連載
〈 この連載・企画は… 〉
海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。
writer profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
https://homemakers.jp/
6月、梅仕事の季節です。
梅干し、梅シロップ、梅酒、梅コンポート、梅酢など、1年分の梅食材を仕込む季節。
私たちにとって、特に「梅干し」は欠かせない食材なので、
梅仕事は暮らしの大事な仕事です。
小豆島に移住して、この地で育った梅で梅干しをつくるようになって
今年で9年目(途中仕込めなかった年もありますが)。
ようやくレシピも落ち着いてきたので、
今回は私たち〈HOMEMAKERS〉の梅干しのつくり方をご紹介します。
塩分18%の昔ながらの梅干しづくりです!
まずは主役となる「梅」の準備。
梅干しに使う梅は黄色く熟した完熟梅が理想的。
黄色く熟して、樹から自然に落下した梅を使うのが最高なのですが、
それはなかなか難しいので、熟し始めた頃に木から梅を手摘みします。
ちなみにうちは梅専門の農家ではないので、
そんなにたくさんの梅の木があるわけではありません。
祖父が残してくれた大きな梅の木。
もう収穫しないからと近所の方から譲り受けた梅の木。
耕作放棄され、山に戻ってしまいそうな段々畑に植えられている木も多く、
自然栽培といえば聞こえがいいですが、自然の中でワイルドに育った梅たちです。
農薬も化学肥料も使わず、自然の中で育った梅で梅干しをつくれることがうれしい。
収穫した梅は、より柔らかくふっくらした梅干しになるように
「追熟(ついじゅく)」させます。
収穫してからも梅は呼吸していて、熟していきます。
このとき気をつけないといけないのが、追熟させる環境。
ビニール袋などに入れたままでは傷んでしまいます。
おすすめなのはダンボールに新聞紙を敷いて、
そこになるべく重ならないように梅を広げ、フタは半開きの状態にして、
常温で直射日光の当たらない風通しのいいところに置いておくこと。
そうすると、梅が緑色から黄色に変わり、なんともいい香りがしてきます。
皮が柔らかくなってきたら、梅干しにするグッドタイミングです!
(ちなみに最初から熟した黄色い梅であれば、この追熟は必要ないです)
さて、ようやく梅干しづくり。
大きな流れとしては、
1 梅を塩漬けする(6月中旬)
2 赤紫蘇を入れる(6月下旬)
3 土用干しする(晴れの日に3日ほど干す)(7月下旬)
という感じ。
時期はあくまでも目安で、赤紫蘇を入れるのが7月になってしまっても、
梅を干すのが8月になってしまっても、梅干しがつくれないわけじゃないです。
ただ、梅が採れるタイミング、赤紫蘇が採れるタイミング、
晴れが続くタイミングに合わせると、だいたいこのような時期になります。
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【材料】
・黄色く熟した梅 2キロ(直径4センチくらいの梅だと60〜70個)
・塩 360グラム(梅の重量の18%)
1)梅をやさしく水で洗ってから、梅のなり口についている
黒いヘタを竹串などで取り除きます。
きれいな布巾やタオルでひとつずつ梅の水気をふきとります。
2)ガラス瓶や陶器など消毒したきれいな保存容器を用意し、
まずは底に塩を薄くふり、梅、塩と交互に入れていきます。
塩は3分の1ほど残しておき、最後はその塩で梅を覆い隠すとカビにくいです。
3)しっかりと梅酢(梅のエキスと塩分がまじった液体)があがるように、
重しをのせます。
4)少しずつ梅酢があがってきます。理想的には毎日様子を見て、
容器を傾けたりして梅酢を全体に行き渡らせると、カビにくいです。
5)1週間ほどして梅全体が梅酢に浸かった状態になったら重しを軽くします。
梅が梅酢に浸かっていれば、重しを外してもOK。
HOMEMAKERSでは、容器にポリ袋を入れて、
そのポリ袋の内側をアルコール消毒してから梅と塩を入れてます。
重しはビニール袋を二重に重ねて水を入れたものを使っています。
それと、このときにできた梅酢は、実は調味料として重宝します!
赤紫蘇を入れる前の梅酢を特に「白梅酢」というのですが、
うちではこの白梅酢を別の容器に少し取り出して保存しています。
鶏肉の唐揚げをするときに、鶏肉の下味をつけるのに使ったり。
塩味と酸味がグッド!
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鮮やかな赤色の梅干しをつくりたいときは、塩漬けした梅干しに赤紫蘇を加えます。
赤紫蘇を加えずに「白干梅」にすることもできます。これはお好みですね。
【材料】
・赤紫蘇 葉だけで200〜400グラム(梅の重量の10〜20%)
・塩 赤紫蘇の重量の18%
1)赤紫蘇の葉を摘み取って、大きなボウルに水を張って洗います。
ザルに上げてしっかり乾かします。布巾やタオルで拭いてもOK。
2)水気をしっかりと切った赤紫蘇をボウルに入れて、塩を半量加えてよくもみます。
アクが出てくるので絞って、絞り汁(アク)は捨てます。
これをもう一度繰り返します。
3)アクを絞り出した赤紫蘇に、塩漬けしてあがってきた梅酢を
カップ1杯くらい加えて、赤紫蘇をほぐします。
4)ほぐした赤紫蘇と赤く染まった梅酢を、梅の塩漬けの容器に入れます。
赤紫蘇を梅の上に広げて全体がよくなじむようにします。
5)梅全体が梅酢に浸かるようにして、土用干しまで1か月ほど待ちます。
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梅雨が明けて、3日連続で晴れ予報の日を狙って梅を干します。
焦らなくても7月〜9月上旬くらいまでに干せれば大丈夫。
天日干しすることで、殺菌効果と余分な水分を飛ばして保存性を高める効果があります。
1)大きなザルに梅同士がくっつかないように離して並べます。
赤紫蘇も水分を切って一緒に干します。
ザルの下は風がよく通るように空間をつくっておきます。
2)太陽の光がしっかり当たるところで干し、
1日に1〜2回ほど上下をひっくり返して全体を干します。
夜は室内に取り込みます。これを3日ほど繰り返します。
3)干し終わって熱がとれたら、ガラス瓶などきれいな容器に入れて
涼しい場所で保存します。
すぐに食べることもできますが、酸味と塩味がとんがっててびっくりします(笑)。
3か月くらい経つと、全体の味がなじんでおいしい梅干しに。
寒さを感じるようになった頃、ようやく食べ頃になる感じですね。
梅干しづくりは、正直ちょっと大変です。
時間と手間がかかります。
塩漬けして、赤紫蘇入れて、天日干し。
「簡単、楽ちん、手間いらず」とはまったく逆ですが、
そこにはちゃんとつくることの楽しさと充実感、
成果物としてのおいしい梅干しが待ってますよ。
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