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山、買っちゃう!?

うちへおいでよ!
みんなでつくるエコビレッジ
vol.001

posted:2015.8.13  from:北海道岩見沢市  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  北海道にエコビレッジをつくりたい。そこにずっと住んでもいいし、ときどき遊びに来てもいい。
野菜を育ててみんなで食べ、あんまりお金を使わずに暮らす。そんな「新しい家族のカタチ」を探ります。

writer profile

Michiko Kurushima

來嶋路子

くるしま・みちこ●東京都出身。1994年に美術出版社で働き始め、2001年『みづゑ』の新装刊立ち上げに携わり、編集長となる。2008年『美術手帖』副編集長。2011年に暮らしの拠点を北海道に移す。以後、書籍の編集長として美術出版社に籍をおきつつ在宅勤務というかたちで仕事を続ける。2015年にフリーランスとなり、アートやデザインの本づくりを行う〈ミチクル編集工房〉をつくる。現在、東京と北海道を行き来しながら編集の仕事をしつつ、エコビレッジをつくるという目標に向かって奔走中。ときどき畑仕事も。
http://michikuru.com/

北海道でわたしができること

「あの、山の購入を考えているんですけど……」
一瞬電話をためらったけれど、躊躇していたら先延ばしになる。
そう思って勢いで電話したのは、道内森林組合連合会だ。
この連合会では、森林の管理や保全とともに森林売買の紹介なども行っているという。
電話に出たのは、やさしそうな声の担当者だった。
山親爺のような人が出たらどうしようと内心ドキドキしていたので、
ホッとしつつ、山の購入について相談したいとたどたどしく話すと、
あっさりと会う約束を取りつけることができた。
すぐに土地の紹介ができるわけではなさそうだが、
よい情報があれば知らせてくれるという。
1週間後に訪ねることになった。

こんなふうに土地を探しはじめたのが、2015年6月のことだった。
春に会社を辞め、いよいよ目標に向かって本格的な活動がスタートした。
その目標とは、北海道にエコビレッジをつくること。
そしてこの連載では、エコビレッジができるまでの道のりを紹介していきたい。
まず、第1回目では、なぜエコビレッジをつくろうと思ったか、
そのきっかけについて語ってみようと思う。

わたしが東京から北海道に移住したのは4年前のことになる。
東京の出版社で編集者として働いていたが、東日本大震災をきっかけに、
夫の実家がある北海道岩見沢市へ2011年の夏に移住した。
ラッキーだったのは、これまでと同じように出版社に在籍しつつ、
北海道で在宅勤務をするというスタイルを会社が認めてくれたことだった。
月に1回東京で打ち合わせをして、北海道で仕事をする生活。仕事仲間からは、
在宅勤務をうらやむ声もあったが(確かに子育てには最高の環境だけれども!)、
移住から2年が経とうとする頃から、「これは長く続けるのは難しそうだな」
そんな不自然さを、1年、2年と月日が流れるうちに感じるようになった。

それは、地元の人と関わりをもたず、東京でない場所で、
ただ単に東京の仕事をしているという一方通行のような感覚と、
スカイプ会議はするけれど会社のスタッフと密に連携がとれない、
1枚フィルターがかかっているような感覚があったからだ。
こうした心のアンバランスな状態が続き、移住してから3年が経つ頃には、
「自分がなぜ北海道に来たのか?」という疑問がふつふつとわいてくるようになった。
「北海道で自分ができることってなんだろう?」

これまで手がけた雑誌や書籍。在宅勤務してからも年に12冊ほど本をつくり続けてきた。

もちろん、こんな疑問にすぐに答えは見つからないとは思うが、
そのとき考えてみたのは、まず
「この地に来たからこそできたこと」を挙げてみることだった。

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筆者が考える「エコビレッジ」とは

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わたしがつくりたい「エコビレッジ」

頭に浮かんでいたのは、はるばる東京から友人や仕事仲間が遊びにやってきて、
みんな「北海道サイコー!」と、すっきりした顔で帰っていく様子だ。
遊びにくる友人は、わたしの仕事の関係もあって、クリエイティブな職業の人が多く、
あるときここでワークショップを企画してくれた友人がいたり、
家具づくりの工房と連携をしつつ、北海道への移住を具体的に考える友人もいた。
こうした個性的な面々がやってきてくれるなら、
短期でも長期でも滞在できて、もちろん移住も歓迎できる、
そんな場所があったらおもしろいんじゃないか。
そして、地元のみんなが参加できる、ワークショップを常時開催してみたら……。

わが家の窓から見える風景。自然はもちろん豊かだが、ゴム工場の跡地に残る煙突も見える。

友人のニードルアーティスト・岩切エミさんが、昨夏に地元で缶にデコレーションをするワークショップを開催してくれた。

そんな場所を、いまわたしは仮に「エコビレッジ」と呼ぶことにしている。
エコビレッジとは、住民たちが互いに支え合いながら、
環境に負荷の少ない暮らしを目指すコミュニティのことを指す。
世界の各地にエコビレッジはあり、10数名の小さな村から数百人規模の村まで、
それぞれ独自の考えに基づいて運営され、短期滞在者を受け入れている施設もある。
こうした動きは日本でも高まっていて、
北海道にもさまざまなコミュニティが多数生まれている。
それらのコミュニティは、ともに暮らすという形態をとっていないことももちろんあるが、
エコロジー的な視点に立ち、人と人との結びつきを強め、
地域を活性化させる役割を担っているのだ。

自分がつくろうとしているエコビレッジがどのくらいの規模になるのか、
まだわたしには見当もつかない。
規模については漠然としているとはいえ、まず場所を見つけなければ、
いろいろなことが始まらないようにも思っている(連載も開始してしまったわけだし!)。

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山林1ヘクタールの値段は……?

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オフグリッドな暮らしを実践する人

そんななかで不動産物件をチェックしていたら、
山を買うという方法があることを友人が教えてくれた。
その友人とは、有機野菜などの栽培をする農家の林宏さんだ。
「自給自足をし、オフグリッドな暮らしをしていきたいんだよね。
山があれば、そこで木の実をとってみたいし、しいたけも育ててみたい」という林さん。

林さんは、すでに畑の脇で太陽光パネルを設置していて、
電力会社の送電網(グリッド)にできるだけ頼らない、そんな暮らしを始めている。
こうした暮らしをさらに推し進めようと山の購入を考えていて、
農家のネットワークを使って土地を持っている方に、
実際に場所を見せてもらったりしているという。
「このあいだ教えてもらった土地があったんだけど、2ヘクタールだったんだよね。
畑だったら2ヘクタールだとそれなりに栽培ができるけれど、
山なら斜面の一区画分くらいにしかならない」
ちなみにこの地域の山林の売値は
1ヘクタールで50万円ほどという(売り主さんとの話し合いによるみたいだが)。

林宏さん。農園の敷地には太陽光パネルを設置。オフグリッドを実践中。

林さんの畑。広さは2ヘクタール。わたしには、ものすごく広く感じられる。

東京生まれ東京育ちで、サラリーマンとしてしか働いたことのないわたしにとって、
「ヘクタール」という単位はまったくピンとこなかった。
調べてみると、甲子園球場のグラウンドがだいたい1.3ヘクタールで、
約13000平方メートル。
えーっ、2ヘクタールでもとっても広い! 
思わず買っちゃいそう……。心ははやるが、林さんから、
「まず現地を見てイメージを広げるといいよ」というアドバイスをいただいた。
確かに開墾もされていない原野をポンと買ったとしても、
木ひとつ切り倒せないわたしに何ができるのか。
山とひと口に言っても、幅が広すぎるよね……。
こんなやりとりがあったあと、ネットで情報を集めていたら
道内森林組合連合会という組織があることを知ったのだ。
そして思い立ったら即行動! ということで、電話をかけてみたというわけだ。

林さんとわたしは山トモ。「山を探すぞ!」ガッツポーズではなくて、山ポーズ。

わたしのエコビレッジづくりへの道のりは、こんな風に、
かなり行き当たりばったりといえるかもしれない。
今回のように、イメージが固まらないまま、
突然、山を買おうと思い立ってしまったり。ついつい暴走しがちな部分もある
(夫もドン引きするくらい……、これは次回にご紹介)ので、
この連載では、北海道にあるさまざまなコミュニティについても取材し、
大先輩たちにしっかりと学び、持続可能な運営形態を探りたいと考えている。

この連載を通じて、自分がつくるエコビレッジの輪郭を、
だんだんと際立たせていきたいと思っているのだ。
どんなエコビレッジになっていくのか……、
みなさんこの連載を、どうかよろしくお願いします!

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