連載
posted:2022.9.5 from:香川県小豆郡土庄町 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。
writer profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
https://homemakers.jp/
「植物からのメッセージを伝える本をつくりたい」
そんな話が始まったのは、2020年夏。もう2年前になります。
長い時間をかけて、『植物からのメッセージ』という本が
この夏にようやくできあがりました。
今回は、この本ができるまでのお話をしたいと思います。
この本の著者は、〈月樹舎(つききしゃ)〉の植松優子さん。
優子さんは、2013年に小豆島に引っ越してきて、
瀬戸内海の見えるとても素敵なアトリエで、
レッグウォーマーや腹巻きなどの衣類を草木で染めています。
優子さんの染めたレッグウォーマーは、色もつけ心地もやさしくて、
私も一年中お世話になっています。
月樹舎の草木染は、植物を集めるところから始まります。
小豆島で生育している草花や、畑で育てたハーブなど、
染める日に合わせて、その時期いちばん力強いと感じる植物を選びます。
セージ、ラベンダー、ミント、びわ、よもぎ、けやき、マリーゴールドなど、
これまで染めで使った植物は50種類ほど。
集めた植物をきれいに洗い、植物のエキスがたっぷり出るように細かく刻み、
大きな鍋でぐつぐつと煮込みます。
ゆっくり植物エキスを抽出し、
黄色、オレンジ、ピンク、紫、シルバー、グリーン、茶色、水色など
天然の美しい色を布に移し込んでいきます。
販売されている粉の染料などを使うのではなく、生きている植物を集めたり、
自分で育てるところから草木染めを始めるというのは
手間と時間のかかる大変なことだと思います。
でも、そうやって植物に接することで、優子さん自身も
植物からパワーをもらったり癒やされたりしているそう。
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何度も草木染めを繰り返していくなかで、それぞれの植物からメッセージを感じたり、
大切なことを思い出させてもらったりするようになり、
その植物からのメッセージをお届けしたいという思いから生まれたのが、
今回出版した『植物からのメッセージ』という本です。
この本のなかには、素敵な絵がたくさん登場します。
文と絵、両方が主役の絵本のような本です。
絵を描いたのは、〈artHouse tematoca(アートハウス・テマトカ)〉の高野夕希子さん。
夕希子さんは、美術と左官の経験をもとに古民家を改修した自宅兼アトリエで、
海岸で集めた流木や古材、小豆島のオリーブの枝などを利用した
アート雑貨や絵画制作をしています。
〈HOMEMAKERS(ホームメイカーズ)〉のメンバーでもあり、
畑仕事やカフェも手伝ってくれています。
そして私は編集という立場で一緒に本づくりを進めてきました。
文章を書き、絵を描き、それを組み合わせて、
本の1ページ1ページをつくりあげていきました。
プロの編集者さんや出版社さんにお願いすることもできたと思いますが、
今回は小豆島で暮らす3人の手でつくりたいねと、
何度も試行錯誤しながら生み出した1冊です。
小豆島ではたくさんのおもしろい人たちが暮らしています。
絵を描く人もいれば、服をつくる人もいる。
家を建てる人、デザインする人、料理する人、野菜を育てる人、パンを焼く人……。
生き方も魅力的な人が多くて、話しているうちに仲良くなり、一緒にごはんを食べたり、
プロジェクトを一緒に取り組むようになったり。
それぞれの能力を生かして、ともに何かをつくり上げるというのはとても楽しい。
もちろん大変なことも多いし、意見が合わずにぶつかることもある。
でもそんなことはあって当たり前だし、みんなの意見があるからこそ、
ひとりではできないものがつくれる。
小豆島で生まれた本『植物からのメッセージ』。
機会がありましたら読んでいただけるとうれしいです。
気になる方は、月樹舎さんのサイトで販売していますのでぜひ覗いてみてください。
information
tsu ki ki sha
月樹舎
Web:月樹舎
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