宿と喫茶〈おかげ荘〉 真鶴の食材を使った創作料理で 迎えてくれる三姉妹のような母娘

神奈川県南西部の真鶴町に、〈おかげ荘〉という少し変わったネーミングの民宿がある。
おかげ荘は1日1組限定の宿で、昼間は〈おかげカフェ〉という喫茶店も営む。
約30年続くこの民宿は家族経営で、創業からスタイルを変えながら、
家族みんなにずっと守られてきた。宿でありながらも、
地元の町民にも愛されるその場所には、代々受け継がれている心遣いがあった。

「自分たちだけの時間」を過ごせる宿

おかげ荘は、真鶴港から海に背を向けて少し坂を登った場所にある。
かわいらしい手づくりのウェルカムボードを横目に玄関を開けると、
手づくりの雑貨が壁に飾られ、おばあちゃんの家に遊びにきたように
ホッとする感覚になる。常連客になると、
「ただいま!」と言って入ってくる人もいるという。

中に入って左手、1階の大広間には低いテーブルと椅子が並ぶ。
普段はおかげカフェとして、近くに住む人たちが
ランチやデザートを楽しむ場所になっているのだ。

2階に上がると12畳の和室と、6畳の和室がひと部屋ずつ。
宿泊する人は、1泊2名からこれらの部屋を貸し切りにできる。
窓からは建物越しに真鶴港が見え、どの部屋も暖かい光が差し込む。

「1日1組限定にしてから、子連れのお客さんが増えましたね。
大人より子どもが多いときもあります。大人4人に子ども7人とか。
貸切だと、ほかのお客さんに気を遣わなくていいから好まれるみたいです。
これからベビーチェアやベビーバスも入れて、
もっと子どもたちが安心して泊まれる場所にしようと思っています」

そう語るのは“広報担当”で長女の青木千春さん。普段はスーパーで働きながら、
HPの運用やイベント出店の際に宿の手伝いをしている。

おかげ荘は家族経営。まるで3姉妹のような母娘は、左から長女の千春さん、母の美代子さん、次女の佳美さん。

「チェックインをして、そのままどこにも行かずに帰っていくという人も結構います。
きっとそういう人は自由な時間、自分だけの時間をつくりにいらしてると思うんです。
だから私たちも、基本的には”何もしない“ことを心がけています」

おかげ荘の3人は、おいしいごはんと、静かな場所を提供するだけ。
あとはどう使うかは泊まる人たち次第。
ママ友同士で集まって、子どもたちの運動会が始まることもあれば、
仕事仲間で集まって、泊まりがけで経営戦略を立てる、
そんな使い方をしている人たちもいる。

静かな港のまわりで、そこでとれたおいしい魚を食べながら、
まわりの人の目を気にせず泊まれる場所。
こういう使い勝手のいい場所は、ありそうでない。

おかげ荘は料理が自慢。朝食では港前のひもの屋〈高橋水産〉の地魚を使った干物が楽しめる。

「うだつ」があがるまち!? 徳島県三好市をぶらぶら歩き

東は徳島、西は愛媛、北は香川、南は高知に接する、
ボーダレスカルチャーが魅力の三好市

徳島県三好市ってどんな場所?と聞かれると
きっと旅行で訪れた人ならば、
景勝地である大歩危(おおぼけ)小歩危(こぼけ)のある祖谷(いや)や温泉など
徳島の奥地だからこそ出会える秘境の美しさについて話すはずだ。

ところが実際に三好に暮らしている住人たちは、こう答える。
「四国の真ん中にあって、あちこち行くのに便利なんですよ」。
旅人の四国行脚の拠点として滞在を勧めるあたりは
さすが、「おせったい」のお遍路文化が息づく徳島県人だ。
と決めつけてかかると、
「そうはいっても、自分たちは “徳島県人”というアイデンティティ意識は
薄いかもしれない」と地元人から戻ってきた。
なぜなら、隣県のあちこちに通勤している人も多いことから使う方言はバラバラ。
県外から三好に働きに来る人、引っ越してきた人もいる。
三好は四国4県の市町村の中でもっとも大きな面積を持ち、
東は徳島、西は愛媛、北は香川、南は高知に接しているから
ボーダーレスな感覚の人が多いのかもしれない。

筆者は以前、高知龍馬空港から祖谷方面に入ったことがある。
吉野川をたどりながら池田町に向かう際には、徳島阿波おどり空港からだった。
今回は、ピンポイントで池田町に一番近い空港といわれている高松空港を利用。
到着寸前まで、なぜか高知に到着すると勘違いしていた。
まあ、それほどまでにアクセスの選択肢も多いということだ。

標識は、徳島行きやら、高松行きやら。反対方向から見ると松山行きになってしまうのだから、四国の交差点のような場所というのもうなずける。

三好市池田町のメインストリート、駅前通り。平日昼間はひっそりとしているが、夏になると入りきらないほど人が集まり、阿波踊りが繰り広げられる。

2006年に6町村が合併して三好市となるまで、
現在の三好市役所のある池田町は、三好郡池田町だった。
全国高校野球選手権大会優勝3回、準優勝2回の実績があり、
「やまびこ打線」「さわやかイレブン」で知られるあの池田高校のある池田だ。

土讃線 阿波池田駅から続くアーケード商店街、駅前通りを歩く。
個人商店の看板や風情に、どことなく昭和の残り香が漂い、
右へ左へと立ち寄りたくなってしまう。
なかでもひときわ目をひくのは、喫茶〈21世紀〉。
20世紀の時代には、21世紀というと遠い未来のように感じたのが、
すでに21世紀となってしまった今、このネーミングを目にするだけで、
急に昭和の時代へとタイムスリップさせてくれる。

駅前通りにある、ひときわ目をひくショーウインドウ。オムライスやミックスフライ定食など、洋食好きにはたまらないメニューがずらり。

笑顔が素敵な看板娘の内田貴子さん。「一押しメニューはチキン南蛮です」。ちなみに21世紀というネーミングは創業した1979年創業当初に21世紀まで続けられますように、という店主の願いから名づけられた。

おすすめのチキン南蛮は手前のお皿。見よ! このボリューム! お腹をすかせたティーンエイジャー(池田高校生)の聖地だけあり、ボリュームたっぷり。

〈釧路マーシュ&リバー〉 幻想的な氷と雪の絶景! 冬の釧路川カヌー

「冬の北海道でカヌーを楽しもう!」なんていうと、
「冬にできるの!?」「寒くないの!?」と驚く人が多いかもしれませんが、
カヌーのメッカ、道東の釧路湿原を流れる釧路川では、
冬のカヌーは近年人気のアクティビティです。
極寒の冬の朝こそ美しい〈釧路マーシュ&リバー〉の
カヌー&湿原ウォッチングツアーに参加し、白く輝く冬の絶景に出合いました。

冬でも安全安心、自然が織りなす別世界へ

氷点下20度近くまでしばれた(北海道弁で「冷え込んだ」の意味)2017年1月中旬の朝8時。
天気は快晴、風はなし。あまりの冷気に頬が少しぴりぴりしますが、絶好のカヌー日和です。

事務所内でドライスーツを着てから出発です。(photo:釧路マーシュ&リバー)

ツアーの始まりはドライスーツの着用から。
ガイドさんの手を借り、首、足首、手首がキュッとすぼまった防水性、
保温性に優れたスーツに身を包むと、「カヌーに乗るぞ!」という気分が盛り上がってきます。

ドライスーツの上から自分のアウターを着ることができるので、防寒もばっちり。
着心地も悪くありません。ただ体にぴたっとしたアウターより、
少し余裕のある大きさのものを着たほうが動きやすいかもしれません。

釧路川は屈斜路湖を源流とし、太平洋に注ぎ込む全長154キロの一級河川。
緩やかな傾斜、穏やかな流れが特徴で、
日本最大の湿原〈釧路湿原〉の豊かな自然を楽しみながら、カヌーで川下りができる場所です。
ちなみに冬の釧路川は冷え込みが厳しくなると河口に氷が溜まっていきますが、
完全結氷することはほとんどありません。そのため塘路湖(とうろこ)周辺の中流域では、
冬のカヌー体験が可能なのです。ただ今回は強い冷え込みが続き、
通常の釧路川本流コースに氷が増えて危険なため、
支流のアレキナイ川をゆったり往復することになりました。

北海道知事が認定する「北海道アウトドアガイド」の資格を持つ、〈釧路マーシュ&リバー〉の斉藤松雄さん。

ツアー発着地点は、事務所から車で約20分走ったところにある塘路湖そばのカヌーポート。
ライフジャケット着用後、釧路マーシュ&リバー代表でガイドの斉藤松雄さんが、
(今まで落ちた人はひとりもいないということですが、)
万が一、川に落ちたときにとる姿勢など注意点を教えてくれます。

その後、赤いカナディアンカヌーに乗り込み、いざ川へ!

神様が海を渡る。 真鶴で愛され、受け継がれる 〈貴船まつり〉の美

写真提供:真鶴町

夜の海に鳴り響く笛と、太鼓の音。花飾りを付けた4隻の船が、
剛腕たちの漕ぐ「櫂伝馬(かいでんま)」に曳航(えいこう)され、
大きく左右に揺れながら進んでいく。その中心に位置するのは「神輿船」、
時折「囃子船(はやしぶね)」から暗闇の海に飛び込む若者。
神輿船がちょうど港の真ん中にくる頃、その頭上に花火が打ち上がる……。

まるで何かの映画のワンシーンのような美しいその光景。
神奈川県真鶴町で毎年7月27日、28日に行われる貴船まつりのクライマックスだ。

「日本三船祭り」のひとつといわれる貴船まつりは、
真鶴の町民に古くから愛され、国の重要無形民俗文化財に登録されている。

その美しさはどこから来て、どう受け継がれているのか。
真鶴の人々のアイデンティティとも言える貴船まつりを取材した。

貴船まつりとともに育つ真鶴の人々

夜の海を船が渡る数時間前、まちなかではお神輿の担ぎ手の声が鳴り響いていた。

「そーりゃー!さー!そーりゃー!さー!」

掛け声に合わせ担ぎ手のテンションもどんどん上がる。
その荒々しさに初めて来た人は驚くだろう。
お神輿は2日間をかけてまち中を廻り、さらには海の中にも入る。
「みそぎ」といわれ、お神輿を海の中に沈め清めるのだ。

お神輿は全部で3基。そのうちメインの「本神輿」は、しきたりにより男性しか担ぐことができない。

海の中に入るお神輿。実は足がつかないぐらい深くなるため、立ち泳ぎする必要がある。

お神輿が進む道には、必ずその前に「花山車(はなだし)」と
「鹿島踊り」という出し物が通る。
どちらもお神輿が通る前に道を清めるのだという。
また、同時に「屋台囃子(はやし)」を乗せたトラックがまち中を廻り、
笛と太鼓で祭りを一層盛り上げる。

鹿島踊り。まだ小学生の子どもたちも一緒に踊る。お神輿とは対照的にゆったりとした踊りだ。

お神輿だけを見るとかなり荒々しいお祭りであるが、
祭り全体の参加者の年齢や性別はさまざまだ。
ここに、貴船まつりが江戸時代から町民に大事にされてきた理由があると、
貴船神社の宮司である平井義行さんは語る。

貴船神社の宮司である平井義行さん。平井家は平安時代から貴船神社の宮司を務めていると言われる。(撮影:MOTOKO)

「貴船まつりは町民みんなが参加できるお祭りです。
小学生の頃は鹿島踊り。年齢が上がると囃子太皷。
さらにあがるとお神輿、という風に順繰りにあがって、
だんだんお祭りの本筋のほうに入っていくという体系があるんです。
例えば鹿島をやっている子たちが、
“俺も来年になったら太鼓たたけるんだ”といった話をしたりします。
そうすると、先輩、後輩の関係ができあがる。
そういうつながりが綿々と未だに続いているんです」

こうして子どもの頃から貴船まつりとともに育ってきた人々の、
貴船まつりに対する思い入れは半端ではない。
真鶴の1年は貴船まつりを中心にしてあると言われ、
お祭りが近づくにつれまち中がソワソワしだすのだ。

「お盆や正月に帰ってこないような人も、この日に合わせて真鶴に帰ってきて、
同窓会やクラス会が開かれたりもします」と平井宮司は微笑む。

「こうした、いわゆる観光目的でない町民によるお祭りであることが国にも認められ、
平成8(1996)年には国指定重要無形民俗文化財にも登録されました。
親子でお守りする、貴船神社のように小さな神社が執り行うお祭りが、
国指定の文化財に登録されることは非常に珍しいことで、
これはひとえに多くの真鶴の人々が、祭を愛し育ててくれた賜物と、
深く感謝しています」

真鶴の絶景アトリエで作陶する 陶芸家〈風籟窯〉井上昌久さん

使い手とつくり手の心を自由にする1枚を

「丁寧に精緻(せいち)につくるというよりも、基本的な形をしっかり
つくってやれば、あとは窯が絵を描いてくれるっていう感覚がある。
薪窯のおもしろさっていうのはそこですね」

そう話すのは、神奈川県真鶴町の北側にあたる岩地区を拠点に
制作を続けてきた陶芸家の井上昌久さんだ。

真鶴駅から車で10分ほどの高台にあるアトリエは、
〈松本農園〉のみかん畑と、広大な相模湾を望むまさに絶好のロケーション。
アトリエの裏手には3か月かけて完成させたという自作の穴窯もあり、
ここで初夏と秋の年2回、それぞれ約10日間にわたり300~400点ほどの作品を焼く。
釉薬を使うのはほんの一部のみ。
長時間高温で焼成する「焼締め」が井上さんのスタイルだ。

「最後まで完成させようとするよりも、花を飾ったり、料理を盛ったりすることで
ようやく完成するくらいのユルさがあるほうが、
かえっておもしろいんじゃないかなと思いながらやっています。
そうすることで、自分自身もある程度自由な気分を維持できていますね」

そうしてつくられた作品は、アトリエに隣接する〈ギャラリー風頼窯〉で
常時展示販売されている。

アトリエに隣接する〈ギャラリー風籟窯〉。色、模様、形もさまざまな井上さんの作品が並ぶ。

また2014年からは、民間の組織で立ち上がった
〈湯河原・真鶴アート散歩〉の拠点のひとつとして参加したり、真鶴の芸術祭
〈真鶴まちなーれ〉の「差の湯の会 差を見るお茶会」などにも協力している。

窯の完成から16年。町内外からギャラリーを訪ねてくれる人々も増す一方、
自治会活動にも関わるなど、作家として、ひとりの町民として
すっかりと真鶴に馴染んでいる井上さんだが、
意外にも真鶴で生まれ育ったわけではないという。

作品のほとんどは釉薬を使わず、窯の中で起こる偶然に任せる。井上さんは「窯が絵を描いてくれる」と表現した。

30年に及ぶ教員生活の始まりは真鶴から

井上さんと真鶴との接点は、いまから46年前まで遡る。
もともと画家をめざしていた井上さんは、東京の大学を卒業し、
新米美術教員として真鶴中学校へ赴任してきた。

「真鶴に来たのはたまたまの縁。あの頃は、鎌倉に住んでみたくて
鎌倉地区を志望していたんだけど、その年の採用がなくてね。
『もう終わりだろう』と諦めていたら、小田原の教育委員会から
引っ張ってもらえたんです。それで真鶴中学校に勤めることになりました。
それまで真鶴のことをまったく知らなかったんだけど、
初めて訪れて港の周辺を歩いて回っただけで
『これこそ自分が求めていたものだ!』という気分になったのを覚えています。
自分の郷里が群馬の館林市で、海も山もない平野だったから、
こういう場所にすごく憧れがあったんです」

真鶴で教員として過ごした時間はわずか6年。
その後、湯河原で11年、小田原で7年、
54歳で早期退職するまでの5年間を箱根の仙石原で過ごした井上さんは、
2000年に現在の場所へ越してきた。
現在も、真鶴の教え子たちがアトリエに遊びに来ることもしょっちゅうだとか。

西日が差し込み、「おかあさん」と呼ばれる愛猫もまどろむ心地よさ。窓の外には相模湾が広がる。

「真鶴への赴任が決まったうれしさが、
そのまま学校の生活につながったというのはありますよね。
夢中で野球部と美術部の顧問をして、秋には陸上部と一緒に走ったりして。
自分も若かったし、生徒との距離もそんなになくて、
ほとんど友だちづき合いみたいな感覚でやれたのがよかったんじゃないかと思う。
真鶴を離れてからも、常に自分の周りには教え子が来てくれるような状況がありました。
ここの窯をつくるときもレンガを運ぶのを手伝いに来てくれたりね」

授業をするうえで大切にしていたのは、
「美術=上手・下手」という先入観を取り払い、
「絵を見ること、描くこと、ものをつくることの
楽しさを知ってもらって、生徒を送り出すこと」だった。

「誰もが美術を好きになれるような授業をやりたいという気持ちが一番にありました。
だから卒業してからも、絵描きになるとか彫刻家になるとか、
そういうことにこだわらず、毎日の生活のなかでも、ものを見ること、
つくることの楽しさがわかるような子どもになってもらえたらいいなと」

達人の案内で歩く! スノートレッキングで 西和賀の雪を満喫

岩手県の山間部にある西和賀町。 積雪量は県内一、人口約6,000人の小さなまちです。
雪がもたらす西和賀町の魅力あるコンテンツを、
全国へ発信していくためのブランドコンセプト〈ユキノチカラ〉。
西和賀の風景をつくりだし、土地の個性をかたちづくってきた雪を、
しっかりタカラモノとしてアピールしていくプロジェクトです。
今回は、「雪」そのものを楽しむ、西和賀ならではのアクティビティについて。
過去の連載はこちらから。

のべ9000人が参加! 西和賀ならではの「雪の楽しみ方」を達人に教わる

年間累積降雪量が10メートルにもおよび、
時には1日の積雪量が2メートルを超えるという西和賀。
そんなまちの個性づくりに欠かせない雪と、
雪がもたらす風景・食・文化を体感できる1泊2日の〈ユキノチカラツアー〉が、
2月11日~12日に実施される。
ツアーは、町の一大イベント〈雪あかりinにしわが〉の日程に合わせたもの。
雪像やかまくらをつくり、その中にキャンドルをともす〈雪あかり〉は幻想的な美しさで、毎年町民はもちろん多くの観光客をも魅了している。

昨年の〈雪あかりinにしわが〉。町民参加型のイベントとあって、町内のあちこちで幻想的な光景が広がる。

ツアーではこの雪あかりのほかにも多彩なメニューを揃えており、
雪あかりとならび西和賀の雪の魅力を体験できるとして人気なのがスノートレッキングだ。
案内するのは、自然観察指導員・写真家で、西和賀の自然をこよなく愛する瀬川強さん。
瀬川さんは隣接する花巻市の出身だが、
29歳の時、渓流釣りで訪れた西和賀でカタクリの花の群落を見て感動し、移住を決意。
最初は電気のない作業小屋でひとりで暮らし、
その後1989年に家を建てて家族とともに定住した。

瀬川強さんと奥様の陽子さん。

ヒマラヤに2度も行くなど国内外のさまざまな自然を目にしてきた瀬川さん。
そんな瀬川さんが移住を決意するほど感動したというカタクリの花には、
どんな魅力があるのだろうか。
「カタクリは群がって咲く花で、群落はまるでピンク色の絨毯のようでした。
しかもこの花は咲くまでに7~9年間もかかるので、
その群落があるということは一帯の自然環境が何十年も変わらず守られているという証拠。
日本にもこんなすばらしい場所があるのだと感動したんです」

自然保護や古民家保存などの活動にも携わる瀬川さん。西和賀に移住して30年近く経つが、行政の協力もあって町内の自然環境に大きな変化はないという。

瀬川さんが撮影したカタクリの群落の写真。町内には群生地が数か所ある。雪解けとともに咲くカタクリは、西和賀に春の訪れを告げる花だ。写真:瀬川さん提供

能登島に島流し? つながりを生む体験ツアー 〈うれし!たのし!島流し!〉

「刑」を通して島の暮らしを体験する

黄金色に輝く稲穂が広がる田んぼで、
都会から来た人たちが地元の人たちと一緒に稲刈り。
それだけならよくある体験ツアーだが、これは「稲刈りカイカイの刑」と呼ばれる刑。
能登半島は七尾湾に浮かぶ能登島で年に4回開催されている、
その名も〈うれし!たのし!島流し!〉というツアーの一環なのだ。

囚人服を着せられたツアー参加者は「流人」、受け入れる島の人が「看守」となって、
「とことん泥まみれの刑」や「素潜りの刑」などの体験プログラムで、
島の暮らしを体感するというユニークなツアー。

豊かな自然があり、穏やかな海には野生のイルカも住む能登島は、
江戸時代には加賀藩の政治犯の流刑地だった。そんな歴史を逆手にとり、
都会を忘れ、強制的に田舎暮らしを楽しんでもらおうというコンセプトなのだ。

「とことん泥まみれの刑」として田植えをする流人たち。

こちらは「火炙りの刑の準備の刑」。火炙りの刑とは……?

毎年夏に行われる「能登島向田の火祭り」の高さ30メートルの巨大松明に投げ込む、小さな手松明をつくっていたのだった。農業などだけでなく、能登の伝統的な祭りも体験できる。

もともとは、東京丸の内で社会人向けにさまざまな講座を開講している
〈丸の内朝大学〉の地域プロデューサークラスの企画からスタート。
〈のと里山空港〉の活用を目的として提案されたプロジェクトのひとつだった。
東京からの受講生たちとミーティングを重ね、ツアー概要を練っていくなかで、
島の受け入れ側として、能登島観光協会青年部を立ち上げることに。

中心メンバーの石坂淳さんは、能登島で生まれ育ち、
東京での大学生活と社会人経験を経てUターン。
現在は能登島の祖母ヶ浦(ばがうら)という地区で家業の民宿を営んでいる。
「いろいろ歴史を調べてみると、僕らの先祖たちが島流しになった罪人たちを
丁寧におもてなししていたことがわかったんです。
そんな先祖に対して誇りを持てました」

能登島観光協会青年部の石坂淳さん。石坂さん一家が営む宿〈石坂荘〉の食事は地の魚がたっぷりでおいしい!

このプロジェクトが立ち上がるまでは、島のよさを伝えたり、
まちおこしをしようという意識はなかったという。

「島流しツアーがきっかけで島のことを考えるようになりました。
それまで能登島をまったく知らなかった人たちが参加してくれて、
食事がおいしいとか、人があたたかいとか、自然が豊かとか、
いろいろなことを感じてくれる。その反応がすごくうれしくて。
僕らが当たり前だと思っていたことがとても価値のあることなんだ、
すごく豊かな島に暮らしているんだということが認識できたんです」

鶏ちゃん、ねずし、etc. 温泉のまち、飛騨・下呂市で 愛され続ける絶品ソウルフードを 堪能してきた!

下呂市の美しい自然を堪能しながら舌鼓

飛騨エリアとは、高山市、飛騨市、下呂市、白川村の4市村のこと。
しかしそれらは広く、全体としての特徴がありながらも、
それぞれには深い文化が醸成され、おもしろいスポットも誕生している。

日本三名泉のひとつに数えられる下呂温泉を有する下呂市。
飛騨のなかでも南に位置し、また異なる文化圏も見られる。
少し車を郊外に走らせれば、伝統の食と現代の食の両方を楽しむことができる。
下呂温泉と合わせて、魅力あるスポットが満載だ。

ノスタルジックな〈ジークフリーダ〉でドイツ菓子を

オープンの10時に合わせて、人が集まってくる。
下呂のまち中からは少し離れていて車がないと不便な場所だが、
それでも地元の人からも観光客からも人気がある〈ジークフリーダ〉。
2002年、北條達也さんが本格洋菓子のショップ兼カフェをオープンした。
北條さんは下呂市小坂町出身。名古屋のホテルに勤めた後、
ドイツとオーストリアでパティシエの修業をした。

「ドイツにいたときに、友だちにハイキングに連れていかれたんです。
山を登っていくと、ポツンとレストランがありました。
それほど人もいないような山の上なんですが、ドアを開けると人がたくさんいて、
すごく活気があって盛り上がっていたんです。
そのお店のイメージで、ちょっと離れた場所にお店をつくりました」

ジークフリーダという名前は、オーストリアでお世話になった
おばあちゃんの名前だという。ドイツ語のネーミングではあるが、
お菓子は地域に馴染むようにアレンジしている。

「この地域で食べてもらうのに、そのままドイツ菓子を出しても
受け入れてもらえないかなと。むしろオリジナルのお菓子のほうが多いです。
結局、おいしいと思ってもらえればいいわけで、
実は“ドコドコのお菓子”ということにはこだわっていません」

窓側の席からは、木々の隙間から飛騨川を見下ろすことができる。
秋冬になると木々の葉が落ちて、景色もひらける。
アンティークの木のイスや什器に囲まれた空間は、
ホッと息をつけるようなゆるやかな空気が流れている。

information

map

ジークフリーダ

住所:岐阜県下呂市萩原町跡津1421-5

TEL:0576-53-3020

営業時間:10:00~18:30(日曜日は18:00まで)

定休日:月曜・第4火曜日

http://www.siegfrieda.com/

〈緑の館〉が仕掛けるコーヒー豆焙煎所

下呂には、1975年にオープンした〈緑の館〉という有名な喫茶店がある。
コーヒーを中心としながら、たくさんのアンティークの掛け時計やカメラ、
ライトなどに囲まれ、ジャズに包まれる。
マスター野村辰己さんのこだわりを感じられるお店だ。

その息子さんである2代目の野村祐貴さんは、
一度、一般のコーヒー会社に勤務し、緑の館に戻ってきた。
喫茶店の営業を手伝いながら、同時にコーヒー豆の自家焙煎を始めた。
当初は店で使用する分だけを焙煎していたが、次第に焙煎を突き詰めてみたくなった。

「もっとコーヒー豆を発売するということに特化してみたくなったんです」と祐貴さん。
2013年、緑の館の隣に新たに焙煎所を立ち上げた。
「基本的には物販ですが、コーヒー教室もできるし、コーヒー豆について
詳しくないお客様とコミュニケーションできるスペースにもなりました」

ところでコーヒーは全世界的に流行している。日本も例外ではない。
サードウェーブという言葉が用いられ、華やかでフルーティな味わいが
人気となっている。だが、そのような流行を追いかけるわけではない。

「基本的には、自分が好きで気に入ったものを販売しています。
こだわった豆を置いてはいますが、
それを一方的に押しつけるようなことはしたくありません。
たとえば浅煎りに特化したような売り方もできると思いますが、
この下呂では昔ながらのコーヒーの味が好きな人もたくさんいます。
そのような地元のニーズにはきちんと応えながら、
同時にサードウェーブのような新たなコーヒーの世界も提案していきたい」

コーヒーは多様化しているという。しかしゆるがない共通点もある。

「いいものを新しいうちに。
コーヒーはフルーツなので、生鮮食品だと思ってもらいたい。
新鮮なコーヒーのおいしさを知ってもらいたいです。
ひと昔前は、誰がつくっているかわからない豆がたくさんありましたが、
いまは、誰がつくっているのか、トレーサビリティも可能です。
農薬を使っているかどうかもすぐわかります」

常時、20種類程度のコーヒー豆を販売しているという緑の館。
瓶詰めのコーヒーやドリップ用パックも発売し、下呂でコーヒーの普及に努めている。
いつもよりちょっとこだわりたい、そんなときは緑の館に足を運んで相談してみよう。

information

map

緑の館

住所:岐阜県下呂市萩原町花池125-1

TEL:0576-52-3220

営業時間:8:00~17:00

定休日:木曜日

http://www.midorinoyakata.com/

馬瀬の美しい自然が、美しい鮎を育てる

馬瀬川上流鮎は、2007年に開催された「利き鮎会スペシャル in TOKYO」で、
日本一に輝いたことがある。姿、味、香りを総合的に審査された鮎は、
水がきれいな川でないとおいしくないと言われている魚の最たるもの。

馬瀬川はほとんど生活用水が流れておらず、
健全な森が育んだ良質な水が川をつくっている。
鮎は、その美しい水に生えている苔を食べる。
山から管理して、森林保全にも取り組んでいる結果が、鮎に表れているのだ。

そんな良質な鮎だから、塩焼きでシンプルに食べるのが一番。
美食家として知られる北大路魯山人も著書『魯山人の食卓』(昭和7年)のなかで、
「やはり、鮎は、ふつうの塩焼きにして、うっかり食うと火傷するような熱い奴を、
ガブッとやるのが香ばしくて最上である」と記している。

〈さとやまレストラン みず辺〉で提供される鮎の塩焼きは、
店の目の前の簗(やな)でとれた天然鮎。
塩のみの味つけだが、まずサイズが大きい。
魯山人にならって串に刺さったままかぶりつくのがいい。

30分かけてじっくりと焼かれた鮎は、肉厚でありながら
身がふんわりとして、口の中ですぐにほどけていく。
ハラワタもほんのりとした苦味にうまさが凝縮している。
串のままいただいたのに、あとにはきれいに骨しか残らない。

おいしい鮎を育んだ馬瀬川を目前で眺めながら、
馬瀬の美しい自然とそこから生まれた食を感じる贅沢な時間だ。

information

map

さとやまレストラン みず辺

住所:岐阜県下呂市馬瀬西村1508-1

TEL:0576-47-2002

https://www.facebook.com/maze.satoyama.mizube/

「巌立」を見上げ、小坂の滝をまるごと楽しむ

「巌立(がんだて)」という荒々しいネーミングを持つ岩壁は
高さ約72メートル、幅約120メートル。
なんと5万4000年前の噴火による溶岩が冷え固まったものである。
無数の柱が集まっているように見える柱状節理という現象が起こり、幾何学的で美しい。

この周辺は「巌立渓」と呼ばれ、自然豊かな景勝地。
小坂町は日本一滝が多い町で、5メートルを超える滝が216もある。
巌立からも、散策路を歩いて三ツ滝まで15分程度。
季節によって移りゆく自然とともに楽しみたい。

小坂の滝を巡りたい場合は、NPO法人〈飛騨小坂200滝〉が
さまざまなコースをガイドしてくれる。
「里山ふれあいゾーン」「奥山挑戦ゾーン」「秘境探検ゾーン」と
ランク分けもされているので、自分と相談して決められる。
日本一の滝のまちだけに、夏の沢登りから冬の氷瀑まで、
滝のすべてを知ることができる。

information

map

NPO法人 飛騨小坂200滝

〈まるはち食堂〉の鶏ちゃんは下呂のソウルフード

飛騨の南エリアでは、至るところで目にする「鶏(けい)ちゃん」。
鶏肉とキャベツを炒めて食べるシンプルなもの。
お店によって味つけなど多少アレンジが異なるが、
元祖ともいえるのが〈まるはち食堂〉だ。

現店主の伊藤みどりさんは3代目。鶏ちゃんを始めたのは、みどりさんの祖母である。
「豚ちゃんという豚肉を炒める料理がありましたが、
近くに養鶏場が多かったこともあり、それを鶏肉に変えて
鶏ちゃんを始めたんです。おばあちゃんの名前ではありません(笑)」

注文してみると、ジンギスカン鍋のようなドーム型の鉄板に、
クッキングシートが敷かれ、その上に鶏肉とキャベツがたっぷり。
火をつけたら、焦げないように混ぜ続けなければならない。
クッキングシートを破かないように注意が必要。
慣れていない人は、肉かキャベツを掴んで混ぜればいい。

火が通ったら下部の受け部分に落としていく。
追加注文があれば、全部食べきる前に頂上に乗せていく。

男性なら、ご飯があれば2人前くらいはぺろり。
醤油ベースにニンニクが効いていて、箸が止まらなくなる。

「うちはシンプルに鶏肉とキャベツだけです。
味つけも特別なアレンジをしているわけでもありません。
でももう50年以上やっていますね」

シンプルだからこそ、飽きずに長く食べられる料理。
下呂市民に長く親しまれてきた味を堪能したい。

おみやげに冷凍商品も。通信販売もしている。

information

map

まるはち食堂

住所:岐阜県下呂市御厩野139-1

TEL:0576-26-2077

営業時間:11:00~17:00

定休日:火曜日

お正月のごちそう「ねずし」

(写真提供:下呂市)

飛騨の冬の伝統料理のひとつ「ねずし」。
保存食として食べられてきたもので、本来はお正月にいただくものである。
冬場は雪も降るので野菜もとれず、漬け物が盛んな飛騨で、
保存食の文化は多様に広まっている。

つくり方を馬瀬にある〈さんまぜ工房〉の山本さとみさんに教わった。

「ご飯の中に、大根とにんじん、そしてマスを入れます。
麹を入れて2週間ほど寝かせます。そうして発酵したものがねずしです」

(写真提供:下呂市)

(写真提供:下呂市)

各地に発酵系の寿司はある。独特の酸味やにおいが苦手な人も多いかもしれないが、
ねずしはそれらに比べて甘酸っぱくマイルドで食べやすい。
お酒のおつまみとしても最適!

(写真提供:下呂市)

さんまぜ工房では、〈冬やわい〉という商品名で12月1日から発売を始めた。
ほかにも朴葉すしや五平餅など、馬瀬の食材ばかりを使った
手づくり商品を開発して販売。地元密着型の道の駅といえる。
馬瀬のお母さんたちの味を探しているならぜひこちらへ。

たかきび、かぼちゃ、よもぎ、紫いもなどの自家製あられを乾燥させていた。

information

map

さんまぜ工房

住所:岐阜県下呂市馬瀬西村1461

TEL:0576-47-2133

営業時間:9:00~16:00(1月、2月は15:00まで)

■日本三名泉と美しい川や滝のある「下呂市」をもっと知るには↓

グッとくる飛騨:下呂市

〈ビーチグランピング〉登場。 沖縄のプライベートビーチで 優雅に贅沢に楽しむ!

〈沖縄かりゆしビーチリゾート〉内に
グランピング施設がオープン!

グラマラスとキャンピングを掛け合わせた
今年人気のアウトドアスタイル、“グランピング”。
2017年1月、沖縄県初となる〈ビーチグランピング〉の
施設が国頭郡恩納村の〈沖縄かりゆしビーチリゾート〉にオープンします!

このビーチグランピングは、ホテルが所有するプライベートビーチに
テントなどを設置したグランピングサービス。

冬は沖縄のビーチもオフシーズンになりますが、
海に入ることが難しい季節にも、新しいビーチの楽しみ方を提案する試み。
ビーチの開放感、グランピングならではの行き届いたホスピタリティ! 
とことんリラックスすることができそうです。
料金は1泊2食付20,000円(1名)です。

ビーチに設置されたグランピングキャビンには、3つのコンセプトが用意されています。
ひとつは、青×白で統一した“ビーチスタイル”。

ビーチスタイル

2つめは優雅な“バリスタイル”。

バリスタイル

そして沖縄の伝統とリゾートらしさを融合した“琉球スタイル”。

琉球スタイル

グランピングをご利用の方は、
〈沖縄かりゆしビーチリゾート・オーシャンスパ〉のスパ施設も利用可能。
また、天候不順時等にはホテルに宿泊することができるので、
アウトドアの不安もないのがうれしいですね。

写真集 『のん、呉へ。2泊3日の旅』 「この世界の片隅に」 舞台を巡る

『シン・ゴジラ』、『君の名は。』と、大ヒット邦画が続いた2016年。
その決定版と言われるのが、アニメ映画『この世界の片隅に』。

こうの史代さんによる漫画作品の映画化で、舞台は第二次世界大戦中の広島県呉市。
戦争のなかでも明るさを忘れず、生活のちいさな喜びをかみしめて
前向きに生きる主人公“すず”を描いた家族ドラマです。
劇場では号泣する人も多数!?

この世界の片隅に 劇場アニメ公式ガイドブック』双葉社(1,800円 税抜)

主演声優をつとめるのは、女優ののんさん。
もともと2016年11月に少数の劇場で公開をスタートしたところ、
口コミで人気に火が付き、続々上映館が決定。
ただいま全国劇場にて大ヒット公開中なんです。

映画のなかで、なんといっても印象的なのが、広島・呉の美しい風景。
そんな映画の世界観を再び味わうことができる、
写真集『のん、呉へ。2泊3日の旅』(1,500円 税抜)が双葉社より発売されました。
主演声優をつとめるのんさんが、広島・呉の各地を巡り、
土地の魅力を伝えてくれます。

のんさんが訪れるのは、歴史の見える丘、商店街のれんがどおり、
呉湾など、作品にゆかりのある場所や、呉の魅力溢れる名所。
2泊3日の旅を楽しむのんさんの元気な姿と、美しい呉の風景は眼福!!

原作に登場するモガに扮したのんさんや、
本人作のモンペ製作過程は、作品のファンなら必見です。

冬本番。 茨城に〈あんこう鍋〉 の季節がやってきた!

まさに聖地!? 大洗町にあんこう鍋の季節が

いよいよ冬本番! 寒くなると恋しくなるのが鍋。
人気アニメ『ガールズ&パンツァー』の舞台としても
知られる茨城県の大洗町(おおあらいまち)に、〈あんこう鍋〉の季節がやってきました。

大洗町あんこう吊るし切り

あんこうは、西のふぐ、東のあんこうと言われる高級魚。
なかでも茨城で獲れるあんこうは、“常磐もの”として人気。
冬の寒い海を越すために肝が肥大化する、11月から3月が一番美味しい時期とされています。

あん肝は、見た目と食感から「海のフォアグラ」とも言われ、お酒の肴としてお馴染みですが、
実はあんこうは、骨以外の部分全てを食べられる魚。
身、肝、ひれ、えら、皮、ぬの(卵巣)、胃袋の全てを
余すところなく食べられるのが、〈あんこう鍋〉の魅力です。

地域によりベースとする味は変わりますが、大洗町では味噌味が一般的。
あん肝を鍋で炒り、そこにスープや野菜などを加えた後、
あんこうの身など全てを加えて完成!

茨城県央部発祥と言われる「あんこう供酢」

あんこう供酢は、水戸・大洗などが発祥といわれるあんこう料理。
あんこうの身や皮などを湯引きし、
あん肝を酢味噌に溶かした特製のタレで食べる調理法です。
大洗を訪れたら、是非味わってみてください。

〈すったて鍋〉の美味しさに 大感動。世界遺産だけじゃない! 飛騨・白川村でめぐった 注目スポット6選。

白川びとの営みが感じられる場所

飛騨エリアとは、高山市、飛騨市、下呂市、白川村の4市村のこと。
しかしそれらは広く、全体としての特徴がありながらも、
それぞれには深い文化が醸成され、おもしろいスポットも誕生している。

世界中から観光客が訪れる世界遺産集落にどうしても注目が集まってしまうが、
もちろんほかにも観光スポットはある。
そして白川村で地に足つけて日々の生活を送っている人たちも当然いる。
昔からの、そしていまを生きる生活に根ざした文化はおもしろい。

住むことで守られてきた合掌造り〈和田家〉

白川村といえばやはり世界遺産の合掌造り集落。
村には、保存され見学できる施設がたくさん残されているが、
なかでも大きなものが〈和田家〉。
現館長である和田正人さんは、まさにこの家で生まれ育った。

現在でも1階の半分は公開されているものの、
半分のスペースでは実際の生活を送っている。
「白川郷は、居住地が世界遺産になったのです。住んでいたからこそ、
古い住居が残されていたわけだし、いまでも住むことによって守られています」

茅葺き屋根が特徴的だが、約40年周期で葺き替えなければならない。
かつては「結(ゆい)」という互助制度によって、周囲の住民が協力して
屋根の葺き替えを行っていた。各家屋を順番に葺き替えていくものだ。
「最近では、集落内でも年に4~5棟ずつ葺き替えていますが、
そのうちひとつくらいは結で行いたいと思っています。
結を続けていくことで、技術も伝えていかないといけません」

雪深い、自然が強い土地。だから昔から人と人が力を合わせて生きてきた。
そうでないと住むことができないのだ。
いろいろなことがコミュニティの協力によって成り立っている。
それを象徴してくれるのが合掌造りだとも言えるだろう。

information

map

和田家

住所:岐阜県大野郡白川村荻町997

TEL:05769-6-1058

開館時間:9:00~17:00

定休日:不定休

素朴な大豆の甘みを味わう〈すったて鍋〉

白川村で報恩講などの仏事などで出されてきた料理、すったて汁。
昔から伝えられてきた料理ではあったが、特別なときにしか食べないものだったので、
一般的な家庭料理ではなかった。

時が流れ、それをアップデートしたものが〈白川郷平瀬温泉飛騨牛すったて鍋〉である。
平瀬温泉がある白川村南部地区の有志メンバー〈白川郷鍋食い隊〉によって開発された。

「すったて」とは大豆をすりつぶしたもの。かつてはミキサーなどもなかったので、
ゆでた大豆を手作業で摺っていた。意外と手間がかかるものだった。
現在のすったて鍋は、だし汁で大根、にんじん、ごぼうなどの根菜類を煮る。
そこにすったてを投入し、焦がさないように気をつけながら火にかける。
その上に軽く炙った飛騨牛を。

トッピングは季節の青菜、おこげ。そして注目は白川特産のきくらげである。
歯ごたえがよくプリプリだ。すったてのマイルドな食感にいいアクセント。
地元産のきくらげがこんなにもおいしいとは。

大豆がたっぷり使われているので、甘みが際立ってくる。
料理としてはシンプルなものだが、煮立たせてはいけないし、日持ちもしない。
じっくりコトコト料理していくもの。白川村の歴史と愛情がたっぷりだ。
う~ん、ご飯が何杯あっても足りない。

information

白川村役場[すったて鍋]

〈トヨタ白川郷自然學校〉が教えてくれる白川村の大自然!

合掌造り集落がある荻町エリアから車で10分程登った場所に、
馬狩(まがり)という地区がある。それほど遠くはないが、
荻町あたりの里から見ると、馬狩は雪深い秘境らしい。
そこにあるのが〈トヨタ白川郷自然學校〉だ。

キャンプ、スノーシュートレッキング、シャワークライミング、
さらにはイワナとり、山菜摘みなど、大自然を活用した
さまざまなアクティビティが揃っている。
宿泊施設も備えているので、丸1日、存分に楽しむことができる。

「白川村というとまず合掌造り集落をイメージされると思いますが、
実は白山の麓に位置し、広大な自然が広がっているのです」と教えてくれたのは、
自然學校でプログラムをつくっている黒坂 真さん。

「白川村には樹齢数百年というブナやミズナラなどの原生林が広がる大白川や、
高山植物や高層湿原、直径5メートル近くもあるカツラの樹木がある
天生県立自然公園など豊かな自然があります。
当初は自然學校の敷地内だけで活動していたのですが、
これだけの雄大な自然があるので、いまでは、白川村全体を
アウトドアフィールドとして、活用させてもらっています」

白川村を、“合掌造り集落”の見学だけではなく、
“アウトドアフィールド”と見て遊びに来る人も少しずつ増えているようだ。
また、白川村特有の取り組みも行われている。

「合掌造り集落の裏山をトレッキングに組み込んでいるコースもあります。
通常とは異なる視点で人々の暮らしと森とのつながりをひも解き、
紹介しながら歩きます。また子どもたちが、ミニ合掌造り家屋を
自分たちでつくり、田舎暮らしを味わう7日間のキャンプもあります。
実際に村の職人に講師として来てもらって伝統の技を教わります。
建てたあとは、もちろんそこに寝泊まりしますよ」

実はネイチャーアクティビティも、白川村は魅力的なのだ。
ぜひ合掌造り見学に組み込みたい。

information

map

トヨタ白川郷自然學校

住所:岐阜県大野郡白川村馬狩223

TEL:05769-6-1187

https://toyota.eco-inst.jp/

空き家活用が盛んな平瀬地区にお試しで住んでみては?

白川村の平瀬地区は、空き家をリノベーションして活用した住宅や施設が増えている。
合掌造り集落から離れたこの温泉地に、ゲストハウスやカフェがオープン。
その流れをくむべく、現在「お試し移住=試住」用に
空き家をリノベーションしている物件を訪れた。

ここを担当しているのは白川村地域おこし協力隊のメンバーで、
移住支援を担当している石井直記さん。
「去年、女性専用のシェアハウスをつくりました。
それをやってみて、場所があれば人は来てくれるという手応えを掴めました。
そこで次は空き家を活用した移住の体験住宅をつくろうとしています」

まだ改修中だが、来年4月にはオープン予定。
数週間から1か月程度のお試し移住を見込んでいるという。

「地域のお母さんたちに朝食をつくってもらったりして、滞在する人に
より地域のことをわかってもらえるような仕組みもできないか考えています。
また滞在する人がいないときには、食事を提供したり、
物販もできるスペースにしたいと考えています。
“お試しで住む”だけでなく、“お試しでつくって売る”こともできるようになれば、
地域内でいろいろなことが実験できておもしろいと思っています」

平瀬エリアは、空き家活用と地域へ人の呼び込みがうまく組み合わさって、
合掌造り集落のある荻町エリアとは違う魅力で動き出している。

50年の空白を経てオープンしたそば屋〈妙幸〉

前項で紹介した平瀬地区の空き家活用の取り組み。
その一番新しい例がそば店の〈妙幸〉。
店主の菅原幸一さんは、なんと51年ぶりのUターン!
白川村で10歳まで育ち、その後東京へ。50歳頃には、
定年後には白川村に戻りたいと、ぼんやりではあるが考え始めていた。

「移住するのはいいですが、自分なりの暮らしぶりも
考えないといけないと思っていました。何かしら仕事を持ってこないと
暮らすことはできないのではないかと思っていたんです。
いろいろな準備をしたなかのひとつがそばでした」

2014年から白川村を訪れ始め、役場や地域おこし協力隊、
小学校時代のつてなどをたどって物件を探し始め、現在の物件にたどりついた。

「外観はそれほど変わっていませんが、大正15年に建てられた家なので、
内装はそれなりにリノベーションしました。
玄関のアプローチの敷き石は、向いの旅館のお父さんがやってくれたんです。
私はお店をつくるのが最優先でしたので、外まで気が回らなかったのですが、
図面まで引いてくれて」

合掌造りのある荻町地区は古いまち並みが残っているので
移住者にとってはハードルが高く感じられるが、
平瀬地区はウエルカム態勢で移住者にやさしい。

「周囲のみなさんも、『久しぶりにこの家に明かりが点いた』と
喜んでくれているみたいです。僕よりも、みなさんのほうが
この家自体の歴史には詳しいですからね」

妙幸のメニューは現在4種類。オススメは精進煮かけそば。
7種類ほどの野菜をごま油で炒めて具にしたつけそばだ。
だしは鰹節のみであっさりとした味つけ。そばはつるっと食べやすい二八そば。

なかなか理想のそばはうてないという。それでも、
「天ぷらがほしい」「お酒が飲みたい」「卵焼きが食べたい」
などというリクエストが多いという。
それだけ地域にとって待ち望まれていたそば屋なのだろう。

information

map

妙幸

住所:岐阜県大野郡白川村平瀬126-65

TEL:05769-5-2378

営業時間:11:30~17:00

9年制の〈白川郷学園〉がコミュニティをつくる

今年の4月から国の法律の一部改正により、小学校・中学校をひとつの学校として
「義務教育学校」と呼ぶことができるようになったことをご存知だろうか。
全国に小中一貫校があり、それをより進めたかたちとして設置されることになる。
白川村でも、平成23年度から行われていた小中一貫教育〈白川郷学園〉を
進化させるべく、来年度からこの法律により、義務教育学校となる。

小学生から教科担任の先生から学ぶことができ、
中学生はいままで以上にリーダーとして取り組むようになる。
また、学校独自で「特色ある教育」のカリキュラムも組むことができる。
白川村が取り組んでいる特色ある教育としては、英語教育やふるさと教育がある。
白川村教育委員会教育長の倉 嘉宏さんは言う。

「白川村にはたくさんの外国人観光客がいらっしゃるので、それを活用し、
小学生が観光客相手に英語で説明する授業があります。
覚えたフレーズを言うだけですが、リアルな先生がいることはいいことです」

白川郷学園は地域との連携も積極的だ。
お年寄りや地域の人々が学校見学や授業・行事に関わるプログラムもある。

「小学校では囲碁やお花、太鼓など、地域の人が先生となって教えてくれています。
自分たちが教えているという自負があるので、とてもよい効果が生まれています。
また白川村には〈どぶろく祭り〉という行事がありますが、
その練習に子どもたちが参加して、
“大人たちと一緒に練習して話した体験が楽しかった”という声もあります。
こうして地域の人とコミュニケーションをとることが、
白川の個性を育むふるさと教育につながると思います」

白川郷学園は地域コミュニティのハブとして機能している。
こうして村が推し進める「白川びと」が形成されていくのだろう。

information

map

白川郷学園

住所:岐阜県大野郡白川村鳩谷字北長614-1

http://school.shirakawa-go.org/

■世界遺産の村「白川村」をもっと知るには↓

グッとくる飛騨:白川村

いよいよ移住生活がスタート? 仮住まい物件が見つかるまで

仮住まい物件はどう探す?

移住先探しの旅をするうち
三重県津市美杉町での縁を感じるようになった津留崎家。
試しに住んでみようということになり、
具体的な物件探しを始めます。
さて、どうやってお試し暮らしの家を探したのか?
そして、そこで無事移住生活スタートとなるのでしょうか…?

〈つづきは三重で〉 三重県職員が編集長!? な ポータルサイト

全力で三重の認知度向上・イメージアップに取り組む、
プロモーション企画〈つづきは三重で〉
このサイトが、2016年11月18日(金)、
地元に詳しい方々の協力により、リニューアル。
パワーアップを遂げました。

地元愛あふれる布陣は、まさに三重づくし。
県職員が編集長、ライターは県と市の職員、
そして三重県の編集プロダクション〈OTONAMIE〉。

このサイトが、三重県に興味を持つきっかけとなり、
県内の観光・移住などの関連サイトや各市町サイトへの橋渡しとなる
県全体のサイトとなることを目指しているそうです。

「たべる(食)」「あそぶ(レジャー)」「はたらく(仕事)」
「くらす(暮らし)」「あるある」の全5カテゴリで、
三重県の魅力を全力で紹介しています。

なかでも注目は、三重県知事の鈴木英敬さん自らが
オリンピックを目指す義足ランナーを取材する記事も。
県内各地へ出かけ、夢を実現するため三重を舞台に
がんばっている人たちを紹介しています。

〈七福弁当 鈴木商店〉 常連客の行列が絶えない、 旭川で愛される名物弁当。

ほっこり和む家庭的な惣菜がずらり

平和通買物公園沿いに建つ七福ビルに入ってすぐの場所に、
お昼どきには行列のできる名物のお惣菜屋さんがあります。

「弁当、400円でザンギ入れて、おまかせで。ごはんなし」

「のりメンチ6個ね」「卯の花、まだある? 500グラムちょうだい」

そんなお客さんの声が飛び交う、活気あふれる旭川ならではのまちの風景のなか、
お店のたたずまいは、昭和の風情をそのままとどめています。

訪れた午前中には、ホーローバットにたっぷりのお惣菜が。営業中もつくり足していますが、夕方にはほとんど売り切れてしまうそう。

ガラスケースにずらりと40種類以上並ぶお惣菜は、
ボリュームたっぷりでどれもリーズナブル。
創業昭和37年、まちに愛され、〈七福弁当〉の愛称で知られる〈鈴木商店〉は、
市民はもちろん旅人にとっても頼れるお店です。

〈のりメンチ〉(1枚70円)。種類をたくさん食べたい人向けに、1枚を半分にカットしてもOKという、うれしいサービスも。

さまざまな人気商品を誇る七福弁当。なかでも創業以来のロングセラー商品は、
特製メンチをのりで挟んで揚げた〈のりメンチ〉。
かぶりつくと、玉ねぎの甘みが絡んだジューシーな肉感に、
香ばしいのりの風味が絶妙なバランスです。
このほかにも、北海道名物の鶏唐揚げ、
ザンギ(100グラム200円)や、きんぴらごぼう(100グラム180円)、
うの花(100グラム100円)などの定番商品が飛ぶように売れていきます。

てきぱきと立ち働くスタッフの皆さん。おまかせ弁当を3つお願いすると、それぞれおかずを変えてぎっしりと詰めてくれました。

ここ七福弁当での買い物の醍醐味は、〈おまかせ弁当〉にあります。
希望の値段、入れてほしいお惣菜、ごはんをつけるかつけないかを伝えたら、
あとは店員さんが独自に選んで詰めてくれるというスタイル。
どうしても食べたいお惣菜を先にチェックしてから、ぜひ、おまかせで頼んでみて。
「野菜多めに」「揚げ物少なめ」などの希望にも、もちろん対応してくれます。
味がしみしみの大根やナポリタンなど、どのメニューも本当においしくて、
気取らない茶色なお弁当にほっとします。

人気商品を詰めてもらったごはんつきのおまかせ弁当。これでなんと410円!かなりの量と思いきや、女性でもぺろりと完食できるおいしさ。

泊まれる本屋 〈BOOK AND BED TOKYO〉 京都店が祇園にオープン

本棚の中にベッドが埋め込まれ、まるで本棚の中で眠るような体験ができる
ホステル〈BOOK AND BED TOKYO〉。

2015年、東京・池袋にオープンし、国内外のお客さんから大好評のこのホステルが、
2016年12月2日(金)、第2店舗目となる〈BOOK AND BED TOKYO 京都店〉をオープン!

館内の中央に最大5,000冊収納可能な本棚を、島のように配置。
ブックセレクトは、京都の個性派本屋さん〈恵文社一乗寺店〉が担当します。
読書をしながら寝落ちしてしまう、幸せな体験を提供してくれます。

ホステル内のデザインは池袋店につづき、
谷尻誠氏・吉田愛氏率いる〈SUPPOSE DESIGN OFFICE〉、
グラフィックデザインを〈Soda design〉
ブックセレクトは〈SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS〉によるもの。

また、〈BOOK AND BED TOKYO〉お楽しみメニューのひとつ、
であるビールも京都バージョンでご提供!

京都産を中心に数種類の地ビールを、館内にある
“BOOK AND BED AND BEER”と称したバースペースにて、
宿泊者向けに販売を行います。

バースペース“BOOK AND BED AND BEER”

飛騨地方の珍しい郷土食って? 外国人観光客をも惹きつける 高山市の注目スポットと食文化

高山市で行くべきスポットと注目の食文化

飛騨エリアとは、高山市、飛騨市、下呂市、白川村の4市村のこと。
しかしそれらは広く、全体としての特徴がありながらも、
それぞれには深い文化が醸成され、おもしろいスポットも誕生している。

今回は高山市で注目すべき場所を紹介。
すでに観光地としても名高く、特に最近では外国人観光客に人気が高い。
彼らも東京などの都市部とは違う魅力を発見しているようだ。
自然が近く、その恩恵を受けた高山を堪能してほしい。

上から下から、滝を見る〈宇津江四十八滝県立自然公園〉

全国各地に四十八滝と呼ばれる滝の集まりがある。
某アイドルグループと同じく正確に48ではなく、数が多いことを指すが、
約800ヘクタールの県立自然公園に、無数の滝が存在している。
標高1200メートルにある滝上川が源流で、名前をつけられている滝が13ある。
高さ18メートルの急峻な滝や、2メートル程度のゆったりとした角度で流れる滝、
幅の広い滝など、すべてが独特の表情を見せてくれるので飽きない。

すべての滝を巡るように登って行くと、所要約1時間。
道は整備されているので、普段の格好のままでも
充分に歩ける(もちろんスニーカーなど動きやすい格好がベター)。
滝と飛騨の木々、つまり水と緑で目にも心にも栄養を。

information

map

宇津江四十八滝県立自然公園

住所:岐阜県高山市国府町宇津江3235-86

TEL:0577-72-3948(四十八滝総合案内所)

〈やわい屋〉で民藝の意志を感じよう

今年4月にオープンしたばかりの民藝ショップ〈やわい屋〉。
高山市街地からは車で20分ほど。のんびりとした雰囲気の景色を進んでいくと
味のある建物が見えてくる。実は移築した古民家なのだ。
「オリジナルに近いかたちのまま、次に誰かが移築するときも
また使えるようにお願いしました。だから間取りもほぼそのままです」
この古民家を見に行くだけでも充分におもしろい。

店主の朝倉圭一さんは民藝の考え方に影響を受けてこのお店を始めた。
店内には、数々のうつわや小物が並んでいる。
「工房に見学しに行って、暮らしぶりや考え方に共感した作家の作品を
置かせてもらっています。みんなやさしく迎えてくれるんですよね。
それが民藝のあたたかさ。同じことをこのお店でも感じてもらいたい」

取り扱う作家数を増やすよりも、好きになった作家の作品を
なるべく多く取り揃えようとしている。現在は13組の作家の商品がある。
「まちの専門店になりたいんです。かつての魚屋さんや八百屋さんのような。
特殊なものがあるというよりも、“いいのが入ったよ”と教えてくれたり、
あそこなら間違いないものがあるというお店です」
飛騨地方で民藝のことが知りたいなら、まずはやわい屋へ。

information

map

やわい屋

住所:岐阜県高山市国府町宇津江1372-2

TEL:0577-77-9574

https://yawaiya.amebaownd.com/

のんびりしたいなら〈檪(いちい)〉へ

高山のまちを一望できる高台に、山小屋のようなカフェを構えて38年。
まち中からプラプラと散歩がてら歩いていくのに
ちょうどいい距離にあるのが〈檪(いちい)〉だ。
地元の人が、友だちや親戚が来たときに連れて来て、
まちのアウトラインを説明していることも多いようだ。

景色がいいので、テラス席は最高だし、屋内席でも窓が大きいので
日差しが心地いい。なんだかのんびりしてしまう。
「長時間大歓迎です。パソコンで仕事してもいいし、お昼寝してもいい。
昼寝できるくらいリラックスしてもらえるのが理想です。
欧米人の方のほうがそういう使い方がうまいですよね。
トランプなんかして、5時間くらいいる人もいますよ」

西向きなので、夕陽が美しく、桜並木なので春には華やかな風景を見せる。
移りゆく自然も堪能できる。ちなみに檪というのは木の名前だが、
岐阜の県木であり、高山の市木でもある。まるでこの地を象徴しているようだ。

お店は道の突き当たりで、この先には北山公園がある。
そこからはまちの反対側を臨むこともできる。ぜひ公園とセットで訪れたい。

information

map

住所:岐阜県高山市三福寺町4340

TEL:0577-34-9016

飛騨でしか食べない!? なつめの甘露煮

飛騨地方、特に高山市の国府町で、以前は盛んに栽培されていた「なつめ」。
かつては子どもたちが、庭先などに生えているなつめを採って食べていたそう。
いまでも庭になつめの木を植えている家庭も多い。
ひと粒2~3センチの大きさで、薬膳料理などに使われるなど珍重されてきた。
熟したものは、そのまま生でいただける。
リンゴと比べられるようにさわやかでシャリシャリとした食感だ。

なつめの甘露煮は、飛騨のみで食べるといわれる郷土料理。
朝市などで生のなつめを購入して甘露煮をつくってみるのもいいが、
まずはお手軽な缶詰めもある。おみやげにも喜ばれそうだ。
ここまでなつめを日常的に食すのは飛騨だけ。
訪れた機会にぜひ、なつめデビューしてみては?

江戸時代へタイムスリップできる〈高山陣屋〉

江戸時代、飛騨の政治が行われていた場所。役所や家などを総称して陣屋という。
全国で唯一、郡代役所の建物が現存していて、現在のものは平成8年に
修復・復元が完成。江戸時代の〈高山陣屋〉の姿がほぼ再現された。
高山観光のハイライトともいえる。
観光客でいつも賑わっているが、一度は訪れておきたい場所だ。

江戸時代、高山は天領地と呼ばれ、幕府の直轄地になった。
それを証明するのが葵紋の幕。水戸黄門のアレと同様である。
館内を見学してみると、細かいデザインなどおもしろい。
ガイドツアーに参加すれば、江戸時代の高山を勉強しながら、
より立体的に思い描くことができそうだ。

information

map

高山陣屋

住所:岐阜県高山市八軒町1-5

TEL:0577-32-0643

古民家〈久田屋〉でゆっくりとジャズライヴを。

「TOKU & 小沼ようすけ Duo Live in 飛騨高山 at 日下部民藝館」

高山で音楽を楽しみたいと思ったら、絶好の場所がある。
ライヴハウスでも、クラブでもない。
築100年を超える古民家で、高山の郷土料理が食べられる〈久田屋〉だ。

主催しているのは久田屋の久田上総さん。
年に数回、久田屋を使ってジャズを中心として音楽ライヴを開催している。
和の空間、しかも古民家でジャズを聴くなんてオツなもの。
お酒は持ち込み自由で、おつまみを提供するという。

「いつも家で飲んでいるお酒を持ってきてもらって、
アットホームな雰囲気で、楽しんでもらいたい。
自分自身がお酒を飲み歩くのが好きなんです。
ホールのようなところでライヴを聴くのもいいけど、
“日常の延長線上にある非日常”みたいなものを目指しています」

久田さんは、高山生まれ。高校まで高山で育ち、その後関西に移住。
自身も音楽活動をスタートして、勉強のためにアメリカに2回ほど留学している。
「古民家で生まれ育ったので、正直、昔は特に憧れのようなものはありませんでした。
自分の家ですからね(笑)。でも外に一度出てみて感じるのは、
100年以上の古民家がたくさんあって、しかもそこでライヴもできてしまう。
そんな土地は珍しいのではないでしょうか」

久田屋以外にも、最近では〈日下部民芸館〉でも開催することもある。
こちらはやや広めなので、ビッグネームを招聘することも。
地元の人にとっては歩いていけるような場所なので、
年配の方は着物で着てくれることもあるという。
旅先で、地元の人にまじってライヴを楽しんでみるというのも
おもしろい体験になりそうだ。

information

map

久田屋

住所:岐阜県高山市上三之町12

TEL:0577-32-0216

営業時間:10:30〜15:00(L.O.)

*音楽イベントは別の時間で開催

http://hisadaya-hida.com/

世界を魅了する飛騨の〈山椒粉〉

江戸時代に徳川将軍にも献上されたという記録も残っている飛騨の山椒。
奥飛騨の山中で、高度800メートル、半径5キロメートルという、
ある限られたエリアの土地で栽培された山椒のみが、高い香りを生み出す。
ちなみにほかの土地に移植してもこの香りは出ないという。

そんな飛騨産山椒を100%使用してつくられているのがこの〈飛騨山椒〉の〈山椒粉〉。
創業以来、天日干しにこだわっている。乾燥機などを使うと香りが飛んでしまうからだ。
その後、種と皮を分け、皮のみ杵と石臼でついて粉にしていく。
その味と香りの良さは全国的にも知れ渡っている。
たかが山椒と侮るなかれ、飛騨の山椒を試してみるべし。

information

■日本一広い、飛騨地域の中心市「高山市」をもっと知るには↓

グッとくる飛騨:高山市

〈中山道ぎふ17宿歩き旅 2016〉 開催中! 岐阜がまるごとテーマパーク!?

ただいま岐阜県美濃地方で、秋恒例の大イベント
〈中山道ぎふ17宿歩き旅 2016〉が開催中です!

これは、古くからの宿場町の雰囲気が残る中山道ぎふ17宿を、
まるごとテーマパークにするイベント。
2016年11月27日(日)まで、食や美容、伝統芸能など様々な
プログラムを毎日開催しているんです。

中山道

毎日どこかでイベントが行われていますが、
中でもオススメは、11月27日(日)。
中山道のハイライトともいえる〈馬籠宿〉で、
散策と名物の味を楽しめるプログラムが開催されます。

馬籠宿は全国でも珍しい坂に開かれた宿として知られているところ。
プログラムでは、馬籠峠までの道のりをガイドさんと共に散策します。
散策のあとは、峠のお食事処〈樹梨〉にてお昼ごはんが用意されていて、
文豪・島崎藤村も食べた馬籠の三大名物
「五平餅・信州そば・栗こわめし」を堪能できるそう!

馬籠の三大名物

〈アートヴィレッジ恩根内〉 廃校で、ものづくりを観光に。 注目の雪板づくりを体験

自らつくって使って、美しい自然を満喫

冷たい風の吹く10月中旬、美深町の山あいにある
元恩根内小学校を活用した〈アートヴィレッジ恩根内〉のカフェに入ると、
パチパチと燃える薪ストーブの火が出迎えてくれました。
懐かしいたたずまいの校舎のなか、
木のぬくもりに包まれた暖かな空間に、冷えた体がほっとゆるみます。

アートヴィレッジを運営する工藤 貢さん、眞紀美さん夫妻が4年間かけ、丹精込めてつくりあげてきた校舎内のカフェ。薪ストーブやテーブル、椅子はもちろん、なんと窓枠や木製ライトまで手づくり。

2009年にオープンしたアートヴィレッジ恩根内には、
まちに住む人や作家活動をする人が利用できる、
絵画室や木工室、暗室などが整備されています。
美深町では、ここの木工室を使って、冬の新しい遊びとして注目を集める〈雪板〉の制作から、
完成した雪板で美深の雪山滑りまでを楽しめる、魅力的な体験プログラムがスタートしました。

主宰するのは、美深を中心に有志が立ち上げた、
道北の魅力を発信するプロジェクト〈BASIS〉(ベイシス)。
“Craft & Play”を掲げ、“遊び道具を自分でつくる楽しみを知り、
それを使って道北の自然をぞんぶんに味わう”ことを伝えています。
屋外での体験には、雄大な眺めを楽しめる天塩川カヌー下りプログラムも。

完成品の雪板。スタッフが試行錯誤を重ね、よく滑る現在の形までたどり着いたそう。乗る人の個性やスタイルに合わせた加工ができるのも雪板の特徴。

近年、国内外のスノーボーダーに注目されている手づくりの雪板。
パウダースノーを、木の板で滑るアクティビティがじわじわと人気となっています。
ビンディングがない一枚板なので、持ち運びも手軽。イメージは、ソリ遊び。
ガイドとともに新雪の森のなかへ入りスロープを滑ったり、雪遊びを満喫できます。
なだらかな丘が続く美深の地形は、
雪板で滑ると臨場感たっぷりで最適なロケーションなのだそう。

本格的な雪板は一枚板から削りだし、こだわりの樹種の場合10万円以上するものも。
美深町の雪板づくり体験では、板を重ねて厚みを出し、
カーブをつけたのちにカットして塗装までを行います。
「つくり方はいたってシンプル。雪板は誰でもつくれるし、初心者も簡単に扱えますよ」
雪板づくりを教えてくれるのは、BASISを立ち上げた
美深町観光協会の事務局長、小栗卓さんです。さっそく、その手順を見せてもらいました。

不器用でも大丈夫! 簡単な雪板づくり

まずは厚みをつくるため、ベニヤ板に手早く均一にボンドを伸ばし、4枚を貼り合わせていきます。板の厚さにも意味があり、初心者はゆっくり滑ることをイメージして薄い板を、上級者は加速をつけるため厚い板を使います。

これまで50枚以上の制作を重ねてきた小栗さん。そのなかで考案された、カーブを出すための専用台へ、重ねた板を金具でしっかりと固定。

基本となる板のでき上がり。次は特製の型にそって、好きな形にカットします。

基本の型以外に、先端の形を変えたり、板の幅を太くすることも可能。

電動ノコでカットしていきます。細かい粉が飛ぶので、体験では汚れてもいい服装がおすすめ。

丁寧にヤスリがけ。この工程で、滑りが格段に良くなるそう。

仕上げに、試行錯誤を重ねて行き着いた、水性ウレタンニスをペイント。

左ができ上がった雪板。ここから好みで色を塗ったり、右の完成品のように滑り止めシートを貼り付けて完成。見た目より軽く、運ぶのも楽です。

雪板づくりの所要時間は約3時間。希望者はでき上がった雪板を背負い、
ガイドつきの雪山ツアーへ行くこともできます。雪板を満喫できる、
美深町近郊のとっておきのバックカントリーをご案内。
「初心者でも、上手に滑れなくても、
ふわふわの雪が受け止めてくれるので、大丈夫。本当に楽しいですよ」と小栗さん。
町内にある、アウトドアガイド〈リバートリップキャメル〉では、
雪板遊び体験のみも受け付けています。

静寂の森へ向かい、新雪のなかを滑るのは壮快!(写真提供:美深町観光協会)

制作体験がひと息ついたら、校舎内につくられた
ギャラリースペースにも立ち寄ってみましょう。
廊下には、近郊遺跡の出土品を展示するガラスケースも。
廃校から8年、今もさまざまな人が訪れ生かされている校舎で、
アート作品や、まちの歴史に触れることができます。

ギャラリースペースでは、道北各地で巡回開催された〈道北アート〉展が開催されていました。“アートで道北を盛り上げていこう”と工藤さんを中心に2016年からスタートした事業で、上川北部、留萌、宗谷が、地域を超えて連携しながら道内外へ向けて道北を発信しています。

地域の年配の人たちも集える場所へ

アートヴィレッジの運営とともにカフェを切り盛りする工藤さんは、小樽出身。
札幌で作家として版画制作を行い、奥さまも画家として活動してきたそう。
おふたりは静かな環境で作品制作に打ち込むため、
アトリエとして使える廃校を探して道北を回り、最後にここ美深にたどり着きます。

「持ち主である美深町役場からは、アトリエだけでなく、
地域に寄与する活動をと依頼されました。私は内装や木工は初体験だったけど、
カフェをつくったり、木工室などものづくりの場を整備したのは、
そもそも地域のおじいちゃんおばあちゃんのために始めたこと。今もその思いで続けています」

立派なカウンター席で水出しコーヒーを淹れる工藤さん。カフェメニューはブレンドコーヒー(300円)などドリンクのほかにケーキ(各300円)も。ドライブのひと休みにも立ち寄ってみては。

地域の人たちへ開かれたカフェは、近所のおじいちゃんが酒瓶を持って訪れたり、
近隣の忘年会や新年会の会場になるほか、
木工室では、持参したまな板を削るおばあちゃんもいるそう。
自由に過ごせるコミュニティスペースとしての機能を果たしています。

移住の決め手は尊敬できる人? 美杉町でまたも魅力的な出会い

心に染み入るほど
おいしい干し野菜!?

移住探しの旅を続ける津留崎一家。
三重県津市の美杉町では、日本料理屋を営む
魅力的な夫妻に出会い心惹かれます。そして彼らから、
またも魅力的な人を紹介され、訪ねることに。
心にひびくおいしい干し野菜をつくるという
坂本幸さんとの出会いを、
妻の津留崎徹花が綴ります。

釧路の名店〈豊文堂書店〉 古書も地産地消?! まちの歴史と文化を束ねる本屋

港町・釧路には、まちの文化の薫りを色濃く醸す古書店があります。
釧路駅の駅裏と呼ばれる地区で30年以上営業している〈豊文堂書店本店〉と、
喫茶店を併設する支店の〈豊文堂書店北大通店〉。
一歩店内に足を踏み入れると、まるで本の海に飛び込んだような、
本好きにはたまらない空間が広がっています。
常連客や旅人を魅了するふたつの古書店で、
本のこと、お店のこと、地域と文化の話をお聞きしました。

まず向かったのは駅裏の本店。
小さな店構えですが、特に北海道に関する書籍が多数そろっています。
うず高く積まれた本の中を進むと、
奥のカウンターから社長の豊川俊英さんが顔を出してくれました。
「図書館分類は無視して、独自の並べ方をしているの。そのほうがおもしろいでしょ」

釧路の基幹産業である漁業や石炭業に関する本、北方領土や樺太に関する文献、
多彩な文庫本、レコードなど、
棚を細かくみていくと、不思議なくらい次から次へと気になる本が出てきます。

気さくな雰囲気の豊川さん。探している本の名前を告げると、「ああ、あれね」とすぐに棚から出してきてくれました。

カウンター横の棚には、
昭和30年代のベストセラー、釧路を舞台にした小説『挽歌』が有名な原田康子さんや、
釧路出身の直木賞作家、桜木紫乃さんの著作がずらり。
ふたりを育てた釧路の同人誌『北海文学』のバックナンバーも揃っています。

少しどんよりした霧の日が多い釧路の夏。
「やっぱり、この気候が文学を育てるんだろうねえ」と、豊川さんはしみじみ語ります。

豊川さんは釧路出身。大学時代を東京で過ごし、その後、
かつて釧路にあった百貨店〈丸三鶴屋〉で婦人服のバイヤーなどを務めました。
東京転勤となったのち、東京の古書店を巡っているうちに
「自由でいいなあ」と思い立ち、1982年、故郷に戻って豊文堂を開業。
30年以上、この地で古書店の灯をともし続けています。

地域の歴史を残すこと、受け継ぐこと

豊文堂書店の本の仕入れは、ほとんどが釧路やその周辺。
以前は東京や札幌で行われる古書組合の競りにも参加していましたが、
今は店の品揃えや経費を考え、地元で仕入れるのが理にかなっているそう。
豊川さんは「買い入れは個人のほうが多いかな。
地元の歴史や産業の本は地元で仕入れるのが一番だし、地産地消だね」と話します。

そんな豊川さんが今、力を入れているのは釧路を中心とする道東の『学校史』です。
少子化や過疎化でどんどん地域の学校が閉校してしまう時代。
学校史は地域の歴史そのものであり、
懐かしんで記念誌を手に取るお客さんも多いと言います。
「なくなっていくから、貴重になるんだよね」
地域の歴史を残すこと、それを受け継ぐこと、
大切な役割の一端を担っているという自負が見えました。

豊文堂書店北大通店の店先。夜は北大通のオレンジ色の街灯に照らされています。

「あっちはあっちでおもしろいよ」という豊川さんに別れを告げて向かったのが、
釧路駅から幣舞橋までの目抜き通りに面した〈豊文堂書店北大通店〉です。

ここは1階が古書店で、2階が喫茶店。オフィス街でありながらビジネスホテルも多く、
観光客やビジネス客などさまざまな人が訪れやすい場所です。
「観光に来たみなさん、荷物になるのもいとわずにけっこう買っていってくれますね」

1階の店長・川島直樹さんが、入り口そばのカウンターで迎えてくれました。

カウンター前に並ぶ古書。寺山修司や須賀敦子、小檜山博、そしてトイレに関する本。幅広いです。

北大通店の選書や運営を任されている川島さん曰く、品揃えは「本店より一般的」。
釧路の郷土史はもちろん、文学や自然、食、SF、アート、サブカルチャーなど、
幅広いジャンルで、専門性が高いもの、視点が鋭いタイトルが並んでいるのに驚きます。

川島さんの得意分野、映画に関する本やパンフレットも豊富で、
カウンターの後ろには過去の映画のチラシなどがびっしり貼られています。
「余白恐怖症で、すき間があると貼ってしまいます」と笑う川島さん。
ビジネス書と自己啓発本以外は、ほぼ網羅しているそうです。

無数のパンフレットやフライヤーに囲まれる川島さん。豊文堂書店のウェブサイト右下のほうで「本日の在庫お問い合わせ」という、クスッと笑える備忘録を更新しています。

川島さんも釧路出身。中学生の頃から本店の常連客として文庫本を読みあさり、
市外に進学・就職しても、帰省のたびに店を訪れていたとのこと。
転機は2003年。本店の豊川さんから
「北大通店を始めるから、店長をやらないか」
とスカウトされて、そのまま店長に。驚くような成り行きですが、
「本が好きだったのでありがたかったです」と話します。

閉店した隣の画廊から譲り受けたマッチラベル。

古い電話や掛け時計、アサヒビールの看板など、
本に混じってディスプレイされている品々は、不思議と店の雰囲気とマッチしています。
隣の画廊が閉店するときに譲り受けた古いマッチラベルのコレクションは、
歴史を感じるレトロなデザイン。

「お客さんからの買い入れ次第で棚がどんどん変わっていく。
いつもおもしろい本が入ってきますよ」
川島さんの言葉から、本とお店への愛がにじみ出ていました。

階段横の棚にある食に関する本。女性に人気のコーナーです。

食の本棚を眺めながら階段を登れば、2階には〈喫茶ラルゴ〉があります。
ブラウンのフローリング、オレンジ色の照明、大きな窓から見える北大通の風景など、
老若男女の誰もがくつろげるであろう、落ち着いた雰囲気です。

ラルゴのマスターは、はにかんだ笑顔が素敵な豊川大輔さん。
社長の豊川俊英さんの息子さんです。釧路で生まれ育ち、
神奈川県の機械工場などで働いたあと、北大通店の2階が空いていたことから、
2006年に念願の喫茶店をオープンしました。

スパゲティやハンバーグなど洋食メニューにドリンクが付く
日替ランチ(880円)が人気ですが、ブレンドコーヒー(430円)、
クレームブリュレ(300円)など手づくりスイーツも充実しています。
季節限定のカボチャプリン(400円)は、やさしい甘さが口の中に広がりました。

カボチャプリンとブレンドコーヒー。

年10回ほど開催している音楽ライブもラルゴの特徴。
音楽好きな大輔さんがセレクトするさまざまなジャンルのアーティストが、
アットホームなライブを繰り広げます。大輔さんは
「もともと音楽ができるお店を開きたかった。これはずっと続けていきたいですね」
と思い入れを語ります。

ラルゴの豊川大輔さん。1階の川島さんとはまるで兄弟のようです。

三者三様で、居心地のよい雰囲気をつくり出す豊文堂の3人。
チェーン店では決して出せない各店の個性はゆるく、熱く、心地よく感じられます。
ぜひふたつの古書店をはしごし、ラルゴでひと休みし、
情緒あふれる釧路のまちと文化に触れてみてください。

information

map

豊文堂書店本店

住所:釧路市白金町1−16

TEL:0154−22−4465

営業時間:10:30〜18:00

定休日:月曜日

※駐車場あり

http://houbundou.com/

information

map

豊文堂書店北大通店

住所:釧路市北大通8−1

TEL:0154−31−4880

営業時間:10:00〜19:00

定休日:不定休

※駐車場あり

information

喫茶ラルゴ(豊文堂書店北大通店2階)

TEL:0154−64−6028

営業時間:11:00〜20:00

定休日:日曜祝日・第3土曜日

http://houbundou.com/largo.html

〈三朝温泉〉地震に負けず 元気に営業中! お得なバス&1万円割引

先月、鳥取県で最大震度6弱を観測した地震。
ほとんど被害がなかったため、
いまは通常通り営業している鳥取の〈三朝(みささ)温泉〉ですが、
地震発生から一週間で約10,000人以上の宿泊キャンセル(2016年11月3日時点)が
発生してしまっているのだそう。

そんな三朝(みささ)温泉を応援する
特別キャンペーンが始まります!
ひとつは、三朝温泉旅館協同組合加盟旅館にて、
1予約20,000円~の宿泊料金が10,000円引きになる
限定クーポン券の発行。2016年11月14日から、
じゃらんnet、楽天トラベル、るるぶトラベルの各サイトより取得できる
10,000円割引クーポン券で申し込むことができます。

そしてもうひとつが、大阪・三朝温泉間を往復1,000円(税込)で
利用できるバス〈鳥取県三朝温泉元気です号〉の運行です。
運行は2016年11月27日から2016年12月25日まで!
詳細はこちらから。

三朝温泉は、開湯850年の由緒正しい温泉地。
世界有数のラドン含有量を誇り、新陳代謝を活発にする効果が
あると言われています。その名前は“三たび朝を迎えると元気になる”と
いうことから付けられたのだそう。
例年、心と身体の癒やしを求める多くの観光客で賑わっています。

そしてなんといっても、いまは日本海で獲れたカニのシーズン!
カニ漁は、一年のうち半分以上が禁漁期であり、捕獲できるのは11月から3月まで。
2016年は松葉ガニ漁が11月6日に解禁となり、各温泉旅館では、
地元賀露港などで獲れたばかりの松葉ガニを使った、
活松葉蟹会席やズワイガニフルコースなどを提供中です!

日本海のカニは、他では味わえない絶品。
旬の“カニ料理”を刺し身・焼き・茹で・揚げなどで、
心ゆくまで堪能してはいかがでしょう。

あの映画の聖地から 漬物ステーキまで! 飛騨市の注目スポット

飛騨市で注目の文化やスポット

飛騨エリアとは、高山市、飛騨市、下呂市、白川村の4市村のこと。
しかしそれらは広く、全体としての特徴がありながらも、
それぞれには深い文化が醸成され、おもしろいスポットも誕生している。

そのなかから今回は飛騨市で注目すべき場所を紹介。
最近では映画『君の名は。』の聖地巡りを楽しんでいる人も多いが、
通常の観光エリアから一歩踏み込んだ飛騨を感じてもらえるだろう。

飛騨の森の香り漂う〈calm’s cafe〉

飛騨がある岐阜県は、全国有数の森林県。特に飛騨は木工のまちである。
そんな木工技術やクラフトマンシップを、
手軽に、そして間近に感じられるカフェがある。
古川のまち中から少し離れたところにある〈calm’s cafe〉だ。

オーナーの堅田恒季さんは、木工職人でもある。
それだけに店内はクラフト感にあふれている。
「カフェをやりたいというより、カフェの空間をつくってみたかったんです。
だからトータルコンセプトがあるわけでもなく、
その時々の“こうしたい”が集まっています。
窓も、たまたま持っている窓があって、それに合わせた間仕切りと形だったりします」

カフェでありながら、堅田さんがつくった商品のショールームにもなっているのだ。
カフェの奥は工房になっているので、木の香りも漂ってくる。
クラフト好きにはたまらない空間だ。ワークショップを開催していることもあるので、
飛騨の木工を肌で感じたい人は参加してみては?

そもそも堅田さん自身、ものづくりせずにはいられない人。
お店に遊びに行くたびに、何かが変わっているのだ。それを楽しむのもあり。

information

map

calm’s café 

住所:岐阜県飛騨市古川町栄1-1-54

TEL:0577-73-7703

http://www.rakuten.co.jp/calms-hida/

「大人の時間」も魅力的な〈飛騨市図書館〉

いまや映画『君の名は。』の聖地巡礼地として人気の飛騨市図書館。
そのなかで地元で20~30代の利用者が少ないということから始まった
「大人の時間」が話題だ。このイベントをメインですすめているのが司書の堀 夏美さん。
「本にあまり興味がない人にも図書館を使ってほしい。
読むだけでなく、調べものもできるし、
いざというときに図書館があるということを知ってほしい。
一度行ってみたいと思わせるフックをいろいろなジャンルでつくっています」

これまで、大型本を並べてギャラリー風にしたり、大人向け絵本の朗読会をしたり。
ジャズライヴや蓄音機を使った試聴会も行われた。
最近注目を集めたのが、なんと官能小説朗読ライヴだ。堀さんたち自身が朗読した。

これからは、ただ目立つだけでなく、
より地元の人たちと一緒につくりあげていきたいという。
飛騨で薬草を普及しようとしているグループと一緒に、
マイ薬草茶をつくる催しも「魔女の集い」として開催された。

「人が集まったときに生まれる会話を大事にするのも、
情報拠点としてやるべきことのひとつだと思います。
ローカルだと特に、人との会話のなかで知る情報が大事なんです」
飛騨市図書館のイベントをきっかけに、飛騨古川を訪れてみてもいいかもしれない。
飛騨のことをより知ることができる場所で、いっそう飛騨に詳しくなれそうだ。

information

map

飛騨市図書館

住所:岐阜県飛騨市古川町本町2-22

TEL:0577-73-5600

営業時間:火曜日~土曜日・祝日 9:00~20:00、日曜日 9:00~17:00

http://hida-lib.jp/

飛騨で独特の発展を遂げた漬け物文化

飛騨エリアは、漬け物が盛ん。冬の保存食として発達してきた。
古川のまちで漬け物名人として知られる加藤敏子さん。
販売などはまったくしていないのに、昨年は330キロの漬け物を漬けたという。
「生まれも育ちも古川です。子どものころから実家でも親から漬け物は習いました。
ここに嫁いで、こちらのお母さんからも習いました。
昔からある定番は、白菜と赤かぶらを使った“切り漬け”。基本的には塩のみで漬けます」

この切り漬けは、いつもはそのまま食べるが、
「漬け物ステーキ」になったり、「煮たくもじ」になったりもする。
「切り漬けも時間が経つと酸っぱくなってしまいます。その直前に冷凍しておきます。
解凍して、2回茹で、水分を絞った後、ごま油で炒めて煮たものが煮たくもじです」

いまでも漬け物を漬ける家庭が多いという古川。
敏子さんの最新版は、きゅうりのきゅーちゃん漬け、
きゅうりのからし漬け、大根の柚子漬けなど。
最近では少なくなってきたというが、それでも漬け物の味は各家庭に伝わっている。
せっかく飛騨に来たならば、漬け物を食べないという手はない。

飛騨の味が堪能できる〈香梅〉で漬け物ステーキを

漬け物は飛騨エリアの名物だが、飲食店でよく提供されているのが漬け物ステーキだ。
漬け物をステーキに? と思うかもしれない。実際にその通りなのである。
鉄板や陶板などで漬け物を焼き、ステーキのように供される。
もともとは古くなってしまった漬け物の再利用として考えられたというが、
定番メニューのひとつとなったいまでは、漬け物ステーキ用に
わざわざ塩を強めに漬けて、保存をしていたりもする。

「味付けは飲食店や家庭によってさまざまです。
うちは卵を落として醤油をかけてもらいます」と言うのは、
古川で50年お店を構える居酒屋〈香梅〉さん。
卵でとじるところが多いなか、こちらは生卵を落とす。
好みの半熟加減にしてトローリおいしい。

飛騨地方では、いろいろなところで食べられる漬け物ステーキ。
食べ比べをしてみても楽しい。

「なすの田舎焼き」も辛めの味噌が絶品。

information

map

香梅

住所:岐阜県飛騨市古川町金森町15-38

TEL:0577-73-4035

古川には和服がよく似合う。〈大洞〉で着付けはいかが?

映画『君の名は。』を見た人のなかには、前半のシーンで、
主人公が組み紐をしているシーンを覚えているかもしれない。
あの組み台が実際に店頭に置かれているのが、120年続く呉服屋の
〈大洞(おおぼら)〉だ。現在の店主、大洞壽賀子さんは6代目。
着物の販売と仕立て直しなどのメンテナンスを受けつけている。

3年ほど前には、ゆかたと着物の着付けサービスも始めた。
特に外国人観光客に人気だ。
「4割くらいは外国のお客様です。帯のみで留めている感覚がおもしろいようですね」
和装は、外国人であっても古川のまちと調和して美しく見える。
日本人であるなら、なおさら挑戦してみたい。

「観光客の方とお話して、住んでいてはわからない
地元の魅力に気がつくことが多いです」と言う大洞さん。
だから組み紐きっかけでも、気軽に訪れてみよう。

information

map

染めと呉服 大洞(おおぼら)

住所:岐阜県飛騨市古川町本町2-15

TEL:0577-73-2209

まちを一望できる〈気多若宮神社〉

まち外れの石段をのぼっていくと、平安時代に建立されたとされる
〈気多若宮神社(けたわかみやじんじゃ)〉の境内にたどり着く。
そこからは古川のまちを一望できるので、
まずここを訪れてみると全体像をイメージできる。

毎年4月19日、20日に行われる有名なお祭り〈古川祭〉は、この神社の例祭であり、
祭りで大きな太鼓を打ち鳴らす〈起こし太鼓〉が奉納されている。
4月の古川祭に行けなくても、まちを象徴する存在である気多若宮神社で
その息吹を感じたい。

information

map

気多若宮神社

住所:岐阜県飛騨市古川町上気多1297

市民の生活も支える〈天王洞〉の豊かな湧き水

古川の住民も日常生活用水として汲みに来るという湧き水。
〈天王洞〉は道路から少し入った場所に水場があるが、その先の階段を登って行くと、
上には不動明王が祀られており、もっと小さな水場がある。

飛騨地方は湧き水が豊富で、生活と密着している。
ひっそりとあるこの水場で、まずは飛騨のおいしい水を感じてみよう。

大塚さんちの〈豆つかげ〉

飛騨地方らしいおみやげといえば〈豆つかげ〉。
大豆を醤油と砂糖で味つけした小麦粉で揚げるだけという、実にシンプルな逸品。
飛騨の方言で「つかげ」とは「揚げたもの」を指す。
農家の大塚智英さん一家がコツコツと揚げているのだ。

少しかためだが、バリバリと食べ進める食感が心地よい。
パッケージも透明の袋に飾り気のない文字。「ベスト・オブ・素朴」とでもいうべき、
しかしやめられない止まらないおつまみである。
宿でビールのおともに、駅やまち中のお店でも売っているので、おみやげにも最適。

■新しいものと古いものが混在するまち「飛騨市」をもっと知るには↓

グッとくる飛騨:飛騨市

〈北のアルプ美術館〉 人生すべてをかけてつくった、 山岳文学の美術館。その思いとは?

山と自然を愛した、伝説の文芸誌『アルプ』を知っていますか。
1958年から1983年まで発刊され、哲学者で詩人の串田孫一をはじめ、
詩人の尾崎喜八、版画家の畦地梅太郎、作家の深田久弥ら多彩な執筆陣が
山への畏敬と自然賛歌の精神を伝え、多くの登山家たちを魅了しました。
世界自然遺産・知床半島の玄関口、知床斜里駅から徒歩約20分。
静かな住宅地の中に、
そのアルプの資料を展示する〈北のアルプ美術館〉がひっそりと佇んでいます。

緑に囲まれてひっそりと佇む、山荘のような北のアルプ美術館。

オホーツクの風雪から守るように囲む白樺林、
昭和で時を止めたかのような雰囲気に引き込まれるかのように、
この小さな私設美術館には1992年の開館以来、
全国から『アルプ』を愛する人々が訪れています。

『アルプ』はA5版、70ページ前後の小冊子ながら、紀行文や詩、
スケッチなどが豊富に盛り込まれた芸術性の高い内容。
幾多の山岳雑誌のような登山道具の広告や、山のコース解説などは、一切なし。
芸術の観点から山と真摯に向き合う
孤高の月刊誌として300号まで発刊されました。

山と自然の文芸誌『アルプ』。毎号表紙は、山をモチーフにした素朴な版画があしらわれています。一部のバックナンバーは館内で購入可能です。(photo:シリエトクノート編集部)

ひとたび館内に足を踏み入れれば、
建物の持つノスタルジックなムードと、
山へのロマンにあふれた独特の世界観に心を奪われることでしょう。
西洋風な外観が特徴的な建物は1961年築。
三井農林斜里事業所(1974年に撤退)の旧社員寮で、アルプのイメージに合わせ、
山荘風に改修したそう。

歩くと「ギシ、ギシ」と音をたてる廊下に歴史の重みを感じつつ、
2階へ上がると、8室にわたる展示室にアルプのバックナンバー、
参加作家の生原稿やスケッチ、山岳図書などが整然と展示されています。
六花亭の包装紙イラストでおなじみの画家、
坂本直行さんが描いた知床五湖や斜里岳のスケッチなど、
知床にゆかりの深い絵画作品も数多く見られます。

凝った装丁の山岳関連書籍がぴったりと収められた木製本棚、
スケッチや生原稿の美しさが映えるガラスケース、
廊下でひと休みできるベンチ。これら展示什器のほぼすべてが、
昭和モダンな館内の雰囲気に合わせてこしらえた別注品とのこと。
館長の山崎猛さんの並々ならぬ美意識が伝わってきます。

アルプ参加作家、畦地梅太郎、中村朋弘、山口燿久によるスケッチや文。

「アルプに出会って、人生が変わってしまいました」と、
山崎さんは目を細めながら振り返ります。
1937年、北海道南西部の乙部村(現・乙部町)生まれ。
読書好きが高じて斜里町内の書店で働いていた20歳のころ、
アルプ創刊号を手にし、大きな衝撃を受けました。

「心にスッと染み込むような串田孫一の文章、
自然観と人生観がめいっぱい表現された誌面に心揺さぶられ、
新たな美術や音楽の世界にも導かれました。
テントを揺らす風を『カンタータのリズム』、と表現した文章があれば、
そのレコードを探したりね」

アルプを読み続けるうち、身近な自然に関心が高まり、
自身も写真家として知床の風景へとレンズを向けるようになります。

「美術館は人生最後の大仕事。自分のすべてを賭けてきた」と語る山崎さん。

串田孫一の著書の一部。山岳文学、画集、小説、哲学書、翻訳など執筆分野は多岐にわたります。

休日のたびに山や海の撮影へくり出すようになった山崎さん。
そして、アルプへ送り続けていた写真がついに掲載され、
憧れの串田氏と交流が芽生えます。
同誌終刊後も情熱は冷めず、「アルプの精神を次世代に伝えたい」と、
約10年間の準備期間を経て、1992年に美術館を開館。
アルプ編集関係者や作家から寄贈された生原稿や原画などは約5万点に達しました。

美術館に飾られた串田氏の写真。(photo:シリエトクノート編集部)

2005年に亡くなった串田氏の書斎と居間も東京都小金井市から移設し、
開館20周年記念の2012年から公開しています。
「写真をもとに実物と差のないように、可能な限り気を配った」と話す山崎さん。
復元された書斎には、当時の佇まいや空気が蘇っているかのようです。
「この空間は、串田孫一の宇宙。計画当初は、荷の重さに迷いもありましたが、
先生の奥さまから『孫一の魂はもう斜里に行っている』と
背中を押してもらいました」
いち読者と作家の交流は、いつしか大きな実を結んでいたのです。

東京都小金井市から移設、復元した串田氏の書斎。本棚、窓枠も運び込み、積み重ねた本の並びまで、とことんこだわりました。

時を経て独特の風合いが出た2千冊もの本やクラシックレコード、
使い込まれたピアノ、家具や文房具の細かな配置に至るまで
可能な限り再現した居間からは、
多くの作家と談笑したであろう歳月が想像できます。
「小金井からはホコリひとつ払わずに持ってきました。
それも大事な歴史ですから」

2017年6月月の25周年記念には、
山岳図書とギャラリーを備えた〈齋藤俊夫山岳文庫〉の公開を予定しています。
季節ごとに表情を変える白樺林の中、
読書をしながらほっとひと息、心ほぐれるスポットです。
「自然と芸術を通じて人間性を高めようとしたアルプの小さな美術館が、
世界自然遺産・知床に存在するのは大きな意義があると思っています」

北海道石狩郡当別町の元教師、故・齋藤俊夫さんがコレクションしていた山岳図書を譲り受け、閲覧できるよう敷地内ログハウスを整備中。(photo:シリエトクノート編集部)

時折訪れる誰かのために、
そっと明かりを灯すような北のアルプ美術館。
厳しくも美しい自然風景からインスピレーションを得て創作された、
紀行文、絵画、彫刻、陶芸などの作品たちが出迎えてくれます。
知床の旅の途中に立ち寄れば、その先出会う知床連山やオホーツク海、
原生の森林は、より生き生きと心に刻まれることでしょう。

information

map

北のアルプ美術館

住所:北海道斜里郡斜里町朝日町11-2

TEL:0152-23-4000

営業時間:6月~10月10:00~17:00、11月・3月〜5月10:00~16:00 
※冬期休館 12月中旬~2月末(事前連絡があれば、対応できる場合も)

定休日:月曜、火曜

※駐車場あり

http://www.alp-museum.org/