七飯町〈Hütte(ヒュッテ)〉 森の中の小さなパン屋さん。 地元民が足しげく通う理由は?

地元の旬の食材たっぷりのランチメニュー

七飯(ななえ)町仁山の森。木漏れ日のなかにたたずむ、
小さなパン屋さん〈Hütte(ヒュッテ)〉。
函館市街地から車で30分の距離にある元ガレージを改装した素朴な小屋で、
「親方」の愛称で呼ばれる木村幹雄さんが焼き上げるどっしりとしたドイツパンは、
ライ麦パン、地元野菜を使ったパン、食パンにあんぱん……
並んだそばから売れていく大人気のパンがすべて焼きあがるのは、毎日10時半頃。
ひとつひとつが飽きのこない、毎日食べたくなるパンです。

旅のおともにしたいパンたちがずらり。大きなパンはカットして販売もしています。

パンのテイクアウトはもちろん、お店の小さなカフェスペースでドリンクと一緒に
イートインする、「女将」特製〈ぱんとスープのセット〉(800円)もおすすめです。
手づくりのジャムやパテやハムをのせ、
コース仕立てでひと皿ずつ6種類のパンを味わえるセットには、
季節のスープにデザートとコーヒーまでつくのがうれしい。

パンそれぞれの魅力を存分に引き出す
地元七飯産の旬の野菜に手をかけたペーストや、
親方厳選の道産チーズが乗ったパンはぜひ食べてみてほしいおいしさ。
夏場はテラス席も用意されているので、
心地良い風を感じながらゆっくりとブランチでいただきましょう。

取材に訪れたのは7月。この日のセットメニューは、スープが北あかりのビシソワーズ。手前のプレートは、食パントーストに地元産野菜のラタトゥユ、バゲットに安藤農園(七飯町)のにんじんのラペ、3種のライ麦パンに小栗牧場(八雲町)の生チーズ、福田農園の王様しいたけアンチョビオリーブ炒め、カリフラワームース。左奥は、王様しいたけと十勝コーンと豆乳のピザ。

自然のままに、無理のないパンづくり

「おいしい」をそのままかたちにしたような、
ちょっと無骨で愛らしいパンを焼く親方は、
七飯のまちなかで30年続く、人気のパン屋〈こなひき小屋〉の創業者。
その親方の腕前をよく知るまちの人たちがヒュッテに次々訪れては、パンを買い、
そしてしばらく談笑していきます。おいしいパンを買うのはもちろんのこと、
親方と女将の人柄から、お店はまちの井戸端のような場所になっています。

「僕らのやりたいことはこういうことなんです。
地元に暮らす人たちに必要とされるパンを焼きたいので」

そう話してくれた親方のパン焼き風景を見せてもらいました。

奥に深い窯でスピーディーにパンを焼き上げていく、笑顔がすてきな親方こと木村幹雄さん。「年をとってからタイマーを使っているけど、以前は必要なかった。かっこよく言うと、パンが呼ぶんです。毎日やっているとそうなるものですよ」

お店の奥にある小さな工房も、親方の手づくり。
立派なドイツ製ウェルカーの窯が存在感を放っています。
「この窯は、息子が継いだこなひき小屋からもらってきた24年もの。
ミキサーもそうで、創業時からのものでかなり年季が入っています」

工房で電気を使う機器はこのふたつだけ。
あまりエネルギーを使いたくないので、冷蔵庫も置いていないそう。
60歳でこなひき小屋を引退すると宣言し、
実際に引退することになった転機の年に脳梗塞で倒れた経験をもつ親方は、
独立してヒュッテを始めるとき、無理せず夫婦ふたりだけでできることをやろうと決意。
あるものを使って小さく回していく「身の丈にあった」スタイルを貫いています。

窯の奥から驚くほど大きな田舎風フランスパンが!裏側をボンボンと叩いてみた親方は「あとちょっとだな」。音で焼き上がりがわかるのが職人ならでは。