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親が決めた移住に娘は…?
順風満帆というわけにはいかない、
移住した家族のリアル|Page 3

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.023

Page 3

忘れられない、娘のひと言

日が経つにつれ、娘は徐々に下田での暮らしに慣れていきました。
お互いの家に遊びに行けるような仲のよい友だちができて、
ご近所なので頻繁に行き来するようになりました。
その友だちの存在は、娘の気持ちを安定させた大きな理由だと思います。
最初は緊張気味だった娘も、
いまではその友だちといるときにはとても寛いでいます。

下田に移住してすぐに知り合ったその友だち家族は、
これまでずっと私たちのことを気にかけてくれました。
「いつでも遊びに来て、泊まりに来てね」と優しい声をかけてくれました。
保育園に登園するのを嫌がっている娘を見て、
「朝、迎えに行こうか」とも言ってくれました。
新天地で不安だった私たちにとって、とてもありがたい存在でした。

友だちが初めて泊まりに来てくれた夜、うれしすぎてなかなか寝つけないふたり。

東京で仕事をして下田に戻ると、友だちからこんな紙袋を手渡されました。そうか、下田はもう私にとって帰る場所なんだ、と妙に実感が湧いたのです。そして、友だちの母のような優しさに、じんとしてしまいました。

「下田はお友だちがたくさんいるところなんだよ、楽しいの」
海沿いを散歩しているとき、ふと娘がそんなことを言うので
思わず涙が出そうになりました。

住み慣れた東京の家を離れること、新しい保育園で新たな関係を築くこと、
いとこたちと別々に暮らすこと。
娘にはつらい思いをさせました。そして、いくつもの山を
あの小さい体で踏ん張って越えたのだと思うと愛おしくて。

いつの間にか、東京に帰りたいと泣くこともなくなっていました。
毎朝、保育園の通園バスからも笑顔を見せてくれます。

先日行われた運動会でも、たくさんの友だちと自然に戯れていました。
昨年までは東京の保育園の運動会でも恥ずかしくてもじもじしていた娘が、
堂々と踊りを披露してくれたのです。
その姿を見て、「あ、もう娘は大丈夫なんだ」そうはっきりとわかりました。
そうしたらまた泣けてきてしまって。
ふと横を見ると、園庭にいる娘をしみじみと眺めている夫の背中。
私たち家族にとって、特別心に残る運動会となりました。

運動会の前日、「雨が降りませんように」と娘がつくった「てるてる坊主」。いつの間にか、娘はしっかりと歩んでいたのです。