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移住の決め手は尊敬できる人?
美杉町でまたも魅力的な出会い|Page 4

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.005

Page 4

尊敬できる人たち
との出会い

東京に戻ってからしばらくすると、幸さんから電話がかかってきた。

「写真届きましたよ。なんていうか、鮮やかね」

喜んでいただけてよかった。
そのあと、電話でいろいろと話をしてくれた。

「私ね、自分の持っているものを次の世代に残したいと思っているの」

幸さんのその言葉を聞いて、私はついこんなことを伝えた。

「あの、幸さん。私は先人の知恵を次世代につなぐために
生まれてきたんだと思っているんです」

しまった……、また熱くなってしまった……、と反省していると、
幸さんが「ふふ」っと静かに笑った。

「野草のことも干野菜のことも、
教えていただきたいことがたくさんあります。
お邪魔になるかもしれませんが、また寄らせていただいてもいいでしょうか」

と言うと、「はい、いつでもどうぞ」と幸さんが答えてくれた。
そのやわらかい声色が、何だかとてもうれしかった。

〈美杉むらのわ市場〉に出店している幸さん。ずらりと並んだ商品の数には圧倒される。そのほか〈道の駅 美杉〉でも幸さんの商品を購入できます。

以前、長崎県に移住した方にインタビューをしたことがある。
彼女はこんなことを言っていた。

「移住先をこの場所に決めたのは、尊敬できる人との出会いだったんです。
この人がいればいい、そう思えるような人と出会ったんです」

そのエピソードを、私は頭の中で繰り返していた。
幸さんは私にとってそういう存在なのかもしれない。

前回も夫が書いたように、私たちはいま美杉にとっても惹かれています。
沓沢家との出会い、そして幸さんとの出会い。

さあ、この先どういう決断をしていくのか。
次回以降、またお伝えします。

幸さんは本も出版されている。『美杉村見てあるき』では、幸さんが文を、娘の千年さんが絵を担当している。『美杉村のはなし』は、美杉に古くから伝わる民謡や昔話をまとめたもので、その独特の空気感に引きずり込まれる。

長旅には車中泊が便利。左奥に見えるシルバーのボックスはポータブル冷蔵庫。道中自炊することが多いので、食材をストックしておけてとっても便利。ちょっと値が張ったけれど買ってよかった!

自宅でつくったお弁当を、車中泊の翌日の朝ごはんに。

自宅で仕込んだ自家製酵母パンを道の駅で焼いてみた。が、バーナーの調節にまだ慣れていなくて焦がしてしまった……。

長旅になると洗濯物がたまるので、コインランドリーに駆け込む。待っているあいだは隣の銭湯でひとっぷろ。

写真・文 津留崎徹花