昨年春に岩見沢に山を買い、いま、わたしは“植林”という新しい世界に足を踏み入れた。
連載第45回で書いたように、総面積8ヘクタールのうちの
1ヘクタール分は人工林だった場所。
木はすでに伐採されているが、もともと国や北海道の補助金を利用して
植林をしていた場所だったために、所有者は植林をして森林に戻す義務がある。
そこで、今年の6月に、森林組合や道の森林室の皆さんと
植える樹種について相談する機会があった。
連載で書いた通り、皆さんのおススメは、カラマツやトドマツなどの針葉樹。
成長が早く、広葉樹に比べて動物の害に遭いにくいことから、
このふたつがもっともポピュラーなのだという。
けれど、わたしも山の共同購入者の農家の林宏さんも、
植林のビジネスという側面にピンとこないところもあり、
広葉樹を植えてみたいという希望があった。

買った山で植林の話をする。左端が北海道空知総合振興局森林室の栗田健さん。右端が森林組合の玉川則子さん。
「カラマツやトドマツのほうがいいと思いますよ……」
森林室の栗田さんは、何度かそう語り、広葉樹を植えたいというわたしたちの意見に、
どうやら賛同していないような雰囲気が感じられた。
ただ、わたしも林さんも、植林のことについてまったく知識がなく、
常識はずれのことを言っているのかさえ、よくわからない。
「植林と言ってもイメージがわかないと思うので、
今度、近くの現場を見に行ってみましょう」と森林組合の玉川さんからの提案もあり、
岩見沢で実際に植林を行っている土地を3か所見せてもらうことになった。
まず1か所目は、昨年秋にカラマツの苗を植えたばかりという土地だった。
ほとんど植林の現場を見たことのないわたしにとっては、
「えっ、苗はどこにあるの?」と言いたくなるような感じだった。
よくよく見ると草のあいだに、等間隔で植えられた苗を発見。
40センチから1メートルくらいの背丈のもので、ひょろひょろっと頼りなげ。
これらがやがて森になるのだろうかと思うほどだった。

昨年秋にカラマツの苗を植えた場所。
土地を案内してくれた森林室の栗田さんが、先端が切り取られた苗を見せてくれた。
動物に食べられた跡だという。シカ、ウサギ、ネズミなど、
春に伸びた新芽は動物たちの恰好の餌となり、針葉樹も被害に遭うそうだ。
一度、新芽を食べられても生えてくるが、その分、成長が遅くなる。
また、何度も被害に遭うと枯れてしまうこともある。
そのため、植林する木としておススメなのが、苗の成長が早い樹種だ。
動物たちが届かない高さまで成長すれば、
新芽を食べられることはなくなるというわけだ。
ちなみに、食べられなくなる高さは、わたしの背丈と同じくらい(150センチ)で、
早く伸びる樹種でも3~5年はかかるという。

新芽の部分がなくなっている。ウサギやネズミの仕業?

もともとカラマツが生えていた土地だそうで、松ぼっくりが残っていた。

伐採されたカラマツは50年ほどたったものだった。年輪を数えるとだいたいの樹齢がわかる。
次に案内してくれたのは、ヤチダモという樹種を植えている場所。
ヤチダモとは広葉樹の一種で、バットの材料に適したものだという。
「人気のある樹種ですよ」
針葉樹を強く推していた栗田さんだが、ヤチダモはおススメらしい。
理由は、広葉樹のなかでは成長が比較的早く、一度食害に遭っても、
成長が止まらないことがあげられるという。

7年経ったヤチダモ。このくらいの高さになるとシカの食害に遭いにくくなる。

食害されやすいのはどんな樹種か。栗田さんは資料を見せてくれた。
そして3か所目は、カラマツを植えたが苗が育たず、
次にヤチダモを植えたという場所だ。
ここは、もともとカラマツ林だった場所だが、
以前と同じ樹種を植えても育たないこともあるそう。
シカに食べられた跡もあるので食害かもしれないが、
その理由ははっきりとはわからないそうだ。

ヤチダモを植林した土地。といっても、どこに苗があるのかは、瞬時には判別できない。
次にヤチダモを植えた理由は、土地との相性を考えてのこと。
ヤチダモのヤチは谷地と書き、湿地帯のことを指す。
この土地は、水を多く含んでいたため、
育つ可能性があるかもしれないと考えたのだという。
苗には、ピンクテープが巻きつけられていた。
草刈りのときに、間違って苗を切らないようにするための印なのだという。
広葉樹の苗は小さいうえに、ほかの草と見分けがつきにくいために印をつけるそうだ。

草刈りのときに、苗を切ってしまうことがあるため、ピンクテープで目印をつけている。

以前に植えたカラマツが枯れている。皮をシカなどの動物に食べられた跡がある。