連載
posted:2019.5.27 from:香川県小豆郡土庄町 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。
writer profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
http://homemakers.jp/
ゴールデンウィークの連休が終わり、農村歌舞伎や運動会などの春の行事も終わり、
少し落ち着いた5月下旬。
見て見ぬふりをしていた家のあれこれに向き合い、ひとつずつ済ませていっています。
今日はそんな、なんてことはない普通の日のことを書きます。
5月は露地いちごの収穫シーズンです。
露地いちごというのは加温したビニールハウスの中で育てられたいちごではなく、
露地(外)で育ったいちご。うちでは育ててないのですが、
近所のお母さんがいっぱい採れたからとおすそ分けしてくれました。
もういまでこそ慣れましたが、基本的にこういうときにいただく量というのは、
スーパーでパック売りされてる量とは全然違います。今回は大きなボール山盛り1杯。
さぁ、ジャムをつくろう!
洗いながら、傷んでいるものは除けて、
小さな露地いちごのヘタをひとつずつ落としていきます。
ジャムをつくるというのは時間のかかる作業ですが、なんとも幸せな時間なんです。
ただ黙々といちごのヘタを落としたり、
マーマレードジャムだったら皮をむいて刻んだり、
そういう単純作業を繰り返していくと、きれいになった素材が積み上がります。
その素材の美しいこと! 眺めてるだけでうれしくなる。
それを鍋に入れて、砂糖や柑橘果汁などをあわせて炊きます。
ガラス瓶に移して、煮沸消毒したら完成。
あー、冷蔵庫にジャムがあるとうれしいんですよね。
うちはパンに塗ったり、ヨーグルトに混ぜたりして食べるので、
すぐなくなってしまいます。なくなっても、
なんとなくスーパーで買う気になれず、また次につくる機会を待ちます。
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それから庭のサクランボも5月に赤く色づき食べ頃になります。
収穫したサクランボを食べながら、そういえば何年か前にサクランボ酒つくったね〜と、
倉庫に保管しておいた瓶を取り出してきて試飲。
うん! おいしい。時間が経ったせいか、味が馴染んでまろやかになった気がする。
小豆島に引っ越してきた当初は、こうやってお酒にしたりジャムにしたり
いろいろしてたねと思い出しました。
畑の面積が増えて、育てる作物も増えて、販売するための
加工品をつくるようになって、その発送作業もあって。
お金を稼ぐための仕事が増えてしまって、ジャムをつくったり
家のことをする時間が少なくなってしまった気がします。
そうじゃない。
そもそも〈HOMEMAKERS〉という屋号には、家のこと、暮らしに関わることを
自分たちの手でする人たちになろうという思いが込められています。
ジャムを買うためにお金を稼ぐんじゃなくて、
ジャムをつくるための手と時間を持っておく。
古くなった障子を自分で張り替えるのも同じこと。
働いて(お金を稼いで)消費して、消費するためにまた働いてじゃなくて、
そもそも働くこと自体を生きることに。
ジャムを買う、障子を張り替えてもらうためにお金を稼ぐんじゃなくて、
ジャムをつくる、障子を張り替えるというのは日々の生活仕事のひとつ。
とはいってもすべてのことを自分たちの手でできるわけではないし、
生活にはある程度お金がかかります。
だからまったくお金を稼がないというわけじゃなくて、要はそのバランス。
お金を稼ぐための仕事ばっかりになってないか?
時間がないからって、本当は大切にしたいことをおろそかにしてないか?
忘れてしまいがちだから、意識的に考えるようにしないと。
あー、まだ張り替えてない障子が目の前に2枚残ってる……。
明日もあさっても、家にはやりたいことがたくさんある。
ま、そんなもんです。穏やかにひとつずつ、こつこつと。
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