連載
posted:2017.10.31 from:大阪府大阪市北区 genre:旅行 / 食・グルメ
sponsored by 宝酒造
〈 この連載・企画は… 〉
「和酒を楽しもうプロジェクト」もいよいよ5年目へ。
今回から舞台をイエノミからソトノミに移し、
“酒場推薦人”の方々が、日本各地の魅力的な「ローカル酒場」をご紹介します。
writer profile
Yayoi Okazaki
岡崎弥生
おかざき・やよい●兵庫県、大阪府、神奈川県、福岡県、東京都(ちょっとだけ愛知県)と移り住み、現在は神奈川県藤沢市在住のローカルライター。最近めっきりイエノミ派となった夫のために、おつまみ作りに励む主婦でもある。
photographer profile
Rui Izuchi
出地瑠以
写真家。1983年福井生まれ。東京とハワイでの活動を経て、現在は大阪・福井を拠点に活動中。〈Flat〉という文化創造塾の運営メンバー。また結婚式を創るユニット〈HOPES〉のメンバーでもある。
http://www.cocoon-photo.com/
地元の人にこよなく愛される酒場はまちの宝もの。
ローカル色豊かなおいしいおつまみや、ご主人とお客さんの雰囲気、店の佇まいなど、
思い出すと心がほんのり温かくなるような店を
“酒場LOVE”な案内人の方々に教えてもらいました。
旅先のソトノミガイドとしてもご活用ください。
きょうのローカル酒場〈天満酒蔵(てんまさかぐら)〉がある天神橋筋商店街は、
大阪に夏を告げる天神祭で知られる大阪天満宮への参詣ルート。
南北約2.6キロの“日本一長いアーケード商店街”として有名ですが、
もともと天満は市場のまちとして大阪市民に親しまれてきました。
江戸期の青物市場由来という伝統を持つ「天満市場」も
通称“天五(テンゴ)”(天神橋筋5丁目)のビルの中に健在。
市場の周りは、いま大阪でも注目の居酒屋激戦地でもあるので、
夕方の天満駅界隈は、買い物客と飲み目当ての人々でものすごい熱気です。
この賑わいのなかを歩いて間もなく〈天満酒蔵〉に到着。
いまや“飲み歩きが楽しいまち”としても知られる、
天満を代表する昭和44年創業の大衆酒場です。
表にはずらりと赤提灯が並び、まるで映画のセットのよう。
暖簾の奥にちらりと覗く長いカウンター席がいい感じです。
この〈天満酒蔵〉の案内人は岩瀬大二(だいじ)さん。
お酒の楽しさを伝えるライター&ナビゲーターだけに
日本各地のローカルな酒場を数多く訪れていますが、
なかでも印象に残ったのがこの〈天満酒蔵〉だそうです。
「ここは最初、友人に連れてきてもらいましたが
第一印象としては“キレイ”だなと。
このカウンターもそうですし、暖簾もお品書きも清潔感がある。
大衆酒場にありがちな雑多で乱雑な印象がない。
確かに建物は古いでしょうけど、古臭くはない。
それでカウンターに座って、女将さんを見て納得したんです。
ああ、この人の店ならそれもわかるなと。
女将でもママでもない。マダムと呼びたいくらいですね」
そんな岩瀬さんの第一声に、女将の岡 牧子さんはあっさりと
「お母さんでも、おばさんでも、マダムでもお好きに呼んでくださいな」
〈天満酒蔵〉は、地元の人が気軽に普段使いする大衆酒場。
ビール大瓶350円、おつまみ100円からという低価格で、
昼の11時から23時までノンストップの営業です。
イラチ(せっかち)な大阪人を相手にするからか、
オーダーを頼んでから出てくるまでが、驚くほどスピーディ。
いまはたまたま空いてはいるものの、全部で58席と大きい店が満杯になると、
どんなに慌ただしくなるのでしょうか。
「それがこの店だと満席でも不思議と慌ただしく感じない。
むしろお客さんも含め、非常にスムーズな印象です。
大阪の人の早めのテンポに合っているというか。
特に、この“板場前”の席から見える3人。
母、息子、娘の家族3人はカウンター内を完璧に守っている。
自分の持ち分をきっちり守る仕事ぶりと、
お互いを阿吽の呼吸でカバーし合うフットワークの見事さ。
この3人を眺めながら飲むのは本当に楽しい。
ここのカウンター席はスペシャルシートなんです」
3人をフラットスリー(サッカー・トルシエジャパンのDF戦術)と名付け、
岩瀬さんは密かにカウンター席から応援しているのです。
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実は、この〈天満酒蔵〉は4年前に1度閉店しました。
それは店の大将・岡正夫さんの足が悪くなり板場に立てなくなったから。
これでは店を続けるのは難しいと、“閉店のお知らせ”まで貼ったそう。
そのとき店を救ったのが、娘の久美子さん。
ほかの仕事をしている場合じゃないと、店に入ることを決意。
40日後に、無事に店は再開し、新たなフラットスリーが結成されたのです。
「私は、我が家でおせち料理を見たことないし、
普通の家がお正月に何をしているのかわかりません。
お正月は天満宮の初詣客のために、ずっと営業していたから。
仕事の後に家に戻っても誰もいないし、ごはんもないし。
だから店に戻って手伝って、様子はわかっていたつもりでしたが
いざ始めると、朝から晩まで立ちっぱなしで、
しんどいことやってはったんやな、としみじみ思いました」(久美子さん)
いままで母親と一緒の時間がなかったから、それを取り返している。
この仕事が好きだと思えてよかったと、久美子さんは言いますが、
それはあくまでもこの店と空間だったから。
「私は大阪でも天満しか知らないし、この店とまちが好きなんですね」
幼い頃から、店のビール置き場で遊んだり、近所の人が面倒を見てくれたり。
そんな思い出のまちはずいぶん変わってしまったけれど、
出ていく気はないと、きっぱり。
「私もたまには飲みに行きたいのに、意外とほかの店は入りにくい。
狭くて気を使ったり、客層が偏っていたり、空き過ぎていたり。
本当に飲みたいのはここ、〈天満酒蔵〉です。
でも私が休みだと、店も休みだから、きっとずっと無理ですね。
いまは1日も長く、この楽しい状態が続いてほしいです」
「結局、僕が酒場に求めるのは“居心地のよさ”。
〈天満酒蔵〉はその点、なにもかもがちょうどいいんです。
大阪の大衆酒場らしい“スピード命”のライブ感や、
お客さんが店の流儀をちゃんと理解している感じとか、
お店の人がかまってはくれないけど、目配りはしてくれているとか。
何より、ここには大阪の天満ならではの空気感がありますよね。
外のアーケード街や市場にいる人がそのまま店にいる感じ」
岩瀬さんが、地元の人が通うローカル酒場を好んで訪れるのは、
そのまちならではの空気感を味わいたいからだそうです。
「酒場はまちの入り口、開かれた扉だと思います。
お店の人がつくる空気、お客さんがつくる空気。
それを味わうことで、より深くまちを知ることができます」
だからこそ、〈天満酒蔵〉のシュウマイ唐揚げには、醤油ではなくぜひソースを、
と岩瀬さん。
「抵抗はあっても、まずは味のローカルルールを受け入れてみる。
すると、これはこれでアリだとわかるし
日本全国、みんな違ってみんないい、と実感できると思います」
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本格焼酎「黒よかいち〈麦〉」1.8Lは〈天満酒蔵〉の、ボトルキープ率ナンバーワン商品。
原材料は麦100%、麦と麦麹だけで仕込んだ本格焼酎で、
まろやかな香りとキレのある味わいが特徴です。
味わい深さを生む“芳醇黒麹仕込”と、
風味にバランスをもたらす“香味蒸留製法”で仕込みました。
すっきりとした「水割り」や、
これからの季節にぴったりの「お湯割り」などで、
名物のどて焼や関東煮とともにどうぞ。
information
天満酒蔵
住所:大阪府大阪市北区天神橋5-7-28
TEL:06-6353-3792
営業時間:11:00~23:00(22:30 L.O.)
定休日:週1回不定休
アクセス:JR天満駅から徒歩約5分
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