認定されている。

これはあとからわかったことですが、ペリー来航以降、
西部地区の主要な坂のひとつ〈基坂〉には奉行所が置かれ、
大三坂の坂下には地方から公用で訪れる人々の宿があり、
その屋号が〈大三〉でした。大三坂はその宿名をもとに名づけられたとのこと。
それから160年余り、いま僕らがここで宿を始める巡り合わせが、
これから始まる多くの出会いを予感させました。

北九州市・小倉〈cafe causa〉
「リノベーションまちづくり」が、
ここから始まる

タムタムデザインvol.1

みなさん、こんにちは。
タムタムデザインの田村晟一朗(たむら・せいいちろう)と申します。
福岡県北九州市で建築設計事務所を営みつつ、転貸事業や飲食店運営をしています。
九州圏内を中心に全国各地へフットワーク軽く動き、現在はオフィスやホテル事業、
行政施設などBtoB、BtoG(企業と行政の取引)の設計を中心に仕事の依頼をいただいています。

生まれは高知県。工業高校から建築科に入学し、高校卒業後に進学のために北九州市へ。
その後も専門学校で建築を学んで、設計事務所に勤めてからも建築の実務しか学んでこなかったのですが、
なぜリノベーションに軸足を置きつつほかの事業も展開しているのか、
本連載を通じてお届けしていきます。

今回はタムタムデザインを立ち上げる前のお話。
小倉駅北口にて「リノベーションまちづくり」の起点となり、
そしてタムタムデザインの原点ともなった、とあるカフェのプロジェクトをご紹介します。

建築士による新たな営業方法

さかのぼること2009年。当時はまだ設計事務所に勤めていました。
“リノベーション”という言葉をまったく知らないそんな時代です。
設計室の室長というポストに着き、社長から「君も営業してきなさい」と命令が下されました。
それまで現場か設計作図か、という技術畑でしか経験を積んでいなかった僕が、
急に営業して仕事をとってくるという使命を持たされ、
「いや~マジどうしよう……飛び込み営業とかできない……」と弱気になっていました。
それで必死に考えた結果、ひとつの営業方法を思いついたんです。

それは“空き物件にプランを入れて売り込む”という方法。

一般的な設計事務所の実務の流れは以下になります。

1.クライアントが土地や空きテナントの区画情報を持って相談にくる
2.希望の用途に応じて計画する
3.イメージパースを描き、具体的なデザインを共有していく
4.実施設計、見積り、施工者選定を進める
5.着工し監理を行う
6.完工、引渡し

もっと細分化できますが、概ねこういう流れです。
僕が思いついた営業方法はこの1~3を先に自分でやっちゃって、
このプランを使ってもらう人を探す、という方法でした。

展覧会づくりもバンド活動も、
みんなで一緒に! 
心と心がひとつになる、アフリカ太鼓

撮影:佐々木育弥

展覧会のフィナーレをアフリカ太鼓で飾りたい

この春から、アフリカ太鼓の練習を始めた。
リズム感がまったくなく、手拍子ですらうまく合わせられない自分にとって
思ってもみないことではあったけれど、ほぼ毎週、練習していて、
ライブも経験させてもらった。

教えてくれるのは、私が住む美流渡(みると)地区から
さらに山の方に入った万字(まんじ)地区に4年前に移住した岡林利樹さん
利樹さんは、セネガルとブルキナファソで太鼓を学んだ経験があり、
移住の翌年から美流渡で太鼓教室を定期的に開催。道内各地でライブ活動も行ってきた。

コロナ禍となって、こうした活動はいったん中断を余儀なくされたが、昨年頃から
一緒にアフリカで太鼓を学んだ妻の藍さんや道内各地の太鼓仲間と組んで、
ライブを再開していた。
昨年、10月には私が代表を務める地域団体が主催する、
地域のつくり手の作品を集めた『みる・とーぶ展』で、フィナーレライブを行ってもらった。

地域で行われるイベントでたびたび演奏をしていた。利樹さん、藍さんと、ダンサーで美流渡と札幌を行き来する寺林里紗さんらが中心となっていた。

地域で行われるイベントでたびたび演奏をしていた。利樹さん、藍さんと、ダンサーで美流渡と札幌を行き来する寺林里紗さんらが中心となっていた。

これまでライブは聴く側だったのだが、昨年末に起こった
大きな出来事によって気持ちが変わった。

このとき藍さんはふたり目を妊娠していた。
12月に臨月を迎え、赤ちゃんは無事に生まれたものの、
以前に子宮の病気を患ったこともあったからか出産時の出血がひどく、
藍さんは帰らぬ人となった。

長男の杜樹(とき)君と一緒に。右が藍さん。(撮影:佐々木育弥)

長男の杜樹(とき)君と一緒に。右が藍さん。(撮影:佐々木育弥)

利樹さんと藍さんは太鼓の奏者であり、『みる・とーぶ展』では、
海外でつくりかたを学んだマクラメ編みのアクセサリーも販売していて、
いつも顔を合わせる仲間だった。
藍さんの訃報を知った日は、展覧会に参加したメンバーが
集まってランチ会をすることとなっていた。
食事をするような気分ではなかったけれど、とにかくみんなで集まろうということになり、
信じがたい事実を前に、取り止めもなく話をした。

利樹さんは、その後数か月間、岩見沢市内にある両親のもとで子育てをしていた。
春になって長男と生まれたばかりの長女を保育園に預けることになり、万字地区に戻った。
これまで利樹さんは土地を開墾して畑をつくり自給自足に近い生活をしていた。
ふたりの子どもを抱えて以前のようにはいかないが、
それでも自分なりの暮らしを模索しているところだった。

太陽光パネルで自家発電をし、お風呂も薪で沸かしていた。(撮影:佐々木育弥)

太陽光パネルで自家発電をし、お風呂も薪で沸かしていた。(撮影:佐々木育弥)

そんななかで、今年は年3回の開催を計画していた『みる・とーぶ展』に
アクセサリーを出品してくれることになった。
展覧会の準備中、利樹さんと話す機会があった。
目の回るほどの忙しさなのではないかと思ったが、私は
「アフリカ太鼓をみんなに教えてほしい。
展覧会のフィナーレでまたライブをやってほしい」と頼んだ。
フィナーレの演奏は「できるかどうかわからない」と言ってはいたが、
「太鼓教室はやりたい人がいるのであれば開きたい」と前向きに考えてくれた。

利樹さんと藍さんは、アフリカだけでなく世界中を旅していた。旅の途中で手に入れた石とマクラメ編みとでアクサセリーをつくってきた。

利樹さんと藍さんは、アフリカだけでなく世界中を旅していた。旅の途中で手に入れた石とマクラメ編みとでアクサセリーをつくってきた。

10年書き続けてきた
小豆島日記、連載300回!

ライフステージの変化とともに振り返る、小豆島暮らしの10年

私たち三村家は、2012年秋に小豆島に引っ越してきました。
月日は流れ、現在2022年。
この秋で小豆島暮らし10周年を迎えます。

そしてなんと、小豆島に引っ越してきた半年後から書き続けてきた
この『小豆島日記』が今回で連載300回目!
いやはや、我ながらよく書き続けてきたなと、ちょっと感慨深い気持ちになります。
今回はこの10年を振り返り、30代から40代へのライフステージの変化、
そしてこの先50代に向けて、小豆島でどう暮らしていきたいか、
今考えていることを書きます。

小豆島で迎える10回目の夏。今年も暑かった。夏より冬が好きだけど、この夏の景色は大好き。

小豆島で迎える10回目の夏。今年も暑かった。夏より冬が好きだけど、この夏の景色は大好き。

まずは20年前の話から。
私は大学で建築学を学び、大学卒業後は大学院に進学しました。
卒業した時点で24歳。建築の道には進まず、地元の地図制作会社に就職し、
その会社が大手IT企業に吸収合併され、気づけばIT企業で働く人になりました。
28歳のとき、長女いろはを出産し、子育てしながら働く人に。
夫であるたくちゃんは庭の設計事務所でほぼ休みなく働く日々。
子育てや家事を夫婦で分担しながら都会で暮らす、核家族、共働きの家庭でした。

それなりには満たされていたけれど、30代に入った頃から、
これからどう生きていくか夫婦でよく話すようになりました。
とにかくたくちゃんは仕事が忙しく、こんなに働きづめでいいんだろうかという思い。
私は会社ではとてもいい待遇(短時間勤務、休みもある程度融通がきくなど)を
受けさせてもらっていたけれど、何か役に立てているのだろうか、
そこにいる必要はあまりないんじゃないか……という思いが強くなっていくと同時に、
子育てや家事をやりきれていないという思いが重なり、なんとなく悶々とする日々でした。

そんなときに起こったのが、東日本大震災。
それと同じ年に私は婦人科系の病気で入院。
あー、生き方を変えたい! と吹っ切れたのが2011年でした。
翌2012年秋、たくちゃん35歳、私33歳、いろは5歳のときに、
たくちゃんの祖父の家がある小豆島へ移住。
そこから小豆島暮らしが始まりました。

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築130年以上になる祖父の家を改修して暮らしています。

築130年以上になる祖父の家を改修して暮らしています。

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小豆島日記 家についての記事はこちら

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移住してからずっと導入したかった薪ストーブをこの春にようやく設置。

移住してからずっと導入したかった薪ストーブをこの春にようやく設置。

夫婦ふたりそろって会社を辞めてしまったので、
小豆島に来てからしばらくの間は家を片づけながら、
知り合いの仕事のお手伝いをしたりしていました。
振り返ると移住してからの1年間ほどは、私たちの人生のなかで
とても有意義な時間だったと思います。
今日何をしようかと日々考えながら、家を直し、小さな畑で野菜を育て、
子どもとともに過ごし、ジャムをつくったりオリーブオイルをつくったりして。

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小豆島日記 梅仕事の記事はこちら

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心からかわいいと思えるものを描きたい 
校舎を包み込んだ、
MAYA MAXXの新作絵画

撮影:佐々木育弥

前回の展覧会から、わずか2か月の間に生まれた絵の数々

私が代表を務める地域PR団体〈みる・とーぶ〉が中心となって、
3年前に閉校した旧美流渡(みると)中学校にて、今年、年3回の展覧会を企画している。
1回目はゴールデンウィーク、2回目は7月、3回目は9月で、
地域のつくり手の作品を集めた『みる・とーぶ展』と、
美流渡に暮らす画家・MAYA MAXXによる『みんなとMAYA MAXX展』を同時開催している。

つい先日、7月16日〜31日に開催した2回目の展覧会が終わったところ。
ようやく人心地つき、来場したみなさんが書いてくれたアンケートを眺めている。

展覧会ではイベントも多数。初日はアンデス民族音楽のバンド〈ワイラジャパン〉によるライブが行われた。

展覧会ではイベントも多数。初日はアンデス民族音楽のバンド〈ワイラジャパン〉によるライブが行われた。

9月23日には、ギニア出身のアフリカ太鼓の奏者・ソロケイタさんによるライブも。

9月23日には、ギニア出身のアフリカ太鼓の奏者・ソロケイタさんによるライブも。

来場したのはおよそ1000人。
アンケートを集計してみると、市内や札幌だけでなく、
道内各地から足を運んでくれていることがわかった。
また、私たちの活動が少しずつ認知されているようで、
毎回展覧会を楽しみにしてくれている人がいることも実感できた。
何よりうれしかったのは、前回よりもさらに内容が充実しているという声が多かったこと。

「春の展覧会よりスケールアップしていてすごく楽しかったです。どの作家さんたちの生み出したものも素敵だったけれど、MAYA MAXXさんのエネルギッシュさはすごいなぁ……、2か月でこれだけの作品を生み出されるんですよね」(来場者アンケートより)

万字地区でハーブのブレンドティをつくる〈麻の実堂〉。

万字地区でハーブのブレンドティをつくる〈麻の実堂〉。

みる・とーぶ展では元職員室にテーブルを並べて、12組の作家がそれぞれ新作を発表。
陶芸や木工、ハーブティや本などを販売するブースを設けた。
MAYAさんはここで誰よりも大きなテーブルを使って、
手描きのTシャツを販売しただけでなく、3階の2教室で新作の絵画も発表。

さらに、木工作品をつくる〈アトリエ遊木童(ゆうもくどう)〉と
〈木工房ピヨモコ〉が制作した額縁に絵を合わせ2階に展示。
わずか2か月の間に無数の作品が生み出され、校舎全体がMAYAさんの作品に包まれた。

MAYAさんはキッズの手描きTシャツやサロペット、うちわなどの販売も行った。

MAYAさんはキッズの手描きTシャツやサロペット、うちわなどの販売も行った。

「予定に追われることはいいことだけれど、やっつけてはいけない。そこが難しいところ」

準備期間中、MAYAさんはそう言いながら、日中はアトリエで絵を制作。
夕方を過ぎれば自宅に戻ってTシャツに絵を描いた。
そのうえ、校舎の清掃活動や幼稚園・保育園での絵を描く
ワークショップなども行っていた。
私は毎日近くでMAYAさんの様子を見ているのだが、
あれだけの枚数をいつ描いたのだろうと不思議になるほどだった。

そして、疲れを見せず、
「今日も夜はTシャツに描かなくちゃ! 
もう、まるでみる・とーぶの奴隷のようだよー」
と、なんだか困りつつもうれしそう(!?)

『おんがくしつ no 椅子と絵画展』。木工作家が額をつくり、それに合わせてMAYAさんが絵を描いた。

『おんがくしつ no 椅子と絵画展』。木工作家が額をつくり、それに合わせてMAYAさんが絵を描いた。

MAYAさんによると
「ほかにまったく何もすることがなくて、絵だけをずっと描く状態」は、
むしろ辛いのだという。
2年前、東京のマンションで暮らしていた頃、コロナ禍で外出自粛が要請され、
展覧会やワークショップの予定もすべてなくなってしまったことがあった。
絵を描く時間は十分にとれたものの、MAYAさんは短時間に精魂を込めて描く
という方法を取っており、しかも絵具が乾かないと先に進めないことから、
時間を持て余してしまったという。

絵を描くこと以外で忙しくしていて、わずかな時間を見つけては、
あれこれ迷わずに一点集中で取り組むという、現在のような状態のほうが、
よい結果となることが多いそうだ。

展示や販売のほかに、4月から行っているのがビッグベアプロジェクト。建築資材であるスタイロフォームを削って、クマの顔を制作中。

展示や販売のほかに、4月から行っているのがビッグベアプロジェクト。建築資材であるスタイロフォームを削って、クマの顔を制作中。

校舎の庇にクマの顔を設置。これに耳をつけて赤く塗って仕上げる予定。

校舎の庇にクマの顔を設置。これに耳をつけて赤く塗って仕上げる予定。

〈葺田の森テラス〉で味わう、
小豆島のおいしい物語が
ぎゅっと詰まったお弁当

旧小学校の一角を活用した〈葺田の森テラス〉

3年に一度開催されるアートイベント〈瀬戸内国際芸術祭2022〉。
春・夏・秋の3会期に分けて開催され、8月5日から夏会期が始まっています。
夏会期はとにかく暑い!
でもこの時期にしか見られない青々とした美しい夏の風景が広がり、
そこで作品に出合えます。
熱中症対策を十分にして遊びに来てくださいね。

〈瀬戸内国際芸術祭2022〉会期

春会期:2022年4月14日(木)~5月18日(水)

夏会期:2022年8月5日(金)~9月4日(日)

秋会期:2022年9月29日(木)~11月6日(日)

さて、この夏会期もたくさんのすばらしいアートが公開されていますが、
今回ご紹介するのはアート作品じゃなくてお弁当!
芸術祭の会期中しか食べられないお弁当があるんです。

まずは、そのお弁当を食べられる場所のことから。
小豆島の北東に、福田港という港を擁する小さな集落があります。
その集落にある小学校だった建物(旧福田小学校)を改修したアート施設〈福武ハウス〉は、
2013年の芸術祭のときから始まり、地域の新たな文化交流の拠点として、
またアジア各地域のアーティストの作品を展示するギャラリーとして活動を続けています。
その〈福武ハウス〉の一角に、2022年の春に新たにオープンしたのが
〈葺田(ふきた)の森テラス〉です。

旧福田小学校を改修した〈福武ハウス〉。瀬戸芸の会期中のみ営業しています。

旧福田小学校を改修した〈福武ハウス〉。瀬戸芸の会期中のみ営業しています。

〈福武ハウス〉の一角にオープンした〈葺田の森テラス〉。ウッドデッキの素材には小豆島の間伐材が活用されています。(写真提供:葺田の森テラス)

〈福武ハウス〉の一角にオープンした〈葺田の森テラス〉。ウッドデッキの素材には小豆島の間伐材が活用されています。(写真提供:葺田の森テラス)

〈福武ハウス〉のすぐ隣には、昔から地元の人たちに大切にされてきた
〈葺田八幡神社〉があり、その神社と〈福武ハウス〉の間に、
鎮守の森(ちんじゅのもり、神社の境内や周辺などにある森林のこと)があります。
大きな木が何本か立ち並ぶその場所にはやさしい木陰があり、
風が通り抜けていて、とても心地いい立地です。

その鎮守の森を、すぐ目の前に眺めることができる場所にあるのが〈葺田の森テラス〉。
ちなみに、葺田(ふきた)というのは福田地区の古い地名で、
そこからこのテラスの名前をつけたそう。

函館市〈大三坂ビルヂング〉前編。
地域のパン屋、デザイナー、不動産屋と
結成した〈箱バル不動産〉の活動。

富樫雅行建築設計事務所 vol.4

函館市で設計事務所を営みながら、建築施工や不動産賃貸、
ポップアップスペースの運営など、幅広い手法で地域に関わる
〈富樫雅行建築設計事務所〉の富樫雅行さんによる連載です。

今回お届けするのは、地域のパン屋、デザイナー、不動産屋とともに
〈箱バル不動産〉を立ち上げ、「函館移住計画」や古民家の再生などを通じて、
小さな複合施設づくりに挑んでいくお話。前後編にわたってお送りします。

仲間たちとの出会い

独立前、〈小澤武建築研究室〉に勤めていた頃に、
函館山の麓の大三坂にある陶芸ギャラリーを改修する仕事をしました。
そこで出会ったのが、パン屋〈tombolo(トンボロ)〉を営む
芋坂淳・香生里(うさか じゅん・かおり)夫婦。
芋坂さんはご両親が運営する陶芸ギャラリーをパン屋にリノベーションして開業するため、
東京からUターンしてきたところでした。

仕事をするうちに仲良くなり、独立後も〈トンボロ〉に立ち寄っては
「空き家がもったいない」だの「あの家が壊された」だの、
西部地区でなかなか古い建物の活用が進まない現状を嘆きながら、
「おもしろい不動産屋が地元にいたらいいよね〜」とか、
しまいには「自分たちでがんばって宅建を取るか!」とか話していました。

函館山の麓の大三坂沿いで、黄色の外壁が特徴的な〈トンボロ〉。大正15年築であり、函館市の伝統的建築物にも指定されている。

函館山の麓の大三坂沿いで、黄色の外壁が特徴的な〈トンボロ〉。大正15年築であり、函館市の伝統的建築物にも指定されている。

そんなある日、ある友人が
「常盤坂の家を見たいと言っている」と連れてきた、
最近Uターンしてきたという後輩が、不動産屋〈蒲生商事〉3代目になる
蒲生寛之(がもう ひろゆき)さんでした。

すぐに意気投合し、2015年6月に共通の友人である
札幌の〈FUZ design〉の永井準平(ながい じゅんぺい)くんと飲みに行き
「蒲生商事の記念事業で空き家ツアーをやりたい」
「それなら空き家に泊まってもらい、暮らしを体験してもらおう!」と盛り上がりました。

その晩、みんなで空き家を巡りながらあらためてその数の多さに驚き
「このような名もなき古き良き建物を、自分たちが残していきたい!」と
語り合いながら帰宅しました。

その熱も冷めぬまま次の日をむかえ、
〈トンボロ〉の芋坂夫婦にも協力を仰ぎに行くとまた盛り上がり、
「じゃあ、移住希望者を募って『函館移住計画』をやろう」
「どうせなら西部地区を体験できるハシゴ酒のイベント『バル街』に合わせてやろう!」
という話に。9月上旬に開催される「バル街」まであと2か月ほど。
時間もないなか、無謀な挑戦が始まりました。

第1回の函館移住計画のポスター。2015〜17年まで計3回の移住計画を〈箱バル不動産〉で主催した。

第1回の函館移住計画のポスター。2015〜17年まで計3回の移住計画を〈箱バル不動産〉で主催した。

函館山の麓に広がる旧市街地の西部地区。東側と西側、海側と山側でそれぞれまったく違った地域性があり、応募者の特性に合わせて家を選んだ。

函館山の麓に広がる旧市街地の西部地区。東側と西側、海側と山側でそれぞれまったく違った地域性があり、応募者の特性に合わせて家を選んだ。

昔ながらのイボイボ四葉キュウリを
おいしく食べるには?
選び方と、下ごしらえ方法

夏バテ予防に夏野菜を食べよう!

むむむ、蒸し暑い(涙)!
日本の夏はどうしてこうも蒸し暑いのか……。
高温と多湿がタブルでパンチしてきます。
夏バテしないように、とにかくちゃんと食べてちゃんと寝て、
健康管理をしっかりしないといけないですね。

しかし、こう蒸し暑いと食欲もなんとなく減退気味。
……なんですが、こんな時期だからこそ、
おいしい夏野菜をたくさん食べてほしいと思います。

夏野菜といえば、その存在だけで主役級のトマト、トウモロコシから始まり、
油料理と相性のいいナス、ピーマンなんかが人気かもしれませんが、
今回紹介したいのは、キュウリ!

みんな知っているキュウリ。
庶民の野菜って感じですよね。

夏にはたくさん採れすぎて食べきるのに困ったり、スーパーでも安く売られていたり
(ときどき価格が上がるとキュウリなのに高い! と思われたり)、
もう少し貴重な存在として認めてあげたい(笑)。
キュウリっておいしいんです。
まさに今みたいな蒸し暑い時期には主役になれるんです! 
ということをお伝えしたいなと。

キュウリは1日であっという間に大きくなってしまうので、収穫が始まったらほぼ毎日収穫。

キュウリは1日であっという間に大きくなってしまうので、収穫が始まったらほぼ毎日収穫。

四葉キュウリは長さ30センチくらいが食べ頃。ぱっと見、細いゴーヤかと思ってしまうイボイボぶり。

四葉キュウリは長さ30センチくらいが食べ頃。ぱっと見、細いゴーヤかと思ってしまうイボイボぶり。

〈HOMEMAKERS(ホームメイカーズ)〉の畑では、
「四葉キュウリ」を育てています。
「四葉」と書いて、「すうよう」と読みます。
中国から渡ってきた品種で、株に本葉が4枚ついた頃から実がなるので
この名がついたといわれています。

一般的なキュウリと比べると大きく、長さ30センチほどに成長します。
表面には白いイボイボがあって、シワもよっているので、
ゴーヤに見間違えられることがありますが、キュウリです。

この小さなトゲがポロポロと取れてしまうので、なるべく傷つかないように出荷作業では気をつけています。

この小さなトゲがポロポロと取れてしまうので、なるべく傷つかないように出荷作業では気をつけています。

このイボイボというかトゲトゲのある四葉キュウリ、
今ではスーパーなどではほとんど見かけなくなってしまいました。
昔はイボイボのキュウリが普通でしたが、年々品種改良が進み、
今ではイボなしつやつやキュウリが流通しているキュウリの主流です。
というのも、このイボはちょっと触っただけでポロポロと取れてしまい、
イボがとれたところから傷みやすく、収穫や出荷作業のときとても気を使います。
そんな理由で四葉キュウリはあまり流通しないようになってしまいました。

でも、なんで四葉キュウリを育てているのか?

おいしいから! 好きだから!

たくさん採れたときでも飽きずにおいしく食べられるように、いくつかレシピを知っておくといいんですよね。

たくさん採れたときでも飽きずにおいしく食べられるように、いくつかレシピを知っておくといいんですよね。

四葉キュウリは皮が薄くて歯切れがいいのが特徴。
ポリポリというかバリバリというか、表現が難しいのですが、
漬けものやたたきにすると、あー、この食感がいいって感じます。
それとキュウリの香りがしっかりします。

MAYA MAXXとつくり手の展覧会。
年3回の開催で、
メンバーはどこまで成長できる?

MAYA MAXXの新作。撮影=佐々木育弥

年3回の展覧会開催! ハードルを上げることで力を発揮

「がんばるなんて、当たり前なんだよ。がんばるから、生きていて楽しいんだよ」

ゴールデンウィークに旧美流渡(みると)中学校で開催した、
地域のつくり手の作品を集めた『みる・とーぶ展』と、
一昨年、この地に移住した画家・MAYA MAXXさんによる『みんなとMAYA MAXX展』
その反省会の席でMAYAさんは、みんなに語りかけた。

この日集まっていたのは、会場で木工や陶芸、ハーブティーブレンド、
キッチン雑貨などを販売したり、飲食ブースを出したり、
イベントを行ったりしたメンバーたち。
今年は、7月と9月にも同様の展覧会を計画中のため、反省会の場でも、
今後どうするのかについて熱のこもった話し合いが行われた。

年3回の展覧会となると、作品をどんどんつくり出さなければ間に合わない。
しかも、来場者を飽きさせないように、つねに何かしら
新しい視点を盛り込んでいかなければならない。

5月に開催した『みんなとMAYA MAXX展』。(写真提供:佐々木育弥)

5月に開催した『みんなとMAYA MAXX展』。(写真提供:佐々木育弥)

5月に開催した『みる・とーぶ展』。地域のつくり手の作品を集めた。

5月に開催した『みる・とーぶ展』。地域のつくり手の作品を集めた。

「来場者数とか全体の売り上げとか、そんな数字は一切関係なくて、
大切なのは自分が成長をすることだよ」

MAYAさんは、そう続けた。
年3回にしようと発案したのはMAYAさん。
ハードな状況をあえてつくり出すことによって、ここに関わるメンバーが、
いつも以上の力を発揮できたらと考えての決断だった。

5月に開催したMAYAさんのワークショップ「キミのコトバを描いてみようか」。参加者に描いてほしいものを聞き、それを描きながら対話を重ねた。

5月に開催したMAYAさんのワークショップ「キミのコトバを描いてみようか」。参加者に描いてほしいものを聞き、それを描きながら対話を重ねた。

5月の展覧会では2週間でおよそ2000人が訪れた。
みんなゆったりと会場を楽しんでくれたようで、
「山あいの地域で、自分なりのものづくりをやっている人たちが
いることを知って元気が出た」や
「この学校の卒業生です。校舎をこうして利用してくれていることがうれしい」
という温かなメッセージが寄せられた。

連日、飲食ブースもにぎわって、毎日ほぼ完売状態。
出店メンバーは大きな手応えを感じていたようだ。
そして期間中、「次の開催まで、あと65日!」と私たちは心のなかで唱え、
7月の展覧会に思いを馳せていた。

〈アトリエ遊木童(ゆうもくどう)〉の五十嵐茂さんは、5月の会期中、展示をしつつ、次回に向けて木工室で家具をつくり続けた。

〈アトリエ遊木童(ゆうもくどう)〉の五十嵐茂さんは、5月の会期中、展示をしつつ、次回に向けて木工室で家具をつくり続けた。

瀬戸内の島の小さな食料品店
〈クマ グローサリー〉

小豆島に新しいお店がオープン

「春に小豆島で食料品店をオープンする予定なんです」

と、素敵な女性がうちのカフェにやってきてくれたのは冬のこと。
あれから数か月、彼女の言葉通り、2022年6月18日に小豆島に新しいお店ができました。
〈クマ グローサリー〉という名前の小さな食料品店です。

2022年6月18日にオープンした食料品店〈クマ グローサリー〉。

2022年6月18日にオープンした食料品店〈クマ グローサリー〉。

〈HOMEMAKERS(ホームメイカーズ)〉のシロップ・ドレッシングも並んでいます。

〈HOMEMAKERS(ホームメイカーズ)〉のシロップ・ドレッシングも並んでいます。

お店をオープンされたのは、奈良から引っ越してこられた
三浦隆洋さん・奈苗さんご夫妻。
笑顔が素敵すぎる、爽やかなおふたりです。
隆洋さんのお父さんのご実家は小豆島。

お店を開くにあたって、ほかの土地もいろいろ見に行かれたそうですが、
どこもしっくりこず。
そういえば小豆島はどうだろうと訪れてみると、ここがいい! と感じたそう。
適度に大きくて、人もいる。田舎すぎないけど、海も山もある島。
小豆島でお店を開こう。

〈クマ グローサリー〉は、土庄(とのしょう)町の中心エリアにある
オリーブ通りにオープンしました。
島のなかで1番都会なエリアです。夜も明るい(笑)。
買い出しなどで島の人たちがよく通る道なので、お店がオープンする前から
「あそこ工事してたよ。お店ができるみたいだよ」と噂になっていました。

さて、まず気になるのはお店の名前。
クマ? 動物のクマ?
ではなくて、素敵な意味が込められています。
お店のwebサイトにはこんなふうに書かれています。

“COOMYAH”とはある国の言葉で
「こっちへおいでよ」という意味です。
現地での正しい発音は資料に乏しく実はわからないのですが、
私たちは勝手に「クマ」と発音しています。
大好きなアメリカのミュージシャンが歌う曲のタイトルから名づけました。

Come here!
ウェルカムな感じがふたりにぴったりなお店の名前。

クマさんって覚えやすい。

クマさんって覚えやすい。

それと、「クマ」という名前にしたのは、
“こっちへおいでよ”という気持ちと、シンプルですぐ覚えてもらえる響きだからだそう。
たしかにクマさんって覚えやすくて親しみやすくて呼びやすい。いい名前。

〈森の出版社 ミチクル〉の新しい絵本
土偶は、なぜ不思議な
かたちをしているの?

12年前につくり始めた、縄文時代の土偶をテーマにした絵本

大学在学中に美術系の出版社で働くようになってから約30年、編集の仕事を続けてきた。
どんな本をつくっていても何かしらの発見やワクワク感があって、
この仕事は自分に合っていると日々実感している。
けれど時々、自分の創作に突き進んでみたいという気持ちが
頭をもたげてくることがあった。

高校・大学で私は絵画制作に取り組んできたが、
表現するということがなんなのかがつかめないまま卒業してしまった。
その後、編集の仕事へとシフトしたのだが、心のどこかで、
学生時代の自分を置き去りにしたような感覚が残っていた。

今年の6月、『DOGU かたちのふしぎ』という絵本を刊行した。
この絵本をつくろうと思ったのは12年前のこと。
当時、このまま編集の仕事だけを続けていていいのだろうかという迷いと、
絵を描くことにもう一度チャレンジしてみたいという想いがあってのことだった。

日頃から本づくりをしていたこともあり、1枚の絵を描くよりも、
内容があってそれを描くほうが、手がかりがあって進めやすいと考え
絵本という形式を選んだ。

テーマは土偶。
1万年も続いた縄文時代、人々はさまざまな「ひとがた」をつくっていた。
それらは、宇宙人かと思うほどの不思議なかたちをしており、
そこに私は以前から惹かれていた。

『DOGU かたちのふしぎ』(森の出版社 ミチクル) アクリル絵の具で、リアルにかたちを描いた。

『DOGU かたちのふしぎ』(森の出版社 ミチクル) アクリル絵の具で、リアルにかたちを描いた。

仕事の合間をぬって半年ほどで完成させ、海外の絵本コンペに応募した。
結果は落選。そののちに出産。やがて東日本大震災が起こり、北海道へ移住。
忙しない日々のなかで、絵本は出版することなくお蔵入りになっていた。
そのまま10年以上、この絵本を開くことはなかった。

〈瀬戸内国際芸術祭2022〉
小豆島・三都半島の
アートプロジェクトを楽しむ

〈三都半島アートプロジェクト〉の作品めぐり

3年に一度開催されるアートイベント〈瀬戸内国際芸術祭2022〉。
春・夏・秋の3会期に分けて開催されますが、あっという間に春会期が終わり、
今は8月5日から始まる夏会期に向けて、
新しい作品の制作や、イベントの準備が進んでいます。

〈瀬戸内国際芸術祭2022〉会期

春会期:2022年4月14日(木)~5月18日(水)

夏会期:2022年8月5日(金)~9月4日(日)

秋会期:2022年9月29日(木)~11月6日(日)

芸術祭の会期中は、すべての作品の公開、イベントの開催、
高松港と直島にある公式ショップのオープン、臨時航路の運航など、
芸術祭全体がアクティブな状態になりますが、
実は会期と会期の間でも楽しめる作品がたくさんあるんです。

三都半島の海沿いの道に掲げられた芸術祭のフラッグ。海を眺めながらのドライブは最高!

三都半島の海沿いの道に掲げられた芸術祭のフラッグ。海を眺めながらのドライブは最高!

芸術祭の作品には、開館時間が決まっている屋内作品と、
いつでも開放している屋外作品があります。
この、屋外で公開されている作品については、会期中じゃなくても見に行けるんです。
作品の公開スケジュールは、芸術祭公式サイトで確認できます。

ちなみに島で暮らす私たちは、会期中より、
人が少ない会期期間外を狙って見に行くこともあります。

夏会期が始まるまでの今の時期におすすめなのが、
小豆島の三都(みと)半島で展開されている
〈三都半島アートプロジェクト〉の作品めぐりです!

作品を観ながら歩いていると、猫ちゃんたちに遭遇。島の穏やかな光景。

作品を観ながら歩いていると、猫ちゃんたちに遭遇。島の穏やかな光景。

三都半島は、小豆島のちょうど真ん中あたりから南に突き出している半島。
半島内には吉野地区、蒲野(かまの)地区、神浦(こうのうら)地区など
小さな集落がいくつかあり、移住する人も多い、人気のエリアです。

この三都半島では、2009年から〈小豆島アーティスト・イン・レジデンス〉や
ワークショップなど、行政と地域住民とアーティストの協働による
さまざまな取り組みが行われています。

2014年からは、広島市立大学芸術学部のみなさんが中心となって
アート活動を展開しており、今回の芸術祭では半島南西端の神浦地区をメインに、
屋外や古民家、バス停などで多くの作品が制作・展示されています。

そんな〈三都半島アートプロジェクト〉のなかで、
私が好きな作品をいくつか紹介します。

函館市〈カフェ・プランタール〉。
旧函館ドックの外国人住宅を
オーガニック菜園つきカフェへ

富樫雅行建築設計事務所 vol.3

北海道函館市で設計事務所を営みながら、施工や不動産賃貸、店舗経営など、
幅広い手法で地域に関わる、〈富樫雅行建築設計事務所〉の富樫雅行さんによる連載です。
 
今回お届けするのは、〈函館ドック外人住宅〉として建てられ、
その後フランス料理の名店として使われていた建物を引き継いだ
映画監督が、菜園つきのカフェへとリノベーションしたお話です。

西欧文化の名残がある住宅街

前回お届けした〈港の庵〉の見学会にて、
函館に暮らす映画監督の大西功一(おおにし こういち)さんとの出会いがありました。
沖縄県宮古諸島の古代の歌を描いた『スケッチ・オブ・ミャーク』など、
失われゆく原風景を作品に残している映画監督です。
見学会での出会いを経てまもなく「外国人住宅を引き継いだ」と連絡をいただき、
2014年末に内見にうかがうことになりました。

外国人住宅があるのは、時任町(ときとうちょう)。
旧市街西部地区から車で15分ほどの場所で、
近代に西欧文化が取り入れられた住宅街です。
 
明治10年から函館支庁長になった時任為基(ときとう ためもと)が
このエリアで洋式の模範牧場となる〈時任牧場〉を営んだことを由来に
時任町と名づけられました。
 
アメリカ人宣教師が西部地区の元町に開校した〈遺愛学院(いあいがくいん)〉が
明治41年頃に移転してきたほか、
当時郊外だったこの地域は“文化村”と呼ばれ、
函館の発展に合わせて大正期に電気が引かれるなど、
函館市東部の住宅地開発において重要な役割を果たした地域です。
外国人住宅はちょうど遺愛学院の裏側に位置します。