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10年書き続けてきた
小豆島日記、連載300回!

小豆島日記
vol.300

posted:2022.8.22  from:香川県小豆郡土庄町  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。

writer profile

Hikari Mimura

三村ひかり

みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
https://homemakers.jp/

ライフステージの変化とともに振り返る、小豆島暮らしの10年

私たち三村家は、2012年秋に小豆島に引っ越してきました。
月日は流れ、現在2022年。
この秋で小豆島暮らし10周年を迎えます。

そしてなんと、小豆島に引っ越してきた半年後から書き続けてきた
この『小豆島日記』が今回で連載300回目!
いやはや、我ながらよく書き続けてきたなと、ちょっと感慨深い気持ちになります。
今回はこの10年を振り返り、30代から40代へのライフステージの変化、
そしてこの先50代に向けて、小豆島でどう暮らしていきたいか、
今考えていることを書きます。

小豆島で迎える10回目の夏。今年も暑かった。夏より冬が好きだけど、この夏の景色は大好き。

小豆島で迎える10回目の夏。今年も暑かった。夏より冬が好きだけど、この夏の景色は大好き。

まずは20年前の話から。
私は大学で建築学を学び、大学卒業後は大学院に進学しました。
卒業した時点で24歳。建築の道には進まず、地元の地図制作会社に就職し、
その会社が大手IT企業に吸収合併され、気づけばIT企業で働く人になりました。
28歳のとき、長女いろはを出産し、子育てしながら働く人に。
夫であるたくちゃんは庭の設計事務所でほぼ休みなく働く日々。
子育てや家事を夫婦で分担しながら都会で暮らす、核家族、共働きの家庭でした。

それなりには満たされていたけれど、30代に入った頃から、
これからどう生きていくか夫婦でよく話すようになりました。
とにかくたくちゃんは仕事が忙しく、こんなに働きづめでいいんだろうかという思い。
私は会社ではとてもいい待遇(短時間勤務、休みもある程度融通がきくなど)を
受けさせてもらっていたけれど、何か役に立てているのだろうか、
そこにいる必要はあまりないんじゃないか……という思いが強くなっていくと同時に、
子育てや家事をやりきれていないという思いが重なり、なんとなく悶々とする日々でした。

そんなときに起こったのが、東日本大震災。
それと同じ年に私は婦人科系の病気で入院。
あー、生き方を変えたい! と吹っ切れたのが2011年でした。
翌2012年秋、たくちゃん35歳、私33歳、いろは5歳のときに、
たくちゃんの祖父の家がある小豆島へ移住。
そこから小豆島暮らしが始まりました。

築130年以上になる祖父の家を改修して暮らしています。

築130年以上になる祖父の家を改修して暮らしています。

小豆島日記 家についての記事はこちら

移住してからずっと導入したかった薪ストーブをこの春にようやく設置。

移住してからずっと導入したかった薪ストーブをこの春にようやく設置。

夫婦ふたりそろって会社を辞めてしまったので、
小豆島に来てからしばらくの間は家を片づけながら、
知り合いの仕事のお手伝いをしたりしていました。
振り返ると移住してからの1年間ほどは、私たちの人生のなかで
とても有意義な時間だったと思います。
今日何をしようかと日々考えながら、家を直し、小さな畑で野菜を育て、
子どもとともに過ごし、ジャムをつくったりオリーブオイルをつくったりして。

小豆島日記 梅仕事の記事はこちら

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夫婦で挑戦し始めたこととは……?

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畑とカフェを始めた理由

そうこうしながら、自分たちができることで少しずつ稼いでいこうと挑戦し始めました。
まずは収穫した野菜を販売してみよう! と、
「HOMEMAKERS ホームメイカーズ」として開業届を出し、オンラインストアをオープン。
ちょうどこの頃に、無料で立ち上げられるオンラインストアのサービスが
いくつかリリースされていて、それを活用して始めました。
SNSで発信して、それをみた友人や知り合いが注文してくれました。

小豆島日記 農業についての記事はこちら

移住して1年半後、家の改修工事が終わり、家の一部をカフェとしてオープン。
ちなみにカフェを開くことは移住する前から夫婦で決めていて、
少しずつ準備は進めていました。

自宅の一部をカフェとして週に数日開こうというのは、移住してくる前から決めていました。

自宅の一部をカフェとして週に数日開こうというのは、移住してくる前から決めていました。

少しずつ手を入れて直してきたホームメイカーズカフェ。

少しずつ手を入れて直してきたホームメイカーズカフェ。

小豆島日記 カフェについての記事はこちら

少しずつ畑が大きくなり、育てる野菜の量が増えて、野菜の注文も増えて、
手伝いにきてくれる友人たちがひとりふたりと増えていきました。

もともと自分のためにつくっていたジンジャーシロップも今は定番商品となり、
種類も増えて、加工品は私たちの売り上げの大きな柱のひとつになっています。
カフェはオープン当時、土、日曜日営業でしたが、
今は週1日土曜日のみオープンしています。
近所の方や島の友人など常連さんたちがいつも来てくれて、
小豆島に移住したいという人たちが訪ねてきてくれるなど、人が集う場所になりました。

小豆島日記 ジンジャーシロップについての記事はこちら

手伝いにきてくれる仲間とともに食べるまかないごはん。このおいしい野菜が並ぶ食卓をともに囲む時間は私たちにとって、とても大切。

手伝いにきてくれる仲間とともに食べるまかないごはん。このおいしい野菜が並ぶ食卓をともに囲む時間は私たちにとって、とても大切。

小豆島日記 農家のまかないの記事はこちら

10年経って、ようやく地域の人たちに少しは認めてもらえたような気がします。
認めてもらえたというか知ってもらえたというか。
「あー、肥土山(ひとやま)で農業してる人たちがいるねぇ」
「あそこの人たちはほんとによく働くわ」
と言ってもらえたり(涙)。

さつまいもの畑。ホームメイカーズの野菜のなかでもさつまいもは人気です。今年もおいしいお芋を収穫できそうです。

さつまいもの畑。ホームメイカーズの野菜のなかでもさつまいもは人気です。今年もおいしいお芋を収穫できそうです。

「今年は雨がほんとに降らんねぇ」と近所の人との何気ないあいさつ。

「今年は雨がほんとに降らんねぇ」と近所の人との何気ないあいさつ。

農薬を使わずに農業をしたい! ここでカフェを開きたい!
と、移住してきた30代夫婦が突然言い出し、きっとまわりの人たちは
「できるわけないだろう」と思っていたと思います
(今の私たちも、そういう人たちが現れたら、めちゃくちゃ大変だよー、しんどいよー
と伝えます。でもやりたいならがんばって!と)。
無謀だったと思うし、あまり考えすぎずになんとかなるよとやってきたからこそ、
今でもそんなに儲かっているわけではないですが、なんとか続けてこられたのかなと、
そして今があるのかな。

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50代に向けて

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これからの10年を思い描く

私たち夫婦は40代となり、長女は来年、高校進学予定です。
島の外にある高校に通いたいそうで、毎日一緒に過ごしていた
10年前の小さな頃を思い出すと、ちょっとさみしい気持ちになったりもします。
でもそれがライフステージの変化で、私たちもこれからまた10年、
どんなふうに生きていこうか楽しいイメージをしていこうと思います。

高校進学に向けて、勉強中の娘。

高校進学に向けて、勉強中の娘。

小豆島日記 子育てについての記事はこちら

この日は修学旅行へ。家の前の坂道。「行ってらっしゃい」と送り出すのもあと何年かな。

この日は修学旅行へ。家の前の坂道。「行ってらっしゃい」と送り出すのもあと何年かな。

今までは、畑作業も出荷作業もカフェの仕込みも掃除も
なんでも自分たちが直接していたけれど、少しずつ誰かにお願いするようにして、
次の挑戦をする時間をつくりたいと思っています。
やりたいことはまだまだたくさんあって、
それをひとつずつ実現していくのは今までと同じ。
今まで築き上げてきたことを繰り返して育てていくことも大切にして、
それと同時に新たな挑戦もしていかないと。

イベントに集まってくれた島の友人たち。こういう仲間がいることはほんとに幸せなこと。

イベントに集まってくれた島の友人たち。こういう仲間がいることはほんとに幸せなこと。

これから挑戦することも、小豆島日記で書き続けていきます。
新たに動き出していることがいくつかあるのですが、
もう少し具体的になったら公開しようと思っています。

ここで書いてきた文章と写真は、私たち三村家にとって、
ホームメイカーズにとってかけがえのない記録であり財産。
それをみなさんに読んでもらえるということは本当にありがたいこと。
感謝の気持ちとともに、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

小豆島日記 振り返り記事はこちら

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小豆島日記、10年の軌跡

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