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山深い細い道を登っていくと、急に目の前が開け、
抜けのある広大な敷地に到着。
その敷地に、母屋、レストランに改装中の離れ、
山羊の小屋、ツリーハウスが点在しています。
思っていた感じとスケールが違うぞ、とわくわく、ぞくぞくしてきました。
その年の夏にレストランをオープンすべく工事を進めている現場を、
沓沢敬さん、佐知子さんご夫婦に案内していただきました。
まず、驚いたのが、もともとは離れだったという小さな古民家を
独自の発想で、とても斬新で魅力的な建築にしていることでした。
手づくり感満載のDIYというレベルじゃないのです……。
それらを見ているうちに、僕の建築・リノベーションのプロとして
やってきた自信はがらがらと崩れ去っていく感じを受けました。
すべてが想像以上だったのです。
そんな沓沢家にいよいよ興味が湧いてきてしまい、勢い余って
「明後日、泊まるとこ決まっていないのですが、
この空いてるとこにテント張らせてもらえないでしょうか……?
自分、工事も手伝います!」とお願いしてみました。
そんな、めちゃくちゃな申し出に快く応じていただき、
翌々日に本当にお邪魔してしまいました。
さらに、夜には宴まで開いていただき、
料理人である敬さんの手料理を堪能させていただきました。
土地の食材の力、敬さんの料理のセンスに圧倒され、
至福のひとときを過ごしました。
工事現場やツリーハウスを見て、びびびっとなっていた自分でしたが、
話をしていてもびびびっとくることが多く、特に印象に残ったのが
「上流に住んでいるのだから流す排水のことを
しっかり考えないといけないと思っている」という話でした。
語るだけでなく、独自に排水を浄化する仕組みを考えて、
つくり上げているのです。
こんなすばらしい家族との偶然の出会いがうれしくて、楽しくて、酒が進み、
すっかり酔っぱらった僕は、敬さんを「あにきぃ~!」と呼びまくって、
尊敬の念をアピールしておりました……。
さらには、その翌日には、彫刻家で陶芸家の奥さま、
佐知子さんの作品を見せていただいて、またもや衝撃が走ったのでした。
夫婦揃ってすごすぎる……世の中、すごい人たちがいるんだなあ……って。
これ、僕だけが感じたわけでなく、
一緒にいた妻も沓沢家に完全に惚れていました。
沓沢家の皆さまはそんな馴れ馴れしい僕たちを楽しんでくれたようで、
それ以来おつき合いをさせていただいているのです。
そんな沓沢家との出会いから1年が経ち、
わが家は移住先探しの旅をすることになったのです。
もし沓沢家と出会っていなかったら
その選択は少なからず違うものになったいたのかもしれません。