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高橋さんは、もともとは東京のベッドタウンでもある
神奈川県海老名市在住でした。
リーマンショックにより経済が大打撃を受けるのを目の当たりにして
価値観が大きく変わったそうです。
そして、当時、夢中になっていた養蜂にさらにのめりこみ、
祖母の家があった下田に移り住み、養蜂業を営むようになったと。
ミツバチへの強い思いがあったからこそ、
こつこつと努力を積み重ねることができたのでしょう。
この何年かは安定して質の良い蜂蜜がとれるようになりました。
そして、高橋さんの養蜂に対する純粋な気持ちが地域の人の共感を呼び、
つくるはちみつはどんどんと評価されるように。
そして、最近借り始めた広大な土地を
ミツバチの楽園にする計画についてうかがいました。
現状は高橋養蜂のミツバチは、高橋さんが維持管理する
蜜源植物(ミツバチが蜜を集める植物のこと)だけではなく
近隣の花々の蜜を集めています。
なかには農薬を使用する農家さんもいらっしゃいます。
農薬に弱いミツバチを守るために、農薬散布の際には
巣箱を移動しなければならないそうです。
そこで近所の農家の方がみかん畑、キウイ畑として使っていた
広大な土地を借り受けたことをきっかけとして、
そこを自らが維持管理する蜜源植物で満たす
ミツバチの楽園にする夢を抱いたといいます。
そして向かった楽園候補地。未舗装の険しい砂利道を
しばらく登りきったところに、その土地はありました。
確かに楽園になりうる可能性を持ったすばらしい土地です。
でも、しばらくは手つかずだったこともあり、
もともとのみかん畑は鹿にひどく荒らされています。
樹皮をはがされてしまい再生不可能と判断された木は
すでに伐採していますが、さらに根まで撤去する必要があるそうです。
その後、獣害対策をし、さまざまな蜜源植物を植えて
獣害対策をしながら育て、ミツバチの楽園とする計画です。
なんとも壮大な話……。
どこまで手間がかかるのか想像できませんが、
簡単ではないことは容易にわかります。
荒れた土地と未舗装の道も含めて再生、管理することを考えると、
僕にはそこをミツバチの楽園にするという夢を
現実のものとして考えられません。壮大すぎる夢に思えてしまうのです。
でも、高橋さんのミツバチへの愛、養蜂への情熱の前では
そんなことは障害にも感じられないのでしょう。
彼と話していると、ここがミツバチの楽園になることが
当たり前のことのように思えてくるから不思議です。
そして、僕がこの地で求められる仕事を
していきたいと語っていたこともあり
「ここをミツバチの楽園にするのに力を貸してほしい」と
声をかけていただきました。
とてもうれしい話ですが、いまの自分に
その楽園づくりのために何ができるのか? 見えないところもあります。
自分には樹木の伐採やら林道を整備するといった、
この計画に欠かせないスキルがありません。
それで少しとまどっていたのです。
でも、高橋さんは
「僕も最初は何もできませんでした。できるようになるもんです」と。
何ができるのか? ばかり考えて尻込みしていては
夢なんて実現できるわけがない、そんなあたり前のことに気づかされました。