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地域に愛される、
伊豆下田〈高橋養蜂〉との出会い。
“ミツバチの楽園”という夢が
つなげてくれた里山の縁。|Page 3

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.021

Page 3

広大な荒れた畑を、ミツバチの楽園に

高橋さんは、もともとは東京のベッドタウンでもある
神奈川県海老名市在住でした。
リーマンショックにより経済が大打撃を受けるのを目の当たりにして
価値観が大きく変わったそうです。

そして、当時、夢中になっていた養蜂にさらにのめりこみ、
祖母の家があった下田に移り住み、養蜂業を営むようになったと。
ミツバチへの強い思いがあったからこそ、
こつこつと努力を積み重ねることができたのでしょう。
この何年かは安定して質の良い蜂蜜がとれるようになりました。

そして、高橋さんの養蜂に対する純粋な気持ちが地域の人の共感を呼び、
つくるはちみつはどんどんと評価されるように。

高橋養蜂の〈みかんの蜂蜜〉。昨年、第12回伊豆大特産市特産品大賞を受賞。柑橘天国の下田にはさまざまなみかんが栽培されています。そんな下田ならではのみかんの花だけのはちみつです。

印象的なラベルのイラストは高橋さん自ら書いたもの。ミツバチ愛が溢れ出てます。

そして、最近借り始めた広大な土地を
ミツバチの楽園にする計画についてうかがいました。

現状は高橋養蜂のミツバチは、高橋さんが維持管理する
蜜源植物(ミツバチが蜜を集める植物のこと)だけではなく
近隣の花々の蜜を集めています。
なかには農薬を使用する農家さんもいらっしゃいます。
農薬に弱いミツバチを守るために、農薬散布の際には
巣箱を移動しなければならないそうです。

そこで近所の農家の方がみかん畑、キウイ畑として使っていた
広大な土地を借り受けたことをきっかけとして、
そこを自らが維持管理する蜜源植物で満たす
ミツバチの楽園にする夢を抱いたといいます。

そして向かった楽園候補地。未舗装の険しい砂利道を
しばらく登りきったところに、その土地はありました。

美しい山並みの彼方に水平線が見えます。下田のまちから20分でまるで別世界。

確かに楽園になりうる可能性を持ったすばらしい土地です。
でも、しばらくは手つかずだったこともあり、
もともとのみかん畑は鹿にひどく荒らされています。

鹿に荒らされてしまったみかん畑。

樹皮をはがされてしまい再生不可能と判断された木は
すでに伐採していますが、さらに根まで撤去する必要があるそうです。
その後、獣害対策をし、さまざまな蜜源植物を植えて
獣害対策をしながら育て、ミツバチの楽園とする計画です。

なんとも壮大な話……。

どこまで手間がかかるのか想像できませんが、
簡単ではないことは容易にわかります。

楽園への道は険しい……。この先には高橋さんが借り受けた土地しかありません。この道の維持管理もしなければならないのです。

荒れた土地と未舗装の道も含めて再生、管理することを考えると、
僕にはそこをミツバチの楽園にするという夢を
現実のものとして考えられません。壮大すぎる夢に思えてしまうのです。

でも、高橋さんのミツバチへの愛、養蜂への情熱の前では
そんなことは障害にも感じられないのでしょう。
彼と話していると、ここがミツバチの楽園になることが
当たり前のことのように思えてくるから不思議です。

そして、僕がこの地で求められる仕事を
していきたいと語っていたこともあり
「ここをミツバチの楽園にするのに力を貸してほしい」と
声をかけていただきました。

とてもうれしい話ですが、いまの自分に
その楽園づくりのために何ができるのか? 見えないところもあります。
自分には樹木の伐採やら林道を整備するといった、
この計画に欠かせないスキルがありません。
それで少しとまどっていたのです。

でも、高橋さんは

「僕も最初は何もできませんでした。できるようになるもんです」と。
何ができるのか? ばかり考えて尻込みしていては
夢なんて実現できるわけがない、そんなあたり前のことに気づかされました。