小豆島の虫送り、
農業と暮らしが里山の風景をつくる
美しい棚田の風景に思うこと
もうすぐ7月。「虫送り」の季節です。
虫送りは、火手(ほて)とよばれるたいまつに火を灯し、
田んぼのあぜ道をみんなで歩いて虫よけと豊作を祈願する行事。
映画『八日目の蝉』にも出てくるのですが、
小豆島といえばこれでしょ、と言ってもいいくらい美しくて神秘的な光景です。

中山の虫送り(2014年撮影、以下同じ年の虫送り風景)。

火手に火をつけてもらって田んぼのあぜ道を列になって歩いていきます。

列になって火が動いていくのがとても美しい。

火手を持って20分くらい歩いていきます。
江戸時代から続くと言われている小豆島の虫送りは、
いまは肥土山(ひとやま)地区と中山地区で行われています。
毎年、肥土山の虫送りは「半夏生(はんげしょう)」の日(7月2日頃)、
中山の虫送りは7月の第1土曜日に行われます。
今年(2019年)は、7月2日(火)に肥土山虫送り、
7月6日(土)に中山虫送りが行われます。
タイミングがあえば、ぜひ小豆島を訪れて見てほしい行事です。

いまから5年前、2014年の中山千枚田の風景。

7月の棚田は黄緑色の稲がとにかく美しい。
その虫送りの舞台となる中山の棚田に先日行ってきました。
4月末から5月頭にかけて田んぼに植えられた稲がだいぶ大きくなっていて、
夏に向けて緑がどんどん濃くなっていきます。
本当に美しいところだなぁと思います。

今年の中山千枚田風景。奥に見える小さな建物は、「中山湯船の水 共同洗場」。

共同の洗場で洗濯をする近所のおばあちゃん。昔はみんなここで洗濯したり、野菜を洗ったりしたそう。

絶えることなく流れる中山の湧き水。
ただ毎年写真を撮っていて感じることは、
少しずつ耕作されない田んぼが増えていること。
カメラのファインダーをのぞきながらどんな構図にしようか考えるのですが、
どうしても荒れた田んぼが入ってしまう。
きれいな棚田の風景を撮ることが難しくなってきています。

写真中央の耕作されてない田んぼが気になる。
うちも農業をしているのでわかるのですが、こんな斜面で、
1枚1枚がとても小さな田んぼで、お米を育てるのは本当に大変なことです。
軽トラを田んぼのすぐ横まで寄せられないので、
道具や機械、収穫したお米などを歩いて運ばなければいけません。
斜面に沿ってつくられた田んぼはいびつな形をしていて、
田植えや稲刈りなど手作業が多くなります。
平地の広い田んぼで育てるお米に比べたら何倍も手間と労力がかかります。
そのわりに収穫できる量はとても少ない。
こういう場所で農業をして生計をたてていくには、
よっぽどの工夫と頑張りがなければ成り立たないと思います。
あー、この耕作されなくなっていく田んぼをなんとかしたい! と思うのですが、
いまの私にはそんな余裕がないです。
自分たちの畑を手入れし、日々の仕事をまわしていくことで精一杯で、
ほかの地域のことまでがんばれない、というのが実情。
これは中山の棚田だけじゃなくて、島中のいたるところで起こっていること。
柑橘を栽培する人も減っているし、友人がここ数年ずっと撮影していた、
島に2軒しかない金時人参の種を採る農家の方も今年で辞めてしまうそう。
いままで当たり前にあった風景が少しずつなくなっていってしまう。
本当にさみしいことです。

田んぼの手入れをしていたおじちゃん。沢ガニが畦塗り(田んぼの周りの盛り上げた土の壁)に穴を開けてしまうらしく、そうすると水が流れ出てしまうので、そのチェックをしているそう。沢ガニ発見!

こうやって毎日毎日手入れする人がいるから、ここでお米を育てることができ、風景が守られる。
中山で田んぼの手入れをしていたおじちゃんが話してくれました。
「あと5〜10年もしたら、いまの半分くらいしか田んぼが残らないだろうなぁ」と。
里山の風景は、そこで暮らす人々の営みによってできあがる。
田んぼや畑をする人、素麺をつくる人、家を直す人、
そんな人たちが減っていけば、風景も荒れていってしまいます。
やっぱり人なんだなとあらためて最近思います。
ともに暮らす、ともに働く仲間がいなければ、風景を守れない。
農業をしていて時々思うことは、ただ野菜を育ててるだけじゃなくて、
風景をつくってるんだなぁ、そんな風景がある暮らしをつくってるんだなぁと。

これから2週間後、もっと緑が濃くなります。その時期に中山虫送りが行われます。
虫送りという伝統行事も、そんな美しい里山の風景のひとつ。
途絶えてしまわないように、私たちはここで暮らし続けよう。
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