「パーマカルチャー」という、自然のリズムに寄りそった農業と、暮らし方。
この思いに共感するメンバーが生活をともにする〈ぴたらファーム〉。
山に囲まれ、清流を抱く、山梨県北杜市の白州エリアに、
ファーム長・田才泰斗さん、青木彩華さんたちが農場を立ち上げたのは7年前。
それぞれに経験した農法や、自然への向き合い方、暮らしのアイデアが一致し、
泰斗さんの故郷、札幌北部の原風景に近いというこの地に移住したという。

その後レギュラーメンバーとなったスタッフ、短期滞在で訪れる人、
WWOOF(World Wide Opportunities on Organic Farms)を見て訪れる外国人など、
複数のメンバーが集まり、ひとつ屋根の下で暮らしている。

「ぴたら」とはマオリ語でテントウムシのこと。種によっては、作物に被害をもたらす害虫や菌を食べ、作物を守ってくれる強い味方。自然界のパズルの1ピースを担う「ぴたら」をファーム名に借りたのだそう。
ここには、農業、土壌、建造物、自然エネルギー、廃棄物、コミュニケーションなど、
ぴたらファームの理念に基づいた、循環する仕組みが揃っている。

ぴたらファームの循環の仕組み。

オール手づくりのコンポストトイレ。排泄物を微生物で発酵させ、土に還す仕組み。便器も木を使った手づくり。建造物は、崩せば容易に土に還る素材でできている。
でも、なぜ循環する仕組みなのか?
ぴたらファームの考え方は、こういうこと。
私たち人間は、穀物、野菜、肉を食べて生きている。
食肉となる牛、豚、鶏などは、草や穀物を食べて生きている。
その動物が食べる草や穀物は、土からできている。
土にはたくさんの微生物がいて、有機的な土壌環境を整える。
有機的な土からは植物が育ち、植物は、動物や虫の命の糧となる。
そうして命を終えた生き物は、また土に還る。
よく聞く話ではあるけれど、都会で生活していると忘れがちな自然界の仕組み。
ぴたらファームでは、こうした巡りを農や暮らしに落としこむ実践をしているのだ。

鶏小屋は、竹、古畳、藁などの素材で手づくり。ハイペースで卵を産めなくなった鶏などを譲り受け、自然のペースで気ままに産卵させているそうだ。台所から出るごはんの残りは鶏たちが食べ、鶏糞は畑の肥料に。

玄関先に置いてある手づくりのヘビイチゴチンキ&ドクダミ軟膏。虫刺され、あせも、湿疹に。旬の植物を長く楽しむ工夫がなされ、健やかな暮らしに役立てている。(Photo:Shiori Kudo)
パーマカルチャーとは、永続性(パーマネント)、農業(アグリカルチャー)、
文化(カルチャー)を組み合わせた言葉で、自然界の体系を観察し、
伝統的な農法の知恵と、現代の技術的知識(適正技術)を組み合わせ、
永続可能なライフスタイルを構築するシステムであると言われている。
ぴたらファームは、パーマカルチャーの哲学をベースにする農場。
しかし、なぜそこに行きついたのだろう?
立ち上げメンバーの泰斗さんと、彩華さんに話をうかがってみた。
「大学を卒業したあと、世界を放浪していた時期があって。
そのとき、日本は分業化が進んで、社会は成熟しているかもしれないけれど、
ひとりひとりの生きる力は失われつつあるんじゃないか、と感じたんです。
そこから僕は、自分の力で生きられる人になりたい、と思うようになって」(泰斗さん)

ファーム長の田才泰斗さん。畑・米担当。木工の仕事をしていた経験を生かし、敷地内の建造物づくりや建物の修繕も手掛けている。(Photo:Shiori Kudo)
その後、いくつかの経験や就業をするなかで、
茨城にあるオーガニックファームに出合った泰斗さん。
そこでは、スタッフが共同生活を送りながら、有機農業、循環型の暮らしをしており、
泰斗さんは約3年半、スタッフとして働くことに。
「しばらくして、もっと自分の理想とする環境で、自分が伝えたいことを
伝えられる場所をつくりたいと思い、独立を考えました」(泰斗さん)
泰斗さんとともに立ち上げに携わった彩華さんは、
ニュージーランドやオーストラリアに留学し、パーマカルチャーを学んだ経験が。
「もともと植物が好きで、いつも森で遊んでいるような子どもだったんです。
近所に大好きな木があったんだけれど、開発の関係で伐られてしまって……。
そのときから、自然と人間の共存みたいなものが、
自分の中のライフワークテーマになったような気がします」(彩華さん)

ECサイトの制作・更新や、加工品づくり、外国人が訪れたときの案内などを兼任する青木彩華さん。ときどき東京に出向き、ぴたらファームの食材を使った食事会を開くことも。
ランドスケープ、パーマカルチャー、自然農法——
さまざまに学んできたなかで、自分の行きついた理念に説得力を持たせるには、
自分自身がどう暮らすかというところから始めなければ、と思い至ったという。
「ニュージーランド、オーストラリアで、いろんな人と共同生活を送りながら、
自然にあまり負担のかからない暮らしや、持続可能な暮らしを模索するというような、
緩いコミュニティを見てきて。同じようなイメージで、
日本でやってみたいという気持ちがありました」(彩華さん)
そんな折、泰斗さんと出会うキッカケがあり、話をすれば、
お互いの理想とするイメージやキーワードが一致。
このようにして、ぴたらファームが立ち上がり、
パーマカルチャーというキーワードが、どっしりと根づくことになった。