〈旧八女郡役所〉が再オープン!
20年眠っていた建物を
直しながら使っていく

中島宏典 vol.3

福岡県八女市の伝統的な大型木造建築〈旧八女郡役所〉のリノベーション。
今回は内装と外壁づくり、外構のリノベ、完成後の運営について紹介していきます。

木材は地元産の八女杉。床張り&壁張りワークショップ

屋根瓦の葺き替えや土壁塗り、躯体工事が完了し、続いては内装工事です。
建物南側の物販店舗〈朝日屋酒店〉と、
西側のスペース〈kitorasu〉をつくっていきます。

旧八女郡役所、リノベ後の平面レイアウト(2019年6月現在)。

旧八女郡役所、リノベ後の平面レイアウト(2019年6月現在)。

まず、南側店舗部分(朝日屋酒店)に着手しました。
もともとあった内装は解体して躯体だけの状態にします。
100年以上積み重ねられた埃と屋根から降りてきた瓦の残骸が1階に溜まっていて
苦しめられましたが、なんとか片づけが終わりました。

南側店舗部分の基礎コンクリート打設の準備。奥側は土掘りの途中です。

南側店舗部分の基礎コンクリート打設の準備。奥側は土掘りの途中です。

その後、自分たちでスコップと一輪車を使って、
基礎づくりのための穴掘りも行い、生コンを流入し、下地をつくりました。

床は地元産の木材として、天然乾燥の八女杉の床材(厚み3センチの荒材)を、
自分たちで張っていくことにしました。

〈朝日屋酒店〉の杉床張りの作業前の下地。この上に板を張っていきます。

〈朝日屋酒店〉の杉床張りの作業前の下地。この上に板を張っていきます。

朝日屋酒店の杉床張りの作業。ワークショップ形式で行いましたが、スムーズに張れるようになるまで時間がかかりました。

朝日屋酒店の杉床張りの作業。ワークショップ形式で行いましたが、スムーズに張れるようになるまで時間がかかりました。

続いて、西側のスペース、kitorasuの内装改修に入りました。
ここには絵本カフェの〈絵本や・ありが10匹。〉が入居することになりました。
もともと古いまち並みの一角で〈絵本や・ありが10匹。〉を開いていた
伊藤寛美さんに、かつて幼稚園給食をつくっていた経験を生かして
絵本カフェとして移転オープンしていただきました。

元住宅部分を解体して店舗へ。

元住宅部分を解体して店舗へ。

杉板の床張りが終わった〈kitorasu〉。

杉板の床張りが終わった〈kitorasu〉。

梁組を見せつつ、床や壁には杉板を張り、
部分的にボードなどの下地にペンキ塗りすることで予算を抑えました。

床を張るのに四苦八苦しましたが、張り終えたときの杉の香りと、
凛とした空間の雰囲気には感動しました。

朝日屋酒店がオープン! 店内の棚や什器は、地元の家具作家・関内潔さん作。

朝日屋酒店がオープン! 店内の棚や什器は、地元の家具作家・関内潔さん作。

kitorasuには、居心地のよい関内潔さん作の杉の椅子やテーブルが。

kitorasuには、居心地のよい関内潔さん作の杉の椅子やテーブルが。

こうして、朝日屋酒店と、〈絵本や・ありが10匹。〉の移転オープンを
無事に迎えることができました!

kitorasuの客室から厨房方向を見る。右手の棚には〈絵本や・ありが10匹。〉の店主によって厳選された絵本がずらり。

kitorasuの客室から厨房方向を見る。右手の棚には〈絵本や・ありが10匹。〉の店主によって厳選された絵本がずらり。

地域内外の親子連れが訪れる〈絵本や・ありが10匹。〉の看板メニュー「まかないカレー」。

地域内外の親子連れが訪れる〈絵本や・ありが10匹。〉の看板メニュー「まかないカレー」。

〈TROPE HACKS 4.0〉 grafの手がける新たな プロダクトシリーズが、 瀬戸内国際芸術祭2019に登場!

大阪のクリエイティブユニット〈graf(グラフ)〉が
新たなオリジナルプロダクトを手がけています。
名前は〈TROPE〉。
それは“あらかじめ決められた用途や役割を与えられていない”プロダクトなのだとか。

一体、どんなプロダクトなのでしょうか。
広報を担当する斎藤智子さんに聞いてみたところ、次のように答えてくれました。

「生活の知恵に学ぶ、工夫をする楽しさ。その使い方はすべて、
使い手の感覚に委ねられています。
TROPEは、使いこなしながら新しい感覚を育んでゆく道具であり、
“アイデアを引き出す知恵、サバイブする道具をつくる”というのがTROPEの考え方です。
今回は新たに、哲学者、木工家、建築家など異なる
領域で活躍している方々とTROPEの概念を再考する
〈TROPE HACKS 4.0〉として開発中です」

家具、空間、プロダクト、食、アートなど
さまざまなものを手がけてきたgrafですが、
今回のシリーズは、まるでオブジェのよう。
でも、これらもまた彼らの考える“道具”なのです。

dot architects × graf〈石と木〉。第1弾として開催された展示の会場風景。(2019年4月)

dot architects × graf〈石と木〉。第1弾として開催された展示の会場風景。(2019年4月)

展示物

第1弾では、建築ユニット〈dot architects〉と
道具の原点について考えた展示「石と木」を発表。
下の写真は、第2弾として7月に開催された展示「土に還る」の様子。
木工家の川合優さんを迎え、大阪の〈graf studio〉にてスタディの様子や
モックアップを発表しました。
このシリーズの製品化は来春を予定しています。

川合優 × graf〈土に還る〉(2019年7月)

川合優 × graf〈土に還る〉(2019年7月)

展示物2

岐阜県の農家生まれ、山を駆け回り、
親類の経営する工務店で遊んで育ったという川合さん。
2016年にはライフスタイルブランド〈SOMA(そま)〉を設立し、
日本産の木材を使用した商品をデザイン・生産するほか、
椅子づくりワークショップや森を歩くフィールドワークなどを通して、
森や木の魅力を発見できる活動を展開しています。
ブランドの名前は、杣人(山で働く人)や杣仕事 (山での仕事)
などに使われていた「杣 (そま)」という言葉に由来するそう。

SOMA(そま)の作品

同展では、祈るという行為や対象の形状について考察し、
人の思いが込められることで完成するものを模索したのだとか。

また、8月21日(水)〜9月1日(日)は
アーティストのカワイハルナさんを迎え「浮遊」と題し、
物体の重みがありながら浮遊感漂うプロダクトのスタディを展示予定。
期間中はアーティストによるトークイベントも開催されるとのこと。
詳細はgrafの公式サイトをチェックしてみてください。

〈RetRe〉
虫喰いナラのプロダクトで
富山の森を守る尾山製材の挑戦

最果てのまちにある製材所の挑戦

「消滅するかもしれない最果てのまちにある製材屋に、何を取材しに来たの?」と、
地元出身の人に驚かれた。富山県の東端に位置する朝日町の〈尾山製材〉で行われた
〈倉庫参観日〉で、偶然隣り合わせた参加者に言われた言葉だ。
地元に関係がある人だけに自虐的な笑顔で語っていたが、
富山県民にとってさえ「辺境の地」で、
地元の県立高校も近く廃校になる朝日町の状況を考えると、一理ある指摘とも言える。

左が尾山製材の尾山嘉彦さん、右がプロダクトデザイナーの山﨑義樹さん。

左が尾山製材の尾山嘉彦さん、右がプロダクトデザイナーの山﨑義樹さん。

尾山製材の3代目社長、尾山嘉彦さんは、
その朝日町で富山の森が抱える問題に一石を投じようと奮闘している。
尾山さんが、富山在住のプロダクトデザイナーである山﨑義樹さんと立ち上げたブランド
〈RetRe(リツリ)〉と原木解体ショーが行われた倉庫参観日の取り組みを、
今回は紹介したい。

富山の森が直面したカシノナガキクイムシの大打撃

尾山製材の工場。一般の人に向けて倉庫参観日が定期的に開催される。

尾山製材の工場。一般の人に向けて倉庫参観日が定期的に開催される。

「カシノナガキクイムシ」を知っているだろうか。5ミリほどの虫で、羽を持ち、
大勢で飛来してはフェロモンの導きによって健康なナラの木に集中攻撃をしかける。
成虫は喰い荒らした穴に卵を産み付け、卵からふ化した幼虫とともに幹の内部で越冬する。
その不吉な害虫の大群は初夏になると木の外に出て、
風に乗れば1キロ以上という飛行能力を生かし、「行軍」していく。

森林組合に貯木された虫喰いナラの山。(撮影:山﨑義樹[Designノyamazakiyoshiki])

森林組合に貯木された虫喰いナラの山。(撮影:山﨑義樹[Designノyamazakiyoshiki])

地元紙によれば、2009年をピークに富山のナラもカシノナガキクイムシに襲われた。
被害が最もひどかった時期に、尾山さんは富山県の砺波にある森林組合の工場で、
虫喰いのナラが大量に貯木され、おがくずとして処理されている光景を目の当たりにした。
虫に喰われたナラは、商品にならないためつぶされるしかない。
その状況を何とかしたいと、尾山さんは山﨑さんとともに、
虫喰い材を利用したプロダクトのブランドRetReを立ち上げた。

虫喰い材は材木屋の目で見ると売り物にならないため、
本来であれば誰も手を出さないという。
どうして尾山さんはそのような木に手を出したのだろうか。

「ナラは堅くてポテンシャルも高いですし、もともと県産材を使って、
先例のない何かに取り組んでみたいという気持ちがありました。
今まで県産材はスギしかないと思っていましたが、
スギでは先行してやっていらっしゃる人がたくさんいます。
会社には製材機も、乾燥機もあって、環境が整っていましたし」

そこで、誰も踏み出していないナラの虫喰い材を使った商品づくりがスタートしたという。
当初の周りからの反応は冷ややかだった。
デザイナーの山﨑さんも、
「尾山さんはドМですし、尾山製材はドМメーカーなんです」と笑う。

尾山さんと出会う前に、山﨑さん自身も虫喰いナラを使った製品を
手がけた経験があるという。その山﨑さんから見ても、
わざわざ虫喰い材を使ったビジネスなど、
普通に考えたらメーカーとしてリスクが高いと語る。

墨流しの模様が出た虫喰いのナラ。(撮影:山﨑義樹[Designノyamazakiyoshiki])

墨流しの模様が出た虫喰いのナラ。(撮影:山﨑義樹[Designノyamazakiyoshiki])

それでも材料提供(OEM)というカタチで虫喰いナラを使ったiPhoneケースを販売したり、
フローリング材を自社商品として売り出したりと、県産の虫喰いナラの製品化に向けて、
道なき道を尾山さんは歩み始めた。

『いのくまさん』が島根に。 益田・グラントワで 猪熊弦一郎展が開催

猪熊弦一郎 題名不明 1987年丸亀市猪熊弦一郎現代美術館蔵©The MIMOCA Foundation

絵本『いのくまさん』から広がる猪熊弦一郎の軌跡

「世の中に美がわかる人を増やしたい。
そうすることで世の中が平和になると思う。
美がわかる人は人の気持ちがわかる。
人の気持ちがわかる人が増えれば、戦争がなくなる」

『小説新潮』の表紙絵を40年間描いたほか、
三越の包装紙のデザインや上野駅の壁画なども手がけ、
生涯現役の画家として活躍した猪熊弦一郎氏。

これは自身が手がけた丸亀市猪熊弦一郎現代美術館オープン時の
開館スピーチで、猪熊氏が語った言葉です。

美しいものを人一倍愛した彼は、
そこから享受した才能を如何なく発揮し、
生涯にわたりさまざまなスタイルの絵を描きました。

絵本『いのくまさん』(小学館発行)は、
そんな猪熊氏の作品の魅力を、こどもたちにもわかりやすく紹介した本。
詩人の谷川俊太郎氏のシンプルかつ軽妙なタッチの言葉とともに、
猪熊作品の多彩で生命力にあふれた世界が広がります。

現在、この絵本をもとにした展覧会が、
島根県立石見美術館で開催されています。

ビルに思いを馳せて40年。 水戸芸術館 『大竹伸朗 ビル景 1978-2019』

《放棄地帯》2019年(c) Shinro Ohtake, Courtesy of Take Ninagawa, Tokyo, Photo by Kei Okano

記憶から立ち上がる刹那的な“ビル景”

ふとした何気ない風景に今の自分を重ね合わせる。
その心情をひと括りに“これ”というのは難しいですが、
丁寧に辿っていくと、浮き上がってくる“何か”を
誰もが持っているのではないでしょうか。

現代美術家の大竹伸朗氏は、記憶の断片にあるさまざまなビルを思い起こし、
約40年にも渡り、ビルを描いています。

7月13日(土)より水戸芸術館現代美術ギャラリーで始まった
『大竹伸朗 ビル景 1978-2019』は、1970年代から現在までに制作された大竹氏の
そのような“ビル景”をまとめた展覧会です。

先にも言ったように、“ビル景”は
大竹氏が風景をそのまま描いたものではありません。
香港、ロンドン、東京といった
世界中の都市の湿度や熱、騒音、匂いを無作為につなぎ合わせ、
“ビル”という形を持って描く仮想の風景なのです。

〈ロエベ ファンデーション クラフト プライズ 2019〉 グランプリは漆塗りの技法を用いた 石塚源太氏

次世代のアーティストによる、先鋭的なクラフトが集結

現代まで受け継がれてきた工芸文化に敬意を払いつつ、
次世代の才能あるアーティストを見つけ出すことを目的に、
ラグジュアリーレザーブランド・ロエベが立ち上げた
〈ロエベ ファンデーション クラフト プライズ〉。

審査員には、プロダクトデザイナーの深澤直人氏や
プリツカー賞を受賞した建築家で工業デザイナーのパトリシア・ウルキオラ氏
といった世界の第一線で活躍するアーティストらが名を連ね、
年々回を重ねるごとに規模が大きくなっています。

そんな同賞の第3回目の授賞式が、先日6月25日に
赤坂にある草月会館で開催されました。

今回グランプリに輝いたのは、京都市立芸術大学および
ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブアートで学び、
伝統的な漆塗りの技法を用いたアート作品を発表している
日本人アーティストの石塚源太氏。

石塚源太 Surface Tacitility #11 2018

石塚源太 Surface Tacitility #11 2018

作品は、スーパーマーケットで売られているメッシュ袋に入った
みかんのかたちをインスピレーションソースに製作した漆塗りのオブジェ。
デコボコとした形状はそのままに、艶やかで奥行きのあるものとなっています。
漆も、このような現代アートの領域にまで広げられるなんてびっくり。

特別賞にはエディンバラ拠点のアーティスト・ハリー・モーガン氏と
イギリスを拠点にする日本人の高樋一人氏が選ばれました。

授賞式には、〈ロエベ〉のクリエイティブ ディレクターである
ジョナサン・アンダーソン氏をはじめ、
審査員、ファイナリスト、女優の鈴木京香氏らが出席。

現在草月会館では、日本人10名の作品を含む
ファイナリスト29名の作品が展示されており、7月22日まで一般公開中。
ちなみに今回、日本人ファイナリストは過去最多だったのだそう。

日本人作品はもちろん、世界各地に存在する工芸技術を現代の感覚で解釈した
コンテンポラリーなクラフトは、どれもウィットに富んでいて本当にかっこいい。
草月会館に浮かんだフレッシュで力強い才能を、この機会にお見逃しなく。

information

map

Loewe Craft Prize 2019 
ロエベ ファンデーション クラフト プライズ 2019

会期:~2019年7月22日

会場:草月会館 東京都港区赤坂7-2-21

時間:10:00~19:00 、~20:00(金曜)

料金:入場無料

定休日:無休

Web:http://craftprize.loewe.com/ja/home

トークセッション

日時:7月6日 14:00~15:30

登壇:皆川明(minä perhonen代表、デザイナー)、吉泉聡(TAKT PROJECT Inc.代表 、デザイナー)

日時:7月13日 14:00~15:30

登壇:西尾洋一(『Casa Brutus』編集長)、上條昌宏(『AXIS』編集長)

日時:7月20日 14:00~15:30

登壇:石塚源太(本年大賞受賞者)

モデレーター:川上典李子(ジャーナリスト/21_21 DESIGN SIGHT アソシエイトディレクター)

会場:草月会館(談話室)

参加方法:当日先着順

空き家を地域の拠点へリノベーション。
熊野市〈コウノイエ〉プロジェクト

撮影:松村康平

多田正治アトリエ vol.3

前回まで三重県尾鷲市梶賀町の〈梶賀のあぶり場〉を紹介してきましたが、
今回はそれより3年ほど前のお話。
熊野市で学生たちと古民家の改修に挑んだプロジェクトについて紹介します。

桜の名所と黒石の産地、熊野市神川町

尾鷲市の隣の熊野市の山中に、神川町という人口300人ほどの集落があります。
神川町は、谷間を走る神上川(こうのうえがわ)に沿った集落で、
豊かな自然に囲まれています。
旧神上中学校の木造校舎がそのまま残されており、
いまでも当時の面影を知ることができます。

神川町の風景。

神川町の風景。

旧神上中学校。

旧神上中学校。

旧神上中学校のノスタルジックな木造校舎の廊下。

旧神上中学校のノスタルジックな木造校舎の廊下。

校庭や川沿いに桜が植えられており、春になると一帯が桜色に染まる
桜の名所としても知られています。

また神川町は「那智黒石」の日本唯一の産地でもあります。
那智黒石はキメの細かい漆黒の美しい石で、
碁石や硯(すずり)として用いられている石材です。
その歴史は古く、平安時代に硯として用られていた記録もあるほどです。

那智黒石採掘場。(撮影:高見守)

那智黒石採掘場。(撮影:高見守)

熊野の山中にはいくつもの集落がありますが、そこでよく見られるのが、
「石垣」と雨よけの「ガンギ」のある民家です。

石垣の上にガンギ(赤茶色の三角形の部分)のついた民家と小屋が並ぶ。

石垣の上にガンギ(赤茶色の三角形の部分)のついた民家と小屋が並ぶ。

平地が少なく、地質学的に石がたくさん採れる熊野では、
家や耕作地のために多くの石垣が築かれたようです。

いろいろなところで、丸い石を野面積み(自然石を加工せずに積むやり方)にした
石垣をよく見かけます。
また熊野の多雨に対応するため、家の妻側(建物の長い方向に対して直角な側面、
つまり家のシルエットをしている面)に雨を除ける板が取りつけられています。
熊野の大工さんはそれを「ガンギ」と呼んでいます。
東北地方の民家で見かける雪除けの「雁木」とは別物です。

石垣とガンギの風景は、民俗学の今和次郎も著書『日本の民家』に書いています。
昔からあった風景なのでしょう。神川町にも同様の民家がいくつも見られます。

箱根の森にある美術館に1泊2日。 アートなキャンプイベント 〈FOREST MUSEUM 2019〉

アートと自然が共存するポーラ美術館でキャンプ!

今年もまだまだ残暑が続きそうな予感のする9月の第1週目。
森の中にある美術館でキャンプをするという
子ども心がよみがえる、夢のようなイベントが行われます。

木々が鬱蒼と茂る富士箱根伊豆国立公園内に、忽然と存在する〈ポーラ美術館〉。
緑とガラスの調和が美しい館内には、クロード・モネやルノワールなどの印象派をはじめ、
ピカソやカンディンスキーといった
国内外のさまざまな著名アーティストの作品が収蔵されています。

そんな〈ポーラ美術館〉で、自然とともにアートを楽しむ1泊2日の
アウトドアイベント〈FOREST MUSEUM 2019〉が9月7日(土)、8日(日)に開催。

谷中圓朝まつり「幽霊画展」 落語家・三遊亭圓朝の コレクションを特別公開!

伊藤晴雨、池田綾岡、伝・円山応挙などの名作が勢揃い

恐いけれど、ちょっと見てみたい。
人には昔から、そんな心理があるのでしょうか。

江戸末期から明治にかけて活躍し、
「牡丹燈籠」「真景累ケ淵」「死神」などの名作落語を生み出した
落語中興の祖、三遊亭圓朝はあまたの幽霊画を収集していたそうです。

2019年8月1日(木)〜31日(土)、東京・谷中の全生庵にて、
その圓朝のコレクションを特別公開する
谷中圓朝まつり「幽霊画展」が開催されます。

左から、伊藤晴雨『怪談乳房榎図』、池田綾岡『皿屋敷』、鰭崎英朋『蚊帳の前の幽霊』 すべて全生庵所蔵

左から、伊藤晴雨『怪談乳房榎図』、池田綾岡『皿屋敷』、鰭崎英朋『蚊帳の前の幽霊』 すべて全生庵所蔵

幽霊画展 展示室

幽霊画展 展示室

展示されるのは、伝・円山応挙、柴田是真、伊藤晴雨、河鍋暁斎など、
著名な画家が描いた幽霊たち。

圓朝は、怪談噺創作の参考とするために幽霊画を収集していたのだとか。
本物の幽霊画から創作された怪談噺なんて、なかなか恐そうですね!

トップイメージ:伝・円山応挙『幽霊図』〈全生庵〉所蔵

伝統構法を学ぶリノベーション。
大型木造建築〈旧八女郡役所〉
プロジェクト・工事編

中島宏典 vol.2

福岡県八女市〈旧八女郡役所〉の改修プロジェクトの続編です。
リノベーションの準備段階、そして歴史的木造建築のリノベーションを経験して
学んだ技術や知識について紹介していきます。

リノベ前の旧八女郡役所。

リノベ前の旧八女郡役所。

まちの核としての建物

工事の準備を進めながら、建物が持つべき「まちの核」としての役割を考えていました。
旧八女郡役所は、国の重要伝統的建造物群保存地区、八女福島にある
歴史的に非常に重要な意味を持つ建物です。

明治中期から戦前にかけて、八女地方では都市や山村の基盤が充実していきました。
その礎になったのが、当時の郡長・田中慶介が作成した
「八女郡是(ぐんぜ)」や各地域の「町村是(ちょうそんぜ)」で、
その制作の舞台となったのが八女郡役所でした。

郡是とは、今日でいう、まちづくりのマスタープランのようなものです。
足元を見つめて具に調査をし、将来を計画し実行する。
まさに私たちが現在やるべきことが記されています。

つまり、旧八女郡役所はまちづくりにおいて、
重要なメッセージを発信する場所であったということです。

昭和35年頃の旧八女郡役所の建物(当時は服部飼料店)。

昭和35年頃の旧八女郡役所の建物(当時は服部飼料店)。

鬼瓦には福岡県の「福」の文字が刻印されていた。鬼瓦は、工事中に降ろして保管中。

鬼瓦には福岡県の「福」の文字が刻印されていた。鬼瓦は、工事中に降ろして保管中。

さらに、旧八女郡役所は立地面でもまちの核になりうると考えていました。
中心街のまち並みの中央南側に位置し、少し南西には観光物産館や案内所があるので、
まちのハブになることも見据えた計画としました。

郡役所リノベの準備として、〈つどいの家〉をDIYリノベ

旧八女郡役所の改修に着手する前、2015年の春から夏にかけて、
八女市が所有する昭和初期の空き家を借りて、
移住者向けシェアハウス〈つどいの家〉に改修する計画が持ち上がりました。

床が一部腐っていることと、若干の屋根の雨漏り以外は
大きな修理が必要なさそうでした。

本来であれば、安全を考慮して耐震改修も考えたいところですが、
自分たちの手で最低限のリノベをすることにし、
次に待ち構える郡役所の改修に向けて経験を積むことも目標のひとつとしました。

つどいの家でワークショップ中。休憩中の学生と外観。

つどいの家でワークショップ中。休憩中の学生と外観。

ワークショップ形式のDIYリノベとして、
床づくり、床・壁のペンキ塗装を実施しました。
ワークショップは思った以上に準備が大変なことや、
参加者にはプロジェクトや建物に愛着を持ってもらえるなど、
ワークショップのメリット、デメリットを多く経験しました。

経験が浅い僕たちにとっては、まずは規模が小さい活動から取り組み、
そこでの学びを生かして大きいプロジェクトに挑戦していくのが良さそうだと
実感しました。

つどいの家で一部床の解体中。

つどいの家で一部床の解体中。

地元住民と一緒にもちつき。

地元住民と一緒にもちつき。

金沢で活躍する原嶋亮輔さんの作品も。 日本の現代作家3名の展覧会が 〈SOMEWHERE TOKYO〉で開催

伝統的な手法を用いた原始的でモダンな3作品

デザイナーズ家具を扱う恵比寿のギャラリー〈SOMEWHERE TOKYO〉で、
6月22日(土)より、日本の現代作家3名の展覧会
〈Changing Attitude – ARKO / 濵嶋卓也 / 原嶋亮輔〉が開催されます。

工芸都市金沢を拠点に、日本の古民芸品、骨董品などを用いながら
家具を創作しているプロダクトデザイナー・原嶋亮輔さんをはじめ、
〈ロエベクラフトプライズ2018〉のファイナリストにも輝いた藁作家のARKOさん、
鉄、木、陶といったさまざまなマテリアルを
巧みに組み合わせたプロダクトを制作しているアーティストの濵嶋卓也さんの
3名の作品が並ぶこの展覧会。

Bamboo lattice table 原嶋亮輔(H550/W650/D650)

Bamboo lattice table 原嶋亮輔(H550/W650/D650)

Alley of ripple #4 ARKO(H1150/W620/D130)

Alley of ripple #4 ARKO(H1150/W620/D130)

Twin lights 濵嶋卓也(H1260/W300/D240)

Twin lights 濵嶋卓也(H1260/W300/D240)

住民や学生とセルフビルドで。
次世代に「あぶり」文化をつなぐ
新拠点〈梶賀のあぶり場〉が完成!

多田正治アトリエ vol.2

三重県尾鷲市梶賀町で立ち上がった〈梶賀のあぶり場〉プロジェクト。
vol.1に続き、工事から完成までの様子をお届けします。

いよいよ〈梶賀のあぶり場〉の工事が開始です。

海女小屋は改装し、小屋の正面には増築をする計画で、
掃除から引き続き、学生や地域のみなさんとセルフビルドで進めました。
改装部分の工事と増築部分の工事をそれぞれご紹介していきます。

海女小屋の改装編

【解体してみる】
まずはみんなで解体作業をしました。バールで壁や床をはがします。
天井も「せーの!」で一気に落としました。

みんなで解体。(撮影:浅田克哉)

みんなで解体。(撮影:浅田克哉)

【床をつくってみる】
床の下地の一部は傷んでしまっており、別の材に取り替えました。
その上から合板を張っていきます。

床下地の合板張り。(撮影:浅田克哉)

床下地の合板張り。(撮影:浅田克哉)

根太(下地材)の入れ替えのため、仕口(部材の接続部分)の加工をする。(撮影:浅田克哉)

根太(下地材)の入れ替えのため、仕口(部材の接続部分)の加工をする。(撮影:浅田克哉)

【断熱材を入れて天井を張ってみる】
垂木と垂木(屋根の下地)の間に断熱材を入れていきます。
昔の小屋なので、粗いつくりです。垂木は直角にも平行にもなっていないので、
各部分の寸法を測り、その形に合わせて断熱材を切り出します。
断熱材の上から仕上げの板(シナベニヤ)を張りますが、
それも垂木に釘を打つ都合上、各部の寸法に合わせてカットしました。

天井に断熱材を入れる。場所によっては下地を追加する。(撮影:浅田克哉)

天井に断熱材を入れる。場所によっては下地を追加する。(撮影:浅田克哉)

【FRPで防水、塗装してみる】
床の上にFRP防水をします。
FRPとはプラスチックの一種で、ガラス繊維で補強されたプラスチックです。
身の回りだとユニットバスなどがFRPでできており、
建築でも防水工事などで用いられます。

漁船の甲板修理などでも用いられるので、漁師にコツを教わり、
ネットで使い方を予習して、いざ作業開始。
ふたつの液体(ポリベストと硬化材)を混ぜて、
ガラスマット(ガラス繊維をマット状に加工したもの)の上から垂らして、
ローラーで伸ばしていきます。

液体の混合比率で硬化する時間が変わるし、
ガラスマットから繊維が飛び散るし(肌に触れるとチクチクする!)、
うまく施工するのに悪戦苦闘しました。
壁と床の角には、曲面型の面木(面をとるために角に打つ材)を入れています。

FRPを流しこむ。

FRPを流しこむ。

FRP施工後。

FRP施工後。

硬化したら次は塗装。滑り止めの砂入を混ぜた塗料を使って、
床から少し立ち上がった位置まで青で塗装しました。
この青色は、海や船をイメージした色で、塗料屋さんに調色していただきました。
仕上がると、爽やかな青が包み込むような空間ができあがりました。

青に塗っていく。(撮影:浅田克哉)

青に塗っていく。(撮影:浅田克哉)

【シンク台をつくってみる】
シンク台は本体を耐水合板でつくり、天板にDIY用のモザイクタイルを貼り、
側面は塗装しました。シンクや水栓金物はネットで注文をし、
配管は梶賀の水道屋さんにお願いして取り付けました。
足元は床と同じように曲面型の面木をつけて途中まで青で塗装しました。
床から「生えた」ようなシンク台のできあがり。

シンク台をつくる。(撮影:浅田克哉)

シンク台をつくる。(撮影:浅田克哉)

床と連続するシンク台。

床と連続するシンク台。

【照明器具をつくってみる】
シンクの上につく照明器具は海に浮かんでいる「ブイ」を加工してつくりました。
それ以外の照明は、いわゆる裸電球(ただしLED)ですが、古い民家で使われていた、
電線を支持・絶縁する「碍子(がいし)」を再利用して吊るしています。

照明器具を取り付けてみたところ。

照明器具を取り付けてみたところ。

〈札幌蚤の市&札幌もみじ市〉へ! 〈手紙社〉の人気イベントが 北海道に初進出

東京で人気のイベントが、札幌で初開催

初夏の札幌に、人気の2大イベント〈東京蚤の市&もみじ市〉がやってくる!
6月15(土)・16(日)の2日間、JRA札幌競馬場を会場に、
全国から100を超える雑貨・作家・カフェ・フードなどのショップが集結する、
スペシャルなマーケットが開かれます。

東京ではおなじみの〈東京蚤の市〉は編集チーム〈手紙社〉が主催するイベントで、
今回は〈札幌蚤の市〉と題して北海道初開催。
「古いものと新しい持ち主との出会いが生まれる」というコンセプトのもと、
道内はもちろん全国から個性豊かなアンティークショップが集まります。

奈良から出店の〈グリーンベアーズカンパニー〉。蚤の市では和・洋問わず、古きよきモノが集結。お宝に出会えるかも!?

奈良から出店の〈グリーンベアーズカンパニー〉。蚤の市では和・洋問わず、古きよきモノが集結。お宝に出会えるかも!?

蚤の市会場では、北欧のデザイン豊かな雑貨ショップが並ぶ「北欧市」や、
作家の個性が光る「豆皿市&箸置き市」のほか
「リュックサック・バザール」も同時開催。
2012年のスタートから人気を集め、開催ごとにますます盛り上がりを見せる
充実のマーケットを札幌で体感できます。

〈東京蚤の市〉での北欧市風景。今回は9つのショップが参加します。

〈東京蚤の市〉での北欧市風景。今回は9つのショップが参加します。

手のひらサイズのアート。大人気の豆皿&箸置き市。

手のひらサイズのアート。大人気の豆皿&箸置き市。

そして同会場で開催されるもうひとつのイベント〈札幌もみじ市〉は、
手紙社の敬愛する陶芸家、木工家、金工家、イラストレーターといった
全国各地のつくり手たちが一堂に会する場。
普段なかなかお目にかかれない、繊細な手仕事が光るモノと
そのつくり手たちとの出会いが待っています。

光の当たり方で表情を変える、長野〈Mellow Glass〉のガラス作品。

光の当たり方で表情を変える、長野〈Mellow Glass〉のガラス作品。

柔らかなインド綿と木版プリントのオリジナル布製品〈admi〉は札幌初出店。

柔らかなインド綿と木版プリントのオリジナル布製品〈admi〉は札幌初出店。

「10年後も履きたい靴」をテーマにしたセミオーダーの靴〈coupé〉は東京から。

「10年後も履きたい靴」をテーマにしたセミオーダーの靴〈coupé〉は東京から。

雑司が谷を舞台に繰り広げられる
アートプロジェクト
〈Oeshiki Project〉とは?

〈Oeshiki Project〉から見る東京のローカルの未来 vol.1

東京に住むつもりなんか、なかった。

東京の北の玄関口・池袋。駅前を行き交う人波を抜け、ほんの10分ほど歩くと、
緑と静けさに包まれた「雑司が谷」というまちが現れる。

自転車が追いつけそうな速さでコトコト走る路面電車。
肩を寄せ合う木造の家々と、昔ながらの商店街。
猫たちが昼寝する曲がりくねった路地。
このまちを訪れる人はしばしば「東京じゃないみたい」とつぶやく。

雑司が谷のシンボル・鬼子母神の参道。樹齢400年の欅並木に沿ってカフェや雑貨店、住宅が並ぶ。

雑司が谷のシンボル・鬼子母神の参道。樹齢400年の欅並木に沿ってカフェや雑貨店、住宅が並ぶ。

私も以前だったら、同じことをつぶやいていたかもしれない。
東京生まれだが、物心つく前に首都圏の郊外に引っ越し、
通勤・通学は満員電車に揺られて都内に通うのが当たり前。地元らしい地元はない。
東京には遊びや用事でしょっちゅう来るけれど、わざわざ住もうとは思わなかった。
仕事で地方や海外に滞在することが増えてからは旅暮らしで、
ますます東京に住む理由がなくなった。

「七曲り」と呼ばれる迷路のような路地。隅々まで暮らしが息づいているが、空き家もちらほら。

「七曲り」と呼ばれる迷路のような路地。隅々まで暮らしが息づいているが、空き家もちらほら。

だがふとしたきっかけで9か月前、雑司が谷の近所に引っ越してきた。
この地域に根ざしたアートプロジェクトを手がけることになり、
「一度、ちゃんと東京に住んでみよう」と思ったのだ。

東京に住む意味を探して

私はここ8年間ほど、いろいろな土地に滞在して、
その都市やコミュニティを素材に演劇をつくっている。肩書は「劇作家」。
プロジェクトでは、その土地のローカルな人たちと出会う。
そんなとき、いつも後ろめたいような、気後れするような思いがあった。

彼らのまちに「よそ者」として関わる自分は、
いったいどこからやってきた、何者なのだろうか。
私には、自分の生まれたまちの記憶がない。
そこは、家族にとって悲しい出来事があって、二度と訪れられない場所になっていた。

だから私にとって自分の生まれた場所は、「東京」という大きな、
漠然としたイメージでしかない。顔も覚えていない生き別れの父親、みたいな感じ。

自分にとって「東京」って何なんだろう。
好きなのか嫌いなのか、住みたいのか住みたくないのか? 
東京という都市やコミュニティとも、演劇をつくれるのだろうか。

そんなもやもやした問いから立ち上げたのが〈Oeshiki Project〉だ。
これは、雑司が谷に江戸時代から伝わる伝統行事
「御会式(おえしき)」を軸に展開するアートプロジェクトである。

〈真鶴出版2号店〉にとって
『美の基準』とは。
トミトアーキテクチャ&
建築家・池上修一さん対談

撮影:小川重雄

トミトアーキテクチャ vol.5

1993年、真鶴町のまちづくり条例として『美の基準』が制定されました。
建築家のクリストファー・アレグザンダーの理論『パタン・ランゲージ』を応用して、
法律家の五十嵐敬喜さん、都市プランナーの野口和雄さん、
建築家の池上修一さんと真鶴町が協働してつくりあげたものです。
その後、池上さんは、美の基準を体現する建築物として、
真鶴のコミュニティセンター〈コミュニティ真鶴〉の設計を手がけました。

それから25年、空き家をリノベーションした〈真鶴出版2号店〉が完成したいま、
その建築を手がけた〈トミトアーキテクチャ〉が池上さんをお招きし、
夢の対談が実現しました。
25年前といまとを行き来しながら進んだ本対談からは、
世代を超えた建築家の喜びや苦悩、そして真鶴へのまなざしが浮かび上がってきました。

建築家の顔が見えない建築

伊藤: 雑誌『ポパイ』に〈真鶴出版2号店〉を載せてもらったんです。

池上: それはすごい! やっぱりこういうものは、ポップじゃないとダメなのよね。
建築誌の中だけにいてもダメなのよ。すばらしいなぁ。

建築家の池上修一さん。真鶴出版2号店にて。

建築家の池上修一さん。真鶴出版2号店にて。

伊藤: 今晩はここ、真鶴出版2号店に宿泊されるんですよね。
先ほど内覧していただきましたが、
ざっくばらんに感想をいただけたらうれしいなと思います。

池上: なぜ宿泊するかというと、ここはパッと観てコメントするものではなくて、
ひと晩泊ってどんな感じがするか見たかったんだよね。
ただ、いま各部を見ていると、光が回るし、
まちのおばあさんが通る風景がおもしろいし、非常に良くできている。
やっぱり『美の基準』のポイントをついているのはよくわかるし、
高さを上げたり、下げたり、削ったり、愛情を湧かせるように
建築主も建築家もみんなでやったというのがよくわかる、というのが総括的な感想かな。

冨永: ありがとうございます。みんなで議論しながらつくったんですけど、
最初の提案ではエントランス側の背戸道から空間を通って
反対側までスパッと抜けるような提案をしていたんです。

トミトアーキテクチャの冨永美保さん。

トミトアーキテクチャの冨永美保さん。

冨永: だけど、〈真鶴出版〉のおふたりと話していくうちに、
真鶴のおもしろさは「ここが主役です」と一点を引き立てる感じではなく、
いろんな場所にいろんな特徴がちょこちょこあって、
見どころが各自に設定できるようなおもしろさがあるから、
それを建築の内側にも入れたいと思いました。
『美の基準』を見ていても、いろんな言い方でそれを表現しているように感じたし、
そういうおもしろさを、徐々に意識するようになってこの空間ができあがりました。

伊藤: ありがたいことに、いろんなメディアに取り上げていただきました。
でも建築的にはいろんな批評があり、褒めてくださる方もいれば、
「地味だね。何をしたの?」という意見もあります。

池上: 建築の価値のひとつとして、
「デザインが気持ちいい」ってことがあるんだよね。
それは“清涼感”と言ってもいいのだけど。
でも『美の基準』で言っているのは、清涼感ではなくて、
いわゆる無名の質、“cannot be named”の質を目指そう、ということなんだよね。

それがどうやったらできるのか、答えは決まっていない。
みなさんもそうだったと思うけど、議論を重ねながらつくっていくと、
清涼感とは違う価値を生んでくる。
ここの視線をドヤッと抜いたら気持ちいいし、例えば三角の家みたいな、
見慣れてない非日常の空間はとっても気持ちいいよね。
だけど、「深い思い」(*) には引っかかってくる。

*深い思い(Deep Feeling):クリストファー・アレグザンダーの理論によく出てくる言葉であり、個の快楽/欲望を超える普遍的な「美」と解釈できる。『美の基準』の指針ともなっている考え方。

〈石本藤雄展
-マリメッコの花から陶の実へ-〉
マリメッコ・デザインを手がけた
石本藤雄さんの陶の世界

フィンランドから故郷・愛媛へ思いを馳せて

2019年6月19日(水)〜30 日(日)、
東京・青山のスパイラルガーデンにて
陶芸家/テキスタイルデザイナーの石本藤雄さんによる
〈石本藤雄展 -マリメッコの花から陶の実へ-〉が開催されます。

1974年から2006年にかけて、フィンランドのライフスタイルブランド
〈マリメッコ〉のテキスタイルデザイナーとして活躍し、
400点を超えるデザインを生み出した石本さん。
そんな石本さんが陶器の作品を手がけていることをご存知ですか?

『オオイヌノフグリ』(2018)(C) Chikako Harada/Fujiwo Ishimoto

『オオイヌノフグリ』(2018)(C) Chikako Harada/Fujiwo Ishimoto

じつは石本さんは、陶芸の里がある愛媛県砥部町出身。
若い頃は一切焼きものに興味がなかったといいますが、
フィンランドで暮らすうち、陶の世界に惹かれるように。
1989年にフィンランドを代表する陶器メーカー〈アラビア〉の
アート・デパートメント部門にアトリエを構えて以来、
陶作品をつくり続けています。

こちらは、近年精力的に制作している 『冬瓜』のシリーズ。

『冬瓜』(C)Chikako Harada/Fujiwo Ishimoto

『冬瓜』(C)Chikako Harada/Fujiwo Ishimoto

今回は、自然光が降り注ぐアトリウムに、
この『冬瓜』を配したインスタレーションが登場。
草をモチーフに四季を描いたマリメッコ製のテキスタイル
「kesästä kesään(ケサスタ・ケサアン/夏から夏へ)」を背景に
「侘び寂び」の世界観を表現します。

そのほかには、色鮮やかな絵皿や、
春の花「オオイヌノフグリ」をモチーフとしたレリーフの大作も。

ぱっと開いた花の美しさ。碧い葉の瑞々しさ。
ごろんと横たわる果物の愛らしさ。
自然の造形物をまるごと表現した
石本さんの作品は、細部にわたるまで魅力的。
見れば見るほど惹き込まれてしまいます。

展覧会グッズ「トートバック」販売期間:2019年6月19日(水)〜7月7日(日)会場:MINA-TO(スパイラル1F)

展覧会グッズ「トートバック」販売期間:2019年6月19日(水)〜7月7日(日)会場:MINA-TO(スパイラル1F)

明治から残る木造建築
〈旧八女郡役所〉の再生プロジェクト

中島宏典 vol.1

みなさん、はじめまして。中島宏典です。

私は福岡県八女(やめ)市を拠点に、まち並み保存によるまちづくりの活動や
林業の取り組みに関わっています。
建築や林業を中心に、さまざまなジャンルをまたいで事業を調整する、
いわばキュレーターに近い役割を担っています。

また、一棟まるまる貸切の町家宿〈泊まれる町家 川のじ〉の運営もしており、
八女を訪れていただく方に、宿泊体験を通じて、
リアルな地域の情報や人の魅力をご紹介しています。

本連載では、林業、官民連携、伝統工芸、移住など、
さまざまな切り口を織り交ぜながら、
これまで八女で関わってきたまちづくりの活動についてお伝えしたいと思います。

昔ながらのまち並みと手工業が息づく「八女福島」

まずは、八女についてご紹介します。

八女市は、福岡市から南へ約50キロ、福岡県南部に位置する、
人口6万2千人ほどの農林業が盛んな地域です。

八女というと、茶どころのイメージをお持ちではないでしょうか。
八女は、霧が発生しやすい気候条件から、古くから天然の玉露茶の栽培が盛んで、
伝統本玉露の生産量が日本一(国内生産量の約45%)であり、
お茶の平均単価も日本一高い、日本有数の高級茶産地です。

八女茶は、審査においてコク、甘みを強く感じるものが多いといわれています。

八女茶は、審査においてコク、甘みを強く感じるものが多いといわれています。

八女中央大茶園。全面パノラマの茶畑から、八女の地形や景色をご覧ください。

八女中央大茶園。全面パノラマの茶畑から、八女の地形や景色をご覧ください。

八女は、九州における伝統工芸産業の集積地でもあり、
伝統工芸品の総生産額は、九州で最大規模となります。

江戸時代以降、正倉院に納められた筑後紙に起源を持つ手すき和紙をはじめ、
石灯籠、提灯、仏壇、線香、窯元、久留米絣(*くるめがすり)などといった
多様な手工業が産業として整い、まちには職人が多く暮らし、
伝統産業がいまでも受け継がれています。
八女にお越しの際は、凛としつつも穏やかな職人さんたちが営む、
素朴で昔ながらの工房を訪れるのもオススメです。

*久留米絣:福岡県久留米市および周辺の旧久留米藩地域で製造されている絣(かすり)。綿織物で、藍染めが主体。

歴史的なまち並みが残る「八女福島地区」。普段は観光客をほとんど見かけず、時間がゆっくりと流れています。

歴史的なまち並みが残る「八女福島地区」。普段は観光客をほとんど見かけず、時間がゆっくりと流れています。

私が活動している「八女福島地区」は、
八女市の中心市街地域であり、旧街道沿いに土蔵造りの町家が連なり、
国の重要伝統的建造物群保存地区(以下、伝建地区)に選定されています。

江戸から昭和初期の町家が多く残っており、
その時代によってさまざまな建築デザインが見られます。
建物の住人が、職人か商人かによって、
建物の間取りや開口部に違いがあるのも見どころです。

お茶や和紙などが市(いち)で取り引きされ、提灯や仏壇の工房がいまでも残る、
下町の風情が漂うエリアです。普段の静かなまち並みでは、
職人さんたちの手仕事の息吹が感じられ、清々しい気持ちになります。

八女福島地区では、空き家になった建物をどうにか残していきたいと、
2000年頃からまち並み保存とまちづくりが盛んに行われてきました。

私が八女で活動を始めたのは、八女福島のまち並み保存に、
建築設計事務所の学生インターンとして関わったことがきっかけでした。

それ以降は、八女福島のプロジェクトとつながりを持ちながら、
関東から関西と渡り歩き、2014年に八女に戻ってきました。
八女市は私の地元の隣町であり、Jターンというかたちの移住です。
八女福島に関わり始めてから、約15年の月日が経とうとしています。

自分がワクワクすることと同時に、子どもたちの世代まで
残したいもの・ことを考えることが活動の原動力になっています。
その結果、八女や日本の本当の魅力を磨くことにつなげていきたいと思っています。

イベント時の八女福島のまち並みには、たくさんの人が訪れる。

イベント時の八女福島のまち並みには、たくさんの人が訪れる。

隠れた絶品郷土料理を全国へ発信。
〈梶賀のあぶり場〉ができるまで

多田正治アトリエ vol.1

はじめまして。〈多田正治アトリエ〉の多田正治です。
京都の西大路七条の町家をリノベーションしたアトリエで設計事務所を営んでいます。

関西を中心に建築設計の仕事をしていますが、
4年ほど前から「熊野」と呼ばれる地域でも建築に携わっています。

紀伊半島の南部のエリアは、昔から「熊野」と呼ばれています。
世界遺産にも登録された「熊野古道」や「熊野大社」が有名で、
和歌山県と奈良県と三重県にまたがって「熊野」はあります。

熊野古道の馬越峠。

熊野古道の馬越峠。

熊野本宮大社。

熊野本宮大社。

日本書紀や古事記に記されるほどに歴史は古く、自然崇拝の独自の宗教観を持ち、
寺社が多数ある文化的特異点でもある熊野。修験者が修行するほどに山深く、
黒潮の恵みからマグロをはじめとする魚介類を享受できるほどに海が近い、
自然に恵まれた熊野。

そして、雄大な自然に囲まれているがゆえに、
関西と隣接しているのに近くて遠い「熊野」!(そんな遠さも熊野の魅力です)

そんな熊野の東端にある三重県尾鷲市梶賀町で、
〈梶賀のあぶり場〉プロジェクトはスタートしました。
今回はそのお話の前編をお送りします。

梶賀港を見る。

梶賀港を見る。

梶賀町の郷土料理「あぶり」

三重県尾鷲市梶賀町は人口180人ほどの漁村です。
リアス式海岸の一部で、入江の奥まった部分に漁港を中心とした集落が広がり、
漁港の背後には急峻な山地が迫っている、そんな地形です。

三重県尾鷲市梶賀町周辺の地形図。

三重県尾鷲市梶賀町周辺の地形図。

急峻な斜面に建ち並ぶ梶賀の民家。

急峻な斜面に建ち並ぶ梶賀の民家。

梶賀町には、水揚げされた魚の中で売り物にならない小魚やアシの早い魚などを加工し、
自分たちのお弁当とした郷土料理「あぶり」が、古くから伝わっています。
桜や樫(カシ)などを燃やした炎と煙で、
焼きながら燻すという独自の製法でつくられる保存食です。

竹を削ってつくった串に、一匹一匹、丁寧にワタをとった小サバなどを刺していきます。
そのまま食べてもよし、ご飯のお供にもよし、
日本酒やビールにも合う絶品郷土料理です。

あぶりをつくる。(撮影:浅田克哉)

あぶりをつくる。(撮影:浅田克哉)

撮影:浅田克哉

近年では梶賀の特産品「梶賀のあぶり」として販売しており、
その認知度の向上と販路拡大を目指して、さらなる生産力アップや
品質向上のために加工場の建設が求められていました。

撮影:浅田克哉

撮影:浅田克哉

「あぶり」による地域おこしを目指す

漁師さんの朝は早く、朝の3時や4時に起きて明るくなる前に出航、
そして夕方に帰ってくる、というサイクルで生活されています。

なので、家やまちを守るのは主に女性。
梶賀にも女性たちで結成された「婦人会」があり、
その後「梶賀まちおこしの会」として引き継がれていきました。

そして2016年、梶賀に地域おこし協力隊の2名
(中川美佳子さんと浅田克哉くん)が派遣されました。

中川さんは中小企業診断士の資格を持つ経営コンサルタント。
いつも冷静沈着で的確な状況判断をしてくれる、
それでいてみんなを温かく見守ってくれる女性です。

浅田くんはグラフィックデザイナー。
PCに向かってクールなデザインをつくるときもあれば、
ペンキやノコギリを手に自分でモノをつくってしまうマルチなクリエイター。
彼らは2019年にその任期を終えましたが、いまでも梶賀に住んで仕事をしています。

そんな異色のふたりに課せられたミッションが、
梶賀に伝わる「あぶり」による地域おこし。
そこでさまざまな試行錯誤が始まりました。

あぶりを効率良く製造するための試作。

あぶりを効率良く製造するための試作。

より効率よく加工する工夫をしてみたり。
売り場に並ぶパッケージデザインや容量や価格を変えてみたり。
伝統的なあぶりでは用いなかった魚介類で商品開発をしてみたり。

小分けにした分量、新しくデザインしたパッケージのタグ。

小分けにした分量、新しくデザインしたパッケージのタグ。

養殖のブリを使った新商品の開発。

養殖のブリを使った新商品の開発。(撮影:浅田克哉)

そんななか、前述の通り加工場を建設することが必要になりました。
そして2016年12月、ひょんなことからぼくと浅田くんが出会って、意気投合!
次の日にはどこに加工場をつくるか、ぼくは彼と梶賀を歩き回っていました。

プロの大工直伝!
初心者でもつくれる
簡単DIY術、教えます

こんにちは。
「食べもの・お金・エネルギー」を自分たちでつくる
〈いとしまシェアハウス〉のちはるです。

いきなりですが皆さん、ホームセンターには
DIY初心者にうれしい便利なサービスがあるって知っていますか? 
例えば、

・購入した木材を希望の大きさにカットしてもらえる:

1カット10円~50円程度(無料のところもあり)

・インパクトドライバーや丸ノコなど、工具の貸し出しをしてくれる:

2泊3日200円~500円程度

どちらも有料ではありますが、
工具を持っていないけれどDIYを楽しみたい! という方や、
初心者でカットが苦手、という方には魅力的なサービスではないでしょうか。
そのときのためだけに工具を揃えなくていいのも、経済的でうれしいところ。

今回はこのサービスを活用しながら、手軽にできるDIYを紹介します。

セカンドシーズン!大工インレジデンス

DIYを教えてくれるのは、いとしまシェアハウスで行う
大工技術と暮らしの物々交換プロジェクト〈大工インレジデンス〉に参加する
ユニークな大工たち。
大工インレジデンスについてはこちらの記事をどうぞ! 

初心者編、中級者編とあるので、お楽しみに! 

講師プロフィール

プロの大工、ふみよ。

【ふみよ】
リフォーム大工を5年経験したプロの大工。
足場づくり、屋根の葺き替え、雨漏り修理、ウッドデッキづくり、なんでも来い。
とにかく施工のスピードが速く、みんなから頼りにされている実力者。
ただし普段はゆるキャラ。

KiKi 千住東の家を運営する、ちーぼー。

【ちーぼー】
美大で4年間みっちりとプロダクトデザインを学び、
今は仕事でDIYなどのワークショップに携わる。
パートナーと東京の築90年の平屋を7か月かけて改修。
自宅兼イベントスペース〈KiKi 千住東の家〉を運営。
写真撮影&廃材でかっこいいものをつくるのが得意。

働き方、カルチャー、移住。
〈真鶴出版2号店〉から見えたこと。
トミトアーキテクチャ&真鶴出版 対談

左から真鶴出版の川口瞬さんと來住(きし)友美さん、トミトアーキテクチャの冨永美保さん、伊藤孝仁さん。2年前の記念撮影と同じ場所で。

トミトアーキテクチャ vol.4

約2年前、〈トミトアーキテクチャ〉と〈真鶴出版〉が出会い、
ともに歩んできたゲストハウス〈真鶴出版2号店〉のプロジェクト。
オープンして半年ほどが経ったいま、あらためてプロジェクトを振り返るべく、
4人が集まり対談を行いました。
設計や施工中のこと、完成後に思うこと、そんな2号店の話題を起点に、
真鶴のカルチャーや働き方にまで話は及びました。

いくつもの要素が共存する建築

伊藤: オープンから半年が経ちましたね。
今日は真鶴出版のおふたりから見た2号店プロジェクトの振り返りや、
完成後の日常についてもお話をうかがいたいと思います。

來住: 伊藤さんの声が懐かしすぎて、なんか泣きそうなんですけど……。
最初からやばい……。

全員: (笑)

冨永: 初めてここを見学したとき、背戸道に入ったところからの風景の展開が
すごくおもしろいなと思いました。
独特な地形に沿って曲がった細い道に、この変わった形の敷地があって、
建物にも増築された形跡があり、くびれをいっぱい持っていて。

トミトアーキテクチャの伊藤孝仁さん。

トミトアーキテクチャの伊藤孝仁さん。

伊藤: 僕も特徴的な物件ですごくポテンシャルを感じました。
おふたりはプロジェクトに着手した頃、なにか印象に残ることはありますか?

川口: 早い段階で何パターンか設計プランを出してくれたことに驚きました。

來住: 模型がすごかったよね。

冨永: 普通は100分の1など、もっと小さいサイズから始まり、
どんどん大きくしていくんですけど、最初から30分の1のサイズでつくりました。
今回は改修なので構造から考える必要がなかったし、
最初から大きくつくって空間イメージをお互い共有しながら進めたいと思ったからです。

伊藤: 2号店で一番検討した箇所として、玄関の横に設置した窓がありますが、
実際にいまここで時間を過ごしてみてどうですか?

來住: すごくおもしろいですよ。背戸道が完全に借景になっています。
室内から犬の散歩が見えたり、雨の日だと傘をさす人が行き交っていたり、
真鶴の日常風景がここで一枚の絵になっているみたいです。

川口: 目線が少し下がる位置になっているし、
気候がいい日はちょっと腰掛けられるし、またげる高さになっているのがいいですね。

來住: 最初は入り口付近に番台を置きたいとリクエストしたのですが、
そうしなくてよかった。私たちがいることで
通る人にとっては圧迫感になっていたんじゃないかなと思います。

冨永: 番台があると、サービスする側とされる側が明確に分かれてしまう。
あの人に話かければいいと安心はできるけど、
でも絶対この人が“主”と判別される強制力もあると議論していましたね。

來住: いま私たちがオフィス部分としている作業テーブルには
自然とお客さんが座っていたりするんですよ。

伊藤: へぇ。それはおもしろい。

川口: もし入り口に番台を置いていたら、
空間の使い方が限られていたかもしれませんね。
いまのかたちだとシンプルで余白があるので、
使い方をいろいろ考えやすいし、レイアウトを変えることができます。

冨永: なるほど。確かにオープンハウスのとき、
複数の人の集まりがいろんな場所にあって、入ってくる人がいても
出ていく人がいても、そんなに気になりませんでした。
もし入り口に番台があったら、あんな集まり方にはならなかったかもしれませんね。

來住: 余白があるおかげで、来てくれた人が、朝ごはんの会ができるねと
話を持ってきてくれたりして、やりたいことがすごく増えました。

春目前の2月のある日、真鶴で行われた本対談。梅の花がほころぶ。

春目前の2月のある日、真鶴で行われた本対談。梅の花がほころぶ。

伊藤: いままでの建築ってもう少し余裕があって、いろんな要素を混ぜなくても、
部屋の単位で用途を分けやすかったと思うんです。
だけど今回のような改修では、真鶴出版のやりたいことを全部詰め込んだら
オーバーしてしまうから、どうしたら実現できるかと工夫が必要になるし、
いろいろと共存させることがより建築のテーマになっていく。
それがいままでの建築の考えと大きく違う部分で、そこに僕らも可能性を感じています。

冨永: もともとの相談内容もキオスクと宿と出版社という
3つの違う要素を合わせた、複合建築みたいなものをつくりたいという話でした。
でも建物は小さいわけで、最初からいろいろ重なった状態でスタートしていましたよね。

伊藤: オフィスの机にお客さんが座っちゃうっていうのは象徴的な話ですよね。

淡路島〈Awabi ware〉の 食器展が開催中! 現代の暮らしと ともにある民藝を知ろう。

「真の民藝とは何か」

民藝とは、1926年(大正15年)に柳宗悦らによって名付けられた言葉で、
職人の手から生み出された日常の生活道具のことであり、
それらは美術品に負けない美しさがあると提唱しました。

飾って大事に眺めるものではなく、毎日の生活に用いられる道具であり、
今を生きる人々の暮らしの中で使われ続けている
道具にこそ用の美が宿る、その有り様も民藝と呼ばれます。

〈Awabi ware〉プレート

〈Awabi ware展〉は4月7日(日)まで開催。

そんな民藝の姿を理解できる展覧会〈Awabi ware(あわびウェア)展〉が、
岡山県瀬戸内市のギャラリー〈御茶屋跡〉で開催中です。

壺 パープル

〈Awabi ware〉壺 パープル

会期中は、江戸後期から明治期に栄えた〈珉平焼〉などの器や、
〈Awabi ware〉の食器(購入可)を常設展示。また〈Awabi ware〉の
岡本純一氏が主催する民藝入門書『ミンゲイサイコウ』も展示されます! 
その活動内容や民藝のすばらしさにふれることができます。

〈ミンゲイサイコウ〉ののれん

〈ミンゲイサイコウ〉ののれん。

〈ミンゲイサイコウ〉信楽青竹土瓶

〈ミンゲイサイコウ〉信楽青竹土瓶。

淡路島〈CHiQ〉のパン

3月30日(土)は淡路島のパン屋さん〈CHiQ〉も登場。天然酵母パンとビーツのスープセットを〈Awabi ware〉の器で楽しめます(売切次第終了)。

地域のネットワークが生み出す
「偶然」の積み重ね。
〈真鶴出版2号店〉ついに完成

トミトアーキテクチャ vol.3

神奈川県の真鶴半島にある空き家を、ゲストと住民をつなげる
ゲストハウス〈真鶴出版2号店〉に改修したプロジェクト。
施工の過程と建築の全貌をお伝えします。

真鶴郵便局のアルミサッシ

真鶴駅から〈真鶴出版〉に向かう徒歩7分ほどの道中に、真鶴郵便局があります。
車が通れる、つまり真鶴の中では比較的大きな道に面しており、
木造2階建ての端正な建築だったのですが、
老朽化を理由に解体されるという噂がささやかれるようになりました。
真鶴出版2号店の設計が中盤に差しかかっていた頃です。

敷地内奥に新築の建物をつくるため、既存郵便局は解体されることに。2階には大きめのアルミサッシが整然と並んでいる。

敷地内奥に新築の建物をつくるため、既存郵便局は解体されることに。2階には大きめのアルミサッシが整然と並んでいる。

廃棄する予定の家具類の一部を見せていただく機会があり、
味のあるデスクや椅子、何に使うのかよくわからない
魅力的なオブジェクトを物色するなか、
解体を待つばかりの2階のアルミサッシが、
突如わたしたちの目には魅力的な資源に映るようになってきました。

長く使われてきたことを感じさせる木の机。郵便局らしい重厚なスチールの棚や、かつて使われていたであろう、はかりなどをいただいた。

長く使われてきたことを感じさせる木の机。郵便局らしい重厚なスチールの棚や、かつて使われていたであろう、はかりなどをいただいた。

というのも、設計中の真鶴出版の改修デザインにおいて、
背戸道との間にどんな「窓」をつくるかが、設計のポイントであり、
同時に悩みの種だったからです。当時は道に平行するような、
低い位置で水平に連続する窓(水平連続窓)をデザインしたいと考えていました。
生まれ変わる建築の最大の「見せ場」であったのですが、
予算との折り合いのなかで、どうやってつくるかが宙づり状態だったのです。

「この窓があの細い背戸道に移設されたら、どんなことが起こるだろうか?」
そんなワクワクに後押しされる熱意でもって、郵便局長に何度も頼み込んだところ、
「建物解体直前の2時間以内に取り外せるなら」という条件つきで、
許可をいただけました。

室内から外がどう感じられるかを検討して作成した「室内展開図」。低い水平連続窓がつくる浮遊感が、建築デザインの見せ場と考えていた。

室内から外がどう感じられるかを検討して作成した「室内展開図」。低い水平連続窓がつくる浮遊感が、建築デザインの見せ場と考えていた。

ジャズセッションのような救出劇?

2号店の施工をお願いしている地元真鶴の大工
〈原田建築〉の原田登さんにアルミサッシの採取について相談したところ、
こんな回答が。

「そんなことやったことない(笑)」

しかし原田さんは建具屋〈橘田建具店〉の橘田孝之さん、
左官屋〈柏木左官店〉の柏木健一さんを巻き込み、即席でチームを編成し、
郵便局2階のアルミサッシの窓を制限時間内で取り外すという
前代未聞の救出劇について、さっそく作戦会議が始まりました。
どこから屋根に乗り込むか、どうしたらきれいに外せるか、どう搬出するか、
2時間で本当にできるのかという検証を重ね、いざ本番当日。

3人の息の合ったチームワークによって、
2時間でふた組のアルミサッシを救出することができました。
搬出用の脚立の長さが足りない! というハプニングも、
実は郵便局の隣にある橘田建具店から長い脚立を持ってきて無事解決。

という具合に、物理的な近さによる瞬発力や、
電話1本ですぐ集まって会議できる緩やかな信頼関係があったからこそ、
まるでジャズのセッションのような即興性をもって、アルミサッシは救出されました。
使い方の決まっていないふた組のアルミサッシは、
ひとまず真鶴出版の裏庭にストックされました。

アルミサッシの救出劇。3人の息の合ったチームワークで、きれいな状態のままアルミサッシを採取することができた。(撮影:真鶴出版)

アルミサッシの救出劇。3人の息の合ったチームワークで、きれいな状態のままアルミサッシを採取することができた。(撮影:真鶴出版)

ミュージシャン・イン・ レジデンス豊岡、 bonobosの蔡忠浩さん。 約1週間の滞在でどんな楽曲ができた?

bonobos・蔡忠浩さん、豊岡市で楽曲制作をする

柔軟でおもしろいチャレンジで注目を集める兵庫県豊岡市で、
また新たな試みが生まれました。
ミュージシャン・イン・レジデンス豊岡は、ミュージシャンが豊岡に滞在し、
豊岡での経験をもとに音楽を創作するプロジェクト。
豊岡市は、城崎国際アートセンターで、
アーティスト・イン・レジデンスを実施してきました。
そんな、アーティストの作品制作に協力してきたノウハウがある豊岡市だからこそできた、
一歩進んだシティープロモーションです。

ミュージシャン・イン・レジデンス豊岡の目的は、
人口減少や都市部から地方への移住などが進むなか、
豊岡の魅力を日本で最もポピュラーな文化である「音楽」を通じて市内外に発信し、
都市部で暮らす若者や若年層家庭に、豊岡の認知を高めること。
今回滞在したのが、蔡忠浩(さいちゅんほ)さんです。
人気バンド〈bonobos(ボノボ)〉でボーカル・ギターと作詞作曲を担当し、
豊岡市のプロモーションムービー「飛んでるローカル豊岡」では
ナレーションを担当。プライベートでも豊岡を訪れています。

ミュージシャン・イン・レジデンス豊岡を経てできた新曲「アルペジオ」

蔡さんは、2018年10月に1週間ほど豊岡に滞在。その間、竹野浜、出石永楽館、
城崎の秋祭り、城崎国際アートセンター、兵庫県立コウノトリの郷公園、
Toyooka KABAN Artisan Avenue、農家民宿などを訪れて楽曲を制作しました。
こうして誕生したのが、3月8日にリリースされるbonobosの新曲「アルペジオ」です。