撮影:松村康平
多田正治アトリエ vol.3
前回まで三重県尾鷲市梶賀町の〈梶賀のあぶり場〉を紹介してきましたが、
今回はそれより3年ほど前のお話。
熊野市で学生たちと古民家の改修に挑んだプロジェクトについて紹介します。
桜の名所と黒石の産地、熊野市神川町
尾鷲市の隣の熊野市の山中に、神川町という人口300人ほどの集落があります。
神川町は、谷間を走る神上川(こうのうえがわ)に沿った集落で、
豊かな自然に囲まれています。
旧神上中学校の木造校舎がそのまま残されており、
いまでも当時の面影を知ることができます。

神川町の風景。

旧神上中学校。

旧神上中学校のノスタルジックな木造校舎の廊下。
校庭や川沿いに桜が植えられており、春になると一帯が桜色に染まる
桜の名所としても知られています。

また神川町は「那智黒石」の日本唯一の産地でもあります。
那智黒石はキメの細かい漆黒の美しい石で、
碁石や硯(すずり)として用いられている石材です。
その歴史は古く、平安時代に硯として用られていた記録もあるほどです。

那智黒石採掘場。(撮影:高見守)
熊野の山中にはいくつもの集落がありますが、そこでよく見られるのが、
「石垣」と雨よけの「ガンギ」のある民家です。

石垣の上にガンギ(赤茶色の三角形の部分)のついた民家と小屋が並ぶ。
平地が少なく、地質学的に石がたくさん採れる熊野では、
家や耕作地のために多くの石垣が築かれたようです。
いろいろなところで、丸い石を野面積み(自然石を加工せずに積むやり方)にした
石垣をよく見かけます。
また熊野の多雨に対応するため、家の妻側(建物の長い方向に対して直角な側面、
つまり家のシルエットをしている面)に雨を除ける板が取りつけられています。
熊野の大工さんはそれを「ガンギ」と呼んでいます。
東北地方の民家で見かける雪除けの「雁木」とは別物です。
石垣とガンギの風景は、民俗学の今和次郎も著書『日本の民家』に書いています。
昔からあった風景なのでしょう。神川町にも同様の民家がいくつも見られます。































































































































