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写真家・在本彌生の旅の記録
夏の道央エリアへ
時空を超えて|Page 3

おでかけコロカル|北海道・道央編

Page 3

2 地物の力強さを感じる旅

海道を巡るには、いくつ胃袋があっても足りない、
いつもそう思う。
地物の味がどこまでもおいしいので、味わいたい食材、
試したいひと皿、そして美酒がいくらでもあるのだけれど、
人間の胃袋には容量と消化する力の限界がある。
だから何度も来て、また違う味を試さなくてはならない。
でもそれ以上に、一度知ってしまった味をなぞりたい舌の欲求も
かなえなければならないから大変だ。

滝川町では男前な料理人たちがつくる見事な料理に遭遇した。
〈プティ・ラパン〉はフレンチ、
〈鮨おくの〉は寿司とジャンルが異なるが、
このまちでこんなにおいしく、堅実で、進化と工夫があり、
その上美しい料理に出合えたことがうれしく、驚きが大きかった。

滝川は、かつて炭坑町として栄え、
大きな歓楽街も大変にぎやかだったという。
美唄のまちもしかり。昔から若者のたまり場の喫茶店
〈ぐうりん亭〉で見たチョコレートパフェ。
その正しき姿に、店の内装と同じく強いノスタルジーを感じた。
あらゆる土地から人が集まり、文化が寄せられて、
それらがそれぞれの土地で新たに育まれたのだろう。
つくりの美しいクラッシックなホテルがあったりするのも
その頃の名残だそうで、そんなまちの独特の個性になっている。

野菜、果物、穀類の生産者たちの姿勢も素晴らしい。
おいしいものを厳しい自然とともにつくっていくのは
大変な苦労を伴うはずだが、安全でたくましい作物をつくるために
働く生産者の皆さんの、日に焼けた笑顔は本当に美しい。
自然と一緒に働き生活をともにする人々は、ほのかに野性味を
帯び、肉体的にも精神的にも洗練されている。
たくましさと美しさがその姿に刻まれるのだろうと思う。

写真・文 在本彌生