「棚田をシャクヤクでいっぱいに!」
とある夫婦と100人の若者たちは、どう耕作放棄地をよみがえらせたか
高知県大豊町。
四国のほぼ中央に位置し、高知随一の豪雪地帯としても知られる。
平均標高450メートルの山岳地帯に位置する大豊町は、平地がとても少ない。
代わりにここの人たちが先祖代々つくりあげてきたのが、
急勾配の山の斜面に延々と続く棚田である。
田植えの時期は青々とした水田が、稲刈りの時期は黄金色の稲穂が、
冬には積もった雪が、季節ごとに色を変えて棚田をパレットのように染める。
フィリピンでは、山肌に沿って空まで続く棚田のことを「天国への階段」と表現するが、
なるほど確かに言い得て妙だ。

大豊町は四国有数の豪雪地帯。雪が積もると棚田は白い階段に装いを変える。

その大豊町で、耕作放棄地となった棚田に
シャクヤク(芍薬)を咲かせるプロジェクトが始まっている。
発起人のひとりが、8年前に大豊町に移住をしてきた大谷一夫・咲子ご夫妻だ。
「山が好きだったから、登山に来たことが最初のきっかけ。
来てみたら、すっかりこの棚田の風景に惚れ込んでしまって。
ちょうどお父さんの主治医から、
空気のいいところに引っ越した方がいいって言われたこともあって移住を決めたの」
しかし、大豊町は四国で最初に限界自治体を迎えたまちでもある。
「だんだん、集落の人も年をとっていって、野良仕事が難しくなっている。
人が入らなくなくなった棚田は、耕作放棄地になって、すぐに崩れていく。
この美しい棚田の景色に惚れ込んできたのに、それがなくなっていくことが悲しくてね。
なんとかできないかって集落の人たちと作戦会議をしたの」

大谷一夫さん(左)と咲子さん(右)。この日は咲子さんの誕生日を祝って大学生がケーキを持ってきていた。

大谷さんご自慢の家からの景色。この景色を見ながら、ふたりに会いに来た若者とごはんを食べるのが恒例行事。

耕作放棄地となった棚田(左)と、農作地の棚田(右)。放棄地となった棚田は、草木が生い茂り、土砂崩れなどの原因にもなる。
高知大学の教授や、地域の要人が集まった会議で、棚田をどのように生かせるか、
どうしたら大豊の棚田を残せるかを話し合った。
人もいない、予算もない、でもなんとかしたい。
そんななかで、プロジェクトは咲子さんのひと言で決まった。
「棚田をシャクヤクでいっぱいにしよう」
咲子さんに聞くと、
「シャクヤクにしようと言ったのは、この辺りに準絶滅危惧種の
ヤマシャクヤクが自生してるっていうのもあるんだけど……
しんどいことは嫌! と思ったから(笑)。
ほかの花と違って、シャクヤクは1株植えたら毎年花を出してくれる。
もちろんお世話は必要だけど、
これだったら人がいないこの土地でもみんなの力でできると思った。
私たちの力で、私たちの土地を守っていけるって」
そして2013年、〈大豊シャクヤクの会〉は誕生した。

準絶滅危惧種に指定されているヤマシャクヤクの花。
耕作放棄地となった棚田にシャクヤクを咲かせるべく、毎週のように開墾作業や会議を続けた。
高知大学の浜田和俊先生と集落のつながりもあって、大学生ボランティアも徐々に増えていった。
ここでも中心になったのは一夫さん。
農機具の使い方や生活の知恵に至るまで、大学生と一緒に畑に立って、
ひとつひとつ手ほどきをしながら教えた。
民間の助成金や寄付金を募る傍ら、
クラウドファンディングにも挑戦して全国から120万円の資金も集めた。
地元民の力、地域の大学生の力が合わさって、
限界集落に少しずつシャクヤク畑が広がっていった。
1年目は500平米だった畑も、2016年の今年は2000平米へと広がった。



シャクヤクの植えつけ作業をする高知大学生団体MBのメンバー。




































































