備前の才能がひと皿に集う一夜限りの宴
11月18日・19日の両日、備前エリアを巡る1泊2日のモニターツアーが実施された。
旅人は、大阪・兵庫在住の10名。今年9月に大阪・天王寺で開催された、
備前焼と暮らしを結ぶイベント〈うつわとくらすBIZEN〉の参加者たちだ。
ツアー初日の夜、本連載から飛び出すかたちで実現した初めての〈うつわバー〉。
会場には、備前焼にゆかりのある天津神社隣の〈カフェドマザー〉が選ばれた。

倉敷デニムの和服姿で現れた今宵のマスター、渡邊琢磨さん。
この店のルールは、明快だ。店主となる備前焼作家が器を用意し、
ゲストシェフが備前の幸で料理をふるまう。
また、その道のプロである店主から備前に関するエトセトラを学ぶというもの。
実店舗店主としてトップバッターを務めるのは、
前回、前々回の連載に登場いただいた備前焼作家の渡邊琢磨さんと、
頭島でイタリアンレストランを営むシェフの寺田真紀夫さん。
渡邊さんが創作した器に寺田さんの料理を盛りつけていくという。

会の始まりは、酒器選びから。20種ほどの猪口から好みのひとつを選ぶという演出に、否が応でも期待が高まる。
さらにこの日は、同日ひと足先に訪れた見学先の〈利守酒造〉社長・利守忠義さんと、
〈トスティーノコーヒー〉代表の脇山賢一さんもファシリテーターとして列席。
開店の挨拶を皮切りに、利守酒造の〈赤磐雄町〉でいよいよ乾杯だ。

今回のお題のひとつ、「備前焼の酸化と還元」。同じ形ででも、使用する土が含む鉱物の種類や焼成方法が異なると、こんなにも違う色に変化するのだとか。
寺田シェフの料理を待つ間、渡邊さんによる備前焼の解説に聞き入った。
その内容は備前焼の歴史から現在の器の流行にまで及び、
知識欲がじわじわと満たされていく。

渡邊さんのレクチャーの傍ら、キッチンで黙々と作業を進める寺田シェフ。
今回テーブルを飾ったのは、備前日生(ひなせ)の新鮮な魚介類を中心に、
利守社長セレクトのアペリティフ、寺田シェフによる前菜とメイン、
脇山さんのコーヒー、デザートといったカジュアルなコース。
力強い存在感を放つ備前焼だが、イタリアンにも違和感なく溶け込んでいる。

秋草模様の描かれた型押しの角皿に置かれたのは、寺田シェフのスペシャリテより白貝のリゾット。見た目こそシンプルだが、アルデンテの米とコリコリとした貝の食感が絶妙なひと皿。
岡山の魅力を伝える活動などで会う機会も多いという店主ふたりのトークは、
息もぴったり。器の手入れには〈亀の子束子〉が一番だとか、
備前焼のポットはニンニクの保存に重宝するとか。
また、備前焼の酒器はしっかりと冷やした軽めのワインに
よく合うといった、目から鱗の情報が最後まで目白押しだった。

店主自ら酒を勧める場面もあり、参加者たちとの会話も弾む。展示棚に並ぶのは、渡邊さんの作品たち。
「渡邊さんが博識でとにかく話がおもしろかった」
「備前焼の器だと、食べものを慈しむ気持ちが一段と強くなる」
「これからは『器を含めた食卓』を意識していきたい」
なるほど。
うつわバーをそれぞれの視点で見て、触れて、味わった結果、
彼らは「食」と「学び」の両面から備前焼との距離を縮められたようだ。
岡山在住の私も然り。周囲に作家の友人はいるものの、
ここまで詳細な話を聞く機会はそうない。いわば、近くて遠い存在だった。
しかし今回、さまさまな分野のプロに話を聞くうち、にわかに身近な印象に。
まずは自分なりの楽しみ方を見つける。
そして普段の生活に少しずつ取り入れていければと。
さて、今後もさまざまなゲストが登場予定のうつわバー。
次回をお楽しみに。
















































































