やちむんの技術と、北海道の土でつくる
北の土を使いながら、南の島沖縄の雰囲気を醸し出す、凛とした焼きものたち。
どれもしっくりと手になじみ、長く使いこみたくなるものばかりです。
民藝としての器づくりを志し、
沖縄県読谷村の北窯で12年間修業を積んだ臼田季布(きほ)さんが手がける
〈ソロソロ窯〉は、道南の森林のまち厚沢部(あっさぶ)の
元清水小中学校に工房兼ギャラリーショップを構えています。
函館から車で1時間と少し、〈道の駅あっさぶ〉から山へ車を走らせること15分。
静かな山あいに、こぢんまりとした元校舎が見えてきます。

作品の中には、ぐっと引き込まれるような深い色合いも。ピッチャーは北欧の器にインスピレーションを受けてつくられたもの。
懐かしい靴箱に靴を入れて、元教室だったギャラリーショップへお邪魔します。
置かれている器の種類や数はそのときどきで変わりますが、
絵付けの入った沖縄らしいお皿から、
薪ストーブの灰を釉薬にするという深い青色が印象的な器、
また北欧の食器の要素を取り入れたシンプルな水差しまで、さまざまな作品が並びます。

器が映える古い什器は臼田さんがこつこつと集めたものや拾ったものを中心に、近所の農家さんからいだだいたものもあるそう。
臼田さんが軸にしている民藝とは、大正〜昭和の時代に提唱された概念で、
名もなき職人たちのつくった用の美が宿る日常の生活道具のこと。
その一端を担う、琉球王朝時代から600年もの歴史をもつと言われる
沖縄のやちむん(沖縄の方言で焼きもののこと)を継承しながら、
道央のレンガのまち江別の土でつくられる臼田さんの焼きものは、
北と南の文化それぞれの繊細さと強さを併せもつ、ほかにはない独特なたたずまい。
ひとつひとつに向き合いながら、お気に入りを探してみましょう。

教室だった部屋を、臼田さん自らリノベーションしギャラリーショップに。石膏で塗られた壁の質感にも注目。
沖縄のやきもののカチッとしすぎないおおらかさに惹かれたという臼田さん。
ギャラリーショップ隣の元職員室に工房をかまえ、
蹴ろくろで1点ずつ器づくりをしています。
江別の土は、沖縄の土に比べて細工がしやすく、
焼く温度や火に対する強さも違えば粘り気も違い、
また、上からかける本州産の土との相性も異なるそうです。
「沖縄にいた時は東南アジアの古いものを見て勉強していましたが、
北海道に来てからはヨーロッパのものに興味が移ってきました」
土そのものや、土地がもつ力をそう語る臼田さんの作品には、
海外の骨董品のような雰囲気の器も。

静かな山あいで創作に打ち込む臼田季布さん。彼の作品を取り扱うお店は少ないものの「直接ここへ訪ねてきてくれたり、会う機会のある方のお店には弱いんです」と笑顔。道外のお店にも不定期に納品している。
自分でつくり上げた窯
校舎の外にある薪窯は、建物まで含めてすべて臼田さんの手づくり。
レンガを重ねた背の高い窯で小さなものから大きなものまで
一度に500個もの器を焼きあげています。
もちろん、薪の消費量も大変なものですが「ここ厚沢部は林業のまちで、
間伐材をもらうことができるので、薪には事欠かない環境なんです。
とても助かっていますね」とにこやかに語る臼田さん。
ただし冬は寒すぎて焼くための作業自体をしにくくなるのが、この土地での難点だとか。

工房は、水場のある元職員室。限られたスペースを有効に使って作業をしています。

左右から薪を入れて燃やす立派な窯。焼くときはレンガで蓋をする。

窓の向こうには、山と積まれた薪用の間伐材、その向こうにはお隣の農家さんの畑と深い山々が広がる。この辺りにはかつて炭焼きの部落があった地域。