自らつくって使って、美しい自然を満喫
冷たい風の吹く10月中旬、美深町の山あいにある
元恩根内小学校を活用した〈アートヴィレッジ恩根内〉のカフェに入ると、
パチパチと燃える薪ストーブの火が出迎えてくれました。
懐かしいたたずまいの校舎のなか、
木のぬくもりに包まれた暖かな空間に、冷えた体がほっとゆるみます。

アートヴィレッジを運営する工藤 貢さん、眞紀美さん夫妻が4年間かけ、丹精込めてつくりあげてきた校舎内のカフェ。薪ストーブやテーブル、椅子はもちろん、なんと窓枠や木製ライトまで手づくり。
2009年にオープンしたアートヴィレッジ恩根内には、
まちに住む人や作家活動をする人が利用できる、
絵画室や木工室、暗室などが整備されています。
美深町では、ここの木工室を使って、冬の新しい遊びとして注目を集める〈雪板〉の制作から、
完成した雪板で美深の雪山滑りまでを楽しめる、魅力的な体験プログラムがスタートしました。
主宰するのは、美深を中心に有志が立ち上げた、
道北の魅力を発信するプロジェクト〈BASIS〉(ベイシス)。
“Craft & Play”を掲げ、“遊び道具を自分でつくる楽しみを知り、
それを使って道北の自然をぞんぶんに味わう”ことを伝えています。
屋外での体験には、雄大な眺めを楽しめる天塩川カヌー下りプログラムも。

完成品の雪板。スタッフが試行錯誤を重ね、よく滑る現在の形までたどり着いたそう。乗る人の個性やスタイルに合わせた加工ができるのも雪板の特徴。
近年、国内外のスノーボーダーに注目されている手づくりの雪板。
パウダースノーを、木の板で滑るアクティビティがじわじわと人気となっています。
ビンディングがない一枚板なので、持ち運びも手軽。イメージは、ソリ遊び。
ガイドとともに新雪の森のなかへ入りスロープを滑ったり、雪遊びを満喫できます。
なだらかな丘が続く美深の地形は、
雪板で滑ると臨場感たっぷりで最適なロケーションなのだそう。
本格的な雪板は一枚板から削りだし、こだわりの樹種の場合10万円以上するものも。
美深町の雪板づくり体験では、板を重ねて厚みを出し、
カーブをつけたのちにカットして塗装までを行います。
「つくり方はいたってシンプル。雪板は誰でもつくれるし、初心者も簡単に扱えますよ」
雪板づくりを教えてくれるのは、BASISを立ち上げた
美深町観光協会の事務局長、小栗卓さんです。さっそく、その手順を見せてもらいました。
不器用でも大丈夫! 簡単な雪板づくり

まずは厚みをつくるため、ベニヤ板に手早く均一にボンドを伸ばし、4枚を貼り合わせていきます。板の厚さにも意味があり、初心者はゆっくり滑ることをイメージして薄い板を、上級者は加速をつけるため厚い板を使います。

これまで50枚以上の制作を重ねてきた小栗さん。そのなかで考案された、カーブを出すための専用台へ、重ねた板を金具でしっかりと固定。

基本となる板のでき上がり。次は特製の型にそって、好きな形にカットします。

基本の型以外に、先端の形を変えたり、板の幅を太くすることも可能。

電動ノコでカットしていきます。細かい粉が飛ぶので、体験では汚れてもいい服装がおすすめ。

丁寧にヤスリがけ。この工程で、滑りが格段に良くなるそう。

仕上げに、試行錯誤を重ねて行き着いた、水性ウレタンニスをペイント。

左ができ上がった雪板。ここから好みで色を塗ったり、右の完成品のように滑り止めシートを貼り付けて完成。見た目より軽く、運ぶのも楽です。
雪板づくりの所要時間は約3時間。希望者はでき上がった雪板を背負い、
ガイドつきの雪山ツアーへ行くこともできます。雪板を満喫できる、
美深町近郊のとっておきのバックカントリーをご案内。
「初心者でも、上手に滑れなくても、
ふわふわの雪が受け止めてくれるので、大丈夫。本当に楽しいですよ」と小栗さん。
町内にある、アウトドアガイド〈リバートリップキャメル〉では、
雪板遊び体験のみも受け付けています。

静寂の森へ向かい、新雪のなかを滑るのは壮快!(写真提供:美深町観光協会)
制作体験がひと息ついたら、校舎内につくられた
ギャラリースペースにも立ち寄ってみましょう。
廊下には、近郊遺跡の出土品を展示するガラスケースも。
廃校から8年、今もさまざまな人が訪れ生かされている校舎で、
アート作品や、まちの歴史に触れることができます。


ギャラリースペースでは、道北各地で巡回開催された〈道北アート〉展が開催されていました。“アートで道北を盛り上げていこう”と工藤さんを中心に2016年からスタートした事業で、上川北部、留萌、宗谷が、地域を超えて連携しながら道内外へ向けて道北を発信しています。
地域の年配の人たちも集える場所へ
アートヴィレッジの運営とともにカフェを切り盛りする工藤さんは、小樽出身。
札幌で作家として版画制作を行い、奥さまも画家として活動してきたそう。
おふたりは静かな環境で作品制作に打ち込むため、
アトリエとして使える廃校を探して道北を回り、最後にここ美深にたどり着きます。
「持ち主である美深町役場からは、アトリエだけでなく、
地域に寄与する活動をと依頼されました。私は内装や木工は初体験だったけど、
カフェをつくったり、木工室などものづくりの場を整備したのは、
そもそも地域のおじいちゃんおばあちゃんのために始めたこと。今もその思いで続けています」

立派なカウンター席で水出しコーヒーを淹れる工藤さん。カフェメニューはブレンドコーヒー(300円)などドリンクのほかにケーキ(各300円)も。ドライブのひと休みにも立ち寄ってみては。
地域の人たちへ開かれたカフェは、近所のおじいちゃんが酒瓶を持って訪れたり、
近隣の忘年会や新年会の会場になるほか、
木工室では、持参したまな板を削るおばあちゃんもいるそう。
自由に過ごせるコミュニティスペースとしての機能を果たしています。