地元の人にこよなく愛される酒場はまちの宝もの。
ローカル色豊かなおいしいおつまみや、ご主人とお客さんの雰囲気、店の佇まいなど、
思い出すと心がほんのり温かくなるような店を
“酒場LOVE”な案内人の方々に教えてもらいました。
旅先のソトノミガイドとしてもご活用ください。
活気あるアーケード商店街が今宵のプロローグ
きょうのローカル酒場〈天満酒蔵(てんまさかぐら)〉がある天神橋筋商店街は、
大阪に夏を告げる天神祭で知られる大阪天満宮への参詣ルート。
南北約2.6キロの“日本一長いアーケード商店街”として有名ですが、
もともと天満は市場のまちとして大阪市民に親しまれてきました。
江戸期の青物市場由来という伝統を持つ「天満市場」も
通称“天五(テンゴ)”(天神橋筋5丁目)のビルの中に健在。
市場の周りは、いま大阪でも注目の居酒屋激戦地でもあるので、
夕方の天満駅界隈は、買い物客と飲み目当ての人々でものすごい熱気です。

「天五商店街」。JR大阪駅から電車でひと駅とは思えないローカルな雰囲気です
この賑わいのなかを歩いて間もなく〈天満酒蔵〉に到着。
いまや“飲み歩きが楽しいまち”としても知られる、
天満を代表する昭和44年創業の大衆酒場です。
表にはずらりと赤提灯が並び、まるで映画のセットのよう。
暖簾の奥にちらりと覗く長いカウンター席がいい感じです。


到着した岩瀬さんはカウンター席でも“板場前”をさっそく確保。この席は“天満のフラットスリー(後述)”を見るための特等席。旧知の女将・岡 牧子さんにご挨拶。
この〈天満酒蔵〉の案内人は岩瀬大二(だいじ)さん。
お酒の楽しさを伝えるライター&ナビゲーターだけに
日本各地のローカルな酒場を数多く訪れていますが、
なかでも印象に残ったのがこの〈天満酒蔵〉だそうです。
「ここは最初、友人に連れてきてもらいましたが
第一印象としては“キレイ”だなと。
このカウンターもそうですし、暖簾もお品書きも清潔感がある。
大衆酒場にありがちな雑多で乱雑な印象がない。
確かに建物は古いでしょうけど、古臭くはない。
それでカウンターに座って、女将さんを見て納得したんです。
ああ、この人の店ならそれもわかるなと。
女将でもママでもない。マダムと呼びたいくらいですね」
そんな岩瀬さんの第一声に、女将の岡 牧子さんはあっさりと
「お母さんでも、おばさんでも、マダムでもお好きに呼んでくださいな」

岡 牧子さん。女将・板場担当。元は香川県のお菓子屋のお嬢さん。20歳で嫁いで大阪・天満の酒場の女将に。実家ではご飯も炊いたことがないのに、見様見真似でご主人・正夫さんをサポートして40年以上。4年前に正夫さんが足を痛めて引退後は、替わりに板場に立ち、的確な目配りと采配で全58席を切り盛りしている。伝票チェック用に大事な赤鉛筆を胸ポケットに入れ、ネックレスと眼鏡でさりげなくおしゃれに。
カウンター内の“フラットスリー”の機敏な動きが、居心地のよさを感じさせる
〈天満酒蔵〉は、地元の人が気軽に普段使いする大衆酒場。
ビール大瓶350円、おつまみ100円からという低価格で、
昼の11時から23時までノンストップの営業です。
イラチ(せっかち)な大阪人を相手にするからか、
オーダーを頼んでから出てくるまでが、驚くほどスピーディ。
いまはたまたま空いてはいるものの、全部で58席と大きい店が満杯になると、
どんなに慌ただしくなるのでしょうか。
「それがこの店だと満席でも不思議と慌ただしく感じない。
むしろお客さんも含め、非常にスムーズな印象です。
大阪の人の早めのテンポに合っているというか。
特に、この“板場前”の席から見える3人。
母、息子、娘の家族3人はカウンター内を完璧に守っている。
自分の持ち分をきっちり守る仕事ぶりと、
お互いを阿吽の呼吸でカバーし合うフットワークの見事さ。
この3人を眺めながら飲むのは本当に楽しい。
ここのカウンター席はスペシャルシートなんです」
3人をフラットスリー(サッカー・トルシエジャパンのDF戦術)と名付け、
岩瀬さんは密かにカウンター席から応援しているのです。

黒よかいち〈麦〉一升瓶のボトルキープがずらり。女将が100均で買ってきたかわいい目印が。これも素早くお客さんにボトルを渡すための工夫。

岡 利信(としのぶ)さん。鉄板焼、関東煮(かんとだき・おでんのこと)担当。入口脇で黙々と仕事に専念する“お兄ちゃん”。その集中力は非常に高いが、お客さんと話すのはちょっと苦手。この店では焼き鳥も鉄板焼。「ウチは専門店でないし網で焼くより早くお客様に提供できるんです」(牧子さん談)。























































































