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肥土山農村歌舞伎、
本番までの100日間

小豆島日記
vol.147

posted:2016.4.25   from:香川県小豆郡土庄町  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。

writer profile

Hikari Mimura

三村ひかり

みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
http://homemakers.jp/

今年も伝統行事、農村歌舞伎の舞台へ

毎年5月3日に開催される「肥土山農村歌舞伎」。
私たちが暮らす小豆島・肥土山地区で300年以上続く農村の伝統行事です。
今年もまたその季節がやってきました。

肥土山農村歌舞伎は、自治会、歌舞伎保存会の方々が中心になって毎年準備を進めます。
肥土山自治会の中には6つの組があり、
去年は私たちの組が担当組でした(6つの組で順番に担当していきます)。
歌舞伎の担当組は準備をするだけでなく、役者としても出演します。
去年、たくちゃん(主人)といろは(娘)はふたり揃って歌舞伎の舞台に立ちました。

そして今年!
去年から歌舞伎保存会に入ったたくちゃんは今年も役者として出ることに。
いろはも子どもたちだけだけで演ずる子ども歌舞伎に出ることに。
というわけで、今年も歌舞伎本番に向けてふたりは稽古の日々です。
そんな日々のことを今日は書こうと思います。

●1月23日(土)
年が明けて、
「今年の歌舞伎は誰が出るんだろうね~」
「なんの演目をやるんだろうね~」
なんて話がちらほらされるように。
「いろはちゃん、今年も歌舞伎よろしくね。」
と言われたり。
ほんとに今年も出るのかなと思ってましたが、
去年、役を演じたいろはは意外とやる気。
すんなりと今年も出ることに決まった本番101日前。
まだどんな役になるかはわかりませんが、
今年も化粧をして衣装を着て舞台に立つことに。

●2月16日(火)
顔合わせ。
子ども歌舞伎の役者全員が初めて集まりました。
今年は小学1年生~6年生まで10名で演じます。
初めて集まったと言っても、毎日放課後子ども教室で
一緒に過ごしている近所の友だちたち。
学年が違ってもここの子どもたちはみんなほんとに仲がいい。
演目と配役が発表され、友だちの名前を台本に書き込みます。

今年の子ども歌舞伎の演目は『恋女房染分手綱 重の井子別れの段(こいにょうぼうそめわけたづな しげのいこわかれのだん)』。

台本は読めない漢字だらけ。ふりがなをうちます。

●2月22日(月)
セリフの読み合わせ。
台本は読めない漢字だらけ。
大人の私でも読めない漢字や意味のわからない表現がたくさん。
ふりがなをうって、とにかくまずは自分のセリフの確認。
この日から歌舞伎本番まで週2回練習が続きます。
台本3ページにわたるような長いセリフがある子も。
それも昔の言い回し、そして歌舞伎独特のイントネーション。
こんなの覚えられるんだろうか。

●3月3日(木)
セリフの読み合わせが続きます。
もうセリフを暗記し始めてる。
子どもたちすごい。
そして友だちたちと夜集まって練習するのがとても楽しそうです。

●3月6日(日)
練固め(ねりがため)。
「ねりがため」なんて、最初は読めませんでした。
キックオフみたいな日です。
歌舞伎に関わる人たち全員で集まって挨拶をして、ごはんを一緒に食べます。
子どもたちも自己紹介。

練固め(ねりがため)の日。みんなで頑張りましょう! の乾杯。

子ども歌舞伎に出る子どもたちの自己紹介。

●3月7日(月)
今日から立ち稽古。
地元の公民館には歌舞伎の練習部屋があります。
動きも確認しながら練習。
練習が終わってから、かつら合わせ。
いろはは人生で初めてちゃんとしたかつらをかぶりました。

立ち稽古スタート。練習着と練習用の小物。

今回の演目はみんなですごろくをするシーンがあります。普段と同じように遊ぶ。

かつらの試着。

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本番の衣装と化粧も

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●3月20日(日)
衣装出し、大道具小道具の準備。
今年の演目で使う衣装を歌舞伎舞台横にある蔵から出します。
大道具、小道具の確認も。
朝からたくさんの人たちが歌舞伎舞台に集まって準備を進めます。

1年ぶりに歌舞伎舞台が開いて、花道が設置されます。

衣装も蔵から出します。

●3月24日(木)
衣装合わせ。
本番の衣装を着てみます。
着付け担当のお母さんたちがきれいに着せてくれます。
肥土山では着物を着るということが都会で暮らしていたときよりも身近。
帯の巻き方、着物のたたみ方、少しずつ自分も覚えていかないと……。

衣装合わせ。お母さんたちがきれいに着付けてくれます。

着物を着るとちょっとおしとやかになります(笑)。

●3月28日(月)
春休みも変わらず練習。
この日から、三味線、浄瑠璃も合わせて練習。
ぐっと雰囲気が出てきました。
子どもたちもきっと演じてて楽しいだろうな。

●4月10日(日)
化粧リハーサル。
本番と同じ化粧をしてみます。
化粧をするといつもとは違った雰囲気に。
ふとした表情が大人っぽくてびっくりします。

化粧リハーサル。

いつもとちがう大人びた表情。

●4月21日(木)
本番の舞台で練習。
この日は春の嵐で朝から夕方までひどい雨風。
どうなることかと思いましたが、練習が始まる19時には雨も風もおさまりました。
静かな農村の夜、真っ暗な中で明るいのは舞台の上だけ。
お母さんたちに見守られ、子どもたちは演じます。

お母さんたちに見守られながら、本番舞台で練習。

●4月24日(日)
リハーサル。
すべての演目を最初から最後まで本番と同じように進めます。
歌舞伎本番まであと9日。

こんな風にして、歌舞伎本番までの100日間、準備を進めてきています。
たくさんの地域の人たちに囲まれて、支えられて、
舞台に立つことができる子どもたちは
ほんとに恵まれた環境で育っているなあと思います。
そして子どもたちはそれに応え、それぞれの役を
一生懸命演じてくれているように思います。

肥土山農村歌舞伎本番は5月3日。
15時からスタートです。ぜひお越しください。

information

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小豆島 肥土山農村歌舞伎

日時:2016年5月3日(火・祝)15:00~20:00(小雨決行)

場所:肥土山離宮八幡神社 境内(全席無料・自由席)

主催:肥土山自治会

後援:肥土山農村歌舞伎保存会

演目:

第一幕『三番叟』

第二幕『恋女房染分手綱 重の井子別れの段』

第三幕『菅原伝授手習鑑 吉田社車引の段』

第四幕『ひらかな盛衰記 源太勘當』

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HOMEMAKERS 

住所:香川県小豆郡土庄町肥土山甲466-1

営業時間:金曜、土曜のみ 11:00~17:00(L.O. 16:00)

http://homemakers.jp/

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