連載
posted:2015.12.7 from:香川県小豆郡土庄町 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。
writer profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
http://homemakers.jp/
私たちは、小豆島に移住してきて農業を始めました。
農業(農を生業とする)と言っていいのかどうかわかりませんが、
とにかく畑で野菜や果物を育てて、それを販売して、生活の糧にしています。
その収入だけでは厳しいのが現状で、週末はカフェを営業し、
そのほかにもWebサイトの制作や撮影などでも収入を得ています。
田舎に移住して農業をしたいという同世代の人たちの話を時々聞きますが、
私たちもきっとそのなかのひとりでした。
暮らしを変え、自分たちが食べるものは自分たちでつくりたい。
そんな思いで始めた畑。
いま思うと、いったいどうやって稼いで生きていこうと思っていたのか……。
移住するタイミングで、私たち夫婦はそろって会社を辞めました。
同時に無職。よくよく考えるとこわい(笑)。
しばらくの間はそれまでの貯金と雇用保険で生きていける、
その間に生き方を組み立てていこうと考えていました。
農業に本格的に取り組もうと思ったのは、移住して3か月くらいたってから。
想像してた以上に農村だった肥土山(ひとやま)で暮らすようになり、
そこにはじいちゃんが残してくれた畑と果樹があり、
近所のおっちゃんおばちゃんと話すうちに、
やるなら売れるくらいの野菜がつくれるようにがんばろうという気持ちに。
新規就農者に対する助成金があったというのも、
これならやっていけるかもと思った理由のひとつでした。
そしていま、小豆島暮らし4年目となり、まだまだ試行錯誤中ですが
少しずつかたちが見えてきました。
毎週2回、収穫、出荷しているHOMEMAKERSの旬野菜セット。
だいたい10品目くらいのお野菜をダンボールにつめてお届けします。
10品目くらいをセットにするために、その倍の20品目くらいを育てていて、
その中からその日出荷できるお野菜を選びます。
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そして私たちがいま一番メインで育てているのが“ショウガ”。
体の冷えが気になっていた私は、ショウガを育てたいな~
という思いがなんとなくありました。
雨がそんなに多くない小豆島でショウガを育てられるのかと思いつつ、
とりあえずつくってみたのが3年前。
肥土山の畑や田んぼには、山の上にある蛙子池(かえるごいけ)から
水をひいている灌水(かんすい)設備があるので、それを使えば水やりができます。
今年で3回目の栽培。
害虫、雑草、保管など解決しないといけないことは多々ありますが、
それでも何百キロという単位で収穫できるようになりました。
そんな風にして育てたショウガと、小豆島の柑橘を合わせてつくったのが、
〈シトラスジンジャーシロップ〉。
自分たちが毎日飲みたいものをつくりたい。
自分たちがおいしいと思うものを、友人やもう少し遠くの人に届けたい。
それで喜んでもらえて、なおかつ自分たちが生計を立てられたら
それってすごく幸せだなと思っています。
実は私が一番苦手なのは価格を決めることだったりします。
気軽に飲んでもらえるように、少しでも安い価格で届けたい。
でも材料費はもちろん、いろんな手間賃を積み上げていくとそれなりの価格になります。
自分たちでつくると、ものってこんな価格になるんだなとびっくりします。
最近、服も食べものもいろんなものがとても安くなっていますが、
つくるのってとても手間のかかることなんです。
ショウガの収穫を手伝ってもらったり、スダチを分けてもらったり、
ラベルを何度も印刷してもらったり、島のいろんな人たちの手を借りて
完成したシトラスジンジャーシロップ。
育てて、つくって、売る、その大変さと楽しさといったら、なかなか興奮するものです。
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