連載
posted:2016.5.9 from:香川県小豆郡土庄町 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。
writer profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
http://homemakers.jp/
1週間前からその日の天気予報がずっと気になってました。
5月3日。
年に一度の村の伝統行事、肥土山農村歌舞伎の日です。
晴れマークが続いているのに、なぜかその日だけ雨。
それもテレビのニュースでは大荒れになるとも。
どうにか雨の時間がずれますようにとずっと願っていました。
こんなに天気のことを気にするのは年に数回あるかないか。
というのも、農村歌舞伎は屋外の舞台で行われます。
舞台には屋根がありますが、観覧席(桟敷)には屋根もないし、
もちろん椅子なんかもありません。
地面にゴザを敷いて座ってみます。
気持ちのいい気候のなかで、お弁当を広げて、
家族や友人たちとワイワイしながら歌舞伎を見る。
それをしてもらいたい〜!
そして迎えた当日。
朝起きると昨日までの暑いほどの晴天が一変。
空は曇り、ビュービューとすごい風。
なんでよりによってこの日に。
まぁでも、天気だけはどうしようもない。
あとはひどくならないことを祈り、舞台に向かいました。
年に一度のこの日のために、多くの人が関わり準備を進めてきました。
表に立つ役者さんだけでなく、裏を支える人たちがたくさんいます。
すべてのとりまとめをするのは、今年の担当組の組長さん。
今年はそんな天気予報だったので、地元の大工さんたちが
仮設だけども強い風にも負けない屋根を組んでくれました。
そしてお母さんたちは、毎回稽古のときにお茶やお菓子を用意してくれたり、
当日も朝2時台からみんなのお弁当づくり。
着付け、化粧、音響、大道具……、みんなそれぞれの役割を担います。
Page 2
300年以上続けてきたなかでできあがったこの仕組みはほんとに強い。
仕組みというかチームというか。
何をどうやって進めていくかというマニュアルなんてなくて、
先輩たちの姿を見て、後輩たちが引き継いでいく。
なんで自分がやらないといけないのか? と疑問に思うこともなく、
当たり前のように自分の役割を担う。
今回いろは(娘)は子ども歌舞伎に出演したのですが、
一緒に役者をした子のお母さんがこんなことを言ってました。
「いまはまだお弁当つくれてるけど、年々人の数が減ってるから、
そのうち担当組のお母さんたちだけでつくるのが難しくなるよね。
そしたら市販のお弁当にするのもありかもね。
でも一緒にお弁当つくりながら、話したりするから仲良くなるんだよね〜」
まさに!
歌舞伎という共通の目的をもってともに時間を過ごすことで、
お互いのことを少しずつ知っていく。つながりができていく。
私たち家族にとって4回目の肥土山農村歌舞伎が無事に終わりました。
大嵐のなかでの歌舞伎はきっと記憶に残るんだろうなぁ。
あの年の歌舞伎は大変だったね〜なんて言いながら思い出しそう。
来年こそは晴れますように。
そしてまたみんなで歌舞伎の歴史をつないでいけますように。
information
HOMEMAKERS
Feature 特集記事&おすすめ記事
Tags この記事のタグ